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2017年 議事録

2017年 議事録


 

第193回国会 農林水産委員会 第21号  平成二十九年六月十五日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、農林物資の規格化等に関する法律及び独立行政法人農林水産消費安全技術センター法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。
通称JAS法は、制度当初から、公共の福祉の増進に寄与することを目的としてきました。二〇〇〇年代に入り、飲食料品の原産地等について悪質な偽装表示事件が多発したのを受けて、二〇〇九年に衆議院農林水産委員長提案で、「公共の福祉の増進」を「消費者の需要に即した農業生産等の振興並びに消費者の利益の保護」に改正しました。これは、生産者と消費者をつなぐ役割を明確化する趣旨であり、それにより、規格制度と表示制度が果たす役割も法文上明確にされました。
その上で、反対理由の第一は、この前回の改正趣旨が大きく後退することになるものだからです。
本改正案は、「消費者の需要に即した」との文言を削除するもので、前回改正で明確化した、公共の福祉の増進を踏まえた生産者と消費者をつなぐ役割が後退することになります。
また、農林物資の規格化とあわせて食品表示の適正化も担ってきた「食品表示法による措置と相まつて、」の文言も削除されます。食品表示に関する規定が食品表示法に移管されたという理由ですが、JAS規格は表示と密接なかかわりがあるものであり、削除する必要はありません。
反対理由の第二は、品質保証のための表示を掲げた現行JAS法が商品を売るための広告を掲げるJAS法へ、法の性格が変わることです。
現行JAS法は、規格内容を表示として示し、消費者が品質の確認をできるようにしていました。これは、消費者の権利としての表示を体現したものです。
本改正案で、認証を受けた事業者は、JASマークを広告等に付する規定を新設するにより、新たな規格を得た商品をテレビCMなど含むさまざまな媒体で宣伝ができるようになります。消費者の権利に基づく表示の役割が失われるようなことがあってはなりません。
なお、修正案は、消費者のためという現行法の目的が大きく後退するという原案の問題点を改めるものではないので、賛成できません。
以上で反対討論を終わります。(拍手)

第193回国会 農林水産委員会 第20号  平成二十九年六月十四日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
私からも加計学園の問題について、きょうは質問いたします。
この問題は、国家戦略特区制度を用いて、五十二年ぶりとなる獣医学部設置が選考される過程で、獣医師の需給判断や行政の政策決定過程がゆがめられたのではないかという疑惑です。
まず初めに、獣医師の需給判断について伺います。
まず、農水省に確認をします。
獣医師の需給については農水省の管轄とされています。活動獣医師について、農水省は、産業動物診療、公務員、小動物診療、その他の分野と分類をしています。そのうち農水省の管轄は、産業動物、公務、公務員の農林水産分野ですか、それから小動物診療で、今問題になっている新たな獣医学部についての、創薬やライフサイエンスなど、新たな分野にかかわる獣医師については、その他の分野に分類されるというのが説明だったと思います。
まず大臣、この点、間違いありませんね。
○山本(有)国務大臣
間違いありません。
昨年十一月九日の国家戦略特別区域諮問会議で、今回の獣医学部の設置につきまして、その取りまとめ文書には、一、創薬プロセスにおける多様な実験動物を用いた先端ライフサイエンス研究の推進、二、地域での感染症に係る水際対策など、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するためであるというように承知をしております。
昨年九月の第一回今治市分科会や本年一月の第三回広島県・今治市国家戦略特別区域会議での議論を踏まえれば、新たに取り組むべき分野に就業する獣医師の分類は、産業動物診療、公務員、小動物診療、その他のうち、先端ライフサイエンス研究につきましては、その他に分類されておりまして、国際的な獣医学の教育拠点に所属する獣医師、次に、地域での感染症に係る水際対策につきましても、その他に分類されまして、学術拠点に所属する獣医師が当てはまるものというように考えているところでございます。
○畠山委員
今答弁がありましたように、新たな獣医学部に関係する需給は農水省の管轄外ということで確認いたします。
しかし、安倍首相が六月五日の衆院決算委員会で、我が党の宮本徹議員に、今回の獣医学部決定は三大臣合意が全てと答弁しています。これは何を指すかというと、昨年の十二月二十二日に、山本幸三地方担当大臣、それから松野文部科学大臣、そして山本農水大臣の三名で、国家戦略特区における獣医学部の設置について文書で合意した中身を指しています。
農水省は、先ほど大臣から答弁があったように、新しい分野の需給については管轄外であるのに、なぜ昨年の十二月二十二日のこの文書で山本農水大臣は合意に名を連ねることになったのですか。
○山本(有)国務大臣
国家戦略特区による獣医学部の設置、そして、この合意文書に記載されています一校に限ること自体につきましては、農林水産省の所管するところではございません。
しかしながら、農林水産省といたしましては、適切な獣医療を確保するという観点から、産業動物獣医師や農林水産分野の公務員獣医師の確保を図るということを担当しておりまして、これらの獣医師の需要動向について情報提供していく立場にあります。その意味におきまして、合意文書にかかわっているという認識をしております。
○畠山委員
いずれにしても、この十二月二十二日の文書で、責任を負うことになったわけです。
そこで、合意文書を見ると、次のように書いています。丸が二つあるんですが、後ろの方だけ読み上げます。「その際、全体の獣医師の需給も踏まえ、獣医学部を新設するとしても、一校に限るものとし、その旨を当該告示に明記するとともに、今後とも需給の動向を考慮しつつ、十分な検証を行っていくこととする。」。
それで、一校に限るというふうになった理由、これは農水大臣の方からも、ここに至るまでの過程で述べたことがあったのかどうかもわかりませんが、改めて、一校に限るとした理由について述べてください。
○山本(有)国務大臣
平成二十八年十二月二十二日の三大臣合意文書では、獣医学部の新校を一校に限ることが記載されております。
特区による獣医学部の設置は、農林水産省の所管ではありません。しかし、十二月二十二日に内閣府から示された、一校に限る旨の三大臣名の文書案につきまして、特段の異議はない旨を内閣府に同日付で回答したところでございます。そういう経過で、一校が三大臣の合意文書の中に組み込まれたということの認識をしております。
○畠山委員
今も、改めて農水大臣から、新たな獣医学部に関する需給は所管外であるとの趣旨で答弁がありました。
そこで、内閣府の方に今度は伺います。
今、質疑で明らかに大臣が答弁したように、農水省は、ライフサイエンスなど新たな分野は、その他として、需給の責任は負うものではないとしています。
では、この分野の獣医師の需給はどこが責任を負うんでしょうか。内閣府が責任を負うとでもいうことになるのでしょうか。この点を内閣府ではどう考えているか、答弁してください。
○松本副大臣
内閣府は、規制改革を推進する立場から本件にかかわっているところであります。
そもそも規制改革の基本ルールは、自治体などから寄せられた提案につきまして、できない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを前向きに議論することであります。
規制所管省庁が改革は困難とするのならば、その正当な理由を説明しなければならず、その説明がなされない場合は、提案に基づく規制改革を進めていくべきだと考えております。
こうした基本ルールを今回の件に当てはめれば、関係省庁である文科、農水両省が新たな分野における需要がないと立証していない以上、問題はないと考えているところであります。
ただ、獣医学部の新設は、五十年以上の間、実現には至らない、とりわけ困難な規制改革事項でもあるため、今回は、関係省庁だけではなくて、内閣府といたしましても、新たな需要について確認し、文部科学大臣及び農林水産大臣もこれに異論を唱えることなく、昨年十一月九日の諮問会議で、両大臣の御出席もいただいて、本件の制度化を決定し、本件一月十二日の今治市分科会で、文科省推薦の獣医学教育に知見のある有識者の二名に出席をいただきまして、要件適合性の議論を行い、本件一月二十日の区域会議で、同様に両大臣の御出席もいただきまして、区域計画の作成をいたしました。
なお、「日本再興戦略」改訂二〇一五は閣議決定であるため、政府の各府省は、それぞれの所掌事務の範囲内でこれに従って検討すべきことは当然だと考えております。
内閣府といたしましても、昨年十一月の諮問会議取りまとめ、本年一月の分科会や区域会議に際しまして、事務方からの説明を踏まえて山本大臣が、閣議決定との関係で問題は生じないとの判断で行ったものであります。
○畠山委員
答えになっておりません。
今大臣から答弁がありましたように、所管外であることの説明責任を、内閣府は、では求めるということになるのでしょうか。
農水省として、設置法などでライフサイエンスなどの需給に責任を負う、それでは、関係法律で解される部分はありますか。これは事務方でもいいですけれども、誰か答えられますか。
○今城政府参考人
お答えいたします。
設置法等で我々は、獣医師法及び獣医療法、これを担当するということが明記されておるところでございます。
その観点から申し上げまして、獣医師が、現実に獣医師資格を持っている人間がどこに就業しているかということについて、獣医師法で我々はデータをとっておりますので、現実問題として、いわゆる企業で創薬に当たっている分野にも獣医師の方が就業している、これは把握しております。
しかしながら、今後、どういうふうにその分野で需要があるのかということについては、ライフサイエンス等の業について我々は知見がございませんので、そこは把握していない、こういうことでございます。
○畠山委員
それでは、一体、ライフサイエンスにかかわる所掌というのはどこなんでしょう。内閣府、答えられますか。
○川上政府参考人
お答え申し上げます。
私ども内閣府は、規制改革を推進する立場でございまして、その範囲で、この新たなニーズについても私どもは今回審議をさせていただいたわけでございますけれども、先ほど副大臣からの御答弁もございましたように、私どもの規制改革のルールということで申しますと、関係省庁である文科省あるいは農水両省が新たな分野における需要がないと立証していない以上は、規制改革を推進することを進めていいという判断というふうに承知しているところでございます。
○畠山委員
答えていないです。
もう一度聞きます。ライフサイエンスなどはどこが所掌するんですか。
○川上政府参考人
ライフサイエンスについても、私ども規制改革を推進する立場から、そのニーズについて私ども審議はさせていただきました。
全体の需給等について、私どもとして承知しているわけではございません。
○畠山委員
それでは、ないということで確定させていいですか。
もう一度だけ最後に聞いておきます。どこが所掌ですか。(発言する者あり)
○北村委員長
速記をとめてください。
〔速記中止〕
○北村委員長
速記を起こしてください。
内閣府川上地方創生推進事務局次長。
○川上政府参考人
お答え申し上げます。
今の事の性格としては、文科省の告示の制度改正の御議論ということでございますので、その範囲でそれぞれの関係省庁が所管をしているということかと思います。
○畠山委員
ちょっと理解不能ですね。
これは別の機会にやりたいと思っているんですけれども、何を言いたいかというと、結局、この分野に、岩盤規制だから穴をあけるというのが、先ほどから答弁があるように、この国家戦略特区の重要な一つの大きな目標です。
しかし、その結果、需給でバランスが崩れてしまった場合の責任は誰がとるのかということは、これは不明瞭になっているということではありませんか。
農水省は管轄外だと言う。内閣府は、今言ったように、所掌がどこかもはっきりしない。一体、その結果、何が起きるか。新しい分野の獣医師の需給に誰も責任を負わないことになりはしないかというのは重要問題ですよ。
一月十二日、区域会議で、定員を百六十人とするという提案がありました。今、全国の獣医学部の定員は九百三十人です。それなのに、百六十人です。
山本農水大臣、これは通告していないんですけれども、獣医学部などの適正な定員というのが何人と定められているか御存じですか。
○山本(有)国務大臣
まずは、農林水産省は、獣医学部の設置に関し所管はしておりませんが、新設される獣医学部の定員の妥当性につきまして、所管省庁において適切に判断されているものというように考えております。
今回の獣医学部の新設は、御指摘のように、先端ライフサイエンス研究の推進等、獣医師を含む獣医学部卒の知見を有する者が新たに取り組むべき分野における需要を勘案して設定されたというように承知しております。
かつ、学部の設置というのは一校に限られるというわけでございまして、獣医学部全体の需給に対し、百六十という限定の中での影響であるというように認識しております。
なお、新たな分野のうち、感染症に係る地域での水際対策というのは、現に産業動物獣医師が担っている分野でもございまして、産業動物獣医師につきましては、地域によってはその確保が困難なところもあるため、卒業生がこうした分野に就業していただくことが課題の解決に資することは、大変期待に応えることになるのではないかなというように考えるところでございます。
○畠山委員
答えになっていないのは、私、通告、今の話をしているんですけれども、先の話を大臣は先に答弁されたので。申しわけないんですけれども、言われている趣旨の答弁は、趣旨としては理解はするんです。
ただ、私がお聞きしたのは、獣医学部などの適正な定員というのがきちんとあるんですよね。
公益財団法人大学基準協会が獣医学教育に関する基準というものを出しています。これで今、設置審などでも議論がされているんだろうと思うんです。これによれば、入学定員は、六十から八十人程度を標準とし、百二十人を超えないことが望ましい、適正な教育環境を保障するために定員管理に努めなければならないと書かれているんです。
だから、改めて、全国の獣医学関係大学設置状況が首相官邸のホームページに載っていまして、これを見ても、最大で百二十名に全国の大学では定員がとどまっているんです。
大臣、それで、先取りして先ほど答弁いただきましたけれども、百六十人ですよ。
時系列で見れば、農水省として百六十という数字を知ったのは一月十二日の区域会議だと、事前に説明を受けました。ですから、一校に限ると決めたときには、もしかしたらその定員についての認識は大臣になかったかもしれません。ただ、殊に、今ここに至っては百六十名です。余りにもこれは多過ぎませんか。だって、一校に限るとしたけれども、二百だって三百だって、定員だったら、これは明らかにさまざまな形で需給に影響を及ぼすのははっきりしていることではありませんか。
定員百六十について、山本大臣、需給の状況についてどう考えますか。検討してきましたか。
○山本(有)国務大臣
まず、獣医さんになった、国家資格を持たれた方々の就職先というのは、約六割、アバウトに言うと半分が診療に当たるということでございまして、小動物の方々がその中では多い。産業動物と農林水産に係る公務員獣医師さんというのは地域偏在の中で非常に数が少ないというようなパーセントを置いて考えますと、百六十の中で、概括的に、約半分が診療に当たっていただけて、そのまた半分以下の方々が産業動物獣医師と公務員獣医師になっていただける、こう考えると、そんなに多いとか少ないとかではなくて、我々の期待感は、その程度は必要なのかなと逆に思っている次第でございます。
○畠山委員
定員百六十人が、教育環境としても適正な規模であるということが示されているわけですよ、獣医師が足りないからどんどんふやしたらいいじゃないかということを今答弁でもしかしたら言ったのかもしれませんが。
そうしたら、今まで獣医師は基本的に足りていて、地域の偏在が問題だという農水省の立場と違う答弁を今しませんでしたか、大臣。
○山本(有)国務大臣
百六十の中で、私が認識しているのは、地域枠を設けていただける枠があると聞いております。そうしますと、地域偏在に向けて、いわば自治医科大学と同じように、ある程度卒業生の就職をかなり大学として誘導することができるというようにも期待をしているわけでございまして、その意味におきましては地域偏在に資するということは、繰り返し申し上げますけれども、産業動物獣医師、公務員獣医師が現実に足りない、そして、福島議員の御指摘のように、畜産農家あるいは酪農経営、そういったものには不可欠な人材でございますので、私どもにとりましては、そうした人材を確保したいという気持ちは、願いは強いものでございまして、いかようにもして産業動物獣医師や公務員獣医師を確保したいという気持ちからは、私は、そうしたことにある程度対応しているものじゃないかなというようには思っております。
○畠山委員
でも、この獣医学部は創薬とかライフサイエンスに特化するというふうに言っているわけですよ。希望として、そういうことがあったらいいなと大臣は今答弁しましたけれども、そもそも設置目的が違うんですから、おかしな話になるんじゃありませんか。
内閣府にこれは、もう時間が迫ってきたんですけれども、聞いておきたいんです。
定員百六十というのは、先ほどから話があったように、所掌がどこかわからず、需給の調整がどうなるかわかりません。それでいながら、設置基準の百二十が適正規模というものもはるかに超えています。内閣府として、定員百六十人を踏まえた需給の状況というのは検討したことがあるんですか。
○松本副大臣
内閣府といたしましては、本年一月十二日開催の第二回今治分科会に際しまして、諮問会議取りまとめへの適合性、そして平成三十年度開設の確実性の二点について確認をしたところであります。
百六十人という定員に関しましては、あくまでも事業者が事業者公募の応募書類に記載をした人数でありまして、事業者としてのお考えを示したものであると考えております。
応募書類によれば、ライフサイエンス系専門獣医師、国際対応や危機管理のできる専門獣医師を育成するために、入学定員を百六十名とする旨の記載があるところでありますけれども、既に設置認可申請中でありまして、具体的な定員については今後精査されていくものと承知をしております。
○畠山委員
つまり、事業者が書いてきたから、それを認めましたという話ですよ。それはひどいじゃないですか。何の根拠もなく、検討もしないで、それじゃオーケーですということですか。その結果、百六十人の、定員がふえて、それが六年後、社会に出ていくわけですよ。そのときの需給に全く責任を負わず、検討もしないでオーケーしたということでよろしいんですね、確認しますよ。
○松本副大臣
具体的には、一月十二日開催の第二回今治分科会におきまして、諮問会議取りまとめへの適合性、平成三十年度開設の確実性の二点について確認をしたところでありますが、具体的には、その入学定員が、諮問会議取りまとめにあります、獣医師が新たに取り組むべき分野における具体的需要に対応するための人材を養成するものであることを確認するとともに、平成三十年度開設の確実性の審査の一環といたしまして、入学定員が施設や教員の予定規模に比して明らかにバランスを欠くものでないことなどを概略的に確認をしているところであります。
○畠山委員
バランスを欠きますよ。
これは通告していませんけれども、先ほど宮崎委員の質問の中で答弁にもありました設置審議会が今審議中だということで、もしこれで、仮に不認可だとか、条件変更がどう出てくるかわかりませんけれども、その際は、一般論として、国家戦略特区のプロセスにおいて改めて検討という答弁をされたと思います。この百六十人という定員についても、もちろんその中に、設置審の中では議論されているでしょうから、同じく一般論としては、今後見直す対象としては、一般論としてはあり得るということでよろしいですね。
○松本副大臣
今、御質問が、一般論と個別がごちゃまぜになっているかと思います。
具体的なお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
○畠山委員
通告していた質問の、これで半分まで行っていないんですよ。この問題についてはたくさんさまざまな疑問が、個別具体的な話に入っていくと膨らんでくるわけです。需給の問題一つとっても、農水省と内閣府と、一体、結局、新しい分野の需給は誰が責任を負うのかということが全く何一つ明らかとなりませんでした。
第二十五回国家戦略特区諮問会議で麻生財務大臣が、法科大学院の事例を引用して、うまくいかなかったときの結果責任を誰がとるのかと指摘していました。需給の検討もなく、結論先にありきだったということは明白で、それが加計学園ありきだったのであれば、これは重大です。
この場からも改めて、本委員会ではそうですけれども、予算委員会での集中審議や前川前文部事務次官の証人喚問などを求めて、私の質問を終わります。

第193回国会 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第5号  平成二十九年六月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
参考人の三人の皆様には、本当に貴重な御意見をお聞かせいただきまして、心から感謝を申し上げます。
時間が短いですので、早速、私からも質問をさせていただきます。
まず、脇参考人の方に、やはり昨年の首脳会談及び共同経済活動にかかわってのことで伺います。
今回の首脳会談で大きな目玉となったのが、先ほどから議論となっている共同経済活動の前進ということですが、同時に、先ほどからこれもお話がありましたように、一方で、領土交渉が置き去りにならないのかとの懸念もついて回っています。
それで、旧ソ連が崩壊して以降でしょうか、同じように共同経済活動が議題に上っていた時代があって、そのときの日本政府は、並行的に、共同経済活動委員会と国境画定委員会、いわばそれを二本立てで協議するということをロシア側とも合意して、担保する形で、島民の皆さんやかかわる皆さんに、心配もさせないようにするし、領土交渉での前進も図るという態度だったと思うんです。
ですから、そのようなことを承知されている皆さんからすれば、今回の共同経済活動が、一つだけの道筋になるのではないかという不安が出るのも私は当然だろうというふうに思うんですね。ですから、今からでももちろん遅くはないわけで、共同経済活動や領土交渉というものを並行的に進めていく必要は私はあると思っております。
その上で、脇参考人から、過去のこのような経過も含めて、さらに今の日本政府における交渉のあり方について所見がありましたら、御意見を伺わせていただきたいと思います。
○脇参考人
先般の日ロ首脳会談の中で、特に、経済活動ということがクローズアップされてきた、しかも、そのことが最終的には領土問題の解決につながるんだ、つなげるんだという安倍総理の強い思いということは、私なりに感じております。その結果どうなるかは別にして、そういう思いでもって今進んでいるんだというふうには受けとめております。
ただ、今、私自身、ここに来て最近思うんですけれども、国民的に、一般の国民から見て、経済活動と経済協力ということを一緒に考えている節があるんですね。
経済協力というのはあくまでもサハリンを中心としたそういう部分であって、経済活動というのは四島を中心とした経済活動。そこをどうも何か一緒に考えている節があって、本当にこのままで理事長、いいのか、どんどんどんどん経済活動だけが進んでいって、ロシアの方にばかりすり寄ったような形になってしまうのではないのかというふうなことも風聞としてありますので、国として、共同経済活動と経済協力ということを、きちっとやはりある程度分けてというか、はっきり説明してほしいなというふうに思っているんですね。我々が説明してもなかなか理解がすとんと落ちないという部分があるものですから。そういう部分で、そういう思いはしております。
したがって、私も、経済活動が進んでいくこと自体は、期待もしたいし、安倍総理の言っていることを期待しながら希望もしたい、希望をつないでいるわけです。したがって、これがどうなっていくかということ、これはやはり経済活動が今後進んでいく状況を見ながら、我々としてもどう対応するのかということを見定めていかなければならない、その上で、我々元島民の組織としても対策も考えていかなきゃならないということだと思っています。
くどい話になりますけれども、我々の残置財産の問題等々がそのまま放置されたままで交流がどんどん進んでいくことについてはいかがなものかなと思っていますので、その段階で我々としても、また国に対していろいろな申し入れもしたいというふうに思っているところであります。
○畠山委員
二月の予算委員会で、私から安倍総理に、このときの首脳会談について質問をさせていただきました。会談ですから、首相自身も、全てをつまびらかに、明らかにはできないという答弁が繰り返されるんですけれども、その質問をするまでに過去の交渉の経過なども改めて調べると、それでも、過去はもう少しオープンに、元島民、国民の皆さんに現状がどうなっているかということを知らせてきた首脳としての努力もあったかと思うんですね。その点では、私は、もう少し安倍首相に、さらに中身を明らかにできないものかというふうに思うことはあるんです。
ただ、いずれにしても、このまま領土のことが置き去りにならないようにということは、私も当然受けとめていかなければならないし、私自身も発信しなければいけないと思っています。
中村参考人に、共同経済活動について伺いたいんですが、共同という前に、認識の共有、科学的事実の共通、一致といいますか、ということが必要だと私は思うんです。例えば、知床も含めた自然環境保護に対する研究的なアプローチとか、先ほどから議論されている水産資源のデータの共有や調査を出発点にすることなど、科学的一致点を共有することから始めるということがさまざまな今回の活動のスタートになるのではないかというふうに思っているんです。
なかなか、経済といったときには、利害関係や、もちろんこれから法律的な問題なども出てくる中で、何を取っかかりにしていくか、どのようなステップを踏むかということはもちろん必要でありますし、繰り返しになりますが、これは領土問題を脇に、別にして進めるということがあってはならないと思っています。
それで、そのアプローチ、ステップを踏む上で、科学的な共有ということをロシアとの関係でどのように進めることが考えられるか、御所見を伺いたいと思います。
○中村参考人
日ロ間では、決して経済協力とか領土交渉だけに限らず、さまざまな、自然環境とかいろいろな、渡り鳥の調査とか、そういった両国でできるところが実はたくさんあるわけなんですね。ですから、そこからどんどんお互いの認識を深める、一致させる、できるところから進めていくというのは、非常に賢明なやり方だと思っています。ですので、そういった形の研究調査、北海道には、北海道大学スラブ研究センターとか、いろいろ理系の研究施設もありますので、そういうところの支援をいただきながら調査を進めるというのは非常に重要なことだと思っています。
それと、共同経済活動について、北方領土を対象とする共同経済活動、これまで何度か話が出てきて消えてしまったというような話があるわけですけれども、私はここで、きょういらっしゃる議員の先生方と認識を共有したいと思っていますのは、これがなかなかうまくいかない一つの大きな理由というのは、実は、北方領土内での、いわゆる今ロシア国内で行われている、北方領土で行われている経済活動に非常に腐敗、汚職がはびこっているということですね。これはサハリン州全体もそうです。サハリン州知事が逮捕されたり、あと国後の地区長が逮捕されたりとか、汚職とか、非常にそういうところで、共同経済活動といっても、実際のところ、どんな経済活動があの北方領土で行われているのか。
そして、昨年だと思いますけれども、プーチン大統領と色丹島の工場で働いている労働者がホットラインでテレビでつながりまして、それが全国に流れたんですけれども、その水産工場で働いている女性の従業員がプーチン大統領に訴えていました。今、この色丹島でとっている魚というのは中国が持ってきていると言ったんですね。そして、給料の未払いが起こっている、三カ月、半年間未払いが起こっている、そういう現状が明らかになったんですね。これは、恐らくプーチン大統領にとっても意外な展開だったと思うんです。
ですので、共同経済活動とか、それとは別に領土交渉もどんどん進めていかなくてはいけない。そしてエコロジーの問題とか、いろいろな問題を、北方領土を取り巻く環境がどうなっているのか、そのあたりをまず最初に調査研究していくというのは、今でもすぐできる、ロシアとの交渉で開始できる糸口になるかと思っています。
以上です。
○畠山委員
貴重な御意見、ありがとうございました。
高岡参考人の方には、根室の経済という点で少し現状をお聞かせいただければと思います。
先ほどの意見陳述の中にも、製缶業界あるいは流通も含めた根室の経済、かかる産業の実態が大変な状況だということを伺いました。もちろん、領土の問題が解決することは水域が広がることの解決にもつながるわけですが、そこに至るまでさまざまな、もちろん時間的な経過が必要になることは言うまでもありません。
この間、これも先ほどからあるように、流し網漁がだめになってしまったということなども含めて、当面の水産業界において、やはりつなぎ融資であったり、商工会、金融関係との連携というのは非常に今大事な状況にあるかと思うのですが、この間の協会の皆さんや根室の経済界を含めた地域の現状をさらにもう少し詳しく御発言いただければと思います。
○高岡参考人
今、実際に根室の経済は、サケ・マスの流し網漁を失いまして、これは金額的にも漁獲的にも非常に大きな経済の柱であったわけです。これを穴埋めする魚種、工場を稼働する上で穴埋めする魚種というものが、当初、我々が第一回目に期待したのが公海でのサンマ、あと、小型船でのイワシ、サバ、この操業です。その中で、公海のサンマにおいては、我々が手がけることができない、冷凍のまま海外輸出が条件ということで、国内の市況維持のためにそういった措置がとられております。
我々は、今回、ホタテの増養殖ということで、新たな漁場整備を昨年させていただきました。それに伴いまして、本年度、稚貝の放流をしなきゃいけないということがあるんですが、これが本年と来年度、約二年で六億六千万の稚貝を購入して放流しなきゃいけないということなんですが、いかんせん、新たに、全く白紙の状態で食事の種を借りておるわけですから、原資がありません。その原資の観点から、今、国の方に要望、陳情をしているわけであります。
この何にもない、魚が全く揚がっていない、通年、普通の企業であれば、二百五十日ないし二百七十日の稼働をしなければ、経済的に、今の日本、国際社会の中でも成り立っていきません、その中で三カ月の稼働空白というのが生まれるということは、ほかの月日に分配しても非常に大変なことなんです。そこの穴埋めをぜひしていただきたいので、今回、根室市を挙げて要望しているわけであります。
あと、今後やっていく中では、やはり共同活動というのは根室に直接影響してくると思います。魚の動向、観光にしても、人の動向によっていろいろ変わってくると思うんですね。空路という形でも行ける地区というのは国後、択捉だと思うんですね。北方四島というからには歯舞、色丹もありますので、私は極端な発想をする方なので、何を言っているんだと思われるかもしれませんが、橋でつないだらいいんじゃないかなという。これはやはり、「えとぴりか」も入れないような水深の浅さ、宿泊施設がないというような現状を鑑みますと、日帰りで観光ルートをつくる。これは、路面をつないでいくという方法もあると思いますので、そういうこともあるかなと思っております。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございました。
ちょっと時間がないのですが、脇参考人に一言だけ、連盟の皆さんのとりわけ二世、三世がさらに継続して運動を広げていく上で、一つだけ伺いたいことがあります。
以前伺ったときに、現職で働いている皆さんからすれば、例えば全国キャラバンをするに当たっては、昔だったら中小企業も余裕があって人を送り出したけれども、今はなかなかそうならないんだという経済の実態ですとか、実は手弁当になって、さまざまな手当などが出ない状況が大変なんだというお話も伺いました。
これは国のさまざまな支援にかかわるものなんですが、今後のそのような運動にかかって、一言、脇参考人から伺えればと思います。
○脇参考人
御案内のとおり、当連盟の元島民は八十二歳を超えている現状の中で、当連盟の活動なり運動がなかなか体力的にもできないというような状況の中で、二世、三世にそのことをお願いせざるを得ないという今の状況です。
ただ、そこで、今おっしゃられるように、二世、三世はまだ現役世代です。したがって、会社を休んで行くということになるとなかなか大変だ。休ませてくれるのであればまだしも、休んだとしても、行ったときの費用弁償というか、旅費は出るにしても、それ以外の部分については、休んで、会社に迷惑をかけなきゃならないということなので、これが我々当連盟にとっても非常に苦慮しているところであります。
したがって、ちょっと申し上げますけれども、当連盟の予算規模は約三億です。そのうちの六百万しか会員から会費収入はありません。あとの二億数千万は国と道からの助成金なんですが、その助成金も、事業に伴う助成金であります。したがって、事業をやることによって、職員の十数名の人件費もそこから生まれてくるということでありますので、非常に弾力的な財政運営ができない。要するに、自由に使えるお金が、自由に使えると言うと語弊がありますけれども、そういういろいろな事業展開をするに当たっての費用が捻出できないという苦しみがありますので、何とか皆さん、そういう千島連盟の台所事情もちょっと御理解いただければと思っています。
以上です。
○畠山委員
時間ですので、終わります。
参考人の皆様、本当にありがとうございました。

第193回国会 農林水産委員会 第19号  平成二十九年六月七日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、農業災害補償法の一部改正案に反対の討論をいたします。
反対の第一の理由は、本改正案が、現行の農業災害補償制度を弱体化させ、農業者に不利益を与えるものであり、認められないという点です。
本改正で、農作物共済は当然加入から任意加入制へ移行します。保険や共済における逆選択を防ぐための手法である当然加入は、自賠責保険など社会政策的目的を持った保険で適用されているものです。任意加入制に移行することで逆選択が進むとともに、農業共済組合の財務や、農村集落における相互扶助の仕組みに影響を与えかねません。
また、収量の三割減でも補償してきた一筆方式を廃止することで、圃場ごとのきめ細かい被害補償がなされなくなります。無事戻しの廃止や家畜共済の自己負担制度の導入も、共済加入者に不利益をもたらしかねません。
反対の第二の理由は、収入保険の導入に合わせて米の生産調整や直接支払交付金など岩盤制度の廃止を進める政策は認められないということです。
新たに設けられる収入保険は、青色申告を前提とし、現状では対象が三割の農業者に限られる上に、農業共済、収入減少影響緩和対策、野菜価格安定制度、加工原料乳生産者経営安定対策の各加入者は、その制度から離脱しなければ加入できません。畜産農家も対象外であり、日本農業全体を支える制度となっていません。
重要なことは、参考人質疑でも指摘されたように、岩盤制度がないままに、収入保険のみで稲作の経営安定、所得確保を実現することはできないということです。
安倍政権による農政のもとで、二〇一六年に戸別所得補償制度が廃止され、二〇一八年には、米の生産調整とともに、十アール当たり七千五百円を支給する米の直接支払交付金を廃止するとしています。収入保険の導入と引きかえに経営安定の岩盤制度廃止を進めるような政策は、認めることができません。
なお、同法修正案については、これらの問題点を修正するものでなく、賛成することができません。
以上で反対討論を終わります。(拍手)

第193回国会 農林水産委員会 第16号  平成二十九年五月三十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
ほかの委員会の関係で、質問の順序を調整していただいた関係委員には感謝を申し上げて、質問に入ります。
きょうは、水産関係についての質問を行います。
まず最初に、北海道道南地方でのスルメイカ不漁と、噴火湾という地域の養殖ホタテへい死対策について伺いたいと思います。
というのも、あした、六月一日は道南スルメイカ漁の解禁日になっています。この地域での、もちろん地元の食を支え、経済も支え、観光資源にもなっています。函館では、夏祭りでいか踊りを踊る、地元の文化の上でも欠かせない資源になっています。
ところが、このスルメイカが不漁のために、加工場、飲食店などが困っています。昨年は過去最低の水揚げとなりまして、函館水産試験場の予測では、昨年を若干ことしは上回るものの、ピーク時でした二〇〇一年と比べて、現状、九分の一程度まで水揚げが減ったということですから、深刻です。
地域的な問題かと思っていましたら、きょう後半、漁業権の問題を質問するために五月十日の規制改革推進会議第十三回農業ワーキング・グループの議事録を読んでいたところ、佐藤水産長官が、今、生産高などの心配で、イカが大変不漁であるというふうに委員に訴えを行っていらっしゃるんですね。
議事録を読んで初めてうなずきながら読んでいたわけなんですが、この問題、少し現状を、この間の水揚げ高の経過や不漁となっている原因について水産庁の見解を求めたいと思います。
○佐藤(一)政府参考人
畠山先生にお答えいたします。
まず、北海道庁の公表資料によりますれば、渡島管内、いわゆる道南地方のスルメイカの水揚げ量と水揚げ金額の推移でございますが、平成九年には八・六万トンで百三十二億円であったものが、平成十九年には四・八万トンの八十九億円、平成二十七年には一・二万トンの四十四億円となっておるところでございます。
それで、近年のスルメイカの不漁の原因でございますが、さまざまな原因が考えられるわけでございますが、やはり海水温等の海洋環境の変化が一番大きな原因ではないかと認識しているところでございます。
スルメイカの資源の調査と評価を実施しております国立研究開発法人水産研究・教育機構によりますれば、スルメイカの資源量は近年減少傾向にございまして、特に平成二十七年及び二十八年でございますが、産卵海域でスルメイカの発生に適した温度帯が減少したことが主な要因となりまして、さらに、日本海の温度変化によりまして回遊ルートが変化しまして、沿岸に漁場が形成されにくくなったことが不漁に拍車をかけたと分析しているところでございます。
○畠山委員
道南のスルメイカは、日本海側を北上するものと太平洋側を北上するものが季節が分かれて来るんですね。それで、日本海側の方は、昨年、漁としてはよかった、太平洋側の方が非常に悪かったという調査もありました。
いずれにしても、当面の地域の経済などを支える上では重大問題でして、今月十七日には、函館の市長さんや経済界の皆さんがそろって農水省と経産省に要請を行いました。イカの輸入数量を制限する輸入割り当て制度、これの弾力的運用や、排他的経済水域での外国船による違法操業対策強化などが要請された柱となっています。
これは農水省、経産省両方から、これらの要請に対してどのように対応するか、答弁してください。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
今先生の方から御指摘ございましたが、函館市にとりましては、イカ加工業というのは非常に重要な産業でございまして、また、重要な観光資源であるといったことは承知しておりまして、昨今のイカの不漁によりまして、函館市を初めとする全国のイカ加工業者の皆様方が非常に厳しい状況に直面していると認識しているところでございます。
このような中で、加工原料の確保に資するため、昨年十二月には、イカの輸入枠について追加割り当ての発表を行ったところでございます。
水産庁といたしましては、今後とも、この輸入割り当て制度の機動的、弾力的な運用、そして、機器整備等への融資や助成等によりまして加工業者の皆さんに対する経営支援、それと、今先生の方からお話ございましたように、外国漁船による違法操業に対する取り締まりの強化、こういうものを図っていくというふうに考えておりまして、また、スルメイカ資源の変動要因の調査について努めていきたい、このように考えているところでございます。
○飯田政府参考人
お答えいたします。
五月十七日に、ただいま御紹介ございましたとおり、御要望をいただきました。
経済産業省関連といたしましては、イカの輸入割り当て制度の弾力的な運用、それからイカの加工業者に対する経営支援、こういったところで御要望をいただいたところでございます。
イカの割り当て制度につきましては、今水産庁から御答弁申し上げたとおりでございますけれども、経済産業省といたしましても、水産庁と協力し、国内の生産量、消費量、輸出量、輸入量、こういったものの動向、見通しを勘案して、適切に輸入割り当て制度を運用してまいりたいと考えてございます。
あわせまして、追加枠の早期発給、あるいは、函館の加工業者を対象とした特別枠の新設について御要望もいただいております。
これにつきましては、追加枠の発給については、昨年の追加枠については先ほど御答弁申し上げたとおりですけれども、今後、水産庁と協議の上、可能な限り機動的に運用してまいりたいというふうに考えております。
ただ、函館の加工業者を対象とした特別枠という話がございましたけれども、イカの加工業者は全国に存在するため、需要者割り当てという、全国八つの加工団体を通じて配分しておりまして、引き続きこれを御活用いただきたいというふうに考えてございます。
また、水産加工業に関する支援ということで、御要望の中でも、函館が今後力を入れていきたいAIやIT、こういったものを活用した展開というような御要望もいただいておりまして、これにつきましては、地方版IoT推進ラボによりましてIoTビジネスの創出を支援する、こういったことを進めてまいりたいと思います。
あわせまして、地域資源活用、農商工連携等による中小企業・小規模事業者向けの新商品開発、販路開拓、こういったものを後押ししてまいりたいと考えている次第でございます。
○畠山委員
不漁の影響を受けた廃業や事業縮小など、水産加工業への影響が出てきているという報道もありまして、きのうですけれども、函館でも、一般財団法人函館国際水産・海洋都市推進機構が主催した講演会には、関係者約二百五十人が専門家の話を伺ったということですから、非常に関心が高いし、それだけ切実だということだと思います。
状況は今答弁されたとおりですし、きょうこれ以上は問いませんが、地域経済の重要性から鑑みても、当面の対策はもちろんですが、気候変動などの影響も考えられるだけに、研究体制としての充実も重ねて要望しておきたいと思います。
それで、もう一つ、水産長官が、先ほど紹介した農業ワーキング・グループの水産の中で、スルメイカも心配なんだがホタテも心配だということを続けて言っているんですよ。日本が輸出する際の水産関係はホタテと真珠が稼ぎ頭となっているだけに、それは承知するところですが、道南地方の噴火湾での養殖ホタテへい死も念頭にあることだろうと思います。
養殖ホタテのへい死は、この噴火湾だけでなく、陸奥湾とか三陸とか、各地で定期的に発生してきたものですが、今回、噴火湾での被害は昨年から発生してきたものです。昨年は、北海道を連続した台風が襲いまして、水産状況にもかなりの被害が出ました。私も、現場に行きまして、耳つりホタテをやるわけですけれども、これがだんご状に絡まってしまって、相当な被害が出たことに切実な声も聞いてきたわけですが、そのときに、同時に、このへい死対策を何とかできないものかということが寄せられていたんです。
この噴火湾地域の水揚げ、あるいはへい死の原因などについて、これもまず水産庁の見解を伺います。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
噴火湾のホタテのへい死でございますが、過去十年間の北海道噴火湾のホタテガイの水揚げ量の平均値というのは大体十万トン程度であったわけでございますが、平成二十七年には十二万トンを超える高い水準になったわけでございますが、平成二十八年には、養殖中のホタテガイの大量へい死によりまして、対前年比の四割減の約七万トンとなったところでございます。
この原因でございますが、北海道道立総合研究機構によりますれば、大量へい死の原因は、ホタテガイの養殖時期に生じた波浪による養殖施設の振動による影響、高水温、そして飼育密度の過多などの複合的な問題によるものと考えられているところでございます。
○畠山委員
噴火湾では、今挙げられましたへい死、それから数年前からザラボヤが、外来種と想定されていますが、くっついてきて脱落する、それを洗浄するための機械の購入だとか、さまざまなことで相当な苦労をしてきたわけです。ただ、水揚げが減ったために単価が少し上がったので何とかカバーしたという話も聞いてはおりますが、昨年は、今述べたように連続した台風、そして相次ぐへい死などで、相当現場での苦労は強まってきております。
それで、こちらの地域からもさまざまな対策の要望が上がっているかと思いますが、水産庁として今始めている事業があると伺っています。その中身を答弁してください。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
水産庁におきましては、ホタテガイのへい死被害の原因究明と拡大防止を進めるために、北海道庁、北海道立総合研究機構、そして地元のホタテガイ養殖業者の皆さんと現地意見交換会というものを開催しながら、平成二十八年度補正予算により、幾つか対応してきているところでございます。
具体的に申し上げますと、まず一つは養殖ホタテガイのへい死原因特定のための予備的緊急調査ということで、北海道道立総合研究機構を主体といたしまして、平成二十八年の十月からこの調査を実施しているところでございます。また、この北海道道立総合研究機構が中心となりまして、大学と漁業者と連携しながら、ICTを活用したホタテガイのへい死の被害を軽減するための技術開発を現在実施しているところでございます。
今後とも、関係機関と連携しながらホタテガイ生産の振興に取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。
○畠山委員
今述べられたICTによるモニター研究というのは、耳つりは一回一回上げないと中身が見られないものだから、水中カメラを置いて、それで三年間ほどですか研究事業をやってみて、それがうまくいけば漁業者の負担軽減にもなるんじゃないかという中身と伺っています。
ただ、先ほど述べたように、ザラボヤの洗浄を含めて、かなりの資金も含めた御苦労が現地でありますから、やはり現場の実態を踏まえた対応をお願いしたいと思うんですね。
そこで、大臣の方に確認したいことが一つあります。
海はもちろん一つにつながっておりまして、養殖ホタテもスルメイカでも心配なことがあります。
週刊水産新聞によれば、噴火湾だけでなく、陸奥湾でもことし成長不良があって、西湾の一部ではへい死もふえてきているということなんだそうです。昨年、過去最高の水揚げでしたから、平年並みに戻るぐらいかなという受けとめという話のようですが、実は噴火湾と陸奥湾の関係を調べている方がいらっしゃいました。
函館の水産試験場の調査研究部で研究結果を発表していて、似たような時期にへい死が起きているという調査を、たまたまなんですが、見つけたんです。この方いわく、これは数年前に書かれた論文ですが、周期から計算すると、噴火湾での稚貝のへい死は二〇一六年から二〇一八年の間に発生するだろうと。ちょうど発生しています。その年か、一年前後して陸奥湾でへい死が発生すれば、統計学的にも確からしい確率だと言えるということを書かれていたんです。読みながら、びっくりいたしました。
ただ、海のものというのは数年に一度しか起きない事象を蓄積して研究するわけですから、年月がかかるわけです。このような研究があってこその水産資源の安定的確保につながっていると思います。
そこで、大臣に伺いたいのは、研究はもちろん資金面も大事ですけれども、身分の安定がなければ長期的な研究というところにかかることはなかなかできないと思います。ましてや気候変動が確実に今進んでいる中で、自然を相手にする農林漁業の研究は重みを増しているので、応援してほしいと思っているんですよ。その重要性についての大臣の認識を伺いたいと思います。
○山本(有)国務大臣
地球温暖化等による気候変動は、我が国農林水産業へのさまざまな影響を及ぼすものでございます。影響を予測し、気候変動の適応や緩和のための研究を進めることは極めて重要であると認識しております。
このため、例えば海水温上昇に伴う赤潮の発生予測技術の開発、あるいは気候変動によるブドウ着色不良等の農林水産物への影響予測、あるいはリンゴの日焼け等を軽減する技術の開発、あるいは高温に耐性のある水稲品種の開発等の研究を推進し、その研究成果が着実に生産現場に普及するよう努めているところでもございます。
今後も、産学官の連携等によりまして、農林水産業を担う方々の不安を払拭し、安定的な経営が実現できますように、気候変動に関する研究開発を推進してまいりたいと思います。
当然、そうした研究開発分野に携わる方々の身分の安定も図っていきたいというように思っております。
○畠山委員
しっかり対応していただきたいと思っております。
水産長官みずから悩みだとおっしゃられているスルメイカと養殖ホタテのことをきょうは取り上げましたが、日本全国どこでもやはり水産業が安定的に続けられるような施策強化を求めておきたいと思います。
後半に、四月に閣議決定された水産基本計画と規制改革推進会議、また漁業権との関係についてただしておきたいと思います。
それで、今述べた前半の質問のために漁協や漁師の方などから話も伺ったんですが、今回の件とは別に、漁業権の見直しについてのさまざまな意見も出てくるんですね。明確に反対だという方もいらっしゃいました。
それで、最初に紹介した五月十日のワーキング・グループの議事録を読んでみると、水産庁がこのとき漁業権に触れなかったことが不満だと述べている民間委員がおりました。それに対して、漁業権の件について水産庁はどのように回答したのか、この場でも同じようにまず説明してください。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
農業ワーキング・グループでのやりとりでございますが、委員の方から、いわゆる特定区画漁業権について、なぜ漁協がその管理主体となっているのかという質問がございまして、これに対して、特定区画漁業権の対象となる漁業者が小規模で多数存在することが一般的であり、漁場利用の観点から、漁業者間の調整が非常に重要で、かつ困難であること等のため、漁業権の管理の観点から、地元の漁業者の大多数が組合員である漁協に優先的に免許が付与されている旨を説明したところでございます。
○畠山委員
ある漁協さんからは、北海道で余している海面はない、民間に入られるスペースはないとの強調のお話もありました。浜が分断されるようなことはもちろんあってはならないと思うんです。
そこで、水産基本計画の中身を読んでいきましたが、「魚類・貝類養殖業等への企業の参入」という項目があります。前回の基本計画にはなかった項目です。こう書かれておりました。「漁業者が、必要とされる技術・ノウハウ・資本・人材を有する企業との連携を図っていくことは重要である。」連携、参入の後に、「浜の活性化の観点から必要な施策について引き続き検討し、成案を得る。」と書かれています。
企業の参入にかかわって、「浜の活性化の観点から必要な施策」とは一体何を指すんでしょうか。漁業権との関係もあるのか、また、成案に向けて何を検討するというのか、具体的に説明してください。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
先月閣議決定されました新しい水産基本計画では、養殖業につきまして、「漁業者が、必要とされる技術・ノウハウ・資本・人材を有する企業との連携を図っていくことは重要である。」とした上で、私どもといたしましては、浜と連携する企業とのマッチング活動の促進やガイドラインの策定等を通じまして、企業と浜との連携、参入を円滑にするための取り組みを行うとともに、浜の活性化の観点から必要な施策について引き続き検討することとしておりますが、いずれにしても、今後、多角的かつ丁寧に検討を深めていきたい、このように考えているところでございます。
○畠山委員
多角的かつ丁寧にという一般的な答弁でありました。
私は、こういうときこそ基本に返る必要があると思うんです。
漁業権を定めている漁業法の第一条、目的規定には次のように書いてあります。「この法律は、漁業生産に関する基本的制度を定め、漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によつて水面を総合的に利用し、もつて漁業生産力を発展させ、あわせて漁業の民主化を図ることを目的とする。」と書いてあります。競争的ではなくて、民主的な漁業のあり方と漁業権が結びついてこの法律は成り立っています。
しかし、基本計画の特徴は、漁業の成長産業化を前面にしたことにあります。基本的な方針に、沖合漁業、遠洋漁業の国際競争力の強化とあります。これも、前回の計画にはありませんでした。
漁業における国際競争力とは一体何なんでしょうか。どこと、何を、どんなふうに競争しようということを指しているのか、これも明確に答弁してください。
○佐藤(一)政府参考人
お答えいたします。
漁業における国際競争力の強化というのは、ただ単に水産物を大量に供給するというものではなくして、一つは、水産資源を持続的に利用しつつ、持続可能な収益性の高い操業体制の構築等によりまして、多様化する消費者ニーズに即した水産物をより低コストで安定的に供給する能力を高めていくことであると考えているところでございます。
先月閣議決定された新たな水産基本計画におきましては、このような国際競争力を強化することによりまして、我が国周辺の豊かな水産資源を持続可能な形でフル活用し、水産物の国内市場への安定的な供給や海外市場への輸出の拡大を図り、漁村地域の活性化につながるとの方向性が示されているところでございます。
○畠山委員
今の説明では、成長産業化ということと結びつかない答弁のように思えました。
具体的な施策については別の機会に質問したいと思いますが、最後に大臣に伺っておきたいと思います。漁業権についての認識です。
漁業権というのは、魚をとるという狭い概念ではないと思います。漁獲権ではない。海域環境の保全とか水産資源の管理などと結びついたものでありますし、先ほど法の第一条を読み上げましたが、民主的な漁村づくりにも貢献してきたことと思います。
競争力の強化や所得の向上を旗印に漁業権を開放することには、大きな懸念を持たざるを得ません。大臣の認識を最後に伺っておきます。
○山本(有)国務大臣
漁業における国際競争力の強化は、先ほど水産庁長官も申し上げましたとおり、水産資源を持続的に利用する、持続可能な収益性の高い操業体制の構築をする、多様化する消費者ニーズに即応するというような観点を意味したわけでございますけれども、先月閣議決定した水産基本計画で、数量管理等による資源管理の充実、あるいは漁業の成長産業化等を強力に進めるために必要な施策について、関係法律の見直しを含めて検討を行うこととしております。
こうした中で、漁業権といったような個別具体の項目内容についての検討にまで至っているわけではありません。また、漁業の成長産業化を図るために、沖合、遠洋、沿岸、そして養殖、こうした資源管理や生産性の問題を含めて多角的に、日本の漁業のあり方等を今後漁業権も含めて検討してまいりたいというように考えるところでございます。
○畠山委員
時間ですので、改めて別の機会に深めて質問したいと思います。
終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第17号  平成二十九年五月三十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
質問順序で御努力いただいた委員各位に初めに感謝を申し上げて、早速質問に入ります。
きょうこの後議題となります、外為法に基づく北朝鮮への対応措置について、外務省からもきょうはお越しいただきましたが、最初に質問しておきます。
北朝鮮は二十九日早朝にも、国際社会の警告を無視して、弾道ミサイル発射を繰り返す暴挙を行いました。日本共産党としても、改めて、この場から強く抗議したいと思います。
北朝鮮の核実験や弾道ミサイル発射に対する対応措置は、安保理決議に基づいて国際社会として行うものと、我が国独自の制裁措置として行うものの二つがあるのは御存じのとおりです。外為法に基づく措置はこの後者によるもので、二〇〇六年から実施されてきました。閣議決定によって、北朝鮮を仕向け地とする全品目の輸出入禁止などを行うもので、我が党は、問題の平和的、外交的解決を図るための手段として、前回も、延長の承認については賛成をしてきました。
今回、新たに二年間の延長をするというものですが、この二年間だけでも、国際社会の警告などに反して、核実験や弾道ミサイルの発射を続けているのは御存じのとおりです。容認できるものではないことを我が党も繰り返し表明してきました。
そこで問題は、どのように平和的、外交的解決を図るかということだと思います。
五月二十二日の国連安保理声明では次のように書かれていました。「制裁を含むさらなる重要な措置を講じることに合意」しつつ、声明の最後には、「状況に対する平和的な、外交的なそして政治的な解決に対する安保理の公約を表明し、そして対話を通した平和的且つ包括的な解決を促進するための安保理理事国並びにその他の国家の取組を歓迎する。」このように書かれているわけです。
経済制裁の全面実施、強化は必要ではありますが、その目的は対話に置かれなくてはならないと思います。
そこで外務省に、日本における経済制裁もこの安保理声明と同じ立場であるかどうか、まず初めに確認しておきます。
○武井大臣政務官
お答えいたします。
ニューヨーク時間の五月二十二日、日本時間の二十三日でございますが、二十一日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射を強く非難するとともに、さらなる核実験及び弾道ミサイル発射を行わないことを要求する、先ほどございましたが、この安保理のプレスステートメントが発出をされたところでございます。
このプレスステートメントにおきましては、この安保理が、制裁を含むさらなる重要な措置をとるということ、そしてまた、関連安保理決議に含まれる全ての措置を完全かつ包括的に履行することに言及がされているところであります。
北朝鮮のたび重なるこの挑発行動でございますが、我が国は、この関連安保理決議の実効性を確保するとともに、他の加盟国に対しても、厳格かつ全面的な履行を働きかけているところでございます。こうした取り組みは、今委員御指摘のこのプレスステートメントと一致をするものと考えております。
我が国といたしましては、引き続き、この安保理を含め、米国、韓国等とも緊密に連携をし、また、中国、ロシアにもさらなる役割を求めながら、北朝鮮に対する圧力を強化し、北朝鮮に対して具体的な行動を求めていくと考えております。
○畠山委員
そこで、この間の総理や外務大臣の発言なんですが、安倍首相は二十九日の会見で、北朝鮮を抑止するため、米国とともに具体的な行動をとっていくと述べておられます。岸田外務大臣もティラーソン米国務長官との電話会談で、北朝鮮の脅威を抑止するため、日米は防衛体制など能力の向上を図るべく具体的行動をとることで一致したと会見で述べました。
その米国ですけれども、私、着目する必要があると思うのは、北朝鮮との対話の門戸を閉じていない、開いているということです。
例えば五月三日、ティラーソン国務長官は国務省職員を前に講演をして、北朝鮮に対して四つの問題をここで述べているんです。一つに、北朝鮮の体制転換を追求しないこと、二つに、金正恩政権の崩壊を目標にしないこと、三つに、朝鮮半島の統一を急がないこと、四つに、三十八度線を越えて北朝鮮に侵攻しないことを表明しているわけです。その上で、条件が整えば対話をする準備ができているとも述べました。
安倍首相は、対話のための対話となってはいけないと述べて、六カ国協議に否定的な態度をこの間とっていますが、制裁のための制裁となってもいけないと私は思います。
そこで、これはまた外務省に伺いますが、米国の対話に向けたこのような努力についてどう評価をされていますか。
○武井大臣政務官
お答えいたします。
もちろん、平和的、外交的に問題を解決することが重要であるということは言うまでもありませんし、これにつきましては、委員の御指摘、全く一致するところでございますが、ただ、現行の北朝鮮の状況を見ましても、これは安倍総理も述べておりますが、対話のための対話ということであっては意味がないということでもございます。北朝鮮とのある意味真剣な、意味ある対話のためには、北朝鮮が非核化に向けた真剣な意思や具体的な行動を示すということが重要でございます。
しかし、るる議論ございますとおり、北朝鮮は五月二十九日にも弾道ミサイルを発射しているところでございまして、現段階におきましては、対話ではなく、北朝鮮に対するさらなる圧力を強化するということが重要であるというふうに考えておりまして、五月二十六日の日米首脳会談及び二十九日の日米外相電話会談でございますが、これにおきましても、この方針について我が国と米国政府の立場は完全に一致していると考えております。
その上で、先ほど御指摘ございましたティラーソン米国務長官の四つのノーということでございますが、これにつきましては、北朝鮮の非核化の目標のために米国政府として北朝鮮に圧力を強化していくというためのものでございまして、この圧力強化が体制変更を目指すというものではないということを説明したというものでございまして、この圧力を強化していくということについては一致をしているものと考えております。
日米両国は、朝鮮半島の非核化ということにおいても目標を共有しておりますので、このような形で緊密に連携をしているところでございます。
我が国といたしましては、この対話と圧力、また、行動対行動の原則のもと、米国を初めとする関係諸国と緊密に連携をとりながら、北朝鮮に対する諸懸案の包括的な解決に向けて努力していく所存であります。
○畠山委員
重ねて指摘だけしておきますけれども、安保理声明でも強調しているのが、平和的、外交的、政治的解決であります。国際社会が一致して取り組むことこそ実効性あるものとなると思います。日本政府がその立場に立った外交努力を、改めて強く求めておきたいと思います。
ここでこの問題を終えて次の議題に行きたいと思いますので、政務官、結構でございます。
きょう、私、北海道での再生可能エネルギーと泊原発に関して中心的に質問したいと思っています。
経産省は二〇一三年度の補助事業で、風力発電の適地である北海道、北の道北地方からの新たな送電を進める試みを実施しました。これは、事業期間を十年ほどとして、民間事業者がSPC、特別目的会社です、これを設立して補助する仕組みとしてのスタートでした。
当時、まだ議員になっていない私が北海道にいたときに、この事業がどう進むのかということで注目していたわけです。北海道だけでなく、本州にも北本連系線を通して送電する、これは北海道電力の事業となりますが、そういうことも念頭にあったかと思います。
この事業について現在どうなっているか、まず説明してください。
○藤木政府参考人
お答え申し上げます。
北海道、御案内のとおり、風力発電の適地ということでございますが、残念ながら、送電網が十分整備されていないということがございます。
風力発電のための送電網実証事業ということで、風況がよく、大規模な風力発電に適する場所、かつ、送電網が脆弱な地域ということで、送電網の整備、技術的課題の実証を行う、こういうものでございます。
現在、北海道、東北でそれぞれ実証を進めておりますが、御案内の道北につきましては、北海道北部風力送電株式会社という会社が設立されまして、昨年度、対象地の大半で環境アセスの手続を終えまして、今年度から本格的な用地交渉に入っているというふうな段階にございます。
また、東北において事業を行っております秋田でございますが、秋田も秋田送電株式会社というのが設立されまして、今年度から環境アセスに本格的に取り組むという段階に入っているというふうに承知してございます。
こうした実証事業を通じまして、送電網の整備、そして、その実証成果の活用ということにつなげていきたいと思っています。
また、もう一点お尋ねございました北本連系線でございます。北海道電力が今取り組んでおりますが、現在、この六十万キロワットという規模でございますが、これを三十万キロワット拡張いたしまして九十万キロワットまで増強するということで、二〇一四年四月に着工しておりまして、二〇一九年四月の運転開始をめどに今工事が進捗している、こういう段階だと承知しております。
○畠山委員
道北地方は、風力発電の実績そして可能性がある地域であって、そこで、経産省としても着目されていたと思います。
これも確認しますが、北海道における再生可能エネルギーのポテンシャル、可能性を示した数値などもあると思います。北海道がどれだけ電力消費もしているか、それとともにお示しください。
○藤木政府参考人
お答え申し上げます。
特に北海道、風況がよくて大規模な風車の立地が可能であるということで、風力発電に適しているということで、再生可能エネルギーの中でも風力発電ということで、ポテンシャルが非常に大きいと認識してございます。
ポテンシャルの捉え方はいろいろな数字があるわけでございますけれども、一つは、具体的な検討が始まっているという意味では、環境アセスメントで基準をとってみますと、環境アセスメントが行われている、今全国で風力発電事業は約一千百万キロワットございますけれども、このうちの約四分の一に当たります二百五十五万キロワットが北海道に立地しているということでございまして、かなりのウエートを北海道が占めていると認識してございます。
それから、電力需要の方でございますけれども、平成二十七年度におきまして、北海道電力管内における電力需要量、年間で約三百七十億キロワットアワーというふうになっていると承知してございます。
○畠山委員
アセスに入っているものだけでも二百五十五万キロワットということですから、泊原発、三号機三つ合わせて二百七万キロワットなんですよね。もちろん理論上の問題で数字で挙げてもらっただけですが、北海道はこれ以外にも、北海道庁なども試算して、中小の水力発電でも八千六百ギガワット、地熱発電、木質バイオマスなども相当のポテンシャルを計算しています。
実際に、北海道にはエネルギー自給率が一〇〇%を超えている町が八つあります。苫前町とか幌延町など、いずれも風力発電が中心となっているところです。ただ、さまざまなアセスなどが必要なことは私も一言申し上げておきたい。
それで、これは大臣に一般的な認識を伺いたいと思います。
送電線の整備の重要性は前々から言われていたことではありますが、そこまで至らなくても、小型の、さまざまな分散した形で供給体制をすることは可能であるというのは、研究者などから指摘もあったことでありました。そして、全国はもとよりですが、今述べたように、北海道でのポテンシャル、可能性というものは非常に大きいものだと思います。
大臣の、この北海道での再生可能エネルギー普及の認識を御答弁ください。
○世耕国務大臣
私は従来から、再生可能エネルギーの一つの大きな可能性として、やはり地産地消、その地域の中の電力をそれでカバーをしていって、電気代という形で外へ出ていくのをとめて、地域の活性化につなげることができるんじゃないか。
今、自給自足をしている自治体が八つもあるというのは初めて伺いまして、そういう意味でも、北海道はもともと場所も比較的確保しやすいですし、特に風の状況が非常にいいですから、大型の風力を設置できるというメリットもありますので、そういう意味で非常に適地なんだろうというふうに思っています。
広域に配電を考えなくても、地産地消という形の風力というのももし考えられるのであれば、これは北海道にとっては非常にポテンシャルは大きいと思いますし……(発言する者あり)場所によるということですが、ただ、広域で送電するとなるとどうしても、広い面積で、電力需要が少ないということがあって送電網が脆弱ということがありますから、そういう意味ではそこは拡充をしていかなければいけないと思いますし、北本連系線も、今我々はこれを活用するということも、あるいは拡充するということも考えているわけでありますから、そういう手だても打っていかなければいけないと思っています。
○畠山委員
この再生可能エネルギーについてさまざまなきょうも議論がありましたけれども、一層拡充していくことでは一致する話だと思うんです。
一方で、問題はそこで泊原発になるわけです。北海道泊原発については、今重大な状況になっていることが規制委員会のこの間の審議で私感じています。
北海道電力は四年前に、再稼働に向けた申請を規制委員会へ提出しました。しかし、現在、まだ申請が認められる状況からはほど遠い地点にあると思います。それはなぜなのか。
直近三月の会議で規制委員会の側から示した問題点や、北海道電力自身が問題と表明している点があると思います。整理してまず答弁を願えますか。
○田中政府特別補佐人
三月十日の審査会合において私ども規制庁の方から北海道電力に対して、これまで出されているデータあるいは公開資料を用いて、二点、大きな点、指摘しております。
一つは、積丹半島の海岸地形が隆起している原因ですが、これが、事業者は広域の隆起等によるものであるという説明をしてきました。それに対して、海上音波探査の結果とか、海岸地形、微小地震分布等から、積丹半島の北西部に断層を想定して地震動評価をすべきではないかという指摘が一点であります。
もう一点は、泊原発の前面の海上は大体埋立地になっておりますので、そこに防潮堤が設置してありますが、そういった設置地盤について、埋立地の液状化についてきちっと評価をして説明をしていただきたい、そういう二点を指摘しております。
○畠山委員
今、規制委員会から指摘のあった点というのは非常に重要だと思います。
きょうは資料も出していますので、後ほど詳しく私からも重ねて指摘をしたいんですが、まず、最初に述べられました広域的隆起の問題について改めて聞きたいと思うんです。
泊原発のある積丹半島がゆっくり盛り上がったのか、それとも地震によって変動したのかというのは、これは大きな違いになります。地震であれば、泊原発敷地の、数本断層が存在していますが、特に岩内層というところを切っているF―1断層というのがありまして、これが活断層である可能性が科学者からの意見としても存在しています。
その岩内層というのは、泊原発の向かい岸にある岩内台地と同じ層だというのが北海道電力の主張です。その岩内台地に、外来礫、石ころですね、礫が百二十万年前のものとしてあるからこれは活断層ではないというのが北海道電力からの理由になっています。でも、それは礫の話であって、岩内台地の実際の砂の層を評価したものではありませんよね。だから、これは違うのではないかという意見が科学者から出されるのも私は当然だと思います。
このような科学者からの指摘、知見は重要と考えますが、実際の審査の中でこれらの観点を取り上げた、あるいは、取り上げる必要性はないでしょうか。
○田中政府特別補佐人
今先生御指摘のF―1断層というもの、破砕帯ですが、これが、上載層に岩内層がありまして、その岩内層の年代が、今事業者が申しております、百万年以上前から動いていないというそういう評価については、今、もう少し詳細にそのデータをきちっと評価するようにということで求めているところであります。
ですから、まだその点については審査途中というふうに御理解いただければと思います。
○畠山委員
重要な点だと思います。もちろん、何万年前かということの評価が最大の焦点だと思いますから、科学者からこのように知見として出されているものは取り上げて検討されることを望むものです。
そこで、実際に安全性を規制委員会として確実なものとするならば、現地調査は欠かせないことと思います。実際にこれまで泊原発については、現地の調査も規制委員会として行かれました。
この岩内層の判定には、北海道電力は向かい岸の岩内台地を調査したと述べていますが、一番わかりやすいのは、泊原発と同じ敷地として成っている後ろの段丘、積丹半島全体につまりはなりますけれども、ここを掘削していくことをすれば判明するはずです。
規制委員会として、そのような調査をして評価をすれば明瞭な評価が可能になると思いますが、いかがでしょうか。
○田中政府特別補佐人
年代を決めるためにさまざまな方法があると思います。先生御指摘のようなこともあるのかもしれませんけれども、基本的には、そういった調査についてはまず事業者が行うべきものであって、それに基づいて私どもは、厳格に現地調査を含めて評価をしていくという立場をとっております。
ということで御理解いただければと思います。
○畠山委員
事業者が基本的には調査して、それを申請、報告するということの仕組みは私も承知はしています。
ただ、私がなぜこの問題をこう取り上げているかといえば、北海道電力の調査能力についての疑念を持ったからです。それは、私が持った疑念というよりも、規制委員会みずからが示した資料によって明らかだったと思います。
三月のその審査においては、先ほど規制委員長からもありました、近海での活断層の疑いについて、わざわざ資料を規制委員会が使って説明をされたとなっています。活断層の疑いを示すために使ったそのデータというのは、規制委員会がどこからか新しく持ってきたデータだったのでしょうか。
○田中政府特別補佐人
私どもが新しいデータを持ってきたということはありませんで、これまで事業者側から提出いただいた、説明していただいた資料をもとに、それを私どもなりにいろいろ評価をして、全体的にそういった指摘をしているところでございます。
○畠山委員
今、規制委員長からあったように、疑いは、みずから北海道電力が示していたデータの中にあったわけです。それが、きょう委員の皆さんのお手元に配付した資料の一枚目です。これが、実際に規制委員会がまとめて北海道電力へ示したそのもののものです。
ちょっとわかりにくいんですが、左上に、黒い点々々のついているものが微小地震の分布です。右上に、カラーで、特に赤いところが、中心的に色のついている部分があると思いますが、これは、海底地形の露岩域、つまり盛り上がっているところを示したものです。そして右下に、青い線と赤い線が縦横にクロスしているものがあります。これは、いわゆるゆがみ、たわみについての北海道電力の資料です。
つまり、この三つそれぞれが北海道電力が提出した資料ですけれども、重ね合わせてみると、右上がわかりやすいんですが、赤い地点が、微小地震の分布でも、たわみにおいても、三つ照らし合わせたら一致するんです。だから規制委員会としても、泊原発からここは二十数キロ離れた地点ですが、活断層の疑いがあるんじゃありませんかと指摘したのは、私、当然のことだと思います。
それなのに、指摘された当の北海道電力は、みずから出したデータなのに、寝耳に水とのコメントを報道に出しているから、おかしいなと私は思うんです。自分たちの出したデータを読み込めないのか、わざと触れなかったのか、どちらかはわかりません。
いずれにしても、規制委員会からこのようにデータを整理して指摘をするということは、異例中の異例だったはずです。だから、北海道電力の姿勢や調査能力に疑問があると私が先ほど指摘したのは、規制委員会みずからのこの指摘によるところに大きいと思っています。
ですから規制委員長に述べたいんですよ。これはやはり根本の科学性に対しても真摯な姿勢とは言えないのではないか。出てきた申請だから受け入れるということでなく、ここは申請やり直し、却下するぐらいの中身が必要なのではないのでしょうか。
○田中政府特別補佐人
まず、ただいまのような議論は、いろいろなこれまでの原子力発電所の審査では多々あることであります。いろいろ、同じデータでも見方が少し違ったりいろいろな評価がありますので、それに対して私どもなりに評価をして、それで疑問があれば、それを事業者に問いかけてそれについてきちっと説明を求めるというのは基本的な審査の考え方で、そういうやり方をしております。
ですから、現段階では、北海道電力が私どもの質問に対して、疑問に対してしっかり答えるべく今いろいろな調査をしているというふうに理解しております。(発言する者あり)
○畠山委員
疑問をただすというのは、もちろん規制委員会の仕事だから当然ですけれども、このように出てきた資料をわざわざ整理して指摘するということはなかったはずです。だから、なぜこんなことが北海道電力はできなかったのかということが根本的に問われているんだと思うんですよ。
それで今指摘もありましたが、ちょっと液状化の問題についても重要な問題なので、時間もありませんから、資料の二と三を見比べて、この場でも私の方からも指摘をしておきたいと思うんです。それぞれ北海道電力から出された資料です。
資料の二は、泊原発が建設される前の空中写真です。赤い枠で一号機から三号機までの今ある原子炉の場所が示されて、海側の点線で囲っているところが、埋め立てて現在の敷地になっているところです。
資料の三枚目はちょっと小さくて見にくいかと思いますが、こういうものと重ね合わせてみれば、随分と多くの敷地が埋め立てられた上につくられているということです。この盛り土の上に防潮堤ももちろん建っているし、海から取水した後の冷却水はこの埋立地を通っていくわけですから、この点についても、地震による液状化で壊れることがないか等のおそれがあります。
それは規制委員会も承知をしていて、資料の四枚目をごらんください。実際にこれは審査の中で出されていた規制委員会からの資料でありますが、赤線を引いたところに、実際に泊発電所の埋め立ての地盤が、今言ったようなことから、「液状化の可能性について実例を踏まえ検討する必要がある。」と、阪神大震災の事例も取り上げて指摘をしています。規制委員会でも液状化の危険性はこのように指摘してきたんです。
実際に北海道電力は、防波堤の方ですが、ここが崩れて取水口が塞がってしまうおそれも認めています。
規制委員会の方に、敷地が今見たようにかなりの部分を埋め立てていることから、防潮堤だけではなく、重要な施設も含めて液状化対策ということ、その問題点を進めて調べる必要はないでしょうか。
○田中政府特別補佐人
今御指摘のように、先ほども申し上げましたけれども、液状化のおそれがあるという私どもは懸念をしておりますので、もしそういうことであれば、それに対して対策を求めるということは当然のことだと思います。
まず、そういったことも含めて、事業者からきちっとした対応を待っているところでございます。
○畠山委員
もう一度、二枚目と三枚目を比較して見ていただきたいんですが、私も泊原発の敷地には何度か中に入れさせていただいて、例えば二枚目の、三号機の、四角でくくっているのは原子炉建屋ですけれども、この海側の方にタービン建屋があります。そこを三枚目の方で見ていただければそういったものがわかるかとは思うんですけれども、つまり、重要な建屋なども含めて、埋立地の上に立っている可能性があるんです。
非常にこれは、先ほど防波堤の例も北海道電力みずからが認めているように、さまざまな点で、液状化が起きたら実際に取水できなくなるのではないか、車も入れなくなるのではないか、この泊原発の山側の方からは入ってこれませんので。こういうような点も含めて、かなり重大な問題があると思います。
規制委員長は、先日、高速実験炉「常陽」の適合性審査についても、規制委員会として保留をされた際に次のようなコメントを発表されました。「常陽」の方は、熱出力を小さくするので認めてほしいという申請だったんです。それに対して田中委員長は、ナナハンを三十キロ以下で走るから原付の免許でもいいですよねという話には納得できないという極めて明確な例示もして、不適切なものに対して厳しい態度で臨むことを表明されました。
私たち日本共産党自身は再稼働そのものについては反対の立場ではありますけれども、今見てきたような状況を見る中で、北海道電力の、あるいは泊原発の実態というのは、かなり厳しいものではないのかということを私は述べたいと思っているわけです。
そこで大臣に伺います。今、やりとりを聞いていただいたと思いますが、北海道電力は自分たちのデータさえ読み込めていない可能性があります。もしかして、知っていて隠した可能性もあります。それはわかりません。しかし、どちらにしても、原発を動かす事業者としても問題はあるのでないかと私は強く懸念します。
つけ加えれば、北海道電力の体質についても、私は、実は過去に疑問を持ったことがありました。
議員になる前、北海道にいて、北海道電力のやらせ問題というのが発覚をしました。三号機のプルサーマル発電に向けたシンポジウムが、社員に参加や計画推進の立場で発言を組織した問題がありました。このとき私、共産党の北海道の専従職員で、実はこの問題は、我が党に内部文書、内部告発が届いたものとして当時新聞などでも報道され、私、そのときの資料も持っているんです。
こういうようなことからも、今回の申請の件と一連あわせて、体質の問題として非常に私は問題意識を持っています。原発を動かす事業者としての適性や体質の問題として、安易に再稼働を許す状況にはないと思います。
繰り返しますが、私たちは再稼働そのものについて反対ですが、きょう私が提起したのは、それ以前の問題として、申請の件に関してもこういう実態があるじゃないかという提起をしたわけです。
大臣、どのように受けとめますか。
○世耕国務大臣
個別の原発を再稼働する、しないについては、これは、我々から独立をした規制委員会が、新規制基準に適合するかどうかというのを科学的、技術的に厳しく審査をしていただく、これに尽きることだろうというふうに思います。
その上で、各電力会社、これは北海道電力に限らず、当然、地域の住民から信頼をされるように、また、原発事業のあり方についてしっかりとした御理解をいただくように取り組むのは当然のことだというふうに思っております。
○畠山委員
大臣にもう一つ、せっかくですから、この機会に北海道電力の状況もお伝えしようと思うんですが、再稼働に向けた結論が先にありきとなって、そのしわ寄せがどこに行くかとなると、職員や現場の労働者になると思うんです。
これは、二月の予算委員会で我が党の高橋千鶴子議員が、各電力会社の残業問題というものを取り上げました。三六協定上でそれぞれの電力会社がどのような労使協定を結んでいるかという点で、北海道電力でも残業は一日十六時間まで可能となっておりました。つまり、通常の八時間と合わせれば二十四時間になります。
厚生労働省は、この間、さまざまな繰り返しの、我が党を含めた質問や運動などもありまして、原発再稼働の審査に関する電力会社の業務を残業時間規制の適用除外とした通達というのがあったんですが、これを廃止することで今言ったような状況を改善するということをやったわけです。泊原発がこの適用除外になっていたんです。
ことしの一月に北海道電力は、札幌の中央労基署から、長時間残業の是正に向けた勧告及び指導も受けております。再稼働先にありきのもとで、電力会社の中でも過酷な労働条件にあったことがうかがわれます。
実際、私も、北海道電力で勤めていたことのある方から話を聞いたことがありました。実際、先ほどからやりとりがあったように、かなり無理を重ねるということになれば、それは大変な労力になることは想定されます。
大臣に重ねて伺います。再稼働に向けた結論先にありきで、そのしわ寄せが社員に行くような現状が北海道電力にあるのであれば、問題ではありませんか。
○世耕国務大臣
これは再稼働ありきというわけではなくて、やはり安全ありきでありまして、そして、その上で独立した規制委員会が、新規制基準に適合するかどうか、そういうふうに判断されるかどうか、これがもう全て再稼働の一番のポイントだというふうに思っています。
その上で、社員の労働環境については、これは、労働基準法に沿って、厚生労働省の指導に従って、適正に対応してほしいというふうに思っております。
電力事業に携わる方というのは、ある意味、地域住民の安心、安全にもかかわる仕事をしているわけですから、当然、心身とも健全な状態で仕事に臨んでもらう。そういう環境を整えるのが電力会社の責務の一つだというふうに考えます。
○畠山委員
時間になりますので終わりますが、北海道では、道民世論調査を新聞社などが行うと、必ず泊原発の再稼働については反対が多数を占めている現状にあります。きょうも大臣は地域、地元の理解が必要だということを述べていましたが、そのような状況が今もなお続いています。
また、再生可能エネルギーのポテンシャルについては、きょうの質問の冒頭で述べたように、非常に大きなものがあります。風力発電だけでなく、地熱発電、中小の水力発電、また、木質バイオマスというのは、私は農林水産委員でもあるので、ここでもかかわって質問していきたいと思っていますが、非常に経済的にも大きなポテンシャルを持っていることを改めて強調しておきたいと思います。
何よりも、先ほどから規制委員会みずからが問題点噴出と示している泊原発の再稼働ということを、やはり認めることは当然できません。使用済み核燃料の処理の問題もまだ解決する見通しが立っていない中、我が党として、原発の再稼働そのものは認めないし、泊原発自身の再稼働は到底認められる状況にはないことを強調して、私の質問を終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第16号  平成二十九年五月二十六日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
化審法制定のきっかけとなったのは、国内最大の食品公害であるカネミ油症事件です。その後の調査によって、人体や環境中に相当量のPCBが蓄積されるなどの汚染の実態が明らかになったことから、世界に先駆けて、国による新規化学物質の事前審査を柱とする本法が制定されました。
健康被害、環境汚染の未然防止、これが化審法の最も重要な役割です。しかし、事前審査の全部または一部が免除される特例制度が導入されたことにより、既にこの基本的な枠組みには大きな穴があいています。このため、審査を免除された新規化学物質がふえ続け、安全性が確認されていない化学物質が大量に生産、消費、廃棄されてきました。
本法案に対する中心的な反対理由は、特例制度による国内総量上限を、これまでの数量から環境排出量係数に見直すことにより、実質的に総量の上限なしに新規化学物質の製造、輸入を可能とし、環境負荷の増大に対する懸念が拭い切れないからです。
財界と化学産業界は国内数量上限の撤廃を要求してきましたが、本法案は、事実上、これに応えるものです。化学、電気、医薬品産業などの製品サイクルのスピード化、低コスト化に規制を合わせようとするもので、人の健康や生態系への影響よりも産業界の要請を優先させるものと言わざるを得ず、容認できません。
さらに本法案は、化学物質が人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を最小化する方法での使用、生産を二〇二〇年までに達成することを求めるWSSD目標の履行措置に支障を及ぼすものとなりかねず、極めて重大です。
化審法は環境の汚染防止を目的とした規制法です。地球規模での環境汚染の現状をこれ以上悪化させることは、もはや一刻も放置できません。科学的な根拠に基づく規制措置により、人の健康や生態系に対する安全性の確保を大前提にする、この原則を貫くべきだということを重ねて指摘し、反対討論といたします。

第193回国会 農林水産委員会 第15号  平成二十九年五月二十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
畜安法の審議を前に、学校法人加計学園が愛媛県今治市に獣医学部を新設することの経過について、我が党は総理出席の予算委員会集中質疑を求めております。本筋としてはそちらでしっかりと質疑する必要があると思いますが、本委員会では、獣医師の需給についての農水省の考えと事実の経過だけを、きょう最初に二、三確認しておきたいと思っております。
我が党の小池晃参議院議員が二十二日の参議院決算委員会で、政府関係者から独自に入手した「今後のスケジュール(イメージ)」と題した文書を明らかにしました。今、私もきょうは手元に持ってきています。
これは、来年四月に開学するために、逆算でスケジュールを作成したものとなっています。この文書によれば、表題のすぐ下に米印がついていて、こう書いてあります。獣医師の需給部分について、随時、農水省・厚労省による判断・対応が重要、こう書かれているんですね。
それで、今回の件に関して、農水省は獣医師の需給についてどのように文科省へ説明してきたのか、まずその点を確認したいと思います。
○今城政府参考人
お答えいたします。
獣医師の需給、需要ということでございますけれども、近年、家畜、ペットともに数が減少しているということでございます。また、ペット一頭当たりの診療回数、これはいろいろな事情からふえているというような事情もあるので、一概には申し上げられませんけれども、獣医師の全体の数としては、届け出数で我々は把握しておりますけれども、これは全体にふえてきておるというようなこともあるので、全体の数としては不足している状況にはないということに考えられております。
このような中で、一方、産業動物獣医師、いわゆる田舎で産業動物、牛、馬、豚にかかわっておられる医師、こういう方面につきましては、実際問題として採用のところでなかなか満たないということもございまして、都道府県単位の畜産協会等が、地元に就職することを条件として獣医学生に奨学金を出すというような制度をやっておりまして、そういう状況の中で、地域によって不足している状況があるというふうに認識しております。
そういうようなことを、農林水産省といたしましては、いわゆる国家戦略特区ワーキンググループのヒアリング等におきまして、文科省さんも御出席されておると思いますが、そういうところの場で、求めに応じて、こうした獣医師の現状について説明してまいったということでございます。
○畠山委員
農水省からいただいた資料でも、獣医師というのは、今あった産業動物、それから公務員分野などもいらっしゃいますし、ペットなどを含めた小動物の診療分野、また、それ以外にも、その他、企業の実験も含めていろいろなことがありますから、それだから獣医師として活動していない方々などの中で、とりわけ農水省としては産業用動物や公務にかかわるところを中心に把握され、先ほど言った支援も行っているというように説明を受けました。
今のようなことを先ほどの出された会議では説明し、そのような議論を踏まえて、昨年十月三十一日に内閣府の事務方が農水省消費・安全局に今回の決定の原案を提示したと山本地方創生担当大臣がさきの決算委員会でも答弁をしています。この原案に対して農水省はコメントをしなかった、つまり了としたという意味だと思いますが、その理由を述べてください。
○今城政府参考人
お答えいたします。
委員御指摘のとおり、昨年十月三十一日に、内閣府が作成した、十一月九日にかけられる国家戦略特区諮問会議における決定事項に係る案、これを提示いただきました。
これにつきまして、まず一点目は、獣医学部の設置そのものは当省の担当ではないということ、加えまして、その記載されていた内容の、獣医師に求められる新たな需要というところが記載されております。具体的には、創薬等のプロセスにおける多様な実験動物を使用したライフサイエンス研究の推進ですとか、地域における感染症対策における水際対策というような部分が書かれております。
こういう新たな需要というところにつきましては、私ども必ずしも、委員先ほど御指摘あったとおり、所管しておりませんので、そういうところの需要が新たにあるということであれば、我々はそれに対して異議はないということで、コメントなしというふうに回答させていただきました。
○畠山委員
もう一つだけ事実の確認をしておきます。
今答弁のあった、十月三十一日の原案に対する、コメントしていないんですけれども一応対応したということと、最終に出てきた公表される文書が違いがあったはずです。原案が十月三十一日に提示された後に、最後に公表されるところまでの往復のやりとりというのはあったのでしょうか。
○今城政府参考人
お答えいたします。
お尋ねのような報道があって、原案と最終案というようなお話は報道で承知しておりますけれども、これは政府内部の意思決定の過程における問題ということでございますので、それがどういうものであったかということについては御回答を差し控えさせていただきたいと思います。
いずれにしても、当省はコメントなしというふうに回答させていただいたということでございます。
○畠山委員
私たちが手に入れた文書の存在の是非はともかく、先ほど言った参議院の決算委員会で山本地方創生担当大臣は原案という言葉を使ったわけですから、つまり、公表された文書は修正されたものであるということになっていくわけです。
それで、先ほど述べたように、きょうはこれは事実についての確認だけで、別の機会にきちんと審議したいと思っておりますが、修正されたということを前提に我が党が追及をしてきたわけですが、何がどう修正されたかというと、獣医学部の設置地域については、「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」と書かれている部分ではないかということを指摘しました。原案から比較して、広域的に何とかに限りという文言が入ったというのが事実だと思います。
総理の腹心の友のための利益誘導として特区制度が使われていたのではないかという疑惑です。真相の解明には農水省としても説明責任を果たすべきだということを指摘して、本筋の議論を行っていきたいと思います。
法案の審議ですが、前回の委員会で、私は、今回の改正案について、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、酪肉近からも外れているのではないかと指摘をしました。繰り返しますが、前回そこで明らかにしたのは、酪肉近では指定団体の機能の強化こそを必要としていることを方針と掲げていたのではないかと指摘をしたわけでした。
このときの山本大臣の答弁を議事録で改めて読み直しましたが、かみ合った答弁になっていないと思います。一体、この酪肉近から整合性はとれているのか、外れているのではないか、改めて聞きたいと思います。
○山本(有)国務大臣
酪肉近代化基本方針におきます指定団体の機能強化は、集送乳の大宗を担う農協連としての指定団体について、傘下の農協等のさらなる再編整備や集送乳業務の集約など指定団体内部の課題について記述しているものでございまして、その方向は今後とも変わらないものというように認識しております。
また、制度の見直しの後も、現行の指定団体は生乳流通の中核を担っていくものというように考えております。引き続き、必要な支援や経費の見える化等を通じて推進してまいりたいというように考えるところでございます。
○畠山委員
まだかみ合っていない答弁のように思えますね。
前回の議事録で、大臣は、所得がどのように上がって新規参入者を求めることができるかということで、指定団体の洗い直しの必要性をまず答弁しました。その後に、補給金を通じて飲用向けと乳製品向けの仕向けの調整の実効性を担保すれば農家所得も上がっていくという答弁もしました。
その後に、今回の、新しく団体が、事業者が指定されるということと、生産者がプラスされて力関係が強くなり、生乳団体の価格交渉力も得られるということも答弁はしているんですが、しかし、私は、今の答弁もそうなんですけれども、どうも整合性はとれていないようにしか思えません。
とりわけ、今引用した前回の答弁でも、大臣はやはり、酪農家の所得が上がるために必要なことだということを枕言葉、前提の目的として言っているんですよね。
ただ、二十三日の参考人質疑でも、私は参考人に、所得向上に今回の法案が資するかと質問をしました。四人中三人の参考人は否定的でした。現場サイドの参考人も、もし寄与することであれば、ほかにすがるものがございませんから、やっていただかざるを得ないと述べておりました。つまり、そうであったらいいなという願いを述べられたと思います。
これまで農水省が指定団体の機能強化を掲げてきた理由は、突き詰めれば、価格や所得の安定のためだったはずではありませんか。それに反することを今回の改定案はするんじゃないか、だから所得向上にはならないと私は繰り返し言っているわけです。
大臣、もう一度、なぜ所得がこれで向上すると言えるのか、説明してください。
○山本(有)国務大臣
この法案によりまして、補給金の交付対象を拡大するわけでございます。そして、現在の暫定措置法に基づく制度を恒久措置として位置づけることによりまして、財務当局とも、恒久的な考え方で取り組んでいただくということになるわけでございます。
そして、この制度改正によりまして、所得向上という点におきますれば、生産者の生乳の仕向け先の選択肢が広がります。みずから生産した生乳をブランド化し、加工、販売する取り組みなど、創意工夫による所得向上の機会を創出しやすくすることができると考えております。
また、現在の指定団体でございます農協や農協連につきましても、生産者の選択に応えるために、流通コストの削減や乳価交渉の努力を促す、そういう手だても措置をしているつもりでございます。
また、これまで補給金をもらえないため飲用向け一辺倒だった者を乳製品向けにも計画的に販売する方向に誘導することができて、これによって冬場等の飲用牛乳の不需要期の廉価販売に歯どめをかけることができると考えております。
加えて、新たに導入する年間販売計画におきまして、乳製品仕向けの経営戦略を明確にすることで、より消費者ニーズの高い用途、あるいは付加価値の高い国産乳製品の製造、こうしたものが促進されることになるわけでございまして、その結果、乳業メーカーが得られる利益をもととした乳価の形成が期待されるものというように考えているところでございます。
○畠山委員
どれくらいの対象となる生産者の所得が向上するのか、押しなべて広く生産者の所得が向上するのか、きちんと見ておく必要があると思うんです。
参考人質疑でも、小林参考人は、短期的には、北海道を中心として支払われる補給金の総額がふえるから、その結果、北海道の所得というのは若干ふえると思いますが、中長期的に見れば、競争が激化して酪農家の所得は低下あるいは乱高下するという懸念を述べられていました。
清水池参考人は、今まで乳製品主体だったものを飲用向けで仮にある生産者が売ることができれば、確かに一時的に所得がふえる可能性はありますと。しかしこれも、清水池参考人も、したがって飲用向け市場の競争が非常に強まってしまうことから、飲用向け乳価が下がってしまうのではないかと、そろって懸念を表明しているんです。
大臣、ちょっと、もう一度確認したいんですけれども、一体どの層の生産者が所得が上がるのか、押しなべて広く所得が向上すると考えているのか、いかがですか。
○山本(有)国務大臣
最初は上がり下がりまちまちだというように思いますが、長期的には私は全体の酪農家の所得が向上できるというように思っております。
翻って、指定生乳団体の機能というものの根本は、まず生乳自体が腐敗しやすい、そして貯蔵性がない液体。鮮度を命とする生乳は、在庫性が希薄なフロー市場を形成するため、需給の不均衡は価格に大幅な変動を与える。それは、生産者の経営的負担を余儀なくしてしまう、ひいては消費の伸びを阻害し、乳業者にも負担になるということが基本にあるというように思います。
そのことにおいて、自己販売や部分委託というものを認めることによりまして、いわば個性的商品の開発や消費者ニーズに対応することができるというようなことにつながっていくわけでございまして、現実に、例えば岩手県の岩泉乳業の、今設備投資をされておりますけれども、あのヨーグルトについては大変な消費の伸びがありますし、最近の機能性食品の中のヨーグルトの実績というのは急速に伸びております。
というように、さまざまな形で乳製品が今消費者ニーズに対応しているわけでございまして、今のままで全量買い取り、全量委託ということをしますと、まずは、指定団体から個性あるそういう製品をつくり出すためにはまたそこから買わなきゃならぬというような話にもなってくるわけでございまして、自己販売とか新しい付加価値をつけた乳製品、そういったものを研究開発していく意欲ある農業者に対して、新しい考え方、取り組みでやることによって、価格の上昇の幅が見られるということでございます。
ひいては、輸送コストの削減等を努力いただけるわけでございますので、全体として生産者に利益が出てくる構図になっていくというように期待しているところでございます。
○畠山委員
総じて、理屈の範囲というより願望の範囲と受けとめました。
中長期的に、先ほど参考人の答弁を引いたように、競争的な環境が進めば必ず価格が下がっていくことは、一般的には予想されることだと思います。そのことを指摘して、私は、結果として所得向上に資することはないということは述べておきたいと思っております。
部分委託の上限撤廃についても、ちょっと時間がないので、急いで確認しておきたいと思います。
現状は日量三トンの上限となっていますが、改めて、なぜ三トンとしているのか、その理由とともに、上限いっぱいまで活用しているという実績があるのかについて、確認のため答弁を求めます。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
酪農家の創意工夫によります六次産業化等の取り組みを支援する観点から、生乳受託販売の弾力化を順次実施してまいりました。
指定団体に生乳を出荷しつつ、その一部につきまして、みずから処理して牛乳・乳製品を製造、販売できる仕組み、自家製造につきましては、酪農の一日当たりの平均の乳量、また、その規模拡大は今後も進展すると見込まれることを踏まえて、平成二十六年に日量三トンまで上限を拡大したところでございます。
取り組み件数としては、直近で二百二十九件というふうになってございます。
○畠山委員
それで、上限が撤廃されることで、これまでも、特色ある牛乳だとか自家加工とか、要件はありましたが、これも含めて撤廃されるということですから、高く売れる委託外の飲用向け販売に生産者が集中することもあり得るのではないか、そして、いわゆるいいとこ取りの可能性も指摘をされてきました。
省令等でいわゆるいいとこ取りを防ぐと説明はしてきたわけですが、例示として出されている五項目で本当に防げるかどうかというのは疑問です。例えば季節変動あるいは売れ残り、これらの取引を拒否できるとしますが、それをどう判断するのかという点では、参考人質疑でも疑問が投げかけられていました。農水省として十分な説明をする責任があるかと思います。
そもそもは、需給が崩れることが一番の心配です。仮に、需給に支障を与えるおそれ、こういうような文言が省令に入っていかないと担保になっていかないのではないかとの指摘もあります。いいとこ取りを防がないと、指定団体に全量出荷している生産者の方が結局は需給調整を引き受けるという構図にもなっていきます。これは不公平が生じます。
どのように省令に書き込むのか、現時点での考えを改めてこの場で答弁してください。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
部分委託自体は、そのような御懸念もあるので省令の方で書きたいと思っておりますが、そういう部分委託を利用して、いろいろな創意工夫でお互い発展していくということにもつながるんじゃないかとも思っております。
その具体的な省令の中身というか、省令の文言そのものではございませんけれども、考え方としては、夏場に減少し冬場に増加するという生乳生産の季節変動を超えて委託または買い取りの申し出の数量が変動する取引である場合、例えば年末年始のみに指定事業者へ委託等を行うような短期間の取引である場合、自分の生乳は飲用向けに売ってほしいというような特定の用途仕向けへの販売を条件とする場合、生乳の品質が指定事業者の定める統一基準を満たさないものである場合、生産した生乳のうち売れ残ったものを持ち込むような取引を求められる場合に拒否できることとしたいというふうに考えてございまして、関係者と調整しながら、できるだけ速やかに定めた上で省令化していきたいというふうに考えてございます。
○畠山委員
規制改革推進会議がフォローアップするなどとも言われていますが、そちらの方を向くのでなく、やはり生産者の方を向いたことが求められているということは指摘しておきたいと思います。
これらのことで心配される問題を突き詰めていくと、先ほども述べた需給の安定が一つの課題だと思います。
参考人質疑でも、法の目的に需給の安定が盛り込まれたことには評価の声が上がりました。ですが、これを実現する年間販売計画での実効性、その担保について疑問などの声が上がったこともやはり言っておかなければいけないと思います。
新たに参入する事業者は、多分に飲用主体の販売となることが予想されます。飲用向けの競争が激しくなる可能性があります。新しい事業者が、大手資本に囲い込まれるというのか連携するというのか、そうなった場合には、さらに激しさが増すおそれもあります。
片方の事業者に飲用向けが偏れば、もう一方が加工用の団体として調整することにならざるを得ません。それは多分、現在の指定団体が担うことが予想されます。そうなると、先ほど述べたように、指定団体へ全量委託している生産者には不公平な環境になるでしょう。
国が年間販売計画にかかわってさまざま認めていくに当たって、このような事態を防ぐことはもちろん念頭にはあると思いますが、この場でも改めて答弁を求めておきます。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
まず、そもそもの話として、現在、指定団体以外のところというのは補給金の交付を受けられないので、全て飲用に流れているというふうに理解をしてございます。
今回、その補給金を、指定団体以外の計画的に加工に回す方に交付することによって、これらの、特に冬場の不需要期の廉価販売等には歯どめをかけることができる、そういう効果を狙っているところでございます。
年間販売計画につきましては、先生御指摘のとおり、農林水産省令で定める基準に適合するか、また、あわせて提出される乳業者との契約書の写し等とのそごがないか等を確認した上で交付対象数量を通知いたしますし、かつ、それをまたきちっと確認するということで、飲用向けと乳製品向けの調整の実効性が担保される仕組みとしているところでございます。
○畠山委員
私が述べたような事態を防ごうとするならば、片っ方ずつの団体に偏りが出ないような、例えば用途別の比率を入れるような必要などもあるのではないのでしょうか。
私、この法案に賛成の立場で言っているわけではないんだけれども、例えば北海道でいえば、飲用二割、乳製品八割です。同じような形でこの比率をそれぞれにしていかないと、公平な環境とはとても言えないし、先ほど述べたような事態が起こり得る環境が、条件が生まれてしまうと思うんです。そういうような考えはありませんか。
○大野政府参考人
お答え申し上げます。
この法案におきまして、補給金の交付に当たりましては、農林水産大臣が、提出された年間販売計画を確認することとしておりますけれども、この際、その計画が、年間を通じた用途別の需要に基づく安定取引であるといった省令で定める基準に適合するものであると認める場合に、年間販売計画に記載のあった数量を参考に、対象事業者ごとの交付対象数量を算出し、通知することにしております。
このことによりまして、乳製品の需要に応じた供給が確認されますことから、一律の乳製品への仕向け比率を設定する必要はないものと考えております。
また、さまざまな創意工夫を行う事業者がおられると想定される中で、地域ごとに一律の乳製品仕向け比率を要件とすることは、消費者ニーズ等需要に応じた仕向けを支援する点からも適当ではないというふうに考えております。
こうした考えを念頭に、具体的な基準は、国会での御審議も踏まえ、関係の方々の御意見を賜りながら、引き続き検討を行ってまいりたいと考えております。
○畠山委員
今の答弁では、バランスがとれないことになりかねないと思いますよ。先ほど北海道の例は出しましたけれども、季節変動もそうだし、地域ごとにもさまざまな特徴があるわけですから、それを踏まえないと心配です。このことを改めて指摘をしておきたいと思います。
それで、最後になるかと思いますが、結局、今回の改定案が、畜安法の第一条、目的規定にある畜産及びその関連産業の健全な発展を促進することになるのかということは、太い柱として大臣に伺っておきたいと思うんです。
念頭にあるのは、イギリスのミルクマーケティングボードの例であります。
中央酪農会議が昨年十二月十四日に「指定団体(制度)の重要性と指定団体制度を巡る情勢」というレポートを出しています。イギリスに視察団を送って、ミルクマーケティングボード解体の聞き取りをしている部分があるので、そのことは紹介しておきたいと思います。
デアリーUK政策部長のピーター・ドーソン氏は、ミルクサプライチェーンが不安定になったとして、多くの英国の乳業者は外国資本の乳業者に市場を明け渡したと述べておられました。六百二十頭を搾乳している酪農家、マンセル・レイモンドさんは、飲用市場への出荷志向が強まり小売業からの影響を強く受けるようになった、日本は英国と同じ過ちを繰り返してはならないとまで述べておられました。
今回の改正案は、生産者の選択の幅を広げるということが主眼です。それは、競争的環境を認めて、生産者に経営上のリスクも迫ることになると思います。それを理解した上で生産に励む方がいるのも、それは生産者の選択だとおっしゃるでしょう。
しかし、国がやるべきは、安定的な食料生産と供給です。競争的環境が広がることで、需給の安定が崩れて、押しなべて生産者の所得向上にはならない、ひいては離農、離脱のきっかけになるようではだめです。ミルクマーケティングボード解体は、反面教師として私たちにそのことを教えていると思います。
そこで、法の第一条、目的規定にある畜産及びその関連産業の健全な発展、これが今回の競争的環境を持ち込むことで本当に健全な発展と言えるのかどうか、大臣の答弁を最後に求めます。
○山本(有)国務大臣
一九九四年のMMBの解体の後、乳価が低迷し、酪農家の手取り収入がイギリスでは著しく落ちるという結果になり、いわば生産者が買いたたかれるという現状がございます。
そういうことを踏まえて、今回、そのようなことのないような、需給のしっかりした安定的な運営というものに注力してきたのが今回の法案だというように考えております。
現在、平成二十七年で一万八千戸の酪農家でございますが、十年で三分の二になってきているわけでございまして、この酪農家の皆さんの所得向上というのは、安定的な日本の酪農というものの位置づけの上で非常に重要だというように考えております。
先ほど答弁で、制度当初、まちまち所得向上というように申し上げましたが、誤解のないようにもう一回答弁いたしますと、より創意工夫する経営者はより高い所得を得ることができるという趣旨でございますし、また、生乳一辺倒の今のいわばアウトサイダーの皆さんが補給金を得られるように対象範囲を拡大しますと、生乳の需給が締まってくるわけでございまして、その意味において、我々は、安定的な生産者の運営ができるというように思っております。
一方で、消費者ニーズが多様化しております。他方で創意工夫もしようという酪農家も多くなってきたわけでございます。そんなことを考えていきますと、この法案は当然の時代の要求ではないかというように思っております。
そして、生産者の生乳の仕向け先の選択肢が広がって、みずから生産した生乳をブランド化して加工、販売する取り組み、あるいは創意工夫による所得向上の機会、そして、現在の指定団体である農協、農協連が生産者選択に応えるため流通コストの削減やあるいは乳価交渉の努力、こういうことをやっていただくことによりまして、さらに今回の改正で、需給状況に応じた乳製品の安定供給そして畜産経営の安定、こういったことによって、日本の畜産あるいは関連産業が健全に発展するようにつなげていきたいというように思っております。
○畠山委員
時間ですから終わりますけれども、時代の要請として、今回の議論の出発点は、規制改革会議の乱暴な提案だったわけでした。バター不足を理由に持ち出しながらその解消は別だと認めたようなことまで報道されて、こんな無責任なことは到底許されないと私は思っています。
朝から晩まで働きづめの酪農家に対して、本当に何たる無責任なことか。農政の大もとの方向性から転換すべきであることを強調して、質問を終わります。

第193回国会 農林水産委員会 第14号  平成二十九年五月二十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
四人の参考人の皆様には、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。本当に、この法案の重要性が反映してと思うんですが、非常にたくさんの御意見をお聞きしましたので、私からの質問は手短に、端的にして、できる限りお話をお聞かせいただければと思っています。
それで、四人の参考人に共通してまず聞きたいのが、この法案が生産者の所得向上にどれだけ資するかということです。
山下参考人はそもそも所得の向上性の必要がないという前提がありますけれども、理屈の問題としてどのように作用するかということを含めて四人にお聞きしたいんですが、そもそも、押しなべて生産者の所得向上になるのか。地域があるいは規模が、さまざまなことも含めて考えられますし、当面なのか中長期的なのか。さまざまなお立場から、所得向上にかかわってこの法案の果たす役割、果たさない役割について率直なことをお聞きしたいと思っています。
これは先ほど、前提が違うということもありましたので、山下参考人から御意見をいただき、その後、須藤参考人、小林参考人、清水池参考人の順でお願いしたいと思っています。
○山下参考人
もし、その所得向上が農政の目的だということであるとしても、この法案自体は所得の向上にほとんど寄与しないというふうに思っています。
実は、私の資料の九ページのところに書いているんですけれども、もし、第二指定団体、第二ホクレンというのができたとして、そうすると、生乳が第二ホクレンに行くでしょう。第二ホクレンの方がプール乳価は高いわけですね。ホクレンの方が全部やっているとすると、加工向け乳代が全体のプール乳価の水準を下げるわけですね。飲用向けを主体にして第二ホクレンというのができるとすれば、それは、高いプール乳価が、飲用向け乳価がほとんどプール乳価になりますから、百円ぐらいの乳代になるわけですね。今でいくと、もっと超えているんですかね。そうすると、八十円ぐらいのプール乳価をホクレンに出してホクレンからもらうよりも、百円のプール乳価をもらった方が有利だということで、生乳はホクレンから第二指定団体に流れていくと思います。
ところが、これは、全体の生乳の需給、飲用向けと加工向けの比率が変わらないということであれば、全体の北海道の四百万トン近い生乳の配分が第二指定団体とホクレンの間で変わっていくだけであって、全体の飲用向けの比率が上がらない限り、トータルとしての酪農の所得の向上にはつながらないというふうに思います。
○須藤参考人
今、牛乳が本当に足らないんですね。ということであると、私たちが、幾らやめる人の分を法人経営、大規模経営がサポートしても、追っつかないんですね。という中で、今後五年後、十年後、もっと牛乳が減っちゃって、本当に価格がどんと上がるのか。こういう需給調整の中で、安定化というのが最大の要因でございます、大事なことです。
しかしながら、これだけ牛乳が減って、ないということであると、加工に回す牛乳も当然少ないわけでございます。となると、本当に、酪農家は、牛乳だけではなくて、個体販売というものが大変今景気がようございまして、それで大変もうかっているように見えております。しかしながら、本当は牛乳屋さんなんですね。ですから、牛乳がいかに利益を生まないと、酪農家は継続ができないわけでございます。大変、個体販売というのは一過性のものが強いわけでございまして、いつまた安くなるかというのはわかりません。
今、酪農家が減って、牛を生産する農家が当然減っているわけでございます。ですから、牛も足らないんです。ですから、そういう悪循環が今つながって連鎖が起きて、こんなに牛が高いんです。
酪農は、肉牛屋さん、肥育屋さんの下請もしております。酪農の中で、和牛だとかF1と言われる一代交雑種も酪農家が一生懸命つくっております。となりますと、酪農というのがなくてはならない。それは、肉牛屋さんも困るんです。となりますと、同じ牛屋さんですけれども、お互いにリンクして、ともにウイン・ウインの関係になっていかないと所得向上は望めません。
ですから、私たちは、今、景気がいいお肉の方にシフトしている人が多いわけでございまして、牛乳はそんなに搾らなくてもいいや、まあまあでいいや、もう少しこの高いお肉で稼ごうというのが、今、日本の酪農家のスタイルです。これがどこまで続くのかわかりませんけれども、酪農が衰退している中で、今、減少が起きているわけでございます。だから、そこを何とかしないと右肩上がりにはなりません。酪農家がふえていかなければ肥育屋さんもふえないんです。そういう循環をどこかで断ち切らないと私は難しいと思っています。
ですから、この法案がもしそれに寄与することであれば、下支えをしてくれるとなれば、ほかにすがるものがございませんから、ぜひひとつやっていただかざるを得ないかなというふうに私は正直思っております。
以上です。
○小林参考人
御質問ありがとうございました。
最初に、酪農所得の現状について事実確認をしたいと思うんですが、一千万円あるじゃないかというお話があったんですが、これは多分北海道の酪農家のことだと思うんですが、ただ、これも、大体酪農家は二人半ぐらいの方が働いてやっておりますので、一人当たりにすると四百万円ということで、それほど高いとは思わないんですね。
もう一つ、事実認識として、統計を見ますと、平成十二年ぐらいまでのいわゆる不足払いがきちっと機能していたころまでは、一キログラム当たりは右上がりに上がってきて、それと同時に規模拡大がありましたので、総所得は上がってきております。その後、制度改革等がありまして、酪農家の所得というのは、結構、右下がり、あるいは変動しているという状況で、最初申し上げましたように、平成二十年は一時間当たりの所得が七百六十六円、世帯全体で四百五十万円、そういう所得までに落ちてしまったという問題があります。
そういう状況があらわれてしまったら、そこで酪農家の方はやめてしまう、やめてしまったらそれを回復するというのは非常に難しいということです。ですから、セーフティーネットというものをぜひ入れていただきたいということを申し上げているわけです。
ですから、所得が高いときは何も所得を補填するようなものは要らないわけですけれども、そういった所得が非常に急激に落ち込むようなときにちゃんとしたセーフティーネットがあるということで、安心して、後継者ですとかあるいは若い新規参入者が酪農に参入できるというような環境をつくっていただきたいということが一つです。
やはり後継者が、価格が多いというのは、所得が多い、規模が大きいというところとパラレルですので、やはり所得というものは重要だというふうに思っております。
最近は、一キロ当たり所得はおっこっています。これは乳価が上がっておるんですけれども、コストも上がっているということで、結果的には、その差額である所得が下がっているということであります。
今は上がっているというお話がありました。これも今、須藤参考人の方から御説明があったように、個体販売が異常に高くなっているということで、いわば酪農家が一息ついているという状況があります。ただ、これは異常であって、非常に問題がある状況であるというふうに考えています。九十万、百万円のはらみの牛を買って、その後、どうなるのかということがあります。
もう一つ、酪農の委員会ですけれども、肉牛経営、これも酪農がリンクしていることですけれども、酪農経営が今、子牛は一時的な個体販売価格の高騰で潤っていますが、こんなことが未来永劫続くということは誰も考えていません。ですから、この時期にもうやめちゃおうという農家の方も結構いますし、一番問題なのは、肥育経営が、あと二年して、八十万、九十万で買った子牛を幾らで売れるのか、百二十万、三十万で本当に売れるのか。そのときに、一体、どういうことが日本で肥育牛経営に起こるのか、非常に大きな問題だと思います。
日本の中から肥育牛経営がなくなってしまうというのはちょっとオーバーかもしれませんが、そのくらいの問題があって、それに対しての対処というのがなっていないのではないか。つまり、TPP絡みで、新マルキンですとか豚マルキンが法制化されるのを見送られているというふうに聞いておりますが、今やらなければ、二年後、間に合わないわけですね。そのときにどうなるのかということを本当に心配しております。
先ほどの御質問、この改定案が酪農家の所得に寄与するのかどうかということだったと思うんですが、短期的には、北海道を中心として支払われる補給金の総額というのはふえますから、その結果、北海道の所得というのは若干ふえると思いますが、中長期的に見ると、繰り返し申しますように、指定生乳生産者団体制度が崩れることによって競争が激化し、結果的には、酪農家の所得は低下あるいは乱高下するという状況になってしまうのではないかというふうに思います。
以上です。
○清水池参考人
御質問ありがとうございます。お答えいたします。
今回の改正法案の中身で制度を変えても、生産者の所得が押しなべて上がるということにはならないと思います。当然ながら、この制度は所得補償制度でございませんので、そういう効果はありません。一部の生産者の所得を上げる効果はあるというふうには思いますけれども、そうでない人の方が多いというふうにも思っております。
今回の制度改正は、要は、生産者の販売選択肢をふやすということがポイントだと思うんですけれども、その場合に、自分で乳製品を加工するか、あるいはメーカーと直接つながって乳製品を加工するという方法がまず一つあると思うんですけれども、いわゆる六次化も含むことですが、これに関しては、この制度改正で特に六次化がしやすくなるわけでは必ずしもありません。なぜなら、自家加工に関しては、今の部分委託の制度でもできます。
あと、これからの乳製品の加工で非常に大事なのはチーズだと私は思っておりますけれども、山下参考人も言われておりましたが、チーズに関しては、共販が非常にチーズ乳価を安く供給しておりますので、むしろ、その共販の中にとどまった状態で、共販から買いながらチーズをつくった方が非常に有利なわけですね。
ですから、北海道にも非常にいわゆる小規模なチーズ工房がふえてきておりまして、技術もかなり水準も上がっています。一部はヨーロッパ並みになっているとも言われていますけれども、ですから、そういう意味でいうと、もしもそういうチーズ業者さんたちが共販の外から、共販を通さずに買うとかとなりますと、非常に高い乳価を払わないといけなくなってしまいますので、多分、多くの工房の経営が成り立たなくなるおそれがあります。ですから、むしろ共販が大事ということになります。
一方、飲用向けに関しては、先ほども少し申し上げましたけれども、今まで乳製品主体だったものを飲用向けで仮にある生産者が売ることができれば、確かに一時的に所得がふえる可能性はあります。
ですが、先ほども申し上げましたように、それによって飲用向け市場の競争が非常に強まってしまいますと飲用向け乳価が下がってしまいますので、ですから、そうしますと、結局、その所得向上の効果は長続きしないのではないかというふうに考えております。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございました。
四人の参考人に共通して、疑問符がつくというふうに理解させていただきます。所得向上に直接すぐに結びつく法案ではないというふうに私は理解しております。
それで、これは清水池参考人にお聞きしたいんですけれども、便宜上、インとアウトという言葉を使わせていただきますが、インとアウトにかかわって、もうたくさんいろいろな方々とお会いしてきていると伺っています。
それで、きょうも話になっている選択の幅を拡大するという点では、例えば日量三トンというのを今回みたいに全部撤廃するのでなく、これまでも、一トンから三トンとか、限定的というか緩やかといいますか、実情に応じる形での選択の幅の拡大ということはされてきたと思います。
生産者の創意を生かす道と、そして安定的な経営を図る、これは先ほどからある需給調整とかを含めた総体としての政策のパッケージにもかかわると思うんですが、やはりこれが両立されていくことは大事だろうと思うんです。
今回のような三トン撤廃をいきなり行うということは余りにも行き過ぎであると私は思うんですが、生産者の創意をやはり段階的に丁寧に生かしていく道ということは同時に必要だと思いますが、実際にいろいろな方々のお話を聞いていて、清水池参考人の御感想をせっかくですのでお聞かせいただければと思います。
○清水池参考人
お答えいたします。
部分委託の問題も含めて、販売選択肢の幅と全体的な安定のバランスというものが非常に重要になってくると思います。
特に、部分委託の上限撤廃に関しては、私は、ちょっとこれは、いきなり撤廃するのはやはりやり過ぎであるというふうに感じておりまして、何らかの制限を残すべきであるというふうに考えております。
実際に、部分委託の条件をどうするのかというのは政省令等で規定されるということもあるんですけれども、今の内容が余り抑制的なものになっていないので、実際に生産者と農協との契約の中で具体的には決まっていくというふうになると思うんですが、その場合、農協は組合員のための組織ですので、生産者からいろいろ要望があれば可能な限り受けていくというのがやはり農協のあり方なんですけれども、でも、そうしますと、全体の安定という意味では非常に問題が出てくる場合もあるので、それは完全に民間にその辺は任せるのではなくて、国である程度の基準を設けるのがやはり妥当であろうというふうに考えております。
いろいろな方とお話ししておりましても、要は、極端なことをお互いに望んでいるわけではなくて、お互いが納得できる着地点を見つけたいというふうには当然考えていらっしゃるわけですけれども、でも、それが今の状態だと、何も歯どめがない中で、ただ、ではやってくださいとなると、やはり全体としてコントロールするのが難しい状況になってしまうおそれがあるので、その辺は、ですから、一定の基準があった方がいいのではないかと考えております。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございます。
そこで、最後に、年間販売計画を国の方で定めるということについてお聞きしたいんです。これは、小林参考人と清水池参考人にお伺いします。
一言で言えば、実質、それは担保となるのか、ならないのか、この点についての所見を最後に伺えればと思います。
○小林参考人
ありがとうございました。
年間販売計画自体は重要だと思いますけれども、それが本当に担保になるかというと、計画と実績の乖離というのがどんなふうになるのかということも考えますと、ちょっとクエスチョンマークをつけたいということが率直なところでございます。
以上です。
○清水池参考人
お答えいたします。
年間販売計画に関しては、確かに、そのようなものがないと、法として需給の安定を目指すというものにならないんですけれども、先ほどの意見陳述でも申し上げましたが、計画というのはあくまでも計画にすぎません。年間計画、年間トータルでの計画はそれなりに意味があるんですけれども、月単位とかになってきますと、やはり計画からずれてくることもあります。
しかも、その事前に立てた計画を守っていれば需給が安定するのではなくて、先ほども言いましたように、予定、計画からずれてくれば、フレキシブルに変えて対応していかないといけないというのがその需給調整の難しいところなんですね。
ですから、要は、計画を守っていたから需給の安定が達成されるわけでは必ずしもないということで、だから、その辺の需給の安定を担保するという制度的な枠組みでいうと、私は不安があるというふうに考えております。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございました。
今後の質疑においても非常に重要なお話をお聞きすることができたと思っていますので、充実した審議に向けていきたいということを最後に述べまして、感謝とともに質問を終えたいと思います。
ありがとうございました。

第193回国会 経済産業委員会 第14号  平成二十九年五月十九日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、中小企業の経営の改善発達を促進するための中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。
信用保証協会が、信用力、担保力の弱い中小企業の公的保証人として金融機関との橋渡しを行う信用補完制度を、中小企業の四割、約百三十六万者が利用しています。その八割が従業員五人以下の小企業であることは、担保に依存しがちな民間金融機関が中小企業向け融資を減らしてきた中で、この制度が、まさに資金繰りの命綱としての役割を果たしてきたことを示しています。
中でも、取引先の倒産や災害に見舞われた特定中小企業を対象としたセーフティーネット保証は、突発的な経営環境悪化に苦しむ中小企業にとって、まさに最後のとりでともいうべき存在です。
本法案は、特別小口保証や創業保証の融資上限の引き上げという拡充策と引きかえに、セーフティーネット保証の大宗を占める五号保証を全額保証から部分保証へと大改悪しようとするものであり、断じて容認できません。
二〇〇七年十月の責任共有制度導入以来、保証割合が引き下げられた一般保証の利用は大きく減少しています。緊急保証として全業種を対象としたセーフティーネット保証五号により、一万六千先を超える倒産が回避されたことをきちんと評価すべきです。
民間金融機関による事業性評価の取り組みや経営者保証ガイドラインの活用の取り組みも緒についたばかりの今、セーフティーネット保証五号に部分保証を持ち込むことは、中小企業の資金繰りの命綱を断つことになります。
さらに問題なのは、これを突破口に、特別小口や他のセーフティーネット保証にも部分保証が導入される危険性が一層高まることです。
責任共有制度要綱では、特別小口などを、当面の間、部分保証の対象外としているにすぎません。経産省は、部分保証が原則で全額保証は例外との方針を掲げており、今後、部分保証の対象拡大や、保証割合の引き下げに向けた議論が加速することは明らかです。
セーフティーネット保証も含め信用保証制度全体の拡充を、これが中小・小規模事業者の切実な声です。官公需の拡大による仕事起こし、強化された下請二法の運用基準の実効性を高めることにより、地域経済と雇用を必死で支える中小・小規模事業者を支える方向へ施策を大きく転換すべきであることを最後に指摘し、反対討論といたします。

第193回国会 農林水産委員会 第13号  平成二十九年五月十八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
畜産、酪農をめぐる情勢にかかわって、法案の質疑に入る前に、TPPと日・EUのEPAにかかわって質問をしておきたいと思います。
まず、TPPです。
二十一日に開かれるベトナムでの閣僚会合において、日本は米国を除く十一カ国によるTPPの年内大筋合意を提案するとの報道がありました。また、共同声明の原案も準備されていると報道もあります。さらに、きょうの日経新聞で、ニュージーランドの首相が「日本と推進 強調」という表題がつきまして、品目別の関税など、合意した内容の再交渉はしないとの明言もあったということなどを含めて報じられてもおります。
進展しているわけですけれども、今ありました報道の中身も含めて事実なのかどうか、まず現状について報告していただきたいと思っています。
○高田政府参考人
お答えいたします。
ベトナムで開催される予定のTPP閣僚会合では、十一カ国が結束を維持しつつ、TPPの今後の方向性について明確に打ち出すとともに、ある程度の検討の時間軸を示すことも重要であると考えているところでございます。
いずれにしても、こうした点も含めて、ハノイでの閣僚会合において各国としっかり議論してまいりたいと考えているところでございます。
○畠山委員
年内の大筋合意を目指すという方針ですか。
○高田政府参考人
お答えいたします。
現時点で閣僚会合における議論の内容や結論について、予断を持ってお答えできるものではないと考えているところでございます。
○畠山委員
今後も引き続き質問していきたいわけですが、一つ、事実で確認したいことがあります。
関連法案で、昨年成立していますが、マルキン法など十一本の法案があったと思います。これは十一カ国によるTPPの発効でも関連法は施行されるということでよろしいんですね。確認しておきます。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
TPPの今後につきましては、今週末のハノイにおけますTPP閣僚会合におきまして、あらゆる選択肢を排除せずに各国と議論していくということで、今内閣官房からも答弁がございました。
御指摘のTPPの関連法の取り扱いにつきましても、TPPの今後についてこれから議論する段階であり、予断を持ってお答えすることはできないことは御理解いただきたいと存じます。
○畠山委員
いや、今後の話じゃなくて、もう関連法として昨年成立しているわけで、そこには、十一カ国であろうが十カ国であろうが、そういった国の数は前提となっていないはずです。
私、単純に事実だけを確認して聞いただけなんですけれども、そんな答弁になるとは思っていませんでしたが、改めて、いや、この後何かこれの問題で追及するというものじゃなく、ただ事実として確認したかっただけなんですが、十一カ国の合意でもこれはそうしたら発効しない可能性があるということなんですか。
○枝元政府参考人
関連法につきましては、TPP協定の施行ということになってございます。
このTPPにつきまして、これから閣僚会合等におきまして、例えば米国がTPPに戻ってくることも含め、あらゆる選択肢を排除せずに各国と議論していくことになるということでございます。そういう意味では、TPP関連法の取り扱いにつきましては、TPPの今後についての議論を踏まえて対応を考えていくということだろうと思います。
○畠山委員
いや、対応を考える話ではなくて、単純に、十一カ国のときで施行日になるんでしょう、それだけの話。これは内閣府に聞いたらいいんですか、そうしたら。今、難しいことは何も聞いていないですよ。
○高田政府参考人
お答えいたします。
昨年御審議いただいて成立しました関連法は、TPP協定発効の日が施行日になっていると承知しております。
○畠山委員
いや、だから、十一カ国で発効してもそれはそうなるんですよねというだけの確認なんですが、そういうことですよね。
○高田政府参考人
お答えいたします。
質問の十一カ国の国がどこを指しておるかちょっとわからないんですけれども、TPP協定の、昨年御承認いただいた協定に基づいて、六カ国以上ですとかGDPの何%以上とかいうのを満たした場合にはTPP協定が発効いたします。その場合には関連法案が発効するということでございます。
○畠山委員
ということは、アメリカ抜きでは発効しないということでよろしいんですか。
○高田政府参考人
昨年御審議いただきまして成立しましたTPP協定と関連法につきましては、先ほど御説明したとおりでございます。
御指摘の十一カ国というものにつきましては、関連法の取り扱いにつきましては、TPPの今後についてこれから議論する段階であり、予断を持ってお答えすることはできないことを御理解いただければと思います。
○畠山委員
ちょっと、ますますわからなくなってきましたよ、そうしたら。
十一カ国ではTPPというのは発効できないということですか。そうなりますよね。一体何のためにそうしたら今から審議して、どういう方針で臨むんですか。もう一回答弁してください。
○高田政府参考人
お答えいたします。
TPPにつきましては、我が国が持つ求心力を生かしながら各国と緊密に連携して、あらゆる選択肢を排除せずにというのが、何がベストか主導的に議論を進めていくのが我が国の立場でございますので、現段階でこういうものであるというふうに答弁することは差し控えたいと思います。
先ほどの、昨年成立した法律あるいは協定の発効というのは、その協定の発効条件、また、それに基づきまして法律が発効する法律の規定になっているところでございます。
○山本(有)国務大臣
マルキンにつきましては、十二カ国のTPP合意、そしてこれが発効しますと、これは直ちに改正して、実行に移したいというように考えております。
ただ、十一カ国になりますと、十二カ国と全くイコールの合意内容ではないという認識でございますから、直ちにこれを発効すると今の段階で言えるものではありません。しかし、大方そうなるであろうというような見通しをつけながら対処をしているところでございます。
○畠山委員
まさかここまで話が発展すると思っていなかったんですが、そうであるならば、後で議事録をきちんと精査したいと思うんですけれども、一つこれは確認しておきたいと思います。
昨年に議論され、可決されたものにおいてという前提で話をしました。ということは、今これから行われる議論について、新たな状況のもとで新しく法律が議論される可能性があるということを含んだ答弁ということでよろしいですか。
○高田政府参考人
お答えいたします。
繰り返しますが、昨年成立しました関連法、あるいは御承認いただきました協定につきましては、その規定に基づいて、発効すれば施行されるというものでございます。
今後につきましては、これから議論するものでございますので、現段階において予断を持ってお答えすることは差し控えたいと思います。
○畠山委員
では、これはもう一回確認します。
ということは、今後、新たな枠組みということも否定しないということでよろしいですね。
○高田政府参考人
お答えいたします。
我が国の立場は、各国と緊密に連携して、あらゆる選択肢を排除せずにというのが現段階での我が国の立場でございます。
○畠山委員
いや、もうそれ以上答弁は出てこないんでしょうか。根本的に、私、関連法のことを聞きたくてこんなに準備していたわけではないんですけれども、今後のTPPの考え方、そして国の方針ということがさらにわからなくなりましたよ。全然理解できません。
まだ答弁ありますか。同じ答弁だったら要りません。違うことを言うんだったら、答弁してください。
○高田政府参考人
お答えいたします。
今後につきましてでございますけれども、我が国が持つ求心力を生かしながら各国と緊密に連携し、あらゆる選択肢を排除せずに、何がベストか主導的に議論を進めていくのが我が国の立場でございます。
米国の離脱通知を受けても、モメンタムを失わずに、アジア太平洋地域に自由で公正な経済圏をつくるため、TPPで合意した高いレベルをどのように実現していくか、我が国が主導して各国と議論していきたいと考えているところでございますが、具体的にどうなるかにつきましては、現段階で予断を持ってお答えするのは差し控えたいと思います。
○畠山委員
いや、だめですよ。全くだめな答弁ですよ、それは。求めてもいないし、違うことを言ってくださいと言ったじゃないですか。
私、こんなに長くなると思わなくて、畜安法の審議をしたいんですよ。ここでやめて、次の話に進みますけれども……(齋藤副大臣「いいですか、答えて」と呼ぶ)登録していないんです、そもそも。ただ、整合性ある答弁でしてもらえますか。それなら齋藤副大臣を、登録していませんが、指名してよろしいでしょうか。委員長にお任せします。
○北村委員長
では、齋藤農林水産副大臣。
○齋藤副大臣
済みません、お許しが出たので答弁させていただきます。
TPP11なるものが、今農林水産省として、どういうものになるかわかりません。そして、それが仮に合意した場合には、その条文そのものも国会で再度承認をしていただくことが必要だというのが今外務省から聞いている話であります。
そういう姿がはっきりした時点で対策についてどうするかというのは固まってくるものであって、今の時点では、累次答弁させていただいておりますように、あらゆる選択肢を排除せずに、とりあえず交渉に臨むということだろうと思っております。
御理解いただけたらありがたいと思います。
○畠山委員
改めて議事録で精査したいと思いますが、新しい枠組みという、法律も含めて、可能性があり得ると認識しました。
それで、予定していたこと、質問があったんですけれども、少し飛ばします。
これは通告していなかったんですけれども、TPPにかかわって、きょうの日農ですけれども、農水省として、先日、TPP発効の場合、「乳製品輸入枠の数量や、牛肉などのセーフガードの発動水準を変更する必要性があるとの考えを明らかにした。」との報道がありました。
乳製品でいえば、生乳換算で七万トンですから、アメリカが抜けたとしたら、その分本当は引いて数万数千トンとかいうことにならなきゃいけないはずなんですけれども、しかし、それが引かずに七万トンのままだとして、アメリカと今後FTAがどうなるかは否定もされていませんし、新たなアメリカとの輸入枠がつくられれば、七万トンプラス日米の分、アメリカからの分ということは理屈としてあり得るわけです。これはセーフガードの発動基準にも同じ考え方となると思います。
今までの話も含めて、私は本当は、結局TPPを十一カ国でやるときにも試算は必要ではないのかということを求める質問は通告していたんです。きょう、朝、このような報道も出ました。そういったことも含めて、一体、農水省として、今後の方針については齋藤副大臣が述べたとおりかもしれませんが、与えられるであろう農産物への影響、そして対策について考えていることをちょっと総まとめで、これは大臣、答弁していただけますか。できますか。
○水田政府参考人
お答えいたします。
TPPの今後につきましては、まさに今月二十一日のハノイでのTPP関係閣僚会議におきまして、米国がTPPに戻ってくることも含め、あらゆる選択肢を排除せず、各国と議論していくこととなると承知しております。
その内容や結論について、米国抜きといったような点も含め、予断を持ってお答えすることは差し控えたいということではございますが、その上で、なお申し上げるとすれば、TPP合意におきましては、委員御指摘のアメリカを含むTPP署名国が共通に利用できる関税割り当てのほか、アメリカを含むTPP署名国が対象のセーフガードがございます。
委員御指摘のようなものがございまして、これは、アメリカからの輸入も含んだ数量を前提とした制度でございます。委員御懸念の点、今御指摘いただきました。これらの取り扱いにつきましては、今後のアメリカの出方も注視しながら、我が国の農林水産業を守っていく観点からしっかりと対応していく必要があるというふうに認識をしているところでございます。
○畠山委員
畜安法もそうですけれども、しっかり頑張りますという答弁が繰り返されるわけですが、TPPのときも、牛乳・乳製品は約百九十八億円から二百九十一億円という試算なども生産減少額として出しているわけですよね。
今回、今の質疑を通じて、新しく状況が変わる、枠組みが変わるということなどもどうやら検討されていることが判明しましたので、改めてこの点の本委員会への報告なり答弁を正確にきちんとしてもらうということをとりあえずこの時点では求めておきたいと思っております。
EUとのEPAは、時間の関係で省略いたします。法案にかかわった質疑を行います。
改定案の中心の一つは、現状の指定生乳生産者団体制度のもとで、全国十ある指定団体以外にも、要件を満たせば、農林水産大臣または都道府県知事が指定事業者として指名することができるとするものです。その要件のある者は、年間販売計画の提出、また、生乳の受託販売等の事業を行うところに対しての補給金の交付業務が確実に実施できる、これらが要件となっているわけです。
それで、二つのことを端的に聞いておきたいと思います。これはきょうの朝から出されていることですので、それは承知の上で質問します。
一つは、年間計画の提出や、国が助言や指導をするにしても、適切な需給調整などが図られるのかということです。
前の質問にも出ていますが、私からも改めて確認します。国の助言や指導に従わない、従えない場合に、罰則規定などはどうなっているのでしょうか。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
改正法案の二十八条に、農林水産大臣が酪農経営の安定を図る観点から必要な指導及び助言を行うことができるということとなっておりまして、個別に判断していくことになります。
一般的に、行政指導の内容は、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものでございます。制度の運用については、当該事業者のみならず、取引先の乳業者、関係する生産者とも連携をとりながら、本法案の目的である需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保、畜産経営の安定が図られるように、相手方の協力を得られるように対応していきたいというふうに思ってございます。
罰則については、この指導助言に関してはございません。
○畠山委員
指導や助言は、相手の協力で、任意であるということですから、強制力は持たないんですよね。だから、実効性についての疑念が先ほどから出されるわけですよ。本当にできるんですか、大丈夫なんですか。
○枝元政府参考人
細かくは御説明いたしませんが、販売計画をきちっと提出いただき、それを大臣が承認し、加工に回されたということを四半期ごとに乳量も含めてきちっとチェックした上で、補給金を後払いで交付するという一連の流れになってございます。そういう過程の中で個別にさまざまな問題が出てきたときに、この指導助言ということを活用していきたいというふうに思っております。
先ほど申し上げたとおり、強制力はございませんけれども、制度の運用については、当該事業者のみならず、取引先の乳業者や関係する生産者とも連携をとりながら、本法案の目的であります需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保、畜産経営の安定が図られるように、相手方の協力を得られるように努力してまいりたいと存じます。
○畠山委員
担保として余りに弱いということを指摘しておきます。
もう一つ、この指定事業者ですけれども、要件を満たせば、株式会社でも外資であっても、そのほか何でも構いませんが、構わない、これは事実として間違いありませんね。
○枝元政府参考人
改正法案におきましては、年間販売計画を提出いただいて、要件を満たす事業者であれば、外資、株式会社を問わず制度の対象になりますけれども、補給金自体は事業者を経由して生産者に最終的に全額交付されるものでございます。
○畠山委員
それで、補給金の仕組みは今答弁あったとおりですけれども、私が指摘したいのは、それで資本力のある事業者が新たな指定団体になることも可能であるという事実です。または、新たな指定団体を資本力のある事業者が傘下におさめることも可能であるということです。
つまり、資本力を生かして乳業メーカーより安く提供することができれば、指定団体間の競争が苛烈になるおそれがあるのではないのでしょうか。そのような可能性はどう考えますか。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
今回、制度改正をいたしましても、多分、流通の中核は今の指定団体になろうかとは思ってはございます。ただ、今回の制度改正によりまして、生乳の受託販売、買い取り販売を行う事業者の方については、新規参入者であっても、既存の指定団体、また農協、農協連であっても、生産者の選択に応えるため、流通コストの削減、乳価交渉の努力を促していけるというふうに思っています。
逆に言いますと、生産者は、このような事業者の努力を踏まえて、生乳の仕向け先の選択の幅を広げることが可能となるということで、生産者にとって選択の幅が広がる仕組みにしたところでございます。
○畠山委員
生産者がそういうことを通じて所得が上がるようにということを一つの目的としているようなことは前から言ってきたわけですけれども、指定団体が幾つかできるのか、一つか二つか、予想されるのは、中核となるのは今の指定団体ということですけれども、明らかに生乳が分散していくことになれば、指定団体の価格交渉力が落ちたり、あるいは、先ほど指摘したように、資本力のある団体が低価格競争に持ち込めるとなれば、生産者の所得向上どころか、逆に所得低下を招かないのかということを指摘しておきたいと思うんです。
そこで、これは大臣に、きちんと通告もしていますのでお答えいただきたいのですが、昨年十二月十三日の参議院農水委員会で、これは自由党の森ゆうこ議員に対する答弁ですが、「最も今回期待されますところが」、これにかかわってですね、「共同販売の実を上げる乳価交渉力の強化でございます。」と答弁しています。
私は全く逆だと思うんですよ。乳価交渉力は生乳が分散されれば逆に弱まると。そういうふうに、乳価交渉力を強めるために集めてきたのが歴史であることなのだから、全く逆の答弁をしているんじゃないかと思うんですが、この答弁の心は一体何だったんですか。
○山本(有)国務大臣
いわば、一元的に集荷して多元的に販売する。また、指定団体がない時代、昭和四十一年以前、それと比較すると、指定団体がどのように、酪農の皆さん、畜産農家、酪農家の皆さんにしっかりとした体制をつくってきていただいたかということを評価した上で、指定団体制度を崩すわけではない、特に、イギリスの一九九四年のMMBの改革案というものとは全く違って、我が国においては指定団体というものの機能を守る。その機能を守るゆえんは、価格交渉力、もっと強い交渉力でもって私は酪農家の皆さんに所得を向上していただけるように頑張ってほしいという意味を込めて、四十一年の前と比較し、かつ、将来的に頑張ってほしいという意味を込めて申し上げたところでございます。
○畠山委員
つまり、乳価交渉力の強化は、大臣の激励によるものだということになるんでしょうか。頑張ってほしいという意を込めた答弁だと。
だから、理屈で言えば、先ほど私が言ったように、乳価交渉力の強化にならないのではないかというのを、理屈として答弁で求めているわけですよ。
○山本(有)国務大臣
その指導助言が空回りであったり実のないものであると、確かにそういうことになるだろうというように思っております。
したがいまして、委員が御懸念のようなことにならないように、さらに、指導助言の中身について、あるいは今後の運用について、しっかりとした補完をしてまいりたいというように思っております。
○畠山委員
でも、それが価格交渉力の強化ということとつながることがやはり私は理解ができません。
この問題、改めて、そもそも農水省の基本方針から外れてきているのではないかということを、私、最後に指摘しておきたいと思うんですよ。
一昨年、二〇一五年三月に発表された酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、酪肉近には、「生乳生産者団体の在り方と集送乳の合理化」という項目を立てて、今後の方向性を次のように書いております。「地域の関係者の合意により、生産者の収益性の向上を図るため、農業協同組合連合会、単位農協等の更なる再編整備を促すとともに、集送乳業務の指定生乳生産者団体への集約や一元管理への移行を進めるなど、指定生乳生産者団体の一層の機能強化と生乳流通コストの低減を図る。」
私、この方針に同意はしないものですが、書いていることは指定団体の機能強化です。基本方針が、酪肉近が掲げているのは指定団体の機能強化であって、全く今進んでいる道は違うんじゃないんですか。だから、私、先ほど述べたように、歴史から見ても、価格交渉力を強化するためにできたのが指定団体であって、それが、今進んでいる道は違うんじゃないかということを指摘しているわけです。
この基本方針とも含めて、全く整合性、私、違うと思いますが、いかがですか、大臣。
○山本(有)国務大臣
再度申し上げますけれども、酪農の現状は、現在の体制、制度でも、極めて厳しいものがございます。したがいまして、新規就農者を求める、特に若手の参入を促すというようなことであるならば、新しい何らかの体制整備をしていかなければならないというのは、畠山委員も同様だろうというように思います。
その中で、どうすれば所得が上がって、新規参入者を求めることができるかというと、もう一回洗い直すべきは、現行の指定団体制度、この指定団体制度で、輸送コストの削減、条件不利地域の集乳、乳価交渉力の確保、これは絶対に活用、強化しなければならない場面でございまして、また、補給金を通じて飲用向けと乳製品向けの仕向けの調整の実効性を担保する、こうしたことにおいて、私どもが考えておりますのは、農家所得がひいては上がっていく、そうしたことによって、指定団体の交渉力も、これは大勢の酪農家の皆さんから支持を受けるというようなことからして、乳業メーカーとの対比の中で、団体あるいは指定団体プラス生産者が、対乳業メーカーとの間での力関係が強くなっていくという意味では、私は、生乳の団体が価格交渉力を得るようなそういう将来像というものは、この改正でも十分得られるものだろうというように今でも思っているところでございます。
○畠山委員
今回の指定団体改革が所得改革に資するものかどうかというのは、一つの論点です。私は、先ほど述べたように、逆の方向を行くと思っています。
もう一つ、時間がないので答弁を求めませんが、言っておきます。
農水省が、先ほど言った酪肉近を確定していくまでに、審議会を含めたところで何を言ってきたか。平成二十五年、二〇一三年度の食料・農業・農村政策審議会第四回畜産部会で生産局畜産部が提出した資料では、主要な改革の方向としてこう書いています。市場実勢を反映した適正な価格形成の実現について、指定団体の広域化等による生乳共販体制の強化を図りつつ、透明性の高い公正かつ適正な価格形成システムを構築と、共販体制の強化を掲げている上に、酪農経営の安定の確保においても、生産者団体による計画生産を一層効果的に実施して、全国レベル、ブロック内での需給調整機能を強化。指定団体の機能強化を前提に、これまで農水省は、酪肉近を含めてこのような方針の積み重ねをやってきたのではありませんでしたか。
さまざまな部分委託の問題など、論点も、次回質問したいと思っています。きょうは、ここで終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第13号  平成二十九年五月十七日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょう、参考人五人の皆様には、国会の方へ足をお運びいただき、貴重な御意見をいただきましたことに、私からも心から感謝を申し上げます。ありがとうございます。
それでは早速ですけれども、質問をさせていただきたいと思います。法案にかかわることや、全体的な、中小企業と金融機関の関係などについて伺いたいと思っています。
まず法案ですけれども、今回、新たな保証として危機関連保証が設けられることになります。リーマン・ショックや東日本大震災級の大規模な経済危機、災害に対応するというものですが、適用期間が原則一年、延長できてももう一年、合計二年ということで区切られております。
この一年から二年という範囲で中小企業、小規模企業がどこまで何が回復できるか。このカバーできる実効性についての判断はどう考えたらいいかというのがあると思います。きょう午前中の質疑でも、我が党の真島議員から、一年ないし二年ということで短いのではないかという懸念の質問も行いました。
そこで、この点については細川参考人と柴田参考人に伺いたいと思いますが、私ごとで恐縮なんですけれども、私は宮城県石巻市が生まれで、高校まで育ったところなんです。今も両親や親戚が住んでいまして、三月十一日はもちろんなんですが、定期的に石巻市へ行きまして、中小企業などの実態についても、水産加工会社が中心になるのですが、話も伺ってきました。六年が過ぎましたけれども、やはり経営の大変さは続いていることは、皆さん御承知のとおりだと思います。
ある水産加工会社の例なんですけれども、グループ補助金が活用されて、新たな加工する機械なども導入することはできたんですが、やはり苦労している問題の一つに、販路の回復。失ったものをさらにまた回復するということの大変さはいつもいつも聞くわけです。震災から復旧するのに、一年や二年、間に進んだとしても、その間に失った販路であったり取引先であったり、この回復というものはなかなか大変だし、今も影響を受けているというのが現状だと思うんです。
こういうような実態を見ますと、そういうのは、業種であったり、都市部なのか沿岸部なのか、また町村部なのか、いろいろ違いはもちろんあるんでしょうけれども、今回のような危機関連保証の一年ないし二年というのは、その実効性として、東北の現状から見てどのように考えたらいいのか。
また、きょう大臣は、その後はセーフティーネットの四号を使えばいいんだみたいな答弁もあったんですが、結局そういうところの課題が、今回の危機関連保証について御所見があれば、細川参考人と柴田参考人に、地域を支える観点からお伺いしたいと思います。
○細川参考人
先ほど申し上げましたように、東日本大震災の復興支援につきましては、私どもの業務の中でも大変重要な業務として、今も基本の業務として、腰を据えてこの業務に携わっているところであります。
今回の改正につきまして、一〇〇%保証を一年に限って行うという改正が行われて、原則一年でございますが、これは、その審議会の中で、さまざまな議論の中でつくられた制度だというふうに思います。
したがいまして、そういう議論の中で積み上げられたものは大事にしたいというふうに思っておりますが、その時々の状況におきましては、中小企業庁の方でも御答弁があったと思いますが、単にこの危機関連保証だけで対応していくということではないと思いますので、状況に合わせた形で運用がしっかりなされていくというふうに私としては理解しております。
○柴田参考人
東日本の震災の危機の関係ですね。静岡県も、同じくやはりお茶の産業、そういったようなところで影響が出て、実際に対応したというようなところがあるわけですけれども、では、それがどういう状態になったら出口というふうに言えるのかというところは、やはり非常に難しい部分があると思います。
ただ、事業の中から生まれるキャッシュフロー、事業でその経常収支がプラスになってちゃんと通常の返済ができるようになるかどうかというところは、やはり、個別企業ごとに丁寧に見ていく必要があるというふうに思っております。
ですから、一律に一年とか期限を区切ってきっちり見れるというものではなくて、やはり、その期限の後に、それが、倒産企業の状態とか、あるいは融資を受けた企業のキャッシュフロー、そういったようなものを丁寧に見ながら、本当に出口という形にできるのかどうかということを判断していく必要があるんだろうというふうに思っております。
○畠山委員
ありがとうございます。
これだけの大きな規模の震災で受けた被害ですから、その後にかかる課題も複合的なんだろうと思うんですよ。
ですから、大村参考人にもちょっとかかわって、違う角度からお聞きしたいんですけれども、もちろん、こういう災害が起きたときの保証の充実ということは、あったらそれはありがたいことですし、当然ではあるのですが、今述べたように、復旧する上での課題というのは複合的で、販路の回復であったり、取引先との関係も、被災地に取引先があったりすれば、お互いに大変だったわけですから、その後どうしたらいいか、契約の実際の、また一からやり直さなければいけないとか、さまざまなことが中央会の方でも蓄積として、この間、議論や対応がされてきたと思うんです。
ですから、ちょっと法案から離れますけれども、今後、大規模災害ということは、もちろん心配がされることでありまして、災害に対する、中小企業、小規模企業の立場からしてどのような支援が求められているか。一般的なものでも構いませんので、改めてこの機会にお聞かせいただけますでしょうか。
○大村参考人
災害に対して私ども中央会では、グループ補助金が非常に役に立ったという話を聞いておりまして、また、この問題も、この間の熊本地震におきましてもまた適用していただいて、感謝申し上げるところでございます。また、対応が非常に早かったということが、中小企業にとりましては大変ありがたかったなと思っております。
災害に対する補助金その他は、本当に中小企業としては、今のところ大変感謝しております。
以上でございます。
○畠山委員
ありがとうございました。
法案にかかわっては、セーフティーネット保証第五号についても一つの焦点だと思いますので、その点もお聞きしたいと思います。
御存じのように、現行一〇〇%から八〇%に見直すとする理由として、中小企業者による経営の改善発達を促すため、銀行その他の金融機関と連携を図る旨の一環として改定されるもので、これは先ほどから既に議論があるとおりです。
この点にかかわって、村山参考人と、これも大村参考人に伺いたいと思います。この点についての基本的な考えは先ほどの意見陳述でも述べられたと思いますので、違う角度で伺いたいと思っています。
金融ワーキンググループの示した考え方にはこのような文言があります。過度に信用保証に依存すると、金融機関が行うべき借り手への経済支援が弱まり、中小企業自身の経営改善意欲が失われるとあります。古くて新しいというのか、新しくて古い問題というのか。ただ、そこはどこの程度の問題かと思うんです。
実際に、今、この文書で私が読み上げたような実態なんだろうか。そういう中小企業が果たして圧倒的多数なんだろうか。問題意識は、正確に事実を知りたいということであります。
ですから、保証割合の八〇%見直しのことは、触れることがありましたら述べていただいて結構なんですが、聞きたいのは二つです。一つは、セーフティーネット保証五号がこれまで果たしてきた役割について、改めて、そもそものところが一つと、この信用保証への過度な依存という指摘についてのお考え、この二つの受けとめをお聞かせいただければと思います。村山参考人と大村参考人でお願いいたします。
○村山参考人
今回のセーフティーネット保証五号の見直しというのは、セーフティーネット保証五号というものの意義について、問題だからそれを変えるという趣旨としては私どもは受けとめておりませんで、そこはやはり、比較的突発性が少ない、そういうようなこういう不況業種といったような分野のところにつきましては、金融機関の支援姿勢をより促す方向で改善をすべきだ、あるいは、中小企業の経営努力というものも進めていくような形で制度を改善していくべきだという観点だというふうに受けとめております。
では、その責任共有制度がそういう金融機関における支援姿勢を高めることになるのかという点についてのお話かというふうに思いますけれども、私ども、先般、責任共有制度が導入されてこの間、十年近く今たっているわけでございますけれども、その間の中で、金融機関の中で、従来からもコミュニケーションはしておきましたけれども、こうした中で、金融機関とのその案件についての議論というものがより濃密になったといいましょうか、密接になってきたという事実はこの十年余りの中では確かにあろうかと思いますし、責任、経営支援についても、ともにやっていこうということで、そういう点での効果もあったというふうに思っております。
また、今回の措置につきましては、比較的経営が不安定な小規模事業者向けには別途の措置も講じられておりますので、その辺を、それぞれの企業さんの状況に鑑みながら、私どもとしても、それぞれの事業者さんがしっかりと立ち至っていくように、しっかりと金融機関と連携しながら頑張っていくということで頑張ってまいりたいと思っております。
○大村参考人
法改正の趣旨及びその他の制度の拡充措置が講じられているということを勘案するとやむを得ないなという面もありますが、中小企業の資金調達面から考えると、保証割合が下がるということはマイナス要因だ、それは間違いないと思っております。
制度後、中小企業が円滑に資金調達を行えるよう、信用保証協会と金融機関の連携強化及び制度趣旨を踏まえ、積極的にリスクを共有するよう、しっかりと監督していただきたいと思っております。
当会としても、会員の声を数多く拾い上げて、これからもいろいろ意見を聞いた上で、提言、要望等していきたいと思っております。
○畠山委員
ありがとうございました。
責任共有制度の話が出てきましたので、少しその辺にもかかわって伺いたいことがあります。
二〇〇七年からですからもう十年になりますが、一般保証の部分保証化、責任共有制度要綱ですか、が策定された。このときにも、セーフティーネット保証と特別小口保証は対象外とされておりました。ただ、括弧、当面の間、括弧閉ずという扱いではありました。
その背景としては、やはり中小企業や小規模企業の実態があるからだと思いますし、これも先ほどからありましたように、日本の中小企業の約四割が信用保証を利用している実態にも明らかで、この五号においては九十何%でしたか、全体の中で占めている割合から見ても当然のことだと思うんです。
これは細川参考人に伺いたいと思います。小規模企業基本法には、第四条に、「小規模企業の振興に当たっては、小企業者がその経営資源を有効に活用し、その活力の向上が図られ、その円滑かつ着実な事業の運営が確保されるよう考慮されなければならない。」また、第十条には、「政府は、小規模企業の振興に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。」というふうにあります。もちろん、中小企業にも小規模企業にも資金需要はあると思います。
それで、もちろん経済産業省がしっかりやらなければいけない話ではあるんですが、この法の精神に立った上で、とりわけ小規模企業・事業者に対して有効な信用補完制度という角度についてどのようなことが考えられるか、必要と思われるか、所見をお聞かせいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○細川参考人
信用保証制度そのものにつきましては、今、制度の中でいろいろな特例措置も行われておりますし、例えば創業についての創業関連保証とか、そういう制度がありますので、それをいかに適切に運用するかということが大事だと思います。
我が公庫としましては、特に、先ほど申し上げました三つの公庫が統合した中の一つですけれども、昔の国民生活金融公庫、これは主としてやはり小規模事業者に対する融資を中心に行うということになっておりますし、その中でも、特に我々公庫としては、創業支援についてさまざまなノウハウを蓄積しておりますので、この点については、特に最近でも力を入れて取り組んでいるところであります。
特に、先ほど民間金融機関との連携の話を申し上げましたが、民間金融機関との連携の中でも特に創業の部門につきましては、我々の持っているノウハウと、それから、民間金融機関とのかかわりといかに結びつけていくかということが大事だと思います。
私どもの研究所の調査によりましても、まず公庫が出ていって、その後金融機関が融資をしていく、立ち上げのときは我が公庫の創業融資支援を受けながら、事業が回転し出すと、その回転資金をできるだけ民間から出していくということが調査の上でもはっきりしてきておりますので、その辺の連携についてはやはり有効なのではないかというふうに思っておりますので、そういうことも、実際上の運用に当たってはよく頭に置いてしっかり対応していきたいというふうに思っております。
○畠山委員
今かかわって大村参考人にも同じようなことをお聞きしたいと思っておりました。
我が国においては、さまざまな中小企業、小規模企業にかかわる法律はありますし、EUなどともよく比較をしまして、とりわけ小規模事業などが地域の産業、社会において重要な役割を果たしているということは、皆共有する課題だと思います。
そして、今、細川参考人が話された形で、さまざまな資金のやりくりということが発展の一つの大きな鍵であるということだと思うんですが、改めて大村参考人の立場から、金融機関であったり公庫であったり、こういうような状況にお考えのことがありましたら一言お聞かせいただけたら、言いにくいことがあるかもしれませんけれども、こういう機会ですので、御所見をいただけたらありがたいなと思っています。
○大村参考人
私個人としては余りそういう経験がないのでちょっとお話しできないんですが、中央会でもそういう問題がないわけじゃないんですが、話し合われる場が今のところ非常に少ないんですよ。先ほどもちょっとお話ししたんですが、件数が非常に少ないということで、実際はもっとあるかもわからないんですが、委員会等でも余り話が出ないので、極力こういうことはもっと積極的に聞くようにして、発表したいと思っております。
○畠山委員
ありがとうございました。
小林参考人に伺わさせていただきます。事前に調査室が用意した資料などを読みまして、金融ワーキンググループなどでの参考人の御発言も読ませていただきました。見解は全て一致するものではもちろんありませんけれども、ただ、きょうも発言の中心テーマでありました、いわゆる貸し手、借り手の信頼関係についての重要性ということでは、その指摘は大事な点だろうというふうに私ももちろん共有するものです。
それで、いろいろなケースがあるのでそれぞれだと思うんですが、ただ、きょう午前中に我が党の真島議員があるクリーニング屋さんのケースを紹介いたしまして、これは阪神・淡路大震災のために店舗兼住宅が全壊された方なんですけれども、売り上げが減って、長男が週三日アルバイトをして、家族が力を合わせて、借り入れを条件変更しながら必死に返済を続けてきた。典型的な、本当に小規模事業者なんだろうと思うんです。ところが、御主人が亡くなったときに銀行と信用保証協会が、代位弁済の手続を進めたいという連絡が入った。奥さんや長男からは商売を続けて返済する意思があることを伝えて、この手続をとめさせたなどのことがありました。
どうしても私たち、こういう場になると金融機関に対してなかなか厳しいことを言う機会が多いんですけれども、ただ、現場ではやはりこういうことが、実際はいろいろなケースがあるんだろうと思いますが、あり得るんですよ。
その中で信頼関係をつくるということはもちろん大事なわけでありまして、昨年六月に、金融庁の監督局、中小企業庁から出された総合的な監督指針においても、生活基盤は損なわれないようにやはりしなければならないという当然の指摘がありました。
これも、参考人が先ほど述べられたように、金融庁の調査などでも、小規模企業なんか、回答された企業のうちの特に四五%が、メーンバンクに経営上の対策を相談していないという結果があったことは私も驚きだったんです。ここまでなのかという率直な感想を持ちました。借り手からすれば、何を言われるかという不安がつきまとうのは当然でありまして、小規模ならなおさらだと思います。
それで、きょうはどちらかというと借り手側についての発言も多かったと思いますが、国の監督であったり、貸し手側に対する信頼関係構築について、参考人の立場から、これをやった方がいいよ、やるべきだよということがありましたら、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○小林参考人
私は、ちょっと次元が変わるかもしれませんけれども、経営者保証ガイドラインの座長をやっておりまして、経営者保証ガイドラインをまとめました。先ほど来ちょっと出ていましたけれども、中小企業のうちの十七万者ですか、信用保証協会で借りていて条件変更をしているというところがございました。
しかし、問題となるのは、後継者のときに保証債務がどうなるかということは非常に関心が多いところでございます。そもそも、中小企業者では後継者が見つかりにくいというところに加え、後継者が保証を引き継ぐということになりますと、しかも条件変更をしているということは余り経営状態が好ましくないというようなことになりますので、そのようなときに保証債務について厳しく金融機関が対応しますと、後継者が成り立たない、後継者とならないという事態になります。先ほど例が挙がったクリーニング店のところも、世代がかわったというところだと思うんです。
金融機関に対しては、日ごろもそうなんですけれども、特に後継者のときに、その保証債務をどうするか、こういったことについては非常に弾力的にやらないと、中小企業の後継者不足にますます拍車がかかる、そうすると地域全体にとって非常にマイナスになる、そういうことをちょっと恐れております。
以上です。
○畠山委員
時間ですので終わりますけれども、改めて、五人の参考人の皆さんから貴重な御意見をいただきまして、今後の審議に反映させていきたいというふうに思います。
ありがとうございました。

第193回国会 農林水産委員会 第11号  平成二十九年五月十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは農工法の改正案審議ということですので、通告に従って、その中身について質問をしていきたいと思います。
農工法ですが、御存じのように、制定は一九七一年です。余談ですが、私も一九七一年生まれです。まあ、それだけの話なんですが。ですから、高度成長期において、農業と工業の均衡ある発展を図る要請から、農村地域における工業の立地を促進して新たな雇用を創出するものとして制定されたわけでありました。
それで、一九八八年に改正が行われて、このときに現在の五業種、工業、道路貨物運送業、倉庫業、こん包業、卸売業に業種指定が拡大されたわけです。当時ですけれども、我が党は、農村地域での切実な雇用への要求から見て、賛成いたしました。しかし、この二十年間の検証は必要であるというふうに思っています。
そこで、初めに何問か、この間の経過を、数字も含めて質問したいと思います。
先ほどからも出てきていますが、まず、農工団地における企業の立地動向の推移について、前回改正以降、三十年の範囲で結構ですから、新規立地及び撤退数の両方について傾向を述べてください。
○佐藤(速)政府参考人
平成二年から平成二十年までの間の動向でございますけれども、新規立地企業数、平成二年は約七百社でございました。平成七年以降は毎年おおむね三百社前後となっております。
他方、撤退企業でございますが、平成二年は八十社、平成十二年以降はおおむね二百社となっておりまして、新規立地企業数が撤退企業数を上回っている、こういう状況でございます。
○畠山委員
私も資料の方を見ましたけれども、今答弁があったように、新規立地が二百から三百台で推移はしていきますが、同時に撤退も二百前後ぐらいあって、差し引きとしてはプラスにはなってきていることは承知しています。
そこで、先ほどからも議論がありましたが、撤退も一方では二百前後ある。その撤退の理由というものをどのように掌握しているでしょうか。
○佐藤(速)政府参考人
先ほどお答え申し上げました数字、平成十七年までは農村工業センターというところが調査をしておりました。
農工団地における企業が撤退した理由は、残念ながら把握をしてございません。しかし、一般的には、企業の海外進出に伴う工場の海外移転ですとか、景気の後退局面による工場の閉鎖等によるものではないかというふうに考えてございます。
○畠山委員
既に議論されているように、海外移転、進出に伴うものが撤退では大きな理由だろう、これは理解できるものと思うんですね。そういうことだと思うんです。それで、そうなると、法の目的である雇用の創出、就業機会の確保というものが生まれては消える、生まれては消えるということが繰り返されていくことになってしまうわけです。これでは、農村での人口定着ということはもちろん成り立たなくなってしまいます。
そこで、実際に操業企業の雇用状況を調べている統計もありました。それも確認したいんですが、このように、進出してきた企業のところでの総雇用者数のうち、いわゆる地元雇用と呼べる方の割合を調べている統計もありましたが、その推移についても答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
農工団地におけます操業企業における総雇用者数、地元雇用者数、その割合でございますが、昭和六十年におきましては、総雇用者数が約二十二万四千人、そのうち地元雇用が約十八万四千人、率にして八二%でございました。直近の平成二十年の総雇用者数でございますが、約五十九万六千人、うち地元雇用が約四十五万三千人、率として約七六%という状況でございます。
○畠山委員
今出されたデータの方も私も持っていて、もう少し詳しくすれば、今紹介のあった一九八五年の時点で、いわゆる地元率が八二%で雇用がされていたわけですけれども、十年単位で見ると、その後、九五年が八一・八%、維持はされるんですが、その十年後、二〇〇五年が七九・二%、そして、今直近で、答弁があったように七六%と、徐々に徐々にですが、このいわゆる地元率も下がってきているということが数字の上でも明らかとなってきていると思うんです。地元雇用率が漸減傾向となっているのでは、これまた人口定着も難しくなってきています。
それで、では、どういう就業の場があればいいのか。農村地域で、もちろん就業の場が欲しいという切実な要求に応えつつも、安定して定着できる就業の場を求めているわけですから、それをどう検討するかが課題です。
これも先ほどから出ていますが、農水省がアンケートをこの間行っていて、二〇一五年に全市町村を対象にしたものもありました。このアンケートも興味深く読ませていただきましたが、非常にその検討すべき内容として注目するものがあると思っています。
例えば、就業機会の創出で、地域の資源を活用した内発的な産業の育成、または地域外からの工場等の誘致、どちらを重視するか。つまり、内発型か誘致型か、選ぶんだったらどっちですかという二者択一の質問をした項目があるんですね。それを分析していて、いわゆる過疎地域の市町村と三大都市圏の市町村とで違いがあることがきちんと書かれておりました。
その内容について答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
平成二十七年の十二月にできました農水省内の検討会におきまして、地方自治体にアンケート調査をとっております。全国の千四百六十五市町村を対象に、今委員が御指摘のような問いを発出したところでございます。
その結果でございますけれども、地域の資源を活用した内発的な産業の育成、それと、どちらかというとそういう内発的な産業の育成、これを合計した数字でございますが、過疎地域ではこれが約七割の回答を占めております。
これに対しまして、人口が五万人未満のところにつきましては約六〇%弱、さらに人口十万人未満の市町村ということで見ますと約五五%、十万人以上ということで見ますと約五〇%、さらに三大都市圏ということで見ますと約四〇%ということで、過疎地域が最も大きく、人口が多くなるに従って内発型を志向する市町村が少なくなっていく、こういう傾向が見てとれます。
○畠山委員
つまり、いわゆる過疎地域は七割超が地域内発型の産業を求めている。それに比して、三大都市圏は地域外からの工場等の誘致を重視している、これは約六割だというアンケート結果になっているわけです。だから、こういう結果が出るのも私は当然だと思います。
先ほどから話がされているように、生まれては消える、生まれては消えるという就業の場が、二十年、三十年を経て実体験としてあってきたわけですよね。だから、工場誘致はもちろんしてもいいんだけれども、それにとどめず、やはり地域内発型の産業を重視している、特に過疎地域がふえてきているということは重視する必要があると思うんです。
今、中小企業振興基本条例が広がってきていて、四十道府県で制定されてきています。市区町村では百八十以上の自治体にまで広がってきています。大企業の工場や事業所を誘致しても、大資本の論理あるいは海外移転が当然という経済状況にあります。そこで、地域資源と個性を認識した内発型産業を住民ぐるみで発展させようという地域の意思が強まっているのも当然ですし、それが今答弁されたアンケート結果に出ていると思います。
私の地元の北海道でも、ある町の条例も見させていただきましたが、日本一の食料生産基地への発展のために、中小企業が生産、流通、消費など経済活動の全般にわたって重要な役割を果たしてきたとして、町、事業者、経済団体、町民が一体となって中小企業の振興を宣言して取り組んでいるところがあります。
一般的に、工場を誘致して、北海道ですから、交通、さまざまな運輸コストなどもかかる中で、やはり地域の内発型の産業を重視するということも、地域に根づいて就業の場を確保するという観点から、そういう方向に目が向いているというふうに、実際に動きがあるんですね。
ですから、この立場から、今回の農工法の指定業種の拡大についても、慎重に進める必要があるということを述べておきたいと思っています。
それで、実際の改正案の中身について質問したいと思います。
その対象業種は、今回、工業等の五業種から全業種へ一気に拡大することとなります。
資料の一をごらんください。それが「目的」の中で、この後議論したいものでありますけれども、法の目的として、下から二行目、これは改正案も現行法もそうですが、なぜこの法があるかといえば、農業と工業の均衡ある発展をするためだと。改正案では「農業とその導入される産業との均衡ある発展」と変わりますので、今後、便宜的に農業と産業の均衡ある発展と私は言いますけれども、これがなされるかどうかが大事なことだと思います。
これは法の制定から変わらぬ重要な基本方針だと思いますが、これは大臣に確認します。法の制定時からこの改正案に至るまで変わらぬ重要な基本方針であることは間違いありませんね。
○山本(有)国務大臣
間違いありません。
今回、農村において、担い手への農地の利用集積等が進む一方、高齢化、人口減少の進展により、地域コミュニティー機能の維持に影響が見られるようになってきております。
このような中にあって、農村を振興するためには、農村地域のさまざまな農業者や地域住民が地域で住み続けられますように、農業が魅力ある産業になるとともに、農業以外の就業機会の選択肢があることが必要であると考えているところでございます。
今般の農工法の改正後におきましても、農業と導入される産業との均衡ある発展を図るという目的は変わらないところでございます。
○畠山委員
農業と産業の均衡ある発展は重要なものであるということは確認しておきます。
その上で、現状を見てみたいと思います。
現在、都道府県が持っている基本計画は、もちろん国による基本指針をもとにつくられたものでした。前回、一九九六年、平成八年のもので改めてそれを読み直してみると、その中に「農業構造の改善」という項目があって、これはもちろん、法の目的にそう書かれているわけですから、基本方針においては、認定農業者等に対する農地の流動化に積極的に取り組むことを掲げて、そのための農工法なんだというふうに基本方針には定められています。
こういうふうに具体的には書いていますね。「また、農地の流動化の推進に当たっては、導入された企業への雇用期間が長い者や役職等の要職に就いている者等の安定的な就業機会が確保されている者からの農地提供を促進する等重点的かつ効果的な実施に努める。」というのが今の基本指針です。
つまり、企業で安定的に働ける人は、農地提供を促進するためだと。つまり、企業で安定的に働ける人は農地を出してくれれば流動化が進むということが今の国の基本方針の中に書かれているわけです。
北海道の基本計画の方を改めて読みましたが、やはりこれに基づいて、認定農業者等地域の担い手に対する農用地の利用の集積を促進というふうに記されているわけです。
改正案で基本計画への記載事項が変えられることとなります。農業構造改善に関する目標は、今まで任意的記載事項でしたけれども、今度は義務的記載事項に変わることとなります。
つまり、農地の流動化を進めるための目標を各自治体に義務的記載事項として持たせるということになるんでしょうか。これは事実としての確認で、答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
この法案の第五条第二項におきまして、「産業の導入と相まって促進すべき農業構造の改善に関する目標」、第四号でございますが、これを任意的記載事項から義務的記載事項にすることとしたところでございます。
これは、農業の成長産業化を図る上で、農業の構造改善を図ることが喫緊の課題であります。また、今般の改正によりまして対象業種の限定を廃止するに当たりまして、従来以上に、農村地域の就業機会の確保と、農業と導入産業との均衡ある発展が図られることが重要となることを踏まえまして、義務的記載事項としたものでございます。
○畠山委員
従来以上に均衡ある発展が必要だから、今回、義務的記載事項にしたという理屈がよくわかりません。何で義務的記載事項にしたのか。だって、結局、農地の流動化を進めるという点では前回と変わらないわけですから、そうであれば、なぜ前回は任意の事項になっていたのかということにもなると思うんです。
改めて、義務的記載事項にした理由をもう少しわかりやすく答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
二つございます。
まず一つは、農業の成長産業化を今図っております。そのために、担い手への農地の集積、集約化を進めているところでございます。
そういった農業の成長産業化を図る上での農業の構造改善、これを図ることにつきましては、今政府として喫緊の課題として取り組んでいるといったことから、任意的記載事項から義務的記載事項に移すこととした理由の一つでございます。
それと、二つ目といたしまして、今般、対象業種の限定を廃止いたします。廃止をいたしますと、業種の幅が非常に広がります。そういった中で、先ほど議論になりましたような雇用構造の高度化といった視点がやはりこれまで以上に大事になってくる。
そういう意味では、農村地域の就業機会の確保というようなことを、雇用構造の高度化といったことも念頭に置きながら進めていただく。その際に、農業と導入産業との均衡ある発展が図られるといったような視点もまた重要でございますので、そういったことを考慮いたしまして、これは任意的事項から義務的事項に変更するということでございます。
○畠山委員
まだそれでもよくわからないんですね。
これは、資料に出している第一条の目的規定ともかかわることなので、もう少しこの資料に基づいて質問したいと思うんです。
だから、法の目的に、今度こういうふうに書かれるわけですよね。下線部は変更する部分でありますけれども、第一条、「この法律は、」改正案の方です、「農村地域への」云々かんぬんで、二行目ですが、「従ってその導入される産業」、これが今まで「工業等」でしたからいいんですが、その「産業に就業することを促進するための措置を講じ、並びにこれらの措置と相まって農地の集団化その他農業構造の改善を促進するための措置を講ずることにより、」「均衡ある発展を図る」というふうに書かれています。
現行は、「導入される工業等に就業することを促進するための措置を講じ、」「これらの措置と相まつて農業構造の改善を促進する」と書かれているんですね。
だから、今答弁されたように、均衡ある発展ということで、現行法では、工業等を導入することとあわせて農業構造の改善と均衡ある発展というふうに書き方は読めるんですけれども、今回は、就業の促進を講じたことに相まって農地の集団化に係ってくるわけです。それで、その他として農業構造の改善というわけですが、ちょっと何を書いているのかよくわからない、私だけかどうかわかりませんが。就業促進と相まって進めるのは農地の集団化と規定されているわけです。
ですから、広く就業機会を確保して、農業と工業、今回産業ですが、これが均衡ある発展をするという農村の姿とはちょっと異なる集団化、集約、大規模化を促進するために、どのような業種でもいいから企業立地を進めるということになっちゃっているんじゃないんでしょうか。ちょっとここの意味も含めて理解できないんです。なぜ農地の集団化に係って相まってとなっているのか、答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
委員のお尋ねは、今回の改正案におきまして、この農業構造の改善の前に、農地の集団化その他というようなことがつけ加わった、それによって意味が変わってきているのではないか、こういう御趣旨だと理解をいたしました。
そこにつきまして申し上げます。この農業構造の改善という言葉を追加いたしましたのは、昭和三十六年に制定された農業基本法には、この農業構造の改善という言葉が盛り込まれておりました。その中身でございますが、農業経営の規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化その他農地保有の合理化及び農業経営の近代化、これらを総称して農業構造の改善ということが昭和三十六年に制定された農業基本法に記述をされていて、昭和四十六年に制定されております農工法においては、わざわざ農業構造の改善の例示をしなくても中身についてわかるだろうということで、この農業構造の改善という言葉をそのまま規定していたところでございます。
しかしながら、この農業構造の改善という言葉が、現在の食料・農業・農村基本法においては用いられておりません。また、この農業構造の改善という言葉の指すところが一般的に自明とは言えないのではないかというような法制局での議論がございまして、この農業構造の改善という概念を明確化するために、旧基本法の規定も踏まえまして、「農地の集団化その他農業構造の改善」と修正をして、いわば農業構造の改善の例示といたしまして農地の集団化というようなことで改正をしたわけでございまして、決して農地の集団化を進めるために企業立地を行うという趣旨ではございません。
○畠山委員
なぜこういう書き方になったのかなというのを、いろいろなものを読んで、昨年三月に出されている農村における就業機会の拡大に関する検討会中間取りまとめでこんなふうに書いているんですね。「農村における就業機会拡大に関する基本的考え方」というところがあります。ちょっと読み上げます。「産業政策と地域政策を車の両輪として進めるとの観点及び農村における雇用と所得の場を確保し、農村の活性化に繋げるとの観点から、就業機会の拡大に当たっては、TPP政策大綱に位置づけられた施策が今後推進されることも踏まえ、以下の視点から検討を進める必要がある。」といって、具体的な、今回の流れに至るようなことが展開されているんです。
つまり、法においては、農業と産業の均衡ある発展ということはもちろん法の大前提ですから残しておかなきゃならないけれども、そこに要素としてTPPを前提としたまちづくり、政策大綱の中の一環として今回出されてきているわけで、今回の改正案もそのような位置づけとしてされていると思うんです。農村は農村として維持しつつ、競争に打ちかてる農村と農業という新たな車の両輪づくりということになるのではないんでしょうか。
ただ、もちろんそれぞれの地域で就業の場が必要とされている、要求がある状況は変わりはありません。今回の改正は、農業と産業の均衡ある発展ということは残っておりますし、新たな就業機会を確保する上で、全業種に産業を拡大するという今日的意義も明記されてきているとは思います。
大臣に伺いますが、しかし、これらの行く末が、農地の集団化、それは、今日的に意味するのが、TPPにおける農業競争力強化と一体のものだ、そういう性格を伴った改正ではないのか、その点を伺います。
○山本(有)国務大臣
今日、農村において、高齢化、人口減少、これが進んで、地域コミュニティー機能の維持にも影響が見られております。農村を振興するため、農村地域のさまざまな農業者や地域住民が地域で住み続けられるような農業、これを展開していただいて、魅力ある産業にしていただくということは大事です。
農業以外の選択肢を用意することによって、就業機会の一層の創出と所得の確保を図ることも課題となっているわけでございます。工業等以外の産業の立地、導入を促進することが必要であることから、今回の法改正に至ったわけでございまして、地域政策、産業政策、それぞれ大事でありまして、どちらかに傾いたということでもありませんし、今、農村の活力が失われつつあるときに、私どもは、農村にまさしく活力を与えるような施策であればどんどん導入していくことが大事だというような観点でございまして、TPPと直接関係するものではございません。
○畠山委員
危惧しているのは私だけではないです。
資料の二枚目をごらんください。これは、北海道農業改良普及協会が毎月発行している「農家の友」という雑誌です。ことし五月号で、先日出されたものですが、「農政時評」というコーナーですけれども、ここで北海道大学の清水池義治先生が「農村地帯における生活経験から」という表題で論述をしていて、農村地域における雇用の状況などをどう考えたらいいかというので、非常に大事なことを書かれているなと私は思いましたので、資料として紹介をさせていただきました。
いわく、その下に書いていますが、やはり農村地帯で生活する若者に足りないのは雇用機会だということは、これは当然です。その上で、先生は、名寄市というところにいた生活のことも引き合いに、実際に何が必要かということを論じているわけなんですけれども、ページをめくっていただきまして、下線を引いているところだけをごらんいただきたいと思うんです。
「重要なのは農村地帯の人口扶養力をどう高めるか、具体的には若者の雇用機会をどれだけ確保できるかである。 その点で、現状の農業・農協改革には違和感がある。農業分野における競争強化を通じて、農業生産コストを削減し、農業の国際競争力を高めるという改革の方向性は、産業政策として完全に間違っているとまでは言えない。」としつつ、「ただ、実際に打ち出されている政策を見ると、実態は農業経営の選別政策の色合いが濃い。」少し飛びますが、「経済効率性を求めた農業改革をひたすら進めていくと、農村地帯で働く人の数はますます減少していく。大規模化や機械化で働く人数を減らしていくので、それは当然だ。産業政策としては正しくとも、それが農村社会の存続にはつながらない可能性もあるのである。要は、農村社会の維持・発展を考慮した農業の産業政策が必要なのであるが、現在の農業・農協改革にはそういった視角はあまり見られない。」
以下、参考にしてEUのCAP政策とか出てくるんですけれども、今回はそれは触れません。
それで、この間、一連の農業、農協改革は、TPPは実際は頓挫している状況ではありますけれども、それに伴って、その経済環境を前提とした農業競争力強化ということが大きな柱でありました。
それで、大臣が先ほど答弁したように、地域においては就業機会の確保ということは切実な要求でもありますし、農村自体を成り立たせるために、今、田園回帰などと言われるような方々で地域で雇用の場をつくるという政策はもちろん大事なことだろうとは思うんです。ただそれは、農業と産業の均衡ある発展を掲げている中での話であって、TPPについては今後どうなるかわかりませんけれども、首相みずから、今後の通商政策はTPPがスタンダード、これを基準にするんだということを言っている以上、その経済環境が前提となってしまうことにほかなりません。
そういう中での農地の集団化が、今回、法の目的で例示という形で先ほど答弁されましたけれども、最優先事項となっていないか、農業の強靱さの基盤である多様性が失われることになりはしないかということが、この先生の途中の文章の中でも出てきます。ですから、このような形で目的規定を変えたことについての危惧を表明しておきたいと思います。
それで、ちょっと最後に、大きなテーマのところで、進出する企業や優良農地の確保の問題について質問しておきます。
先ほど私も取り上げた昨年三月に出された中間取りまとめでは、「就業機会拡大の対象となる産業の考え方」というところもありました。地域の中での経済循環型産業も大事だということは触れているけれども、その先に列挙しているのが、まち・ひと・しごと創生総合戦略でありました。このまち・ひと・しごと総合戦略は二〇一四年十二月二十七日の閣議決定で、何が引用されているかというと、こんな部分が引用されていました。本社機能の一部移転等による企業の地方拠点強化が必要な政策として掲げられている、ここを引用しているんですね。
つまり、大手企業から見れば、地方拠点を強化する上で農工法も活用できるということになります。農水省の側からいえば、地域の就業の場の確保のために今回のような改定をしようということに、裏表の関係になると思うんです。そうなれば、何だかますます農業と産業の均衡ある発展というところからかけ離れてくるんじゃないかというふうに思えるわけですが、まず確認したいのが、そのような企業にまで農工法上の支援措置をする必要があるのかどうかということです。
まず、事実を確認します。
農工法上の支援措置は、企業等に対して資本力などでの制限や要件があるのかないのか、どうなっているか、まずお答えください。
○佐藤(速)政府参考人
この法案に基づく税制、金融の支援措置といたしまして、一つは、個人が農用地等を譲渡した場合の所得税の軽減措置がございます。また、立地企業による設備取得に要する資金につきまして、日本政策金融公庫による低利融資がございます。
このうち、企業が活用可能な日本政策金融公庫による低利融資についてでございますが、これにつきましては、資本金の額が三億円以下または常時使用する従業員の数が三百人以下の中小企業者が、工業等導入地区において三名以上の雇用創出効果が見込まれる設備を取得する場合に貸付対象となるということでございます。
○畠山委員
今回、新規となる農山漁村振興交付金も新たなメニューとして追加されますので、その点についても同様に確認のための答弁を求めたいと思います。
○佐藤(速)政府参考人
この農山漁村振興交付金におきまして、農工法に基づく実施計画を策定した地域を対象としたメニューを創設することとしておりますけれども、このメニューを企業が活用するためには、その企業が、地域再生推進法人やPFI事業者の認定を受けているか、あるいは資本金の額が三億円以下または常時使用する従業員の数が三百人以下の中小企業であることを要件とする予定でございます。
○畠山委員
関係するものを読みましたけれども、中小企業という言葉がありますが、資本金三億円が基準ですから、それ自体は相当な資本力であろうとも思うんです。
どこまでの金額がいいかということはもちろんあるかと思いますけれども、この後、地域未来のことについてもかかわって述べたいと思いますが、資本力のある企業が進出する際にこのような支援が本当に必要なのか、どこまで支援する必要性があるのか、その考え方について、これも改めてちょっと聞いておきたいと思います。
○佐藤(速)政府参考人
ただいま申し上げましたとおり、資本金の額三億円が大きいか小さいかという評価はあろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、日本政策金融公庫による低利融資並びに農山漁村振興交付金における支援における企業の要件といたしましては、中小企業であるといったことを要件としたいというふうに考えてございます。
○畠山委員
それで、進出するところに対する支援との関係で、これもきょう出てきました地域未来投資促進法案との関係で質問していきたいと思うんです。
農水省の提出されたポンチ絵の説明でも、関連施策との連携強化が掲げられています。その中に、農村地域における産業導入を支援するため、経済産業省において検討中の地域未来投資促進法案(仮称)による地域経済牽引事業への支援を活用と記されています。
私もきのう経済産業委員会に出ていまして、民進党の篠原議員の質疑もきょうと合わせて二時間ずっと聞いていたんですけれども、やはりこの優良農地の扱いについて相当な議論になっていたんですね。
結局、きのう法案では修正がかけられて可決されましたけれども、改めて、やはりここでその中身ということは徹底的に質疑する必要があると思うんです。
まず基本を確認しますが、この地域未来投資促進法案によってどのように農地を活用できることになるのか、概要を説明してください。
○佐藤(速)政府参考人
まず、農地転用規制を定めました農地法の五条二項でございますが、ここにおきまして、第一種農地については原則として転用許可はできないとされております。ただ、そのただし書きにおきまして、政令で定める相当の事由があるときには許可できるということにされております。この政令で定める相当の事由として、農工法、地方拠点法等の地域整備法に基づく施設を整備する場合を規定しております。
地域未来投資促進法案が成立した場合には、ただいま申し上げました農地法施行令を改正いたしまして、地域未来投資促進法に基づく市町村が作成する土地利用調整計画に位置づけられた施設を整備する場合、こういった場合を追加することによりまして、他の地域整備法と同様に、第一種農地における農地転用許可を可能とするということでございます。
今回、この地域未来投資促進法案におきまして、丁寧な土地利用調整を図るための計画制度を措置することによりまして、優良農地の確保が図られるようにするといったようなことをしたところでございます。
○畠山委員
明確にわかりやすくしておきたいと思うんですけれども、農地法の関係でいえば、第一種農地は第二種農地並みとなる、農振法の関係でいえば、農業生産基盤整備事業が完了後八年たたなければ転用禁止のところを適用除外にする、そういうことでよろしいんですよね。
○佐藤(速)政府参考人
そのとおりでございます。
○畠山委員
ですから、第一種農地も転用可能となるわけです。
農工法の今回改正で来られる企業、事業所が地域未来投資促進法における地域の牽引事業として認定されることとなれば、第一種の農地もしたがって転用できる、だから、こういうことになるんですよね、事実の確認として。
○佐藤(速)政府参考人
お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりではございますが、農工法に基づく実施計画によって企業、産業を立地する場合につきましても、同様の農地法の配慮が働くということでございます。
○畠山委員
これもきのうの経済産業委員会から随分と議論になりましたが、手続上においては、丁寧にとか、先ほどからあるように、国が基本方針に盛り込むんだとかいうことがありますけれども、実際上は、理屈としてこれが可能になるということは今の質疑で確認できたと思うんです。
それで、きのう経済産業委員会で我が党の真島議員も質問して、細田政務官にもお答えいただきましたが、これは重要なやはり中身ですよね。
日本農業新聞で、四月三日付でしたか、激しい論戦が委員会でも予想されるというほどの中身を持ったものだと思うんです。
それで、今、どういうふうにするかということは先ほどから議論がありますけれども、少なくとも、これにかかわる関係団体、関係者あるいは農業者などから意見を聞く、パブリックコメントなどがこれほど重要な中身にされてきたのか、されていなかったのか。この点はきのうの経済産業委員会で真島議員から質問もさせていただきましたが、このパブコメというのはどういうふうにこの間やってきたのか、どうするのか、答弁してください。
○佐藤(速)政府参考人
お答え申し上げます。
農地法施行令の改正でございますけれども、これにつきましては、パブリックコメントを実施することによりまして広く国民の意見を聞いた上で、最終的な案文を作成して、閣議決定してまいりたいというふうに考えてございます。
○畠山委員
つまり、これまでやっていなくて、これからやる、簡単に言えばそういうことですね。
○佐藤(速)政府参考人
御指摘のとおりでございます。
○畠山委員
だから、懸念の声がこのようにあふれ返ってくるわけです。
こうなってくると、最初に戻りますが、農業と産業の均衡ある発展の姿とかけ離れていく懸念はやはり拭えなくなる。しかも、地域未来投資促進法は優良農地を転用可能としている一方で、今回の改正案は、是非はともかく、農地の集団化を目的とするわけですから、優良農地の取り扱いが矛盾することになってしまわないのか。それは地域、市町村ごとの実施計画で決めることなんだ、市町村が考えることなんだというふうになるでしょう。
ただ、最後ですからこれは大臣にやはりお聞きしたいと思うんですが、優良農地の確保は、その集団化がどうかは別としても、何より農水省としての最優先課題であることは間違いないはずです。何でこんなふうに地域未来投資促進法案で優良農地転用可能となったのか、そういうもとでどうやって優良農地をきちんと維持し守っていくことを考えているのか、きちんと答弁をしてください。
○山本(有)国務大臣
農地は国民に対する食料供給のための生産基盤でございます。今後とも優良農地を確保していくことが基本でございます。
このため、農工法改正法案あるいは地域未来投資促進法案におきまして、産業の施設用地と農地との土地利用調整がこれまで以上にしっかりと行われるような仕組みを設けるということが大事だと思っております。
優良農地を確保しながら農業と導入産業との均衡ある発展を図ることが何より重要だというように認識しつつ、この法案を位置づけているわけでございますが、両法案とも農業振興地域制度及び農地転用許可制度を適切に運用するということを中心としまして、今後とも優良農地の確保を図ってまいりたいというように考えているところでございます。
○畠山委員
新たな誘致を、農村の現状と関係なく、牽引事業という形などと結びつけて支援するとなれば、こんなことが起きてしまうんだと思うんですよ。
ですから、大臣も食料の生産基盤として必要だということを認められている以上、その責任を国が果たせなくなるのではないかということに強い危惧を持つわけです。農村地帯における就業の確保は必要ですが、慎重かつ地域の実情に見合った形で進めることを求めます。
なお、今回の改正案は、TPPを前提にした競争力強化という流れの中で進んでいるもとで、出発点から違う道を歩んでいるように思います。農業と工業の均衡ある発展とかけ離れていくことに強い懸念を表明しまして、私の質問を終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第11号  平成二十九年五月十日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の一部を改正する法律案について、反対討論を行います。
この十年間、企業立地促進法と各地の企業誘致競争によって、大企業の工場が立地すれば地域経済が活性化するとの地域経済成長戦略は、政府自身も認めるように、付加価値額も製造品出荷額もマイナスとなり、立地企業の撤退や地方の疲弊が進み、格差は拡大しました。
本法案は、この呼び込み型企業誘致策の失敗の反省もなく、形を変えた一層の成長志向路線を突き進むものとなっており、極めて重大です。
反対理由の第一は、特定の地域中核企業に支援を集中する一方、地域の雇用と経済の担い手である産業集積を法目的、理念から削除、切り捨てるものだからです。
本法案で支援対象となるのは、圧倒的多数の地域中小企業・小規模事業者以外のわずか二千社にすぎません。一握りの、稼ぐ力がある中核企業が伸びれば地域全体が潤うというのは幻想であり、大企業が国と地域を選ぶ時代には、特定企業の成長が国民経済の好循環につながる保証はありません。この構造的大変化の現実を直視すべきです。
第二は、地域経済牽引事業者の提案制度が、いわば地方版特区として、規制緩和の先鞭をつけるものだからです。
法案に盛り込まれた事業環境整備提案制度は、地域経済牽引企業が自治体に対し、条例等による規制の緩和、撤廃を直接要求できるとするものです。産業競争力強化法の企業実証特例制度の地方版、まさに地方版特区として、地方から規制緩和の大穴をあけることを狙うものです。住民の命や暮らし、環境保全よりも地域経済牽引企業の利益を優先させるもので、地方自治の本旨に反するものです。
第三は、地域経済牽引企業のために優良農地の転用を促進するものだからです。
農水省は、本法案の施行に合わせ、これまで原則転用不許可としてきた第一種農地の転用を認める方針を示しました。土地利用調整区域に指定さえすれば、食料供給の基盤として保全すべき優良農地が歯どめなく転用される重大な危険があると言わざるを得ません。
多国籍企業の海外移転による産業空洞化や内需不振の中でも、圧倒的多数の中小業者を中心とするものづくり産業集積や地場産地は雇用と地域社会を支えてきました。真に地域経済を発展させる道は、これら産業集積の面としての役割に光を当て、多様な主体の力が発揮され、内発的、持続的な発展につながる地域循環、振興政策へ根本的に転換すべきことを指摘し、討論といたします。

第193回国会 農林水産委員会 第9号   平成二十九年四月二十日

○畠山委員
ただいま議題となりました土地改良法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、その趣旨及び内容を御説明申し上げます。
政府原案では、農用地の利用の集積の促進を図るため、農地中間管理機構が賃借権等を取得した農用地を対象に、農業者等からの申請によらずして、土地改良事業を行うことができ、その際、農業者等からは分担金を徴収しない制度を新たに設けることとしております。しかし、農地中間管理機構が賃借権等を取得する農用地は、その農用地につき担い手がいることが確実なものに限られているのが現状であることから、このような新制度を設けたとしても、もともと、農用地としての条件が不利な、例えば、中山間地域においては、農用地の利用の集積が図られることにはならないのではないかと懸念しております。
そこで、この新たな制度について、農業者等から分担金を徴収しないという点は維持しつつ、第一に、農地中間管理機構が賃借権等を取得した農用地ではなく、市町村を中心に地域の農業者等が協議を積み重ねた結果作成される人・農地プランの対象とされている農用地を対象とすること、第二に、農業者等からの申請があって土地改良事業が実施されることとすること等の変更を加えることとするため、本修正案を提出した次第であります。
以上が、この修正案の趣旨及び内容であります。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

第193回国会 経済産業委員会 第9号   平成二十九年四月十九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
法案質疑に入る前に、きょうはほかの委員からも何人か質問がありましたが、昨日十八日の、世耕大臣と米国ロス商務長官が行った会談の内容について伺っておきたいと思います。
この会談は、麻生副総理とペンス副大統領による日米経済対話を前に開かれておりました。それで、まず、報道ベースなどでしか私たちも知らないわけですけれども、会談の内容についての概要を御報告いただきたいのと、これは通告していないんですが、先ほど質疑の中で、世耕大臣とロス長官との対話というのは日米経済対話と別であるという話もありまして、では改めて、その区別と関連について御答弁いただけたらいいなと思っております。よろしくお願いします。
○世耕国務大臣
きのう、ロス長官とは、一時間四十分にわたって個別で会談をさせていただきました。
一番最初は、私からまず、アジアの通商情勢をめぐる状況について幅広く意見交換をさせてもらいました。ちょうど先々週にASEANの経済大臣会合というのを日本で開いたということもありましたので、そういったことも踏まえながら意見交換をさせていただきました。
その上で、経産省と商務省の共通する協力分野、例えばサイバーセキュリティー人材育成ですとか、あるいはAPECにおける越境プライバシールールですとか、あるいは質の高いインフラ協力などについて話し合って、今後日米で協力を深めていくことに合意をしたわけであります。
それともう一つ、首脳会談でも合意をし、きのう、麻生・ペンスの経済対話の中でも合意をされた三つの柱の中でも、特に貿易・投資ルールの部分が我々関係してくるわけでありますから、その点についても議論をさせていただいた。
また、先ほどから申し上げているように、FTAとか、あるいは個別の品目の議論にはならなかったという形であります。
経済対話はあくまでも、もうメンバーも両国間で合意をしていて、これは、麻生副総理とペンス副大統領、そして両国の関係省の次官級というか、その事務方が入ってやるという構成になっています。
ただ、当然、副総理と副大統領でありますからそんな頻繁に会ってということはありませんので、その間の具体的な交渉については、これは各省が行う、場合によっては各省の閣僚が行うこともある。
私とロス長官は、今後そういう形で、経済対話の傘の下で、その中の一部を具体化していくために、会談をして話し合う可能性があるということであります。
○畠山委員
それで、経済上においても国民的な関心においても、一つが、TPPにかわって日米FTAを目指すのかどうかにありますので、このことについても一つ確認しておきたいと思います。
報道によれば、ロス商務長官はFTAについて、少し時期尚早と述べつつも、協定に基づいた形で日本との貿易関係を高めたいとも述べているようです。「二国間貿易協定に意欲」と見出しを立てた報道機関もありました。
そこで、大臣の記者会見等を見ますと、こういう表現があるんです。かなり具体的で、率直で、実務的な話ができたと語っておられます。時期が尚早なのかどうかはともかく、日米FTAについても、具体的で、率直で、実務的な話としての議題となったのでしょうか。
○世耕国務大臣
ですから、FTAについて、私とロス長官の間で、一時間四十分の会談の間で、それについて向こうからも言及はありませんでした。当然、こちらからもすることはありません。
あくまでも、首脳会談あるいは後で麻生・ペンスで合意をした、特に貿易・投資のルールについての議論を、これは相手のあることですから具体的には申し上げられませんが、かなり具体的に踏み込んで、いい議論ができたというふうに思っています。
私との会談が終わった後、ロス長官は、経産省の一階におりまして、記者団のぶら下がりに答える形で記者会見をされています。今御指摘の部分については、記者の側がFTAの前進に関する道筋はどうですかという質問をして、それに対してはロス長官は、当然、私との会談でその話はしていませんから、どのような形になるか発言するには少し早い、我々は日本との通商関係を強化すること、それを協定の形で行うことに意欲的であるという極めて一般論でお答えになっておる。これにも尽きるというふうに思います。
○畠山委員
今、御答弁でも貿易・投資ルールにかかわる発言があって、先ほども、いわゆるルールベースの話はしてきたということが世耕大臣からありました。
私もTPPの特別委員会で大分質問をさせていただいたんですけれども、TPPは、もちろん関税の分野と非関税障壁の分野とある中で、そのいろいろなチャプターの中でも、先ほど大臣が言った貿易、投資であったり、国有企業であったり、さまざまな形とともに、日米、ほかの国も含めてあります、二国間におけるサイドレターで取り決めを行っているものなどもありました。
これは、ことしの予算委員会で岸田外務大臣に、このサイドレターはまだ生きているんですよねと私が質問したところ、否定はされませんでした。
ですから、貿易・投資ルールなど踏み込んだ話ができてきているということの土台に、この間、日米でそのように合意してきたものが前提となっているという理解でよろしいんでしょうか。
○世耕国務大臣
これは麻生副総理から答弁をいただかなければいけないと思いますが、少なくとも、きのうの共同プレスリリースを読む限りは、そういうものがベースになっているという前提ではないんではないでしょうか。
○畠山委員
ちょっときょうは時間の関係もあるし、本題に入らなければいけませんのでここまでにしておきたいし、別の機会に譲るんですが、TPP交渉の中身というのは、特別委員会のときにも中身がなかなか国民、国会に明確にされてこなかったという経過がありました。
今回、米国がTPPを離脱表明しましたが、安倍首相は、TPPを今後の通商交渉の基準にすると繰り返しています。そうであれば、米国から日本にTPP以上の譲歩を求めてくるのは当然ですが、日本の側として、私、今紹介しましたが、例えばサイドレター、例えば協定本文のルールの中身、あわせて前提となって今後議論が進展するのではないかということについては大変懸念があります。話し合ってきて突然結論だけが出てくるような交渉は認められないことは、一言述べておきたいと思います。
そこでもう一つ、法案にもかかわるので、昨日の会談についてこの点も伺いたいです。東芝問題です。
これは、きのうの会談だけではなく、三月に世耕大臣とロス商務長官が会談した際にも、ロス長官とともに米国のペリー・エネルギー長官が、東芝の財政的な安定性は米国にとって非常に重要だと東芝の経営問題に懸念を示したとの報道がありました。
半導体事業をどの国でどの会社が買うかというのは、仮にそういうことになればですけれども、本法案の対内直接投資規制にももちろん直接関係してくる内容となります。きょうもデュアルユースの話はたくさん出てきていますけれども、そこでかかわる株式売却は、本法案でも言う国の安全に関係する問題であり、今回の会談でも、水面下の議題とも言われてきました。
きょうの日経新聞なんですけれども、それで、ロス長官から東芝の再建問題に言及があり、「半導体メモリー事業の売却計画には、中国への技術流出に懸念を示した」と報じられています。それに対して日本側から、「必要な場合は外為法を活用して防ぐとの立場を説明した。」との報道です。
三月に前回話し合われた状況とは、東芝をめぐる情勢というのはまた変わりまして、御存じのように、決算を発表した際に監査法人が監査意見を表明しなかったという、極めて異例な状況も起きました。
ですから、私が言いたいのは、日米両政府が関心を持って当然だというふうに思うんです。
それで、どこまでも話せないとは思いますけれども、東芝問題でもまた、具体的で、率直で、実務的な話としての議題としてあったのでしょうか。
○世耕国務大臣
これは二つの意味で、一つは相手とのやりとりということもありますし、もう一つは東芝という個社の経営にかかわる問題でありますので、詳細については説明を控えたいと思いますけれども、東芝、ウェスチングハウスの件については、先方から議題として取り上げられまして、今後も情報交換を続けていくということを確認をしたところであります。
○畠山委員
これだけ経営危機に陥った背景は、きょうは本筋の議論ではありませんが、原発事業にかかわるものであると思っておりまして、日米経済対話のテーマにエネルギー問題が入っているということからも、これも、中身だけが突然結論として出てくるような交渉であってはならないことを一言述べておきたいと思います。
法案の質疑にかかわって、本題の質問を行います。
外為法ですけれども、二〇〇九年に前回改正を行いました。そもそもこの外為法の安全保障条項については、かつて、西側諸国におけるココム体制を国内法化するものでありました。
その前回の改正では、今日において世界的な安全な維持を意味するものになったとする政府の解釈ということを我が党としても首肯して、武器関連の技術取引に係る規制の抜け穴を塞ぎ、強化する合理性を認めて、私たち、前回は賛成したんです。
ただ、前回の改正というのは、武器輸出三原則等を大原則としてきたものでした。そのときはです。これは、輸出規制のみならず、外為法の運用面でも原則としていたものだったと思います。
ですが、安倍政権のもとで二〇一四年四月一日に新たな方針として、防衛移転整備三原則を閣議決定しました。武器輸出三原則等のもとでは、武器輸出はもちろん全面禁止が原則でした。しかし、今回の防衛移転整備三原則では、武器の輸出は基本的に認めることとしております。
ですから、今回の外為法の運用にかかわる原則、基本についてはまず伺っておきたいと思うんです。
大臣に、この原則が変わったことによって外為法の運用面でどのような変化があるのかないのか。答弁願います。
○世耕国務大臣
今御指摘のように、平成二十六年四月一日に、防衛装備移転三原則というものを閣議決定をさせていただきました。
これは、国連憲章を遵守するとの平和国家の基本理念と、これまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持した上で、これまで積み重ねてきた武器輸出三原則等の例外化の実例を踏まえて、これを包括的に整理をしつつ、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めたものでありまして、防衛装備の海外移転に係る手続や歯どめを今まで以上に明確化をし、内外に対して透明性のあるルールを定めたものであります。
このため、積極的に武器輸出をする方針に転換をしたりとか輸出を大幅に解禁をするといったことではなく、外為法の運用についても何ら変わることはなく、これまで同様、厳正かつ慎重に対処しているところであります。
○畠山委員
大幅な輸出などはしない、ものではないというふうな答弁でありましたので、少し具体的事例で経過を確認しておきたいと思うんです。
この二〇一四年以降の武器輸出について、国家安全保障会議、NSCで承認したものが何件かあります。その数字を答弁してください。
○増田政府参考人
お答え申し上げます。
防衛装備移転三原則及び防衛装備移転三原則の運用指針に従いましてこれまで国家安全保障会議で審議した結果、海外移転を認め得る案件に該当することを確認した案件は六件でございます。
○畠山委員
というわけで、閣議決定を変えてから六件となっています。
それで私も調べまして、最初の事例で承認されたのが、ペトリオットPAC2ミサイルだったということでいいんだと思います。
そのPAC2について具体的にもう少し聞きたいと思います。
これは、米国がペトリオットPAC2の量産に当たり、その部品となるシーカージャイロの生産ラインがアメリカにないということから、日本で引き受けたということが背景にあったと思います。
これは米国の軍需産業の補完という意味でもありますが、ただ、日本政府としては、そのときに決められた文書の中にこういう表現で書いているんです。「我が国の防衛生産・技術基盤の維持・強化、ひいては我が国の防衛力の確保に資するもの」として認めています。ですが、このPAC2の最終需要者といいますか最終使用者といいますか、それが米国とは限らないと思います。
同じように、その決定文書にこのような表現もありました。ジャイロが組み込まれたペトリオットPAC2は米国以外の第三国に移転されることが想定として、管理体制については米国国防省に確認すると書いてあります。
どのように確認されたのか、答弁してください。
○田中(聡)政府参考人
お答え申し上げます。
お尋ねのペトリオットPAC2のシーカージャイロの米国への移転は、PAC2の部品であるシーカージャイロを、ライセンス元である米国企業へ納入するものでございます。
この場合、防衛装備移転三原則及び同運用指針に従いまして、仕向け先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保するということとしております。
具体的に申し上げますと、最終需要者である米国企業から最終用途誓約書、エンドユース認証と申しますが、これを提出させ、確認を行っているところでございます。
また、米国国防省からは、本件ジャイロが組み込まれたPAC2を一元的に管理すること及びPAC2ユーザー国以外への移転が厳しく制限されるということにつきまして、書簡により確認を行っているところでございます。
○畠山委員
今答弁があった内容で、書簡で確認しているということを押さえておきたいと思います。
ただ、一応今エンドユーザーという言葉は使われましたけれども、米国から第三国へ移転、移出することは可能だというふうに思います。
そこで、その際に日本政府の同意が必要となっているのかどうか、その仕組みについて確認をしておきたいと思います。
○田中(聡)政府参考人
防衛装備移転三原則の運用指針第三項、「適正管理の確保」の規定におきまして、「原則として目的外使用及び第三国移転について我が国の事前同意を相手国政府に義務付けること」となっていることは、委員御指摘のとおりでございます。
ただし、本条項につきましてはただし書きがございまして、その中に、部品等をライセンス元に納入する場合には、「仕向先の管理体制の確認をもって適正な管理を確保することも可能とする。」と、可能とされているところでございます。
本件移転につきましてはこれに該当するものというふうに考えております。
○畠山委員
ちょっとわかりやすく確認しておきたいんですけれども、つまり、日本政府として事前同意はできる、事前に同意する仕組みになっているということで理解してよろしいんですか。
○田中(聡)政府参考人
平成二十六年七月の国家安全保障会議における確認におきまして、先ほど答弁申し上げたとおり、原則は相手国政府に対して我が国の事前同意を義務づけているところではございますけれども、ただし書きの方を適用いたしまして、本件につきましては、仕向け先、すなわち米国でございますけれども、米国の管理体制の確認、これは先ほど申し上げました書簡等でございますけれども、これをもって適正な管理が確保されているというふうに認識しているというところでございます。
○畠山委員
つまり、原則はありますが、ただし書きもついていて、米国が責任を持つ形であるならば、どこの国でもその後可能になるというふうになるんですね。
PAC2を装備品として持っている国というのは、事前にも確認しましたが、十二カ国だったかな、日本も含めてある。その中には、国名を挙げて言いますと、イスラエルだとか、実際に戦闘で用いているのではないかという可能性の国の名前などもあるわけです。
したがいまして、今の閣議決定で方針とされている防衛装備移転三原則のもとで、責任は米国が持つ形となっているけれども、日本の製造部品など、現に起きている紛争にこれが使用される危険がある、可能性があるということは否定できないと思います。
ここに武器輸出三原則を変えてしまった大もとの問題があると我が党は指摘をしてきました。
日本は平和国家としての歩みがあり、それは国会の決意でもあり、この外為法などにかかわっても、私、衆参両院の本会議で上げられている決議というのを議事録に残しておきたいと思っているんです。
一九八一年に堀田ハガネ事件が起きたことを受けて、次のような決議が衆参両院で上げられています。
「武器輸出問題等に関する決議」、「わが国は、日本国憲法の理念である平和国家としての立場をふまえ、武器輸出三原則並びに昭和五十一年政府統一方針に基づいて、武器輸出について慎重に対処してきたところである。 しかるに、」この「方針に反した事例を生じたことは遺憾である。 よつて政府は、武器輸出について、厳正かつ慎重な態度をもつて対処すると共に制度上の改善を含め実効ある措置を講ずべきである。 右決議する。」
以上が全文です。
ここに出てくる昭和五十一年政府統一方針というのが、当時の三木内閣による原則全面禁止を指しています。
大臣に、運用面についてそこで確認をしておきたいと思います。
一片の閣議決定で、戦後日本の、非核三原則とともに国是とされてきた武器輸出禁止の方針が変わったことを我が党は容認できないと主張してきました。今取り上げたPAC2の例のように、紛争を武器の面で支える死の商人としての日本であってはならないというふうに私は思います。
そこで、外為法の運用の基本にかかわって、原則を変えたことで重大な問題が生まれているというような認識は大臣にあるでしょうか。
○世耕国務大臣
そのような認識は持っておりません。
平和国家としての基本理念ですとか、平和国家としての歩み、こういったものは堅持をした上で、今まで武器輸出三原則等ではこの例外化に関して特段のルールがなかったわけですけれども、それを包括的にしっかり整理をして、そして、新たな安全保障環境に適合する明確な原則を定めたものであります。防衛装備の海外移転に係る手続、歯どめを今まで以上に明確化し、内外に対して透明性のあるルールを定めたものだと理解しています。
一片の閣議決定とおっしゃいましたが、武器輸出三原則等は、国会答弁、また、官房長官談話であったわけですが、それをきちっと防衛装備移転三原則は、国家安全保障会議決定、そして閣議決定ときちっとした手続も踏んで、透明性のあるルールになっているというふうに思っております。
ですから、経産省としては、この防衛装備移転三原則になったからといって、何か積極的に武器輸出をする方針に転換したり、輸出を大幅に解禁をするというふうには理解をしておりませんので、外為法の運用についても、今までと何ら変わることなく、厳正かつ慎重に対処しているところであります。
○畠山委員
ただ、今回の原則では、国連安保理による制裁措置などが課せられていない場合、紛争当事国であっても武器輸出を可能にしている中身にはなっているんですよ。実際に紛争に加担することにならないのかという懸念は述べておきたいと思います。
運用面の根本にあるこの防衛装備移転三原則から武器輸出三原則へ戻すべきであることを強く求めておきたいと思います。
法案の中身にかかわって、次に、大学などでの研究、留学についてお聞きします。
本法案は、安全保障に関する技術や貨物、機微技術等が適切に管理されるために、輸出入にかかわる制裁の実効性を強化することを立法事実としています。
きょうも機微技術について中身のさまざまな議論がありましたように、整理するために、本法案で言う機微技術とは何を指すのか、改めて定義等をお答えください。
○飯田政府参考人
外為法におきましては、機微技術は政令において具体的に指定しております。
これにつきましては、通常兵器についてはワッセナー・アレンジメント、それから、核関連についてはNSGという原子力供給国会合、それから、ミサイルにつきましてはMTCR、ミサイル技術の規制会合、そして、生物兵器、化学兵器につきましてはオーストラリア・グループといったところで、どういうものを規制するかというのを合意しておりますし、それ以外にも大量破壊兵器関連の国際条約がございますので、こういったものを踏まえまして、通常兵器や大量破壊兵器の開発に使用される可能性のある貨物、そして、その設計、製造または使用に関する技術を機微技術あるいは貨物として指定をして規制をしております。
具体的に申し上げますと、政令で書いておりますのは、例えば、工作機械、あるいは、本日の審議にもございましたけれども、炭素繊維、あるいは高度な電子機器、こういったものが指定をされております。
○畠山委員
法案上は特定技術という言葉で示されているし、今ありましたリストで規制されている技術、加えて、経産大臣が安全保障上懸念し、輸出者等に通知した技術も含むということでよろしいですね。ちょっともう一回、そこだけイエス、ノーで確認しておきます。
○飯田政府参考人
お答えいたします。
今御指摘いただきましたのは、最初に私が答弁させていただきましたのはいわゆるリスト規制ということで、国際レジーム、国際会議で合意された個別具体的な品目でございます。
これに加えまして、それ以外の品目についても、キャッチオール規制と言っておりますけれども、輸出者の方が、それが大量破壊兵器に現に使われる可能性があるということを認知した場合、あるいは、経済産業大臣がそういうおそれがあるとして許可申請をするように通知するケースがございまして、こういう場合も規制に係らしめているということでございます。
○畠山委員
そういうわけで、私が述べたとおりでいいわけです。そんなに気になさらないで、イエスかノーかで答えていただいていい質問であったわけですが、ただ、大臣の安全保障上懸念する中身で範囲が決められていくということですから、政治判断次第となるという条項であることは一言指摘だけはしておきたいと思っております。
そこでその機微技術なんですが、大学等での研究や留学する外国人に対してもかかわってくることは、きょうもずっと議論がされてきました。
それで、法案のベースになっています経産省の審議会、安全保障貿易管理小委員会での中間報告を読みました。ここで、いわゆるみなし輸出が問題になってきています。
きょう議論されていますから、整理する上で、改めて、みなし輸出とは何で、この審議会でどのような議論が中心的にされてきたのか。端的でよろしいので、お答えください。
○飯田政府参考人
お答えいたします。
技術取引につきましては、国境を越えた時点で規制をするというだけでは限界がございますので、国内で居住者から非居住者に対して技術取引が発生した時点で、これを輸出が行われたものとみなすということがみなし輸出の定義でございます。
具体的に、国内におきましては、入国後六カ月未満の外国人の方を中心として、非居住者に対する技術取引をみなし輸出として規制をしております。
安全保障貿易管理小委員会、今御指摘ございましたけれども、こちらでは、このみなし輸出に関する我が国の課題について、有識者の方々によりまして議論が行われました。この中には、大学関係者ということで、国立大学、私立大学を代表した方の出席も得て議論を行っております。
今御指摘のありました中間報告におきましては、このみなし輸出管理につきましては、日本の制度は他国の制度と比べて管理する期間が短く、実効性の観点から課題があり、各国の管理体制や状況と整合性を図る観点からも、制度改正も含めた管理のあり方を検討すべきであるという御指摘がある一方で、「大学や研究機関の持つ性格、実施体制上の課題を踏まえ、「みなし輸出」の管理強化を行う場合には、国際取極や各国の管理状況を踏まえつつ、規制対象の適正化・明確化を図るとともに、大学等の取組を支援するための体制作りを並行して進めていくことが必要である。」という提言がまとめられてございます。
○畠山委員
きょうも大臣は、大学等での懸念といいますか、現在困っていることなどについても触れられていたと思うんです。それで、今述べられたように、大学関係者などからの強い懸念の声が上がっていました。
少しだけ紹介します。例えば、ことし一月十九日の小委員会三回目会合では、国立大学協会三島会長補佐から参考資料が出されて、国大協としての考え方、ですからこれが正式なものになると思いますが、次のような記述がありました。「現行の制度でも、「公知」の技術や「基礎科学分野の研究活動」に伴う情報の提供は、安全保障貿易管理の規制対象から除外されている。しかし、前者の定義は、すでに不特定多数の者に対し公開されたものに制限されており、学内や学会での教育・研究活動に適用し難いことや、後者の定義する基礎科学の範囲が必ずしも明確でないことから、各大学は個別事例における具体的な判断に苦慮している。」という考え方の基本が示されていて、要望しているのは、「大学で実施される研究の多くの部分を占める「研究成果の公開を前提とした研究活動」は規制対象から明確に除外するように、」という要望になっているわけです。
日本私立大学団体連合会菱山玲子さんからも次のような資料が出されておりました。「大学の技術情報(流出防止)管理に関する運用は、「誰が誰に何をどこまでどうすればよいのかが明確でない」ため、大学によってはリスクを避けるため過剰に安全サイドで運用する、場合によっては一部の海外国・地域・特定機関との交流に対して過度に萎縮してしまうということがすでに現状でも見られており、さらにその傾向が強まる懸念を強く抱きます。」と、明快なことを述べられています。
これは、研究、学問交流が過度に安全保障上の理由で萎縮してしまうということは、もちろんこれはあってはならないことだと思うんです。
大臣、この点は同意されますよね。
○世耕国務大臣
技術の移転というのは、国境をまたいで国外へ行くだけではなくて、国内での取引とか技術の受け渡し、これも、これだけ国際化が進んで外国の人たちが国内で活動しているという状況の中では、やはり、機微技術防止の観点からもそこはしっかり管理をしていかなければいけないというので、政府として検討をやってきたわけであります。
ただ、一方で、規制を実際に制度設計するに当たっては、きちっと行われているような国際的な経済活動とか研究活動、これの足を引っ張るようなことがあってはならないということと、外国人だからといって不当に扱うというようなこともあってはならないですし、あるいは、既にもう民間はかなりきちっとやっているわけです。そこに、民間に対してちょっと屋上屋を重ねるようなことになって、過度な負担になるようなことにならないようなこと、こういう配慮はやっていかなければいけないだろうということで、国際化を進めていくということと、一方で規制はしなきゃいけないというこのバランスも考えた上で、検討に検討を重ねた結果、まずは、輸出管理体制がまだ十分にできていない大学、ここにしっかりと理解を促進をしてもらって、大学での輸出管理体制の強化、そしてそれに対する支援策の抜本的拡充などによって、まず、国内における技術取引の管理が確実に行われる体制を整えることとしたわけであります。
制度的にどう対応するかということは今回の法改正では入れておりませんけれども、今後、関係者と丁寧に意見交換をしながら、大学からそういう声が出ているということも踏まえながら、しっかりと、特に研究活動とか留学生の交流といったことを過度に萎縮させることがないよう、留意をしていきたいというふうに思っています。
○畠山委員
今、留学生のこともあったので、重ねてなので、せっかくですから御紹介もしておきます。
その資料において、国大協においても私立大学においても、懸念や心配がやはり表明されているんですよ。国大協の資料でも、「過度な規制が導入されれば、留学生等の受入れにおいてマイナスの影響があるのみならず不当な差別が生じることも懸念される。」私立大学団体連合会の方でも、今でさえ、留学生や外国人研究者は銀行口座の開設なんかも非常に苦労されている、困難だということも紹介して、生活への影響とともに、機微技術の規制強化がされることになれば、希望する研究計画が達成できなくなるおそれから、不安を抱く留学生や外国人研究者がふえることが懸念され、日本の大学に留学、あるいは研究活動に従事することへのちゅうちょが広がることが予見されるとまで書いていらっしゃいました。
今回の改正で、大臣が今答弁されましたけれども、みなし輸出というか、こういうことが盛り込まれなかったことは、さまざまなこのような意見が反映されたものだというふうに理解してよろしいんですね。
○寺澤政府参考人
お答えします。
委員御指摘のとおり、安全保障貿易管理小委員会の場で大学の方から御指摘があったように、規制によって国際的な研究活動の阻害要因にならないようにすること、これについて要望がございましたし、また、大学における管理体制はまだまだ不十分だというようなさまざまな御指摘がございました。
そういうことを総合勘案をして、きょう御説明しているとおり、みなし輸出については、今回制度的な手当てはしません。
他方で、大学の体制強化は非常に重要だということで、きちっと丁寧に説明会を行い、また、機微技術管理のガイダンスについて明確化を図る、それから、アドバイザーを派遣するということで、まず、大学の体制を強化するということをしっかりと取り組んでいきたいと考えている次第でございます。
○畠山委員
そこで、最後に大臣に確認をしておきたいと思います。
国際的な研究と人事交流、研究者の育成については誰も異論はもちろんありません。しかし現実は、先ほどから紹介しているように、過度な萎縮が起きるのではないかという心配も報告されています。したがって、一定の必要な線引きが示されないと困るのは、研究現場であり、当事者である研究者であり、そして、未来ある若者たちだと思います。
前回、二〇〇九年の改正の後に省としてのガイダンスを出して、これも私は読みましたが、確かに、受けとめる現場がいろいろ考えて苦労するだろうなというふうに感じました。
このような、過度な規制はしないでほしいという要望をしっかり踏まえた明確な基準にするべきだと思いますが、最後に大臣、この点での見解を伺います。
○世耕国務大臣
我が国では、この規制対象を規定するに当たっては、ワッセナー・アレンジメントなど国際輸出管理レジームの定義を踏まえて、外為法の関係法令において規定をしているわけであります。
大学からは、先ほど御指摘があったように、規制の例外となる公知や基礎科学に該当する技術について、詳細な説明を加えることで明確化してほしいという御要望があることは承知をしております。
しかし、一方で、我が国の外為法は、先ほども申し上げたように、国際輸出管理レジームで決定された内容をできるだけ忠実に対応させる形で規制対象を定めているというところがあるものですから、さまざまな説明を加えることで逆に規制対象が独自のものになってしまわないよう、慎重な検討も必要であると考えております。
いずれにしろ、引き続き大学等の現場からの意見も丁寧に伺いながら、より適切な機微技術の管理が行われるよう、検討を重ねてまいりたいと思います。
○畠山委員
我が党の態度について最後に述べておきたいと思います。
そもそも論ですが、安全保障を理由にした、学問の自由が制限されてはもちろんなりませんし、もちろん、戦前のような、軍事研究へ協力させるようなことがあってはならないことは強調しておきたいと思います。
あわせて、外為法の運用については、きょう質問したように、安倍政権の積極的平和主義に基づく運用方針における問題点については、最後に改めて指摘をしておきたいと思っております。運用方針の転換を、憲法の平和原則を守る立場から今後も厳しく追及していくことは表明しておきます。
同時に、本法案にかかわっては、罰則、行政制裁の強化は、重大な経済犯罪に対するもので、限定的な趣旨と措置内容であると考えます。また、対内直接投資の規制強化については、運用方針は注視していきますが、多国籍企業の直接投資がグローバルに急増する中では、一定の規制が必要な場面ももちろん想定され得ります。
これらの点を今回の我が党としての賛否の理由とすることを最後に述べておきまして、私の質問を終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第7号   平成二十九年四月十二日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、原子力損害賠償・廃炉等支援機構法改正案に対し、反対の討論を行います。
原賠機構法は、もともと、福島第一原発事故の加害者である東京電力を債務超過にさせず、何度でも資金援助するとの閣議決定に基づき制定し、この間、八兆円以上の資金交付と出資によって、東電をいわば虚構の黒字決算にして救済し、延命させてきました。事故の加害者、原因者である東電は事故処理費用負担の全責任を果たすべきですが、本改正案は全くそれに逆行するものです。
反対理由の第一は、本改正案が新たな東電救済、原発延命策だからです。
本改正案は、機構に廃炉積立金制度を創設するものですが、事故炉廃炉の実施責任は形の上で東電が負うとしながら、巨額の廃炉費用、債務認識を回避して東電を債務超過にさせず、経営破綻を免れさせる一方で、その費用負担は託送料金の実質値上げ等で消費者にツケを回す仕組みをつくり、一切を経産省令に白紙委任するもので、容認できません。
第二は、新総特の二倍にもなった事故処理費用二十一・五兆円は、その根拠も責任の所在も曖昧で、将来天井知らずに増大するおそれが大きいものなのに、国会も国民もチェックできる仕組みがないものだからです。
とりわけ、資本主義の商取引の原則を覆し、改正電気事業法の趣旨に反して消費者の選択権を奪う賠償費の過去分なるものは、一片の閣議決定による国家の不当請求です。これを認めることは立法府の自殺行為であり、国民の、また消費者の理解と納得は到底得られません。
第三は、本法案の土台にある東電改革提言は、財界人中心の東電委員会による密室談合を国民に押しつけるものであり、提言が示す三段階の収益拡大のシナリオは、福島県民と国民の民意に反する原発再稼働と原発輸出を実現の条件とするもので、絵に描いた餅です。
廃炉・汚染水対策を国民的な合意と英知のもと確実に実施するためには、法制定時には想定されていなかった電力システム改革の環境下における原賠機構法の検証と総括が不可欠です。その上で、国の法的責任を認めた前橋地裁判決を真摯に受けとめ、原点に立ち戻ることこそ求められており、危険な原発を安全神話と国策民営で推進してきた歴代政府と国の責任、反省を明確にし、事故被害者に謝罪することです。
東電は法的整理して一時的に国有化し、賠償と廃炉の主体を再構築して、株主、メガバンクなど貸し手の責任を問い、原発利益共同体に応分の負担を求めて、国民負担の最小化を図ることを強調し、討論を終わります。

第193回国会 東日本大震災復興特別委員会 第6号  平成二十九年四月十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
法案の質疑を前に、やはり、今村大臣が福島第一原発事故による避難指示区域外からの避難者について、本人の責任だ、裁判でも何でもやればいいと発言したことについて初めにただしておきたいと思います。
この発言があった記者会見は、本法案、福島特措法改正案を本会議で質疑する日でありました。国の責任をどう果たすのか議論すべきまさにその日に、大臣は、区域外避難を本人の責任と発言されました。やむにやまれず避難している実情を全く理解していないものと断じざるを得ないと思っています。
そもそもは、原発事故が原因です。原発事故がなければ、誰もが平穏な生活を送ることができました。
今、住居の提供などを行っている自治体が各地にあります。私の地元北海道では、道営住宅の無償供与や、民間賃貸住宅や雇用促進住宅での家賃補助を行っています。ですが、大臣が避難は本人の責任とするならば、このような自治体の取り組みは不要ということになりはしませんか。自治体がこのように行っている住宅提供などについて、大臣はどのように認識しているのでしょうか。
○今村国務大臣
はっきり申しますが、私は、こうやって避難されたことが本人の責任だなんとは一切言っておりません。戻るか戻らないか、それは、それぞれ皆さん方の個々の事情があるから、それは最終的には御本人の判断です、そういう意味で言っているんです。
ですから、今言われたように、こういった原発事故によって避難されているということの責任は我々も感じているわけですから、だから、そういったいろいろな、住宅の提供等々をちゃんとやっているということであります。
○畠山委員
もう一度。私がお聞きしたのは、自治体が今行っている住宅提供についての大臣のお考えを聞きました。御答弁ください。
○今村国務大臣
ですから、自治体もそうでありますし、国としても、原発事故の責任といいますか、そういったことがあって、全面的にそういったことのサポートをしているということなんですね。
○畠山委員
いろいろな自治体によって取り組みはさまざまではありますけれども、避難を自己責任とすることによれば、このような各自治体が行っている取り組みにブレーキをかけることになりはしないかと私は危惧します。
北海道に週末で戻ったときに、避難された方から声もいただきました。直接御紹介しておきたいと思います。一部の抜粋です。
安倍首相と今村大臣は、きょう福島県内で、行かれたときのことですけれども、今回のことについて謝罪をしました、ですが、本来であれば、政府の言う自主避難者へ直接謝罪があるべきだと思います、避難者に寄り添ってきたというのなら、ぜひ一度、自主避難者と会ってお話をしてほしいです、特に、東京の避難者には、住宅支援の打ち切りによって家賃が生活に重くのしかかっています、そして、福島で生活している人たちも、必ずしも安全だと思って住んでいるわけではないこと、福島で、水や食べ物に気をつけ、洗濯物も外に干さない、子供たちの外遊びの時間を制限するなど、気をつけて生活している人が今もいます、帰っている人もいるじゃないかと今村大臣は言いましたが、安全だと思って帰っているわけじゃない、今回の施策の打ち切りで追い込まれて帰っているんですと述べています。
この方は私もよく知っていますけれども、福島にいる方々の思いも踏まえつつ、北海道へ避難した方々とも連絡をとり合って、支え合うことを大事にされてきた方です。どの選択をするか、ぎりぎりまで迷い、悩んだあげくにそうせざるを得なかったという声も寄せられました。
大臣、このように、実際に避難されている方の声をどのように受けとめますか。
○今村国務大臣
先ほど来言っておりますように、避難したことが本人の責任だなんて私は言っていないんですよ。
それを踏まえた中で、何回も言いますが、こうやって、いろいろな問題を抱えながら避難されている方については、できるだけ御相談に乗って住宅等の手当てもしながら、多分まだまだ十分じゃないかもしれませんが、そういったことでやってきたつもりでありまして、ぜひ、これからもそういった、丁寧にやっていくことを、これはしっかりとお約束をしたいと思います。
○畠山委員
丁寧にされていくことをお約束するとおっしゃるのであるならば、避難指示区域外からの避難者に会って現状を聞く必要はないのでしょうか、復興庁として。私は、こういう避難者から話を聞く機会をつくるべきだと。いかがでしょうか。
○今村国務大臣
ですから、先ほどから言っておりますように、皆さん方のお声は一番身近な福島県の人が対応していただいているわけでありますが、そういった方からの話もちゃんと我々のところにいろいろな形で伝わってきております。
それについて、では、国としてどうやってそれをサポートするかというようなこともやっているわけでありまして、そういう意味では、決して、避難者の方とお話をしていない、コミュニケーションがないということではありません。大丈夫です。
○畠山委員
いや、それならば、なぜ先ほど私が紹介したような声が出るのかということですよ。この間ずっと議論されていますが、深い不信が生まれているわけです。
大臣に対してもですが、この発言に対して、同時に、そもそも国の根本的な姿勢があらわれたのではないかとも言っていますよ。先ほどの方も、今村大臣の問題ですが、この発言は大臣だけの考えではないというところが一番の問題なんだと思っています、こう受けとめて述べておられます。
避難者の声をしっかり聞いてほしいというのは、私は北海道でも聞きましたし、改めて要求しておきたい。
大臣、復興庁として、このような避難された方々の話をきちんと聞く機会をつくるべきだ、もう一度要求しておきますが、どうですか。
○今村国務大臣
復興庁の皆さんも一生懸命やっております。
それで、例えば、具体例を言いますと、この間、支援団体等が実施される説明会とか交流会等がありますが、一例を言いますと、復興庁職員も、もう百八十回、二百回近くそういうところに行って、いろいろな説明もしてちゃんと寄り添っているということは御了知願いたいと思います。
○畠山委員
重ねて、避難者から強い要望があることを要求しておきます。発言の謝罪と撤回はもとより、国として、被害が今も続いている現状を直視するよう求めておきます。
本法案の質疑もしなければなりません。改正福島特措法案についての質問を行います。
本改正案の特徴の一つは、特定復興再生拠点区域での除染や廃棄物の処理費用を国が負担するということです。私は、東電の負担ではなく国費で進めるという方針の転換全体について問うておきたいと思います。
この方針は、昨年十二月二十日に閣議決定された、原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針に基づくものです。除染は東電に求償しないということです。
本委員会では、この福島特措法改正案を審議していますが、経済産業委員会では、今、原賠機構法改正案が審議されています。そちらの方では、東電改革提言をもとに、賠償二・四兆円のうち新電力なども〇・二四兆円を負担する、国民負担としています。
原賠機構法では賠償でも過去分として国民負担とし、こちら、福島特措法改正案においては除染で拠点にかかる分を国の負担とする、こういうことでよろしいんですよね、間違いありませんね。
○小糸政府参考人
お答え申し上げます。
本法案、昨年十二月の基本指針に基づきまして、今回改正案を策定したところでございます。
具体的には、改正法案の第十七条の十七第五項に規定されておりますが、特定復興再生拠点区域における除染の費用は国の負担としているというところでございます。
○畠山委員
それで、根本のところで、原賠機構法の話も今しましたけれども、東電を免責していくことになりはしないかという点で、根っこの同じことについて質問したいと思うんですね。
先週五日に、経済産業委員会で、私は、原発で裨益していた国民の過去分から賠償を負担するという問題を取り上げました。東電と消費者とでそんな契約はしていないのに、過去に使った分として新たな請求をするのかという質問をしたんです。
この委員会でも御紹介しておきたいと思うんですが、その際、東京電力から資料を提出してもらいました。それによれば、過去分とする一九六六年度から事故前の二〇一〇年度までの合計で、株主の配当収入は二兆五千六百三十三億円、メガバンク等金融機関の借入金の利息収入が六兆七千二百三十億円、合わせて九兆二千八百六十三億円にもなりました。社債の利息を含めたら、実に約十六兆円にもなりました。
東電や利害関係者へ責任に応じた負担を求めるのでなく、契約もしていない国民に過去分としてツケを回すようなことをして、納得できない、東電が賠償するのが当然ではないかと経済産業委員会で私は質問をしたんです。
そこで本改正案です。本案でも、拠点における除染費用も国の負担とすることとしています。先週のこの委員会でも、東電の責任を免れる、免責することになるんじゃないかと厳しい議論がありました。根本は、先ほど述べた、私も同じ議論だと思います。
改めて福島特措法を読みますと、九十六条に、事業者責任については求償を妨げない旨の規定があります。国費でなく東電に求めるべきが筋ではありませんか。
○今村国務大臣
今回の特定復興再生拠点区域の考え方につきましては、もう御存じかと思いますが、新たなステージといいますか、そういったことに対応してやるものであります。
御案内のように、帰還困難区域については、将来にわたって居住を制限することを原則とした区域としておって、それについて東京電力がそういった賠償等をやってきたわけでありますが、今回は、そういう意味で、まさに、先ほど言いましたように、新たなまちづくりをやっていくんだということでの政策的な判断ということでありますので、それは、国がそういうことを政策判断するなら、国の負担でこの除染をやりましょうということになるわけであります。
○畠山委員
新しいステージで政策判断であると。新しいと名がつけば東電の責任が消えるかのようなことがあってはならないと思います。納得できません。
先ほど言った、根っこでつながっている東電の責任を免れていく、免責するものではないかということについては、さまざまな批判の声が上がってきています。東京新聞、ことしの二月九日付ですが、城南信金吉原毅相談役が、先ほど紹介した過去分の国民負担とあわせて、このような厳しい批判をしています。「ひとえに原子力に絡む利権グループの保身以外、何物でもない」、こういうような厳しい批判を上げて、成り立たないのに無理に民間にやらせようと、原発事業についてさまざまやってきたことの矛盾が生じているということをここで述べています。
つまり、大原則は、東電に責任がある、これをはっきりさせなければいけないし、今回は、拠点で、国で負担をするのは新しいステージであり政策判断と言いますが、結局、根っこのところで東電を免責することにつながらないかということについては、厳しく指摘しておきたいというふうに思います。
後半で除染のあり方についても聞いておかなければいけませんので、時間をとって少し、環境省にきょうは来てもらっていますので、ただしておきたいと思います。
今回も、拠点における除染については国直轄で行うこととしています。しかし、除染については、過去にも不適正な除染がありました。環境省も、事業者に厳しい処分をするとしてきました。県民で除染を願っている方もいる中で、根底から信用を失うようなことがあってはもちろんなりません。
しかし、新たな偽装除染が発覚した問題についてただしておきたいと思います。
判明した場所は、浪江町上ノ原行政区。偽装の中身は、一次下請企業が、ずさんな作業で汚染された土を十分に回収できなかったため、別の農地の土を無断で削って数合わせを指示していたというものでした。
この事実については環境省も把握しているはずですが、まず概要を説明してください。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
今御質問のあった事案でございますけれども、平成二十八年の四月十五日に、除染を担当している事業者から報告があったものでございます。
具体的には、浪江町上ノ原行政区内にある農地でございますけれども、そこの除染から出た除去土壌を別の農地から発生したというような偽りの説明をしたと。また、その当該行政区の農地では、五ないし七センチの表土の剥ぎ取りということが契約の内容、指示であったわけでございますけれども、一部の農地で指示どおり施工が行われていなかったという事例が確認をされてございます。
環境省といたしましては、本件につきましては、事業者の報告を受け、平成二十八年の四月二十二日に、事業者に対して口頭で厳重注意を行っているところでございます。
○畠山委員
今ありましたように、厳重注意は行われておりますが、その処理について、またその情報が本省と福島県の環境再生事務所でどのようにされていたかということは、確認しなければならないと思います。
汚染土を十分に回収できずに、ほかの農地から土を集めてきたということであれば、簡単に言えば、きちんと除染ができていなかったということになります。ほとんど除染ができていない場所もあったとも聞いていますが、これは環境省として、現地に足を運んでどのように調査されたんでしょうか。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
御指摘の上ノ原行政区の除染現場につきましては、受注者からの報告を受けまして、現地において環境省の福島環境再生事務所の職員が状況の確認を行っているところでございます。
○畠山委員
それはいつからいつの期間ですか。
○高橋政府参考人
職員がこの報告を受けて現地を確認したのは四月二十八日というふうに報告を受けております。
○畠山委員
除染のごまかしについては、今言ったように、現地に足を運んだというのがあります。
同時にこれは、先ほど述べたように、別の農地から土を持ってきたという問題があります。簡単に言えば、窃盗にならないのか。この点はどのように地権者を含めて解決がされたのでしょうか。
○高橋政府参考人
予定よりも厚く、多く削り取ってしまったというところにつきましては、まず地権者に対する御説明でございますけれども、線量は十分に低減をしているということは説明してございます。個別に説明をさせていただきました。
地権者の方からは特段御意見、御質問はなかったというふうに聞いてございます。
○畠山委員
それはいつですか。
○高橋政府参考人
地権者の方々に御説明をしましたのは、これはちょっと報道がされた後ということでございますけれども、本年三月三十日から四月四日にかけて、地権者の方々に個別に説明をさせていただきました。
○畠山委員
今ありましたように、昨年この事案が起きていたけれども、実際に地権者に説明を行ったのはことしになってからということでありました。
もう一つ、事実の確認をしたいと思います。今言った事案について、環境再生事務所から本省へはいつ報告がありましたか。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
本省に報告がございましたのは本年三月十六日でございます。
○畠山委員
つまり、一年間、環境再生事務所としては、そのまま言ったことを真に受ければ、本省へは報告をしていなかったということになります。
あわせて、地権者についての説明も、報道は地元紙などでもされていましたが、それがあった後に地権者に対しての話をしたというのが経過の事実ということになります。
本省へ報告があった三月十六日というのはどういう日かといいますと、実は、この問題というのを我が党のしんぶん赤旗で報道した日なんです。日曜版といいますが、木曜日に版が出ますので、それで社会的に明らかになるまで本省には報告をされなかったということに今の答弁ではなるかと思います。
環境省として、今回の除染については、会見やさまざまなものでは、不適正なものではない、後から除染したから問題もないと。そして今、事実経過も明らかにしましたが、本省に報告も一年間なかった、これでも問題がなかったと言うんですか。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
本件につきましては、冒頭申し上げましたとおり、契約内容に合わない工事をしていたということと、除去土壌のフレコンの、出た場所について虚偽の報告をしていたということで、そういう面では適切ではなかったわけでございますけれども、放射性物質汚染対処特措法の違反があったかといいますと、そういうことではなかった。それから、周囲の環境を汚染するおそれがある、そういう意味での不適切な除染ではなかったということで、特に公表等は行っておりませんでした。
ただ、あと、地権者の説明ということにつきましては、一点補足いたしますと、その後、現地を確認して、フレコンの数が少なかったところについては、十分線量が下がっていないところがあったということで、そこは追加除染を指示いたしました。追加除染をする際には、その追加除染の対象となる地権者の方々には当然説明をした上でさせていただいてございます。
そういうことで、今回については、法令違反ということではなく、また、その周辺への悪影響があるというものではなかったので、あえて本省まで報告がございませんでしたけれども、今後、やはり地元の信頼をしっかりと得ていくという意味で、本省への報告の仕方についてもしっかりとまた改めて検討していきたいと思っております。
○畠山委員
根本的な除染の信頼にかかわる重要な問題だと思います。実態は、やるべき除染が行われず、偽装されていたことではないんですか。
なぜこの問題を今取り上げているかというと、本法案でも、国直轄で、新しく拠点とする、これを除染するというふうになりますが、そもそも除染については過去から環境省においてさまざまな問題があり、二〇一三年一月十八日には、いわゆる手抜き除染が明るみになった後で、環境省除染適正化推進本部で除染適正化プログラムをまとめました。
改めて、私、これを読み直したんです。冒頭にこう書いてありました。「除染は、地域住民の信頼の上で成り立っているものである。このことを再度、全ての除染に携わる者は認識し、避難されている方々の期待を裏切ることがあってはならない。」こうあるんですね。
こういう立場で、そのプログラムには環境省の対応についての総括もされていました。福島環境再生事務所から本省に情報が上がっておらず、本省が把握していなかったのではないかとの問いを立てて、除染に関して多くの質問や苦情が寄せられているという認識を持っていたが、福島環境再生事務所において当時適切な対応がとられていると認識していたと書いてある。そこから、本省においては、情報を区別して対応を判断する担当者が不明確だったと当時総括をしています。
しかし、今回の事案も結局は本省に報告されていないとの答弁でした。
本省は環境再生事務所に任せて、環境再生事務所は元請に任せているということになっていないのか。このプログラムをまとめてから四年間でまた過去と同じようなことに戻っていないのか。
そこで聞きたいわけですが、本省で把握したのがことし三月十六日だと先ほど答弁しましたが、それ以前に本当に情報は本省に入っていなかったんですか。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
本案件については、本省が報告を受けたのは、先ほど御答弁しましたとおり、本年の三月十六日でございます。
○畠山委員
重ねて申し上げておきますが、今回の法案に係る拠点の除染も国直轄です。うそやごまかしが当然あってはいけません。
当時のそのプログラムをもとに、不適正な除染について環境省の除染情報サイトがホームページでできていますが、そこから通報できる仕組みもつくられました。その資料によれば、そのプログラムの二〇一三年当時から昨年十二月末まで、不適正除染の通報は累計九十八件ありました。うち国直轄の分は四十件ありました。
これは事実の確認ですが、四十件のうち、通報どおりの事実として確認されたのは何件だったのでしょうか。
○高橋政府参考人
お答えいたします。
御質問ございました不適正除染一一〇番でございますけれども、これは平成二十五年一月から一般の方からの通報を受け付けてございますけれども、二十八年十二月末の時点で九十八件の通報があり、そのうち直轄関係は四十件ということでございます。
これはさまざまな内容の通報がございます。例えば作業員がくわえたばこをしていたとか、そういうことも含めてさまざまございますけれども、その中で、いわゆる不適正除染ということで確認をできたものは二件でございます。
一件は、除染作業で発生した可燃物を破砕しない状態で土のう袋に入れないまま穴を掘って埋めていたという通報がございまして、これは事実が確認できたため、施工管理等の徹底や体制強化を図るとともに、受注者や下請、関係会社を厳正に指名停止ということで処分をいたしました。
もう一件は、除染で発生をした土壌等と廃棄物であるその資材のこん包のひも、こういうものが混在してフレキシブルコンテナに入れていたという通報がございまして、これも事実関係が確認をできたために、受注者に対しまして内容物の分別を徹底するよう指導を行ったという経緯がございます。
○畠山委員
通報内容を私も読みましたが、かなり具体的な通報もあります。しかし、今答弁があったように、その通報どおりの事実を確認できたのは二件でした。
もちろん、三十八件の残りの通報が正しくなかった可能性はありますが、先ほどの上ノ原行政区の例を考えれば、環境省の言い分をそのまま額面どおりに受けとめるわけにはいきません。しっかり除染されたのか。県民の不安に応えるため、この上ノ原行政区を含めて、先ほどの通報三十八件分、本省として再調査すべきではありませんか。この点を最後に伺います。
○高橋政府参考人
再調査ということでございますけれども、この四十件のうちの三十八件につきましては、その通報があった時点で直ちにその事実関係の確認を行っております。その中で、もちろん確認ができないものもございますけれども、全てその時点で三十八件についても確認を行っておりますので、その時点で不適正除染に相当する事実は確認できなかったということでございます。そういうことでございますので、新たな事実が出てこない限り再調査は必要ないというふうに考えております。
○畠山委員
国直轄の、足元で不適正な除染が行われていたら根本から信頼がもちろん損なわれることになります。こういう事態が発覚して、安心して帰還せよと言えるのでしょうか。
今村大臣、これが今、福島での現実の一端です。大臣は記者会見で、国はやるべきことをやっている旨の発言をしていますが、除染一つ見ても、このような疑惑があります。国の責任よりも避難者の自己責任を押しつける大臣は、復興行政を担う資格に欠けると言わざるを得ません。今村大臣の辞任を求めて、私の質問を終わります。

第193回国会 農林水産委員会 第7号   平成二十九年四月六日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは、参考人質疑が午前中に行われ、貴重な意見もたくさんいただきました。この参考人質疑をセレモニー化することなく、意見を踏まえて審議を深めてこそ、真摯な国会審議のあり方だと思います。遠くから来られている参考人に対する本委員会としての務めでもあります。
そのことを改めて確認した上で、本法案にかかわって、二十分ですので、私からきょうは、法案第五条、農業者等の努力と、事業再編、事業参入にかかわって質問を行います。これは、きょうの参考人質疑でも意見が集中していた点ですので、改めて確認をしたいと思います。
まず、法案第五条、農業者等の努力についてです。
私は本会議で、言われなくても農家は努力を行っているじゃないかとして、なぜ農家の自主的選択を束縛しようとするのですかと質問しました。そのことに対して大臣は、本法案の目的を実現するために必要だと述べて、もって農業者に強制しようとするものではないと答弁されました。
ですが、その前の部分を通して改めて議事録も読んでみても、束縛しているようにしか聞こえないんですね。いわゆる良質で低廉な資材の供給などを農業生産関連事業者が行うから、その取引相手である農業者がこのような努力を行う事業者を利用しなければ、その実現につながってまいりませんという答弁を聞けば、やはりこれは選択の幅を一定の中へ閉じ込めているように聞こえるわけです。強制はしていなくても、客観的に束縛しているのではないのでしょうか。
そこで、確認したいことがあります。
食料・農業・農村基本法にも農業者等の努力という項目があります。中身は時間がないので述べませんが、その基本法の理念に基づくように農業者の努力があると抑制的に書かれていて、これは先日、細田政務官が、第九条に類似的規定があるという答弁もされました。
ただ、この本法案にある、今私が述べた農業者等の努力に盛り込まれている内容は、基本法からしても逸脱しているように思います。類似ではなく、整合性が問われるのが法律ではありませんか。その整合性について、まず答弁してください。
○山口政府参考人
お答えいたします。
本法案第五条は、良質かつ低廉な農業資材の供給や農産物流通等の合理化の実現を図るため、農業者は、有利な条件を提示する農業生産関連事業者との取引を通じて農業経営の改善に努める旨を規定したものでございます。
他方、先生から御指摘のございました食料・農業・農村基本法第九条では、農業者は、農業及びこれに関連する活動を行うに当たって、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めるものとするという規定になってございます。ここで言う基本理念といいますのは、基本法の中に規定されております、食料の安定供給の確保、多面的機能の発揮、また農業の持続的発展、農村の振興、こういう四つの理念の実現を図るということで規定したものでございます。
その両方の規定につきましては、農業者に対して、それぞれの法律の目的の実現のため、一定の行為を行うよう努めるべきことを定めるという点で共通性があると考えておるところでございます。
さらに申し上げれば、法案の五条により農業者が努めることとされている行為は、この食料・農業・農村基本法に定める基本理念のうち、農業の持続的な発展のために主体的に取り組むべき行為に入るものでございまして、基本法と農業者の今回の努力規定、これとは整合性がとれているというふうに考えております。
○畠山委員
そうですかね。
ちょっと時間が少ないので指摘だけにとどめておきますけれども、ただ、今回の、きょう午前中も、かなりこの農業者等の努力で出てきたんですけれども、そもそも、法律で、有利な条件で取引しろというふうに入っているわけですよね。それで、きのうから、有利な条件というのは何かと。きょうも、さまざまな陳述人からも、そんなこと、そもそもなぜ法律に書き込む必要があるのかという意見が相次ぎました。有利な条件というのは、安いことなのか、品質がいいことなのか、持続して契約することなのか。それで、先ほど、民進の小山議員ですか、一定の価格があっても、その後長もちするのであるならば、それはそれで選択に値するわけであります。
そこで、きのうの委員会でも、これは細田政務官も、総合的に勘案して各農家で判断してほしい旨の答弁をされました。でも、よくよく考えれば、どんなときでも総合的な勘案はしているはずです。では、一体何のためにこの項目を置いたのか。有利な条件というのは何で、なぜこんな項目を置く必要があるのか、改めて問いたいと思います。
○山口政府参考人
第五条に規定をしております有利な条件でございますが、農業生産関連事業者が提示する有利な条件、これにつきましては、価格のみを指すのではございませんで、農業資材の場合ですと、品質や性能、さらに、資材の配送条件や、機械等についてはメンテナンス、こういったサービスの面、こういったものも勘案することになりますし、農産物流通等の場合については、取引期間や決済サイト、また、気象条件等で不作で欠品が出たときの対応、こういったことも総合的に勘案して有利性を判断することを考えているところでございます。
なお、この規定については、個々の農業者が有利な条件かどうかを判断することを前提としたものでございまして、判断基準も各農業者ごとに異なってくるというふうに考えております。
○畠山委員
個々の農業者の判断が違うのはそれは当たり前でありまして、だからこの条項を何で置くのかということになるわけですよ。存在意義が問われる条項ではありませんか。
なぜここにそんなにこだわっているかといえば、本法案の中心的目的の一つにかかわってくるからだと私は考えています。農業の市場化を早く進めていくためには、農協等はもちろん、農家へもその方向づけをしていかないとできないからであります。農家の経営に口出しするようなこんな失礼なやり方だという問題もありますけれども、大きな構造改革の一環としてこの規定を置かざるを得なかったというふうに思うんですね。
そこで、かかわっていきますので、事業再編、事業参入についても聞いておきたいと思います。
私は、本会議でこの点についても質問しました。大臣は、実施指針について、第十七条二項の項目を挙げて答弁されました。いわく、合理化の目標や事業再編の目標、実施期間などなどです。別の言い方をすれば、それ以外の要素は考慮されないのかということです。
例えば、本会議で私は国籍要件がないじゃないかということを質問したのに対し、大臣は、外資が参入することも、これを活用することも可能であると答弁をいたしました。
では、それ以外にも、株式会社、社団法人、NPO法人、いろいろありますけれども、さまざまな経営形態やあるいは財務状況の健全性などが問われないでいいのか、実施指針を満たせばどのような者でも可となるのかどうか、その点を確認したいと思います。
○山口政府参考人
お答えいたします。
先生から今、事業者の経営状況や財務内容の健全性、こういったものを考慮しないのかというお問い合わせでございますが、事業者の財務内容の健全性につきましては、事業再編計画の記載事項でございます事業再編の目標の中で記載させることを今検討しているところでございます。具体的には、工場等の稼働率やその営業利益、こういったものを改善していく上で重要な要素でございますそういう財務内容の健全性の目標を記載させることを求めることで今検討しているところでございます。
また、事業者の経営状況や財務内容の健全性を確認するために、その事業者の事業報告書や財務諸表等を事業再編計画の認定申請の添付書類として提出すること、これも検討しているところでございます。
○畠山委員
それらの検討は、省令などに入れ込むということですか。
○山口政府参考人
実施指針につきましては、これは大臣が定めるということになってございまして、告示という形で公表したいというふうに思っております。
○畠山委員
ひとまずその点だけは確認しておきます。
第十七条三項についても確認しておきたいことがあります。実施指針の変更について書かれているところです。経済事情の変動により生じたときに変更すると書かれています。ただ、これは幅のある表現でして、定義がなければ、恣意的に指針を変更できることも可能となるのではないか。
この経済事情の変動というのは何を指すのか、具体的に答弁願えますか。
○山口政府参考人
十七条第三項の経済事情の変動により必要が生じたときの見直しの規定の趣旨でございます。
これは、例えば国内の規制の改正が行われたり、また貿易ルールの変更など農業生産関連事業を取り巻く経営環境が大きく変わったと認められるような場合、これを想定しております。また、実施指針につきましては、パブリックコメントをかけて制定することを考えておりまして、変更の際にもそういった手続をとりたいと思っております。
○畠山委員
では、パブリックコメントなどで一定の反映を公的にしていくということの理解で確認しておきます。
それで、つまり、この実施指針に基づいて進めていくということになれば、私、先ほど述べましたけれども、恣意的な状況にならないのかという懸念を持ったわけでした。
それで、今回、事業再編や事業参入を促進する法案ですから、これから質問しますけれども、それが進んでいるかどうかということをチェックしていくということに法案上はなっています。不断のチェックが必要になるわけであって、そのような性格を持って調査がされることになるかと思います。
そこで、今農水省がどのような調査を統計的に行っているのかを事実の上で確認しておきたいと思います。農水省として、毎月々、実施指針に関連するような分野での統計調査というのは何がありますか。
○佐々木政府参考人
お答えいたします。
農林水産省が現在公表している統計の中におきまして資材と流通に関係しているものといたしましては、農産物の生産者販売価格や生産資材の価格の動向を把握するための調査、青果物等の生産者段階から小売段階までの各流通段階別の経費を把握するための調査、青果物や食肉等の卸売数量や価格を把握するための調査などを実施しているところでございます。
○畠山委員
その上で、本法案は附則において、法施行から一年以内に調査をするというふうにしています。これら今答弁あった調査だけでなく、新しい調査をするということになるのでしょう。しかも、国外の調査もするとされています。ということは、国内はそうですが、国外とも比較するということになるわけです。
しかし、韓国の資材などについてもさんざん議論もしてきたですし、ただ安さだけを調査して並べてもだめなわけで、経営体もそれぞれの国で違うし、自然条件も違うし、流通条件も違うし、根本的に各国の農政が違うわけですから、一体どんな調査をしてどのように生かすのかということは問われなければいけない、今のうちに確認しなければいけないことだと思います。
毎月々やっているような調査と別に、どのような新しい調査をするのですか。
○山口政府参考人
お答えいたします。
法案第十六条で国内外の調査を行うという規定を入れております。この調査を実施するに当たりましては、国内及び海外における農業資材や農産物流通等に関する実態を詳細に把握することを考えております。
具体的な調査内容については、これも今後検討していくことになってはおりますが、現時点で考えているところで申しますと、市場規模や主要企業のシェア等の業界構造、また生産、流通、販売のそれぞれのフロー、法規制の運用状況、こういった情報を収集することを考えているところでございます。それに当たりまして、既存の統計等により把握できるものについてはこれを最大限活用することにいたしますが、既存の統計等ではわからないようなもの、これについては、新たに調査を行うこととなると考えているところでございます。
○畠山委員
今挙げられたような調査の内容というのは、別に法律にするまでもなくできるものですよ。しかもそれは、挙げたものというのは、本来、この法案をつくる前提となる中身ではないんですか。農水省設置法でさまざまな所掌業務はありますけれども、調査などは妨げられていないはずです。
今述べたような調査というのは、そもそもこの法案を出すために前提となるような中身なのではないんですか。何で今挙げたようなものは設置法でできないんですか。
○山口政府参考人
十六条の調査と申しますのは、十六条のところに規定しておりますように、八条以降の国の施策の実施状況を踏まえまして、どういった状況に現在の業界等があるかということを調査するものでございます。その調査を踏まえて、十六条第二項では、施策のあり方について検討を加えるというふうに規定しておりまして、この検討の前提となるものでございます。
そういった観点で、検討を国としてこの法律に基づいて実施していくということが規定されておりますので、あわせて、施策の検討に資する調査についても規定しているものでございます。
○畠山委員
でも、先ほど、その調査項目はこれから検討すると答弁していたじゃないですか。一体、何のための項目なんですか。最初から調査ありきで、それをてこにして何か動かしていくというふうな捉え方をされても仕方ありませんよ。
つまり、法施行から一年以内に調査するとして、二年以内に検討というのが附則にあります。情勢や動向の調査だけなら今でもできます。一年たって変化をたどるための調査というんだったら、その項目を今からきちんと検討しておかなければ、もうつくっておかなきゃならないのに、いまだ検討中。しかも、一年で資材価格や事業参入が一気に進むものなんでしょうか。一体何のために一年や二年というふうにやったのか、全然わかりません。
きのうから、その年限についてはPDCAサイクルに基づくものという、一般論としての答弁はありましたが、実態として、この法案が目指す道筋と一年後に出る結果というものは、そう簡単に出るものではないでしょう。
そう考えると、調査が目的ではなくて、誘導が目的として作用することになりませんか。そのための調査とならないでしょうか。これは大臣に見解を伺いたい。
○山本(有)国務大臣
御指摘のとおり、十六条の五年と申しますのは、国が講ずる施策についてのPDCAサイクルというところは御理解をいただいたわけでございます。
そして、一年以内というこの特例、法施行の日からおおむね一年以内という条項を設けておりますのは、国の緊張感、国のいわば努力義務としての一年というように御理解をいただきたいと思っておりますし、私は、この間御質問にお答えしたように、一年以内に調査を行うと正確性が担保できるというようにもお答えしておりますが、その真意は、調査を法施行後おおむね一年以内に行うことによって法施行直後の状況を正確に把握できて、それを基点として、法の施行による効果をしっかりと把握していきたいという、国に対する責務を課したというつもりの条文であるというように御理解いただきたいと思います。
○畠山委員
国としての責務と言いますが、調査をされる方としてはたまったものじゃありませんよ。だって、一年で結果が出ないようなことを求められて、それで、その出てきた調査で一年後にまた検討して、すぐ改革を迫られていくというスキームじゃないですか。
思い出すのは農協法の審議です。あのときも、上からの改革ではないかと議論し、私も、当選間もないころでしたが、必死に質問しました。当時問題になったのは、農協の性格を変えることになりはしないかということです。
最後に一問お聞きします。
本法案で第五条に定められている、「農業者の農業所得の増大に最大限の配慮をするよう努めるものとする。」努力規定がありますが、しかし、農協法は第七条で義務規定として同じようなことで書かれています。
結局は、このような調査などもてことして、義務的に、いわゆる上からの改革となりはしませんか。大臣、最後に伺います。
○山本(有)国務大臣
御指摘のように、本法案の五条三項は、農業生産関連事業を行う農業者の組織する団体、これは農協も入るわけでございますが、その皆さんが努力いただく、「最大限の配慮をするよう努める」努力義務規定でございます。
御指摘の農協法の七条二項、ここには、「組合は、その事業を行うに当たつては、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」という書き方でございまして、こちらは義務規定というように解釈をするところでございます。
○畠山委員
時間なので終わりますが、今、なぞっただけの答弁だったと思います。
終わります。

第193回国会 経済産業委員会 第5号   平成二十九年四月五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
質問の順番を調整してくださった関係委員にまず感謝を申し上げます。経産委員会で初めての質問になりますので、世耕大臣、よろしくお願いいたします。
早速なんですが、法案にかかわって質問を行います。
本法案は、もう既に朝から議論がされているように、東電改革提言を受けてのものでありますが、この中身を中心に質問する前に、やはり、東電改革・一F問題委員会での議論の内容、その公開についてを初めに確認しておきたいと思います。
東電のあり方や、廃炉または賠償、その費用などは、大きな国民的関心事であることは間違いありません。国民負担がふえるのではないかということなどの懸念、報道ももちろんありました。
世耕大臣も、本会議で、「福島第一原発の廃炉は、世界にも前例のない困難な作業であり、」「廃炉に要する資金を具体的かつ合理的に見積もることは非常に困難」と答弁されました。これまでの、従来の認識だと思います。
そうであるならば、長期にわたる廃炉や賠償に関する議論を一F問題委員会では行ってきたわけですから、後世の検証にたえ得るべく、委員会の会議録の公開は必須ではないかと私は考えます。
ですが、この点を我が党が本会議質問を行った際に、大臣は、「検討内容が個社の経営問題に直結することもあり、会議自体は非公開の扱い」と答弁しました。概要や資料は原則公開で、その後ブリーフィングなども行ってきたということなどもこれまでも随時話されていましたが、しかし、事は個別企業の問題にかかわらない、公益性がある事柄だと思います。したがって、公開する重要性の方が大きいと思います。
大臣に伺います。
現時点の議論においても、この委員会などで当然必要なことだと思いますし、後世の検証や今後の検証などの点からも、内容を公開する意義はあると思います。そうすべきではないか。大臣の考えをまず伺います。
○世耕国務大臣
今おっしゃっていただいたように、この東電改革委員会では、個社に関する情報も扱う、そして委員の皆さんに闊達に議論をしていただくという意味で、いわゆる議事録を全部公開するのではなくて、議事の概要と使った資料を原則公開するという形にさせていただきました。
結局、後世の評価にたえるべきものというのは、これは私は報告書本体だというふうに思っています。それがまさに、この東電委員会の皆さんが議論した結果としてまとまったものでありますから。
このように、議論を、例えば国民の関心が高いとか、後世に評価されなきゃいけないというようなテーマの有識者会議で、ほかにも同じようなことになっているのは幾つもあります。例えば、戦後七十年談話をまとめた有識者懇談会は、発言者名を付さない議事要旨のみの公開でありました。安保法制懇も同じく、発言者名を付さない議事要旨の公開でありました。未来投資会議は、議事要旨を公開して、一定期間後、議事録公開というスタイルをとっています。それぞれいろいろなスタイルをとっているんだろうというふうに思います。
私は、個社の問題にかかわりますから議事録は公開はできないけれども、なるべくどういう議論をしているかということは世の中にお知らせしなきゃいけないということで、委員長にブリーフィングをしっかりやってもらいました。
九回会議が開かれていますけれども、例えば六回目なんかは、委員会本体よりも長い時間、委員会本体は百十四分ですが、ブリーフィングは百六十九分やっている。これはトータルしても、委員会自体は千百十四分やっていますが、ブリーフィングにかけた時間は九百三十八分。
だから、ほぼ、かなり正確に中身について、個社にかかわるところはさわらないまでも、議論の雰囲気とか状況ということについては、委員長からのブリーフィングで十分世の中に伝えているのではないかというふうに思っています。
○畠山委員
議論の経過や、後でも触れますけれども、さまざま、間に新潟の県知事選挙があったりとか、情勢の変化があったと思います。ですから、ほぼ同じようなことを話しているのであるならば、ますます公開する意味は、該当する部分だけはわからないようにして公開することも可能ではないかと思うんですよ。
それで、なぜこんなことを私が質問したかといえば、そもそもこの会合が、密室で進めることが既定路線だったのではないかという疑いがあります。
東京新聞二〇一六年十月二十八日付で、この一F問題委員会が複数回の密室会合を持っていたと報じられました。報道によれば、「廃炉費用試算の前提となる廃炉に要する期間に関しても議論されたもよう」とされて、当時の報道ですが、その会合の主催者や費用負担、議事録の有無については「経産省は回答していない。」とのことでありました。この後も、大臣としても、記者会見で、非公式会合なるものは存在していないと答えつつ、個別の資料配付や事前説明などはあってもおかしくないとも記者に答えています。
これは事務方で結構ですが、この呼び方が非公式会合なのか事前説明なのか、どちらでもいいんですけれども、そのときの記録というのはきちんと残されているんですか。
○村瀬政府参考人
これまで東電改革委員会は、昨年十月五日から本年三月二十八日まで計九回開催しておりますが、これら以外の日程で同委員会を開催した事実はございません。
○畠山委員
委員会の正式な会合としては九回だと思います。その呼び方は別として、世耕大臣が記者会見でも言っていたように、資料配付や事前説明などの会合の記録があるのかと私は聞いています。
○村瀬政府参考人
もちろん、限られた時間で円滑な議論を行うに当たりまして、参考となるような背景情報の提供等を行うようなことはございましたけれども、公式、非公式を問わず、同委員会を開催した事実はございません。
○畠山委員
何かかみ合っていないような感じがするんですけれども。
公式、非公式を問わず、九回やったというのは、それは公式のものですからもちろんわかります。それ以外にも、大臣も記者会見で、事前説明をするとか資料をお渡しするとかという機会はあるだろうということは答弁されたんですよ。だから、そのときの記録があるんですかというふうに素直に聞いているだけです。
○世耕国務大臣
まず明確に申し上げておきますが、非公式会合というものはありません。
私も記者会見で申し上げたように、各委員のところを回って資料をお配りする。事前にそこで質問されたら、これはこういう意味ですよというぐらいの解説はする。これは、もう本当に資料配付の延長でありますから、当然、記録のようなものは残っていないと思います。
○畠山委員
記録のようなものは残っていないと思うという大臣のお考えですが、それでいいんですか。
○村瀬政府参考人
そのとおりでございます。残っておりません。
○畠山委員
記録は残っていませんが、会合する際は自費でやるわけではありませんので、費用というものは拠出されているんですか。そのことだけ、あと確認しておきます。
○村瀬政府参考人
通常の説明等で費用たるものは余り発生しないと思いますけれども、費用というものは発生していないということだと思います。
○畠山委員
通常発生していないと思いますが、発生していないと思いますと。よくわかりません。もう一度だけ、わかりやすく答弁してください。
○村瀬政府参考人
かかる費用は発生してございません。
○畠山委員
さまざまな、この一F問題委員会の議論というものは、この後も触れると先ほど述べましたが、非常に大きな意味があると思っています。
ですから、我が党としては議事録の公開は要求しておきたいと思っておりますが、いずれにしても、この問題について、透明性や公開の問題などは、先ほど、午前中からずっと託送料金のことも含め、出ているだけに、国民的関心と、東電や国の責任の範疇ということにおいて検証はいつも必要な分野だと思いますので、重ねて要求はしておきたいと思います。
それで、資料もお渡ししていますが、提言の方で改めて確認をしておきます。
東電改革は三段階の中身でまとめられておりました。第一段階が、送配電コスト改革による廃炉や賠償費用の確保。第二段階が、柏崎刈羽原発の再稼働。第三段階が、送配電と原子力で他社と共同事業体設立。海外の原子力事業の展開ということも念頭にされています。
これは、私風にまとめれば、国民へ費用のツケを回すのではないか、なおかつ、書いているとおり、再稼働は柏崎刈羽で前提とされておりますし、さらなる原子力事業の展開ということが特徴であると思いますが、何より本質的には、東電の救済ということにならないのか。事故の当事者である東電が最後まで責任を持って行うというのが大原則と大臣は常々おっしゃっています。ただ、実際にこれをやっていったら有限責任になりはしないかということは、この後議論させていただきたい。
まず大臣に初めに伺いたいのは、第三段階までありますけれども、全般的に、この提言の特徴はどこにあるとお考えになりますか。
○世耕国務大臣
先ほどおっしゃっていただいた三つのステップで成り立っているというところが一番のポイントだというふうに思いますが、これを、まさに経営の現場、特に、厳しい経営の現場を経験してきた経営者の皆さん方が議論をしてつくっていただいた。そして、東京電力の廣瀬社長がオブザーバーとして参加をして、この議論にある程度参加をしながら、必要な東電の経営情報も一定程度出しながら、きちっとしたものがまとまっていった。極めて、実行可能性、実現可能性のあるものができてきたというふうに考えております。
特に第一段階の、年間五千億円のコスト削減等によって収益を確保して、それを廃炉や賠償の費用に充てていくというところが一番重要なポイントではないかというふうに思っています。
○畠山委員
今の大臣の答弁で、実現可能性という言葉をキーワードに、この後、私の方からも質問していきたいと思います。
それで、まず第一段階。私は国民への費用のツケ回しじゃないかと述べましたが、その点について伺います。
託送料金への上乗せが提起をされています。これもきょう朝から議論がされてきましたが、実際は電気利用者の負担となるのではないかというふうに思います。
そこで、きょうは細かく紹介しませんが、読売新聞の二〇一六年十一月十六日付で、一F問題委員会でも託送料金の値上げには慎重意見が多いとの報道がされていました。しかし、経産省から十二月九日にこの託送料金への上乗せ方針が示されたと、これは朝日新聞二〇一六年十二月十日付で報じられました。
これが、過程が事実として、なぜ託送料金への上乗せという手段を選択したのかについて答弁を願います。
○村瀬政府参考人
先ほどの答弁の中にもございましたけれども、賠償に係る費用につきましては、福島事故前に、賠償に係る備えが原子力賠償法に基づく賠償措置、一千二百億円のみであったこと、また、制度上、事業者がこれを超える備えを規制料金のもとで回収し、みずから資金を確保する自由が制度のもとで認められていなかったということなどによりまして、賠償の備えが十分でなかったことにどう対応するかという問題に対しまして、政府といたしましては、この制度が十分でなかったことについては真摯に反省をした上で、この備えの不足分につきましては、福島の復興を支えるという観点、原子力の電気を広く消費者が利用していた実態があることなどを勘案いたしまして、消費者間の公平性の確保の観点から、託送制度を利用した公平回収措置を講ずることが適切と判断したものでございます。
賠償についてということでよろしいですか。
○畠山委員
今の答弁が、基本的な考え方としての答弁として確認をしておきたいと思います。
今私が質問で述べましたように、報道によれば、一F問題委員会では、託送料金の値上げについては慎重意見が多いとされていたようであります。それで、その慎重意見というものが払拭されたのかどうか。どのような議論をされたのかということはわかりません。
朝から議論がありましたように、その上乗せということによっては、さまざまな問題が指摘もされてきたことですし、当然、一F問題委員会でも議論とされてきたことでしょう。当然の心配や議論がされていたと私は思います。既に託送料金には電源開発促進税なども乗せられているわけですから、こういうものの上乗せについてのさらなる負担ということについては、国民的な懸念も生じることでしょう。
そこで、どのような議論がされて、一F問題委員会での委員の慎重意見の払拭はどのようにされたのか。その中身について紹介してもらえますか。
○村瀬政府参考人
一F事故に関しましては、東電委員会以外にも、いわゆる審議会、総合エネルギー調査会のもとにいわゆる電力システム改革貫徹小委員会という委員会が立ち上げられて、九月以降、一F事故の費用の問題に対する対応策について審議会で検討をいただいていたところでございます。
東電委員会は、東電の改革のあり方について審議をいただくということで設置された委員会でございまして、その議論も踏まえながら、この電力システム改革貫徹小委員会の方で制度設計についての議論が行われておりました。
確かに、その中で慎重な意見、例えば、先ほどもありましたけれども、公平措置は必要だけれども、税によって措置すべきではないかといった意見もあり、さまざまな意見がございましたが、最終的には、電力システム貫徹小委員会の委員総意のもと、委員長に一任がされまして取りまとめられたものでございまして、その点につきましては、東電委員会でも御紹介をさせていただいて、コンセンサスが得られていっている、こういうことでございます。
○畠山委員
かかる費用のこのような議論の透明化は必要だというふうに思っています。
資料二枚目に、さまざまな費用についての一覧表を、これもきょう出てきておりますが、私の方からも改めて、議論の土台ということですので、紹介しています。
それで、いろいろありますが、賠償不足分、プラス二・五兆円について、これを新たに新電力を含む全電力で負担するということになっています。新電力分は、全体の約一割分である〇・二四兆円、二千四百億円というふうにしていますが、金額の問題とやはり違うと思うんです。考え方であろうと思います。
そこで、大臣は、賠償費用の考え方について、本会議で私たちが、我が党が質問を行った際に、このような答弁をされました。「福島原発事故以前、原賠機構法が措置されていなかったことから生じた賠償への備えの不足分をどう手当てすることが適当かという問題への対応」と。先ほど来から答弁されていることで、いわゆる過去分として公平に負担してもらうという理由になっています。
ですが、電力事業者と購入者との間でそのような契約はもちろんしていたわけではありません。契約していなかった分を請求できるということなのかどうかは、私は、法律上できちんと説明してもらわないと、私だけではなく、国民的に納得がいかないだろうと思います。
契約していないのに請求できる法律上の説明をしてください。
○世耕国務大臣
まず、ちょっと誤解があってはいけませんので。
二・四兆円の託送料。二・四兆円を託送料で回収するという議論をしたのは、これは電力システム改革貫徹委員会でありまして、透明性ということをおっしゃいました。ここは議事録公開でありますので、その経過は全部まとめられていますし、最終的には、御本人も御了解をいただいて、委員長一任のもとで取りまとめられたということは御理解をいただきたいというふうに思っております。
今、託送料金でなぜ取れるのかということでありますけれども、これは、ユニバーサルサービス料金など、全ての消費者が広く公平に負担すべき費用を託送料金で回収でき、その具体的内容については経産大臣が認可することというふうに決まっているわけです。これは電力事業法の中で決まっています。
今の託送料金に関する電気事業法の規定は、二〇〇〇年に電力小売化を部分的に自由化した際に設けられました。このときは、当時の審議会の報告書で、供給の信頼度や望ましい電源構成の維持など、公益的課題への対応に必要な負担については、「すべての需要家が公平に負うことを原則とする。」とされたこと、それを踏まえて法改正が行われているわけでありますから、今回、我々は、その趣旨にのっとって、託送料金というものに反映をさせていただくということにしたわけであります。
○畠山委員
やはり一般的には、きょうもありましたけれども、過去分として請求されるといいますか、そういうことについては、なかなか国民的な理解というのは得られにくいことだと思います。当たり前のことですよね。
あわせて、この仕組みが四十年ですか、続くということになれば、これから生まれてくる方に過去分の責任があるのかということももちろん問われてくると思います。そういう仕組みだからということは大臣もおっしゃいましたけれども、ただ、やはりこれは国民的に納得いかない。もう少し説明が必要じゃないですか。
○世耕国務大臣
やはりこれは、福島の復興のため、福島の皆さんに必要な賠償金を支払う原資であるということを何よりも御理解いただく必要がある。そして、それを、やはり原子力発電に裨益をしてきた国民全体が、特に過去の分でありますから、これは負担をするということになろうかと思います。
もちろん、二〇一一年三月十一日以降に生まれた人はそもそもそのころ使っていないじゃないかという話もあるわけですけれども、先ほども申し上げました、公共料金というのはどうしても、ある一定の許容の範囲の中で丸めるということもあるわけです。
これは、本当に正確にやろうと思ったら、各家庭の世帯構成、年齢を全部調べて、それで全部請求書を調整するなんということ、これをやったら、また逆に膨大なコストがかかって、その分また電気料金に乗っかってくるわけでありますから、その辺は、福島のために国民全体でということをぜひ御理解いただきたいというふうに思います。
○畠山委員
そこで、いわゆる公共的な意味だとか、そもそも公平性に重きを置かれた説明をされてきたわけですけれども、考え方と先ほど私は言いました。公平性を言うならば、東電の利害関係者に費用負担をまず請求すべきではないかというふうに思います。東電株式会社の責任においては、その責任の重さに応じて順番に負担すべき、応責原則というんでしょうか、そういうふうに思うんですね。
まず、事故を起こした経営陣の経営責任、それから株主責任、その次に金融債権者、金融機関などの貸し手責任、これら利害関係者がまず順番に負担して、その次に電気の利用者や消費者などの電気料金、そして最後に国民、税金による負担などなどという順番が筋なのではないかと思います。
事故原因がどうか。その因果関係においていえば、製造物責任としての原子炉プラントメーカーやゼネコンなどもあるでしょうが、今言ったことを私たちとして考えたいと思うんです。
ですから、今回、過去分としていきなり電気の消費者に請求する前に、本来、まず経営者、株主、金融債権者などなど、利害関係者に負担を求めるべきではないのかと思います。
そこで、東京電力から、資料も出してくださいとお願いしたら、提出していただいたものがあります。今、過去分として一九六六年からの分を請求というか、しようとしているわけですけれども、では、この間に株主や金融機関などの、どのような配当などがあったかということの資料を出してもらったら、こういうふうになっているんです。
一九六六年度から事故前の二〇一〇年度合計で、これは資料はありません、私の手元だけのものです、株主の配当収入は二兆五千六百三十三億円、メガバンクなど金融機関の借入金の利息収入が六兆七千二百三十億円、社債の利息が六兆六千四百九十四億円。単純に計算しますと、株主と金融債権者が受益してきた総合計は十五兆九千三百五十七億円です。社債権者の利息については別扱いしても、九兆二千八百六十三億円にもなります。仮に販売電力の三割を原子力分だと考えたとして、今の金額から割ってみると、単純ですが、利害関係者だけでおよそ二兆八千億円を受益した計算になります。
もちろん、それがそのまま金融資産で残っているかどうかというのは別問題です。ただ、消費者へ請求する前に、これだけの利害関係者が責任に応じて負担するということが筋ではないかというのは、先ほど私が述べたとおりです。
そこで問います。
株主責任やこのような金融機関の貸し手責任を問わないままで消費者、国民へ請求することをしていいのか。利害関係者へのそれこそ公平な負担なく、国民的理解が得られると大臣はお考えですか。
○世耕国務大臣
今、金融機関が幾らもうけたと。確かに、単純に足し算をするとそういうことになるんだろうというふうに思いますが、一方で、お客さん、ユーザーの側もかなりの裨益をしているわけです。安定した電力供給によって、一九六六年までさかのぼられていますから、その間、日本が電力が良質であることによってどれだけ成長して、それが国民全体がどれだけ裨益をしたかということも私は忘れてはいけないというふうに思っています。
まず、この問題については、東電を破綻させるかどうかというのは、もう震災直後に判断したんです。これは、破綻をさせて、そうしたら、確かに、貸し手責任とか株主責任、それははっきりしますよ、全部紙くずになるわけですから。ですけれども、そうではなくて、東電にしっかりと責任を果たさせるということを重視して、東電に責任を負わせて、東電がしっかりと頑張るという構図でずっとやってきているわけであります。
一般の方に負担を回す前にとおっしゃいましたが、一般負担金という形で、全国の電力会社の利用者の皆さんからは、それぞれいただいている分がもう既に賠償に関してはあるわけであります。
そういう意味では、今おっしゃっていることというのは、もちろん反対かもしれませんけれども、一定、ある程度決着のついた議論なのかなというふうに思います。
その中で、では株主や金融機関は全く責任をとっていないかといえば、当然、株主に対してはもうずっと無配が継続をしていますし、当面、これからも、政府が一応五〇・一%持っていますから、当然、今後も無配は継続させるということになろうかと思います。株価そのものも大幅に落ちているわけであります。
金融機関に関しては、これは借りかえなどによって与信を維持することが要請をされていて、その責務を果たしておられるわけでありますから、そういう意味では、株主、金融機関も一定の責任は果たされているのではないかというふうに思っています。
ただ、今後も引き続き、株主や金融機関の責任がしっかり果たされるよう、特別事業計画の履行確保を通じて、主務大臣としてもしっかり注視をしてまいりたいと思います。
○畠山委員
このような指摘があるわけですよ。東京新聞二月九日付、城南信金吉原毅相談役のインタビューがこのように述べています。「経済のルールに従って東電は破綻処理し」、決着済みだと話されていますが、紹介はしておきます。「経営陣、株主、銀行、そして監督指導してきた経産省ら政府に、拠出したり融資した資金が戻らないという形で責任をとらせるのが現代の経済社会のルールだ。」と述べて、「過去の料金が二・四兆円分も誤っていたならば「歴代担当者を処分して私財の拠出を求めるべきだ」」とまで、厳しく指摘はされています。
それで、広く消費者が受益してきたということを理由に挙げてきていますが、ただ、現実は、ほかの電力会社を選べないいわゆる地域独占という状況だったからでありまして、他の電力会社と契約できない状況だったのに、受益の実態があるじゃないかと言われても、それは国民は納得できないわけであります。
そこで、先ほどからもありましたが、その備えができてこなかったということについては真摯な反省ということを繰り返されていました。その中身は、今私が申し上げてきたようなことも含めて、かなり重たい中身があるかと思います。改めて、その真摯な反省と言われるものの中身について、大臣の口からしっかりお答えいただけますか。
○世耕国務大臣
規制料金のもとでは、一般的な企業の事業と違って、将来的に追加的な費用が発生するリスクを勘案して、それを数字にして料金に盛り込んで回収するということは認められてこなかったわけであります。料金の算定時点で現に発生している費用ですとか、合理的に見積もれるものしか原価に算入することを認めないという運用を行ってまいったわけであります。
一方で、福島原発事故以前は、やはり政府は安全神話に陥っていたところがあると思います。福島原発事故のような規模の過酷事故が起こり得るという前提には立っておらずに、事故当時、賠償に係る備えは、原子力賠償法に基づく賠償措置一千二百億円のみでありました。この賠償措置を超える損害が生じた場合の措置も講じてこなかったわけであります。この点については、真摯な反省が必要だというふうに思います。
今回の託送制度の仕組みを利用して回収することとした賠償の備えの不足分というのは、規制料金のもとで、福島事故以前から原賠機構法のような措置を講じなかったことで生じていたものであるため、こうした措置を講じておらず不足分を生じさせたことについて、政府として真摯に反省が必要であるというふうに私は考えています。
その反省に基づいて、廃炉・汚染水対策も含めた福島の復興に全力で責任を果たしていくということが重要だと思っております。
○畠山委員
この問題、長々とやることになりませんが、ちょっと最後にやはり一つ確認しておきたいことがあります。
今回、過去分というようなことで負担を求めることにしたわけですけれども、今後同じようなことが起きないかということはもちろん懸念される一つだと思います。
賠償費用は、きょう、上振れの議論もたくさんありましたけれども、被害が続く限り支払われるべきものだと思います。廃炉費用も試算以上に膨らむ可能性があるし、きょうはちょっと出しませんが、そのような試算が出されてきたときょうも議論がありました。
大臣は本会議で、「将来的に、必要となる資金が見通せるようになってくれば、その時点で追加すべきものは追加するものと考えています。」と、条件つきですが、これは廃炉費用ですか、について答弁もされました。
将来にまた同じように過去分といって賠償も廃炉も負担増を正当化する前例とならないのか、本来責任を負うべきところに責任が問われないことにならないのかということについては、やはり、こういうことは今後ない、前例ではないということを大臣は言い切れるかどうかは確認しておきたいと思います。
○世耕国務大臣
今回、託送料金に過去分を乗せさせていただくというのは、これは電気事業法の規定に基づいて、経産大臣の認可という形でやらせていただくわけであります。
今時点で、いわゆる賠償の過去分というのは、先ほどから申し上げている二・四兆円という上限を閣議決定もして決めさせていただいています。しかも過去分でありますから、これがまた再び膨らむということはないということは明確に申し上げられるんじゃないかというふうに思っていますが、制度上、今後、託送制度を利用して何か別の、過去分じゃありませんよ、賠償の過去分ではありませんが、何かこの電気事業の中で全ての消費者が広く公平に負担すべきような費用が出てきたときは、それを託送料金を使って回収をするということが否定されるというものではないというふうに思っています。
○畠山委員
今回のような過去分という理屈で何でも負担を正当化できるようになっては危険だということは指摘しておきたいというふうに思います。
我が党は、本会議質問でも、決着済みとおっしゃった東電の破綻処理の問題についても、やはり、破綻処理して一時的に国有化することや、資産を売却し、経営陣や株主、メガバンクなどの貸し手の責任を問うこととあわせて、「原発で莫大な利益を得てきた原発利益共同体にも応分の負担を求めてこそ、国民負担を最小化できる」と述べました。
このまま国民負担が青天井化することになってはもちろん、その際にこういう理屈で進めていくことは許されないわけでありまして、機構法の枠組みの検証、総括が必要であることは指摘だけしておきたいというふうに思って、次の質問に進みます。
第二段階、第三段階にかかわって、ちょっと時間がなくなってきているので、手短に大臣の見解などを伺っておきます。
提言の第二段階では、柏崎刈羽原発の再稼働が東電再建の柱とされています。しかし、御存じのように、新潟県知事選挙において再稼働反対の民意が示されたと思います。
そこで、大臣が初めに述べた特徴で、私も取り上げたキーワードである実現可能性。新潟のこの状況で柏崎刈羽原発の再稼働に実現可能性があると大臣はお考えでしょうか。
○世耕国務大臣
この柏崎刈羽原発の再稼働というのは、先ほども言っていただいたように、改革の第二ステップということになります。これは、これを再稼働することによって送配電事業の合理化による廃炉、賠償に係る資金の確保をより確実なものにするという趣旨のステップだというふうに思っております。
東京電力は、事故を起こした事業者として信頼回復というのはなかなか大変ではありますが、信頼回復をしっかりやった上で、柏崎刈羽原発の再稼働も含めて、あらゆる分野でさまざまな取り組みを積み上げて、福島への責任を果たすために、今までにないコスト合理化や収益拡大を実現してもらいたいと思っています。
ただし、当然、原子力発電所については、これは安全最優先でありまして、高い独立性を有する原子力規制委員会によって科学的、技術的に審査をして、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると認められた場合のみ、その判断を尊重し、地元の御理解を得ながら再稼働を進める。これが再稼働に関する政府の一貫した方針であります。
御指摘の柏崎刈羽原発についても、東京電力において原子力規制委員会による安全審査にしっかりと対応することはもとより、過去の企業文化と決別をして、地元の方々への丁寧な説明も含めて、国民の信頼を取り戻すべく努力をすることが極めて重要だというふうに思っています。
実現可能性はその努力の先にあるというふうに思っております。
○畠山委員
再稼働の是非については、立場が違いますので、それは今議論しませんけれども、やはり今大臣がおっしゃられた企業文化との決別などで、県民から厳しい目が突きつけられていることを改めてこの場でも述べておきたいと思うんですよね。
柏崎市の桜井雅浩市長も、東京新聞三月二十日付のインタビューで次のように述べておられました。「二〇〇二年に発覚した柏崎刈羽原発を含むデータ改ざん、福島第一原発でのメルトダウン隠し、今回の免震棟問題と続き、事実を正確に伝えようとしない東電の体質は問題だ」と。隠蔽をしてきたことに国民、県民も怒っている、根底として、知事選の結果にあらわれたと思います。
そこで、冒頭に質問しました一F問題委員会の議論も、私はここでも明らかにする必要があると思っています。
ちょうど、日程を追いかけていけば、知事選の終わった後の会合ももちろんありますし、その結果も議題となったことでしょう。今後のステップ、実現可能性においての議論も話し合われたと思います。まして、今度会長につかれる川村隆さんは、この一F問題委員会の委員でもあったわけですよね。
そこで、これは事務方で結構ですけれども、柏崎刈羽の再稼働について、一F問題委員会でどのように議論されていたんでしょうか。
○村瀬政府参考人
御答弁させていただきます。
例えば、世論調査の結果もしっかりと受けとめて、国民の納得を得ていくことが重要ではないかといったような意見ですとか、再稼働に向けては、技術、安全の確立を含めて国民の信頼を得ていくことが必要ではないかといったような御議論、それから、さまざまなコストダウンだけでは対応できない資金については、福島の費用を確保するという意味でも重要ではないかといったような意見など、さまざまな議論があったと承知しております。
こうした議論を経まして、昨年末の改革提言におきましては、柏崎刈羽の原発の再稼働は、その賠償、廃炉のための対応を確実なものにするためのステップとして位置づけられた一方で、従来の企業文化とは決別をして、地元との対話を重ね、地元本位、安全最優先の事業運営体制を確立し、地元本位確立のための行動計画を早期に地元に提示し、対話を深めていく、その中で信頼を確保していくべきといった方向性が示されたところでございます。
○畠山委員
この問題はまだまだ長く今後取り上げなければいけない問題だと思いますので、この場では改めて、冒頭に述べた会議録の開示をこの点では求めておくことにとどめておきたいと思います。
それで、第三段階ですけれども、電力、原子力事業の再編統合などを含めて、新たな原子力事業の海外展開も盛り込んでいます。その一方で、今ニュースとしてにぎわっているのが東芝の経営危機問題の重大化です。
原子力事業の海外展開について、最後、この東芝問題を例に、大臣の情勢認識を伺いたいと思います。
まず、今の東芝の経営危機の原因についての大臣の見解はいかがでしょうか。
○世耕国務大臣
東芝の発表によれば、今見込まれている大きな損失というのは、アメリカにおける原子力発電所の建設に当たって、現地企業を買収したときには認識されていなかった建設コストの増加、これに伴って巨額の損失が生じたというふうに理解をしております。
東芝は、我が国にとって、半導体事業ですとか原子力事業など幅広い分野において非常に重要な事業を展開してきた企業だというふうに思います。また、原子力に関しては、国内において二十基を超える原発の建設に関与し、原発の安全確保に必要となる技術、人材を初め、高い技術力を生かして貢献をしてきた企業だと思います。特に福島第一原発では、廃炉・汚染水対策に具体的に参画をして、多くの東芝社員が貢献をしてくれているわけであります。
このように、我が国の経済、産業にとって非常に重要な事業を担っている企業が多額の損失計上を迫られて苦境に立ち至っているということは、大変残念であります。
いずれにしても、東芝の今後の対応をしっかりと注視してまいりたいと思います。
○畠山委員
一たび過酷事故が起きれば大きな被害が出るのが原発ということで、私たちは大きな教訓を得ました。
それで、今大臣が述べられたように、東芝が半導体、原子力、いろいろなところで大事な役割を果たしているというのは、それはそれでありつつも、海外における原発の建設計画、後に出るウェスチングハウスを含めて、ここの実態や海外の原子力事業との関係で、本当にこれでよかったのかということは客観的に確認していかなければいけないと思います。
そこで、これは事務的に確認したいんですが、二〇〇〇年以降、国際的に原発による発電量がどのように推移しているか、トレンドで構いませんから、答弁してください。
○村瀬政府参考人
お答え申し上げます。
IAEA、国際原子力機関によりますれば、世界の原発の発電量は、二〇〇〇年に二・四兆キロワットアワー、二〇一〇年に二・六兆キロワットアワー、二〇一五年に二・四兆キロワットアワーということで、一〇年までは増加しておりましたが、一五年は、日本の原発が停止したこともありまして、若干減となっております。
なお、二〇三〇年の発電電力量について、同じIAEAの見通しでいいますと、幅でございますけれども、一・二倍となる三・〇兆キロワットアワー、もしくは一・九倍となる四・六兆キロワットアワーとなる見込みだということが記されておりました。
○畠山委員
資料の三枚目をごらんください。
今、IAEAの統計について答弁いただきましたが、私の方でつくった資料は、BP統計に基づいて発電量の推移を示したものです。将来予測については入れておりませんが。若干数字は違いますけれども、大きな傾向としてはそう変わらないものであろうと思います。
原発の国際的発電量は、このBP統計によればですが、ピーク時、二〇〇六年から漸減、広い目で見ても横ばい傾向にあると思います。停滞の状況が続いてきたところへ、日米両政府が無理やり拡大しようとしているんじゃないかというのが現実ではないかと私は思うんです。
そこで、東芝が抱えていたこのウェスチングハウス社の問題を見てみれば、工事のおくれが負債の増加につながり、結果として約一兆円もの負債を背負うこととなってしまいました。工事がおくれたのは、ジョージア州のボーグル発電所だったと思います。
確認ですが、米国にとってスリーマイル事故後の新規原発着工というのは、このボーグルが何基目でしょうか。
○村瀬政府参考人
お答え申し上げます。
ウェスチングハウス社による米国のボーグル原発三、四号機建設プロジェクトは、一九七九年に起きましたスリーマイル島事故以降、新規原発の建設としては初めての計画と承知しております。
なお、その間にも、事故前に計画を許可され、建設を継続し、運転開始に至ったものとしては、ワッツバー原発一号機がございます。
以上でございます。
○畠山委員
今ありましたように、初めてなんです。原産協会の米国の主な新規原子力発電所プロジェクトの一覧表を見ても、そのようにきちんと書かれております。
スリーマイル事故後初めてのプロジェクトで、ずっと新規の着工建設が凍結されてきたのは、やはり事故においてさまざまな米国内の世論や問題があったからでした。初めての着工になるわけで、この機を逃さないと東芝がウェスチングハウス社を買収したのが始まりでもあった。
工事がおくれたというのは、追加の安全対策によるだけではないと思うんです。スリーマイル事故から約三十年たった。したがって、その間の技術、ノウハウなどが欠けていくことにもなったのではないか。原子力事業を拡大する米国における客観的状況が成立していなかったのではないかと思います。
今、私が資料で示したように、原発のエネルギー市場は、将来予測を述べましたけれども、この間停滞してきた状況があります。日本での新規建設は、現状、国民世論が許さないことと思います。そこで、海外に道を開くということもあるようですが、先ほど数字で示したように、この間、原発の発電量は停滞しています。
そこで、最後に大臣に問いたいと思います。ここでも実現可能性の問題です。
第二段階の柏崎刈羽も、再稼働は現状においては困難でしょう。第三段階についても、原発市場については、このように停滞しているのではないか。まさに内憂外患というもとで、改めて、この東電改革提案の実現可能性はどこにあるのか。私がきょうずっと述べてきたことに対して、大臣、どのように答弁されますか。
○世耕国務大臣
まず、第一ステップについては、これはさらなるコスト削減で目標達成をしっかりやっていってもらいたいというふうに思います。新しい経営陣のもとで、私は十分目標達成は可能だというふうに思います。
第二ステップの柏崎刈羽の再稼働については、これは、政府としては、あくまでも安全最優先で、規制委員会の判断を待ちたいというふうに思いますが、やはり、地元の理解というのも重要であります。東電は、国民の信頼を取り戻すべく、これももう一度生まれ変わったつもりで信頼を取り戻す努力をしっかりとやっていかなければいけないと思っています。
第三段階は、いわゆる原発の輸出だけで第三段階をつくっているわけではなくて、他電力との事業の共同事業ですとか事業統合ですとか、あるいは火力の海外展開といったことも想定しています。
その中で、原子力ということになりますが、これは確かにいろいろなデータもありますけれども、英国は実際に七基新設というようなプロジェクトを進めています。パリ協定発効後、ゼロエミッションの電源であることは間違いない、ゼロエミッションでベースロード電源になる原子力発電に対する需要がまた出てくるという可能性もあるわけでありますから、第三ステップも私は十分実現可能だというふうに思っております。
○畠山委員
引き続き議論をさせていただきたいと思っていますが、きょうの質疑で、改めて幾つかの点について最後に述べさせていただきます。
東電改革提言をまとめた一F問題委員会の議事録について、改めて、公開することを求めます。開示しない経産省の姿勢を改めることを要求します。
また、原発利益共同体に公平な負担を求めないで、過去分という理屈で国民にツケを回すことは容認できません。
現実的見込みが見られないと思いますが、この東電改革提言、私たちは、固執するのではなく、先ほど述べた応分の責任を原発利益共同体に求めることこそ必要だということを重ねて最後に強調しまして、質問を終わります。

第193回国会 農林水産委員会 第5号   平成二十九年三月二十九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは、国営諫早湾干拓事業にかかわって質問いたします。
訴訟が長く続いていますが、その経過は省きまして、この問題にかかわっては、一昨日、二十七日、長崎地裁において、原告の営農者、被告の国、被告補助参加人の漁業者ら三者による和解協議が打ち切られました。
国は、昨年十一月に、総額百億円の有明海振興基金案、仮称ですが、を示しました。その後、農水省が漁業団体幹部に想定問答なるものを示していたとの報道もありました。そして、一昨日、和解協議が打ち切られたというのがこの間の一連の流れです。
まず、大臣に、和解協議が打ち切りとなったことについての受けとめを伺います。
○山本(有)国務大臣
まず、大変残念でございます。
三月二十七日の和解協議におきまして、長崎地裁から和解協議を打ち切るという判断が示されました。一年を超える和解協議におきまして和解に至れなかったことについて、大変残念でございます。
長崎地裁における和解協議は、昨年の一月十八日の和解勧告、これを受けまして、十五回に及ぶ協議を重ねさせていただきました。本年一月二十七日には、新たな和解勧告の御提示をいただくなど、和解に向けた裁判所の御尽力には敬意を表するものでございます。
また、漁業団体におきましては、国の提案した基金につきまして、これまでの経緯や立場を乗り越えていただいて、議論を尽くしていただきました。心から感謝を申し上げる次第でございます。
国としましては、引き続き、本件をめぐる一連の訴訟に対しまして適切に対応すべく、問題の解決に向けて真摯な努力を重ねていきたいというように思っている次第でございます。
○畠山委員
皆さん、委員のお手元に、先日のことにかかわっての資料を幾つか、報道各紙のものとしてもお渡ししていますので、ごらんください。
共通しているのは、国が責任を負って今こそ決断するべきではないかという指摘です。これまでも、何度も何度も転換あるいは決断の時期もあったかと思いますし、そのたびに、国のイニシアチブが必要だ、国の決断が求められるなどの声も上がっていたに違いありません。
資料一枚目は、毎日新聞西部版ですが、四角でくくっているところであります。成蹊大学武田真一郎教授の言葉が引用されていまして、最後に、「事態打開にはもはや国が決断するしかない状況だ。」と述べられています。
資料二枚目は、同じく西部版、朝日新聞ですが、佐賀大学畑山教授は、「漁業者と農業者の言い分を集約し、折り合う道を探るのは本来政治の役割。司法の混乱は政治の不作為ゆえの悲劇だ」と断じています。
我が党はこれまで、予算委員会や決算委員会などで、同僚議員が、国として、防災、あるいは農業者、漁業者などが共存できる道、農漁共存へ責任を負うべきだと主張もし、具体的な提案なども行ってきました。
この時点において国として今後どのように責任を果たすつもりか、これらの指摘も踏まえて、大臣はどのようにお考えになっていますか。
○山本(有)国務大臣
国といたしましては、長崎地裁によります開門を前提としない和解勧告を受けまして、有明海全体の漁業環境の改善に向けた総額百億円に上る基金の検討、漁業団体への意見聴取、あるいは、長崎地裁の訴訟指揮に従いまして、昨年一月以降、和解勧告に沿った和解の成立に向けまして、誠心誠意な努力を傾けたつもりでございます。
しかし、二十七日、長崎地裁の和解協議では、裁判所から、あくまで開門を前提としない和解勧告による解決、これが相当と考えているがということでございますが、開門派に受け入れていただくことができませんでした。開門にかわる基金、それと、開門について、した場合という並行協議、これについても裁判所が、和解の成立の見込みが高いとは言えないという御判断をいただきまして、和解協議が打ち切られるということになったわけでございます。
先週二十一日、今度は、福岡高裁の和解協議がございました。福岡高裁も、この長崎の和解協議の進行についてつぶさに認識されておられまして、福岡高裁の和解の方も審理に戻さざるを得ないという御判断の向きが伝えられたところでございまして、国としましては、今後、福岡高裁の訴訟指揮に従いつつ、本件をめぐる一連の訴訟の適切な対応あるいは問題解決に至れるように、なお知恵を絞ってみたいというように思っておるところでございます。
○畠山委員
適切な対応はもちろんですし、知恵を絞るとの話ではありますが、ただ、今から述べますように、この間の農水省の態度が非常に現場では不信感を生んだということは指摘しなければいけないと思っています。
農水省が漁業団体幹部へ示したとされる想定問答なるものの存在です。これは、ことし三月八日付朝日新聞一面で報じられたものでした。
その想定問答によれば、今農水省が示している百億円の基金については、組合員から増額の要求が出た場合に、会長、組合長さんの回答例として、自分としては十分な規模をとれたとの回答をするようになっていた。あるいは、末端の漁業者を聞いてほしいとの問いがあった場合には、まずは基金をかち取ることだ、任せてほしいとの想定問答というか回答がされていた。さらには、開門派原告団の弁護団長を名指しで、距離を置くよう求める回答までつくっていたとのことでした。事実であれば、本当にひどいものだと思います。
そこで、私が先日、二十三日の本会議で、想定問答なるものの公開を求めたのに対して、山本大臣は、交渉当事者としての地位を不当に害するおそれがあり、そうした文書が存在しているか否かも含めてお答えできないとの答弁でした。
状況が今変わりました。和解協議が打ち切られて、今なお不開示にする理由はどこにあるというのでしょうか。
○佐藤(速)政府参考人
お答え申し上げます。
この三月二十七日の和解協議におきまして、長崎地裁から和解協議を打ち切るとの御判断が示されたところでございますが、本件につきましては、複数の訴訟が提起されております。争訟中であるということに変わりはないと考えております。
このため、交渉または争訟に係る事務に関しまして、国の当事者としての地位を不当に害するおそれがあります。そうした文書が存在しているか否かも含めてお答えすることはできないという状況に変わりはないというふうに考えてございます。
○畠山委員
訴訟が続いている、つまり、引き続き、かかわる関係者の皆さんとの、必要であれば和解協議という場面も出てくるかもしれないわけですよね。漁業者、原告団の方からも声明が出されて、今後の和解協議の道を完全に閉ざしているわけではないことなども当事者からも述べられているわけですよ。そのようなときに、これまでと同じような国の態度では不信感は払拭されないのではないのでしょうか。
開門を求めていた漁業者からは、この想定問答があったとして、漁業者をばかにしたやり方ではないかと現地の新聞などでも報じられておりました。漁協との関係でも障害を生み出したのではありませんか。例えば、組合員から、うちの組合長がこれに基づいて答えたのかと疑いを持つことだってあると思いますよ。組合長さん自身が、自分の説明を組合員が信用してくれないというふうになれば、組合長だってかわいそうじゃありませんか。
一般論で伺っておきます。協同組合という組合員の自主的運営で行う組織に対して、行政の側が問答集や答弁マニュアルのようなものをつくることはあるんですか。
○佐藤(速)政府参考人
お答えいたします。
一般論として申し上げますれば、国が、その任務または所掌行為の範囲内で私人のための助言行為を行うことは、例えば漁業者への技術的助言なども含めまして、国の事務に含まれるというふうに考えております。
○畠山委員
技術的な問題にはあり得るということでしたけれども、あくまでこの報道されている中身を見れば、技術的な問題以上の内容が含まれているじゃありませんか。
こういうような想定問答が報道されたことに対して、農水省としては抗議のことも言っていないわけですから、あったという前提で、私、質問しますけれども、このような想定問答なるものは協同組合の自主性を侵害するというふうには考えませんか。
○佐藤(速)政府参考人
お答え申し上げます。
この和解協議に係ります漁業団体との交渉に係る内容につきましては、交渉または争訟に係る事務に関し、国の当事者としての地位を不当に害するおそれがあり、お答えすることはできませんけれども、漁業団体はそれぞれが組織内で議論を重ねて、国が提案申し上げました基金の受け入れの可否について自主的に判断されたというふうに承知をしてございます。
○畠山委員
ちょっとひどいですよ。
この想定問答は、中身を見れば、国の主張に沿わせようとしたがために、さまざまな問題をつくり出しましたよ。和解協議の障害をつくり出した、漁業者の中に分断を持ち込んだ、協同組合の原則まで踏みにじるような、とんでもないやり方じゃないですか。この想定問答が配られたであろうという時期は、漁業団体が開門にかわる基金案を拒否した後に、国が協議の継続を求めて、長崎地裁もそれを認めたときでした。この想定問答なども含めて、農水省が決着を押しつけているんじゃないかと不信感を持つのは当然だと思いますよ。
資料三枚目をごらんください。西日本新聞ですけれども、同じくこれも枠で囲っているところをごらんください。このように述べています。「最終局面では国の「失策」も明らかになった。三月に入り、農水省が漁業者説得のための想定問答を漁業団体幹部に示していたことが発覚。営農者側に肩入れするような姿勢が、地裁の和解協議打ち切りの判断に傾けさせたとも取れる。」こういうような現地の報道もされているわけです。
最後に大臣に確認しておきたいと思うんですが、これからまだ訴訟が続いているから不開示なんだということが答弁ではありました。確かにまだ続くでしょう。だからといって、国として、想定問答は不開示とするということだけにとどめていたら、解決の糸口、道筋というものは成り立たない、不信感が払拭されないのははっきりしていると思うんです。誠実な説明をきちんと責任を持って果たすべきだということを述べたいと思いますが、大臣、最後、答弁してください。
○山本(有)国務大臣
諫早湾の干拓開門問題につきましては、もう申し上げるまでもなく、複数の訴訟が提起されている大変難しい状況にございます。国としましては、問題の解決に向けて最善の努力を図っていく必要があるというように考えております。一方で開門の判決、他方で差しとめの判決、どのような判決をいただいたとしても、現場の解決というものは和解でしかできないというように考えておりまして、馬奈木弁護団長もそうした意見を述べられているわけでございます。
このような状況の中で、和解協議のもとでの漁業団体との交渉に係る内容を申し上げ、想定問答の存否を明らかにするということになりますと、交渉または争訟に係る事務に関しまして、国の当事者としての地位を不当に害するおそれがあり、また、漁業者に対する不安を惹起するというような懸念もございます。そうした文書が存在しているか否かも含めまして、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますので、どうぞ御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
ことしで堤防締め切りで二十年になりました。二十年というのはやはり年月としては重たい時間だと思います。開門を命じた福岡高裁の判決が確定している中で、まさしく国が今こそ解決への責任を果たすべきときであり、想定問答なるものの存在、公開も求めて、質問を終わります。

第193回国会 本会議 第12号      平成二十九年三月二十三日

○畠山和也君
私は、日本共産党を代表して、農業競争力強化支援法案について質問いたします。(拍手)
先日、米通商代表部、USTR代表に指名されたライトハイザー氏が、農産物の市場開放に向け、日本は第一の標的と公言しました。
日本政府が今後の通商政策のベースと繰り返すTPPにおいて、米は新たに最大七万トンもの無関税輸入枠を設け、牛肉の関税も現行三八・五%から最終で九%まで引き下げることを、既に日米間では合意しています。
このTPP水準を容認していることに加え、日米同盟が第一との立場で安倍首相が合意したことが、ライトハイザー氏の発言を許しているのではありませんか。
来月にも開くという日米経済対話において、農業分野ではどのような姿勢で臨むのですか。さらなる譲歩をすることになるのではありませんか。何より、経済主権、食料主権を投げ捨てるTPP水準を交渉のベースにすることは撤回するべきです。交渉を担当する麻生大臣、また農水大臣の見解を求めます。
昨年、安倍首相は、規制改革推進会議の意見を私が責任を持って実行すると農業競争力強化プログラムを決定しました。本法案は、このプログラムに基づき、TPP批准を念頭にした攻めの農業を具体化したものです。
本法案は、農業が将来にわたって持続的に発展していくことを目的としていますが、重要なことは、農家の高齢化や耕作放棄地の増加など、農家の深刻な実態をどのように総括しているかです。
これまで国は、食料確保における公的責任を後退させ、農産物輸入も拡大する中、農産物価格は下がり続けました。一方で欧米諸国は、農業、農家に対して手厚い補償を行い、食料自給率も向上しています。食の安定供給と地域社会の維持へ、国が責任を負うのが当然との考えからです。そこまで日本政府としてやっていると胸を張れるのでしょうか。
農家の苦しい現状を解決するには、これまでの自民党農政の総括と反省が必要ではありませんか。答弁を求めます。
本法案は、良質かつ低廉な農業資材の供給及び農産物流通等の合理化の実現を図り、農業者による農業の競争力の強化の取り組みを支援することとしています。この法案で言う競争力とは何を指すのですか。
海外との競争に勝てる農業を目指すとすれば、おのずと方向性は大規模化への誘導、法人化や企業参入などとなります。
しかし、中山間地が多い我が国で、家族経営や兼業農家、また都市農業などの多様な形態こそ日本農業の姿でした。その構造を変えるとは、これまで日本政府が原点としてきた多様な農業の共存という理念や、日本農業の基本であった家族経営を壊していくことになりませんか。競争力強化プログラムや本法案は、さらなる農産物輸入拡大を前提としているものなのですか。どのように将来の農家像を考えているのか、明確に答弁してください。
本法案では第五条で、農業者の努力まで規定されています。有利な条件を提示する事業者との取引を通じて農業経営の改善に取り組むとありますが、米価初め農産物価格が下落するもとで、言われなくても農家は努力を行っています。なぜ、農家の自主的選択を束縛しようとするのですか。
国は、農産物流通等の合理化を実現するため、事業再編または事業参入を促進することとしています。そのため実施に関する指針を定めるとしていますが、白紙委任するわけにはいきません。指針の内容について明らかにしてください。
この指針に基づいて事業者は申請を出し、国の認可を受けることになります。再編や参入の事業者には国籍などの要件はありません。外資の参入も可能ということですか。
また、認定された再編事業者は、海外における事業再編の実施においても債務の保証を受けられる特例を設けています。なぜ海外での事業再編も対象に含めたのか、答弁を求めます。
本法案は、法施行日から一年以内に国が農業資材の供給や農産物の流通に関する最初の調査を行い、おおむね二年以内にあり方の見直しを含めた検討を行うとしています。
これでは、早く結果を出せとの圧力となることが目に見えています。農協系統に対して、口では協同組合の自主性を尊重するとしながら、実態は上からの改革を迫るやり方となるのではありませんか。
これまで政府は、農業者の所得向上をともかくも掲げてきましたが、本法案の目的にはその言葉さえもありません。目指すべき目標の一つが、農協、全農解体に向かうことも看過できません。
我が党は、生産資材の価格引き下げなどを求めてきました。それは、農家経営の安定が目的であり、これをてこに農協系統組織の性格を乱暴に変えることは認められません。あくまで自主的な改革に委ねるべきです。
本法案の制定により廃止するという主要農作物種子法についても聞いておきたい。
種子法は、我が国の基本的食料である稲、麦、大豆の優良種子を生産、普及することを目的としたものであり、このもとで各地に適した品種改良が進められてきました。
民間の開発を促すため種子法を廃止するとしていますが、巨大資本の種子独占を招き、自家採種が閉ざされるおそれがあります。種子の安定的な確保は、国内生産にとどまらず、気候変動や人口増加など国際的環境の変化を踏まえても、重要な意義があります。国のやるべき仕事は、種子ビジネスの応援ではありません。
種子法の廃止によって、安定的な優良種子の生産という国や都道府県の公的責任を放棄することになりませんか。明確な答弁を求めます。
最後に、国営諫早湾干拓事業に係る和解協議を進めている中で、農水省が堤防開門を求める漁業者を説得するための想定問答をつくり、漁業団体幹部に示していた問題について述べておきます。
報道によれば、農水省の担当者は他言しないでほしいと秘密を押しつけ、国の基金案の受け入れを認めるような内容となっています。開門を命じた福岡高裁の確定判決への責任を果たすどころか、圧力まがいに国の主張を押しつけることなど、到底許されません。
速やかに想定問答なるものを公開するよう強く求めて、私の質問を終わります。(拍手)

第193回国会 農林水産委員会 第4号   平成二十九年三月二十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
種子法廃止法案の立法事実と経過にかかわって質問します。
お手元に資料が配られているかと思いますが、種子法廃止への懸念の声が広がっています。北海道新聞、三月十九日付のものからの引用です。論説委員が交代で時事問題を解説する欄なんですが、表題は「種子法の廃止は拙速だ」。この方は、民間の活力重視は理解した上でというふうな立場ではありますが、二段落目ぐらいでしょうか、このように書いています。「道立の農業試験場をはじめ各地の研究機関は、種子法に基づいて質の高い種子を提供している。農業にもたらしてきた成果は数多い。 そうである以上、法の廃止に当たっては生産現場の声に十分耳を傾けるのが当然だ。」と書いています。もっともな指摘だと私は思います。
そこで、確認します。
さまざま審議会など公式な場面などもあるかと思いますが、専門家あるいは採種農家、農業試験場職員などなど、どれだけ関係者から意見を聞いたのか。加えて、大臣に、通告していませんが、このような声が広がっていることへの受けとめもお聞きしておきたいと思います。
○山本(有)国務大臣
この北海道新聞、主要農作物種子法について高い評価をいただいております。
ただ、平成二十七年十一月に取りまとめられました総合的なTPPの関連政策大綱において、体質強化とかあるいは経営安定対策とか充実させよう、そういう政策に加えて、生産者の努力では対応できない分野の環境整備、これを構造的問題として掲げ、検討の継続項目というものを記しております。それが、二十八年秋を目途に具体的内容を詰めるということにされました。
二十八年秋ではありませんが、二十八年八月に閣議決定されました未来への投資を実現する経済対策におきまして、農業者の所得向上を図るためには、生産コスト削減と農産物の有利な条件での販売が重要である、そういう観点から、先ほど申し上げました検討継続項目に掲げられました生産資材価格の引き下げ、流通、加工構造の改革、この施策に加えて、二十八年内を目途に、競争力強化プログラムというのが取りまとめられたわけでございます。
さらに、二十八年九月、政府・与党で検討を行った結果、十一月に農業競争力強化プログラムというものが策定され、この中で、主要農作物種子法の取り扱いにつきまして、民間事業者へのヒアリングなども行いながら検討が行われて、同プログラムにおきまして、「地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法を廃止するための法整備を進める。」というように位置づけられております。
種子法は、八条ある中で、第一条以外は全部主語が「都道府県は」ということになっておりまして、いわば今の時代に、国が一々都道府県を指図するというようなたてつけは今はとり得る時代ではないという観点もありまして、主要農作物種子法の廃止法というものがこのプログラムの内容に含まれたというように考えているところでございます。
○畠山委員
今の答弁の中で、私が聞きました専門家や採種農家、農業試験場職員などの生産側に係る言葉は出てきませんでした。
それで、TPP対策にかかわってから出されてきた経過を大臣は今述べられましたが、だって、生産者に聞いたら廃止するという意見など出るはずもないのは当然でして、規制改革会議などがこの分野においての規制緩和を求めていたのではないかと前回私は質問をいたしました。それで、農水省が、民間の阻害にはなっていないという立場であったはずでした。
それで、私、もう少し調べてみようと思いまして、規制改革会議の議論をずっと改めて読み直してみたんですよ。それで、規制改革会議でも種子法について出てくるのは二〇〇七年五月三十日、前回私が指摘したその年のものですが、規制改革推進のための第一次答申、ここで出てくるんですね。公的機関と民間企業の品種開発力に差があることから、民でできることは民へと促していました。
しかし、ここで、具体的施策としての結論は、規制改革会議においても、種子法の廃止ではなかったんです。民間企業の育成品種が奨励品種として積極的に採用されるよう、改めて効果のある措置を講じるべきであると、運用改善を求めていたんですね。その後に規制改革推進会議となって、種子法の廃止が議題に登場するのが昨年の十月六日で、農水省側の配付資料で突然出てくるわけです。
それで、内閣府にこれは確認したいと思います。二〇〇七年から昨年、約十年間で、規制改革会議農業ワーキング・グループで、種子法にかかわる廃止の議論が一回でも出たことがあったんでしょうか。
○刀禰政府参考人
お答えいたします。
主要農作物種子法につきまして、規制改革の会議でどういう議論があったかという御質問でございますけれども、直近十年間の中では、平成十九年四月に、当時の規制改革会議のもとのタスクフォースにおきまして、この問題について農水省からヒアリングを行ったという経緯は、委員御指摘のとおりでございます。
その後、昨年九月二十日の規制改革推進会議農業ワーキングにおきまして、農林水産省からこの問題についてのヒアリングを行い、その後、十月六日に、意見におきまして、地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法を廃止する旨の提言を行ったという経緯でございます。
○畠山委員
ですから、十年間においても、規制改革会議では、廃止まで含めた議論というのは全くないんですね。出発点は、先ほどあったように、十年前に出ています。
私はすごく不思議だったんですよ。生産者の側などからも廃止の意見は出ていない、当然です。規制改革会議からも、十年間、廃止ということがまともに言われていないけれども、昨年唐突に出てきた。一体何でこんなことになっちゃったんだろうということなんです。一体誰から何か要望されて、政府は、多様なニーズに応えるためとかいろいろ言いますけれども、きょうも朝から議論を聞きましたが、全く説得的な答弁になっていないと私は思いました。
ですから、農水省の立場に立つつもりはないですが、農水省としての理論武装も全然成り立っていないと思っています。
例えば、ことし一月三十日の規制改革推進会議第九回農業ワーキング・グループ、これは規制改革の方の総括審議官なんですけれども、山口審議官が、廃止理由の説明に、稲の奨励品種に民間企業がほとんど対象になっていない、きょう議論されてきたことですが、そのことを挙げて、このように言うんですね。「もう少し民間企業に対しての配慮というものが必要ではないかということで、今回この法律自体は廃止とさせていただきたい」。
配慮という言葉は、言葉尻で言うつもりはありませんが、政治的にも行政的にも配慮という言葉を使いますけれども、それを廃止に結びつけるというのは行き過ぎではありませんか。
前回の委員会で、私は、民間との連携を言うなら、法律の改正で済むはずだと述べました。
一体、省内でどういう検討をしてこういう廃止や廃止などの理屈になってきたんですか。どんな検討をやってきたのか、ちょっとはっきり述べてください。
○山本(有)国務大臣
繰り返しになりますけれども、この種子法の枠組みを前提として、都道府県に対して、民間事業者の開発した品種も積極的に奨励品種に採用するよう通知を発出するなどして、参入促進を図ってまいりました。しかしながら、民間事業者の開発した品種は都道府県の奨励品種にほとんど採用されていないという現実が長く続くことになりました。
その根本的な要因が、奨励品種を指定するための試験等を都道府県に義務づけることによって、都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種に指定されるという、一種、みずから頑張ったことに対するみずからの褒美、そういう意味での奨励品種に指定されておりまして、現行の法制度そのものにこうした構造的な問題が内在しているというように判断させてもらいました。
したがいまして、現行法のもとで奨励品種の決定方法等に関して法改正を行ったといたしましても制度そのものの構造的問題を解決し得ないことから、今般、種子法を廃止するというようになった次第でございます。
○畠山委員
時間が私は余りないので、昭和二十七年、一九五二年の種子法の最初の議論のとき、これはもともと議員提案の法案だったんですね。坂田英一議員が次のような提案理由を説明していることを最後に、今日にも通じる部分ですので、紹介しておきたいと思います。「優良な種子を生産するためには、特別の技術と管理が必要とされ、その生産費が一般の米麦と比較しておのずから高くなる」、途中略しますが、「ここに国または地方公共団体がその生産と普及について特別の指導ないし助成を行う必要が生じて来る」、こういうふうに提案理由を説明しています。
公的機関が優遇されているかのように主張されますが、優良な種子生産のためであることは今日も変わりはありません。この根本はなくすものでなく、民間の活力も使うというなら、その範囲で運用改定すればいいだけではありませんか。
最後に、この種子法に込められた公的な責任は後退することにならないのか確認して、私の質問を終えます。
○山本(有)国務大臣
この種子法で位置づけられております原種、原原種の生産、あるいは奨励品種の決定のための試験等を義務づけたということが、品種開発や奨励品種の決定自体につきまして、各都道府県の農業振興を目的として、法律によらず、各都道府県の自主的な判断により今日まで実施されているという認識でございます。
農林水産省が各都道府県に聞き取りを行いましても、大半の都道府県から、主要農作物種子法が廃止されても、現行の種子法に規定されております奨励品種に関する業務、あるいは原種、原原種の生産に関する業務、圃場審査、生産物審査に関する業務、これらを都道府県の責任において継続する見通しと回答されておられます。国はもとより、都道府県の公的責任は後退するようなことではない、こう考える根拠になったわけでございます。
そして、農業競争力強化支援法におきまして、民間事業者の参入促進のため、都道府県の知見を活用することも規定しておりますけれども、これは、今後とも都道府県が種子生産に関する取り組みを行うことを前提としたものでありまして、この規定をもって、都道府県が種子生産に関係する取り組みを行っていく上での根拠として位置づけることも十分可能であるというように考えるところでございます。公的責任は後退いたしません。
以上でございます。
○畠山委員
時間ですので、終わります。

第193回国会 農林水産委員会 第3号   平成二十九年三月八日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは時間が短いですので、早速質問に入ります。
農業競争力強化の一端として、主要農作物種子法の廃止が閣議決定されました。法案としての審議は別の機会ではありますが、廃止の理由についてはきょうのうちに問いたいと思います。
種子法のもとで、基礎食糧である稲、麦、大豆の品種開発と安定供給が担保されてきました。都道府県ごとに気象や土壌条件が違う中で、その特性を踏まえて奨励品種を決めてきた仕組みは合理的だったと言えます。
そこで、廃止の理由なんですけれども、その一つに、地方公共団体のシステムによって民間の品種開発意欲が阻害されていることが挙げられています。具体的に何がどのように阻害されているのか、まず説明してください。
○柄澤政府参考人
お答えいたします。
主要農作物種子法第八条におきましては、都道府県に対しまして、当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種を指定するために必要な試験を義務づけているところでございます。
この試験を行って、普及すべき優良な品種、いわゆる奨励品種に指定されれば、都道府県がその種子の増産や審査に公費を投入しやすくなるということがございます。こういった状況の中で、都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種になるということになっておりまして、例えば稲で見てみた場合に、民間企業が開発した品種で奨励品種に指定されたものは今までない状況でございます。このこと自体、今御指摘の、民間企業とそれ以外がイコールフッティングになっていない証左だというふうに理解しております。
このように、法律に基づきまして国が都道府県に奨励すべき品種を決定させる、こういう現行の枠組みを前提とする限り、民間企業の参入につながらず、マーケットのニーズを踏まえた種子生産を拡大していくことは困難であるというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
今の答弁ですけれども、実態は、昨年ですか、神奈川県でも、全農のはるみという稲の品種が奨励品種とされました。また、農水省の資料でも、民間企業が開発したみつひかりは、三十八都府県で今や栽培されています。大手牛丼チェーンのニーズがあって、需要先の紹介とセットでPRすることで栽培面積が年々増加しているとまで書いています。
まず事実を確認しますが、それでは、民間で開発した品種が都道府県の奨励品種になれないんでしょうか。具体的に、これは事実の問題として確認したいと思います。
○柄澤政府参考人
民間企業が開発した品種につきましては、都道府県が試験を行って普及すべき優良な品種と判断して奨励品種に指定することは、現行制度上は可能でございます。
しかしながら、奨励品種に指定されれば県がその種子の増産や審査に公費を投入しやすくなるという状況の中で、どうしても都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種になっておりまして、なかなか民間企業が開発した品種が奨励品種にならないということになっております。
そういった中で、今御指摘ございましたが、民間企業、一部、稲などの種子を生産しているところもございますけれども、そういった民間企業は、もう仕組み自体がそうなっているということを踏まえまして、この奨励品種を目指すということではなくて、むしろ、今御指摘ございましたように、実需者と結びついた形で販売先を確保するというような戦略をとってきている、そういう構造上の制度の中でそういうことをやっているということでございます。
○畠山委員
最初に聞いた、私は事実の確認だけだったわけです。現状でも奨励品種になることは可能であります。
それで、そもそも、農水省自身が種子法の意義を訴えてきた歴史があるわけですよ。これまでと説明が一変してきたというふうに思います。
規制改革会議が種子法を問題にしていた会議がありました。二〇〇七年ですが、四月二十日、規制改革会議地域活性化ワーキンググループの第二回農林水産業・地域産業振興タスクフォースです。当時の議事録を読むと、今私が前段に質問したようなことに農水省自身が反論文書を提出しています。
民間の新品種が奨励品種になることが極めて困難との指摘があるがとの問いに対して農水省は、奨励品種に採用する品種については、公的機関が育成した品種に限定しておらず、本制度が新品種の種子開発の阻害要因となっているとは考えていないと書いています。同じく、奨励品種制度が生産、販売、普及の妨げとなっているというような指摘にも農水省は、優良なものは積極的に奨励品種に採用するよう都道府県に対し指導している、奨励品種制度が新品種の生産、販売、普及の妨げになっていないと考えると明確に述べています。
民間の開発意欲を阻害しているとの指摘に対して、これまで明確にこのように否定してきたではありませんか。なぜ認識が変わったのですか。
○柄澤政府参考人
もとより、稲、麦、大豆が我が国の土地利用型農業における極めて重要な作物でございますし、その生産における基本的資材であります種子が重要な戦略物資であるという考え方については、今までも今後とも一貫しているところでございます。
ただ、そうした戦略物資として重要な種子の安定供給のための手段を考えてみた場合に、現行の主要農作物種子法におきましては、優良品種の指定ですとか、あるいは原種、原原種の生産を全国一律で法律に基づいて都道府県に義務づけるというスキームをとってやってまいったわけでございます。
しかし、近年の状況を見ますと、種子生産者の技術水準の向上等によりまして、種子の品質は安定しておりますし、むしろ、実需者のニーズを踏まえた民間企業の品種も開発されてきている。こういった現下の状況を鑑みました場合に、今後はこのような民間ノウハウを活用しながら種子の安定供給を図っていくことが必要であるという判断に至ったところでございます。
そういったことから、今般、主要農作物種子法を廃止しまして、都道府県による種子開発、供給体制を生かしながら、民間企業との連携によって種子を開発、供給していくこととしたところでございます。
○畠山委員
ですから、阻害をしているということについての根拠は薄いと思うんですよ。それならそれで、現行の法律に民間との連携を書き加えれば済むだけの話であって、その是非は別ですけれども、一体なぜ廃止するのかという理由は私は納得できません。
そこで、最後に大臣に伺います。
種子法の廃止に対しては、懸念の声が少なくありません。日本農業新聞二月二日付論説には、次のように書かれています。「民間参入を促す狙いだが、主食の種子は食料主権の根幹に関わると知るべきだ。」「生産者に十分な説明がないまま廃止に突き進むのは、国民無視と言わざるを得ない。まず、廃止の是非、必要性を広く議論すべきだ。」との論説です。もっともな指摘だと私は思いました。
基本的な農業資材である種子、今回は稲、麦、大豆ですが、そのものについて、種子についての認識を最後に大臣に伺っておきます。
○山本(有)国務大臣
稲、麦、大豆、これは我が国の土地利用型農業における重要な作物でございます。その生産における基本的資材でございます種子は、重要な戦略物資であるというように考えております。
このような稲、麦、大豆の種子につきまして、都道府県が中心になって種子の生産、普及を行ってきたところでございますが、近年、実需者のニーズを踏まえた民間企業の品種も開発されているところでございまして、今後はこのような民間ノウハウも活用して、多様なニーズに対応する必要があるというように考えております。
このため、今般、主要農作物種子法を廃止させていただきまして、都道府県による種子開発、供給体制を生かしつつ、民間企業との連携、これを深めまして、種子を開発、供給していくというようにしたいところでございます。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、廃止する根拠として十分な説得力を持ち得ているとは思えません。慎重な審議が必要であることを委員各位にも呼びかけまして、私の質問を終わります。

第193回国会 予算委員会 第16号    平成二十九年二月二十七日

○畠山委員
私は、日本共産党を代表して、二〇一七年度予算三案につき政府がこれを撤回のうえ編成替えを求めるの動議について、提出理由及び概要を説明します。
安倍内閣の四年間で大企業や富裕層の利益は大きくふえましたが、国民生活を見れば、実質賃金は政権発足前に比べて年額十八万円も低下し、家計消費は十六カ月連続で前年を下回りました。二〇一六年度の税収は予算見込みを大きく割り込み、国債発行額は消費税増税以降の三年間で最悪になり、二〇一七年度も所得税、消費税は前年度当初を下回る見込みとされています。もはやアベノミクスの破綻は、予算編成の上でも明白になっています。
この二十年間で、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進行し、日本経済には大きなゆがみが生じています。この格差と貧困を正すことが、日本政治の最も重要な課題です。
この立場で、二〇一七年度予算案を抜本的に組み替えることを求めます。
次に、編成替えの概要について、主な点を説明します。
第一に、自然増削減の名による社会保障の連続大改悪を中止し、拡充に転換します。
年金の削減、抑制、医療費の保険料、窓口負担の引き上げ、家族の介護負担を一層重くするサービス取り上げなどを中止します。生活保護の切り下げ路線も改めるなど、国民の生存権を守る仕組みを拡充します。
第二に、賃上げを進め、人間らしく働ける雇用のルールを確立します。
三百八十六兆円に達した内部留保を活用した大幅な賃上げと、中小企業への支援とあわせて、最低賃金の抜本的引き上げを図ります。過労死を生み出す長時間労働の是正へ、厚労大臣告示を残業時間の上限として法律で規制します。残業代ゼロ法案を撤回します。
第三に、教育、子育て支援を充実し、子供の貧困打開を進めます。
全学年にわたる三十五人学級の実現など教育条件の整備と、保護者負担の軽減を図ります。大学学費を十年で半減するとともに、給付型奨学金制度の規模と対象を大幅にふやします。国有地などの無償貸し付けを行いながら、認可保育所を増設して待機児童の解消を図ります。
第四に、中小・小規模企業の経営を守り、農林漁業の維持、再生を強めます。
地域循環型経済の実現に向けた施策を本格的に講じます。一層の農業破壊につながる通商交渉を改めます。カジノ解禁推進法は廃止します。
第五に、被災地の生活となりわいの再建に向けた取り組みの強化と、原発推進路線を転換します。
住宅再建へ支援金を五百万円に引き上げ、中小・小規模事業者や商店街への支援を強めます。福島原発事故処理費用は原発利益共同体に応分の負担を求め、原発再稼働と核燃料サイクル計画は断念すべきです。
第六に、思いやり予算など五兆円を超える軍事費を大幅に削減し、沖縄・辺野古への米軍新基地建設を撤回します。
南スーダンから自衛隊を直ちに撤退させるとともに、安保法制、戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回します。
最後、第七に、消費税頼みを改め、能力に応じた負担の原則に立った民主的税制の確立です。
大企業優遇税制を改めるとともに、多国籍企業の税逃れを許さないタックスヘイブン税制などを強化します。超富裕層、大資産家の軽い税負担率を引き上げるなど、能力に応じた負担という当たり前の税の原則に立ち返り、財源を生み出します。
以上、編成替えの内容はお手元配付の文書のとおりです。
委員各位の御賛同をお願いし、趣旨の説明を終わります。

第193回国会 予算委員会第三分科会 第1号  平成二十九年二月二十二日

○畠山分科員
日本共産党の畠山和也です。よろしくお願いいたします。
私からもきょうは日ロの領土問題について中心に質問したいと思っておりますが、初めに、EUとのEPA交渉の現状について確認させてください。
日本農業新聞ですが、二月十九日付では、「日欧EPA膠着」と見出しが打たれて、次のように書いてあります。「日本とEUは一月に首席交渉官会合を開いたが、双方の主張の開きが大きい自動車、農業分野双方で目立った進展はなかった。」と報じられています。EUからはチーズなどの乳製品、また豚肉、木材、ワインなどでTPP以上の市場開放を要求されているとも報じられています。これはもうもちろん多くの農家から心配の声が聞かれるのも当然だと思います。
そこで、岸田大臣に、まず、EUとのEPA交渉の現状について、どうなっているか伺います。
○岸田国務大臣
日本とEUとの間のEPA交渉ですが、できる限り早期に大枠合意を目指す、この方針のもとに、引き続き議論、協議を続けております。
先日、二月十七日ですが、EUの経済貿易担当のマルムストローム委員ともワーキングランチを開催し、意見交換をさせていただきました。国際社会において保護主義の台頭、内向きな傾向が強まっているときだからこそ、この日・EU・EPAについて、しっかりと早期の大枠合意に向けて努力を続けていくことが大事であるということを確認した次第であります。
委員御指摘のように、日本とEUの間においては、それぞれセンシティビティーもありますし、それぞれの国内事情等もあるわけでありますが、しかし、引き続き協議を強い意思を持って行っていく、モメンタムをしっかり維持していかなければいけない、こういったことについては確認をさせていただきました。
そういうことですので、引き続き、日・EU・EPA、日本とEUの間における最大の、最重要の課題であるという認識のもとに協議を進めていきたいと考えております。
○畠山分科員
意義や重要性については、いつも農水委員会の方でもあるたびに、関係するところから出されるんですが、やはり中身について、関係する業界、農家などは心配をされているわけです。
TPP交渉の際には秘密保持義務がかかっていたというふうに答弁などはされていました。結果が出てくるまで中身がわからずに、その後の審議でも、交渉過程はつまびらかにできないというような答弁が昨年の特別委員会でもされていて、これでは国会で検証もできないではないかということは野党の側から繰り返し指摘もありました。
それで、今回のEUとのEPA交渉においても同じことがあるのかという点でも非常に懸念の声があります。
確認ですが、今回のEUとの交渉において、TPPのような秘密保持の取り決めがあるのかないのか、まず、事実の点として確認したいと思います。
○岸田国務大臣
事実関係だけ端的にお答えするならば、日・EU・EPAにおいては、TPP交渉のときのように秘密保持について特別の約束というものを交わしたということはございません。通常のこうした条約交渉における基本的な考え方に基づいて秘密保持についても取り扱っていかなければならない、このように思っております。
○畠山分科員
外交に一定の秘密が必要だということでありますが、これまで日本はマレーシアとかフィリピンとか多くの国とEPA、FTAなどを結んできました。とりわけ、経済規模や国内への影響という点では日豪のEPAが非常に大きなものだったと思うんですが、当時の議論を振り返りますと、農林水産委員会などでも決議が上げられて、農産物を中心としたセンシティブな品目にかかわっては一定でも質問には答えようという形で、農業者を含めた方々への、懸念を払拭する態度の御答弁などもあったように思います。
それで、今なんですけれども、もちろんEUとのEPAにおいてはさらなる影響の大きさということが心配されているわけでありまして、こういう点で、秘密という形でTPPから引き継がれるようなイメージをやはり多くの方々は受けております。
それじゃ、何がこれまでと、今までと違うのか。これまでも一定、センシティブな問題でもお答えいただくというような態度があったかに思いますが、どこまで秘密にしているのか、違いがあるのかないのか、改めてその点についての岸田大臣の答弁を求めます。
○岸田国務大臣
条約交渉においては、一般的な態度としまして、条約交渉の結果については、もちろん、当然のことながら国民の皆さんに明らかにし、しっかり説明をしていかなければなりません。しかし、条約交渉の経過については、しっかりとした慎重な取り扱いをしていかなければならない、これが基本的な考え方です。
交渉の経過につきましては、まず相手方との信頼関係があるわけですが、加えて、こうした条約交渉の経過を明らかにするということになりますと、経済連携交渉を初めとする同様の交渉を他の国と行う際に、日本の最大の関心事は何なのかとか、日本の手のうちを明らかにすることにつながってしまいますので、一つ一つの条約交渉の経過を明らかにするということは国益にもかかわることであります。そして、これは日本のみならず相手方にとっても同じ立場ですので、お互い国益がかかっていますので、信頼関係のもとに、交渉経過については明らかにすることは慎重でなければならない、これが基本的な態度であります。
ですから、今回の日・EU・EPAにおいても、今申し上げました相手との信頼関係そして国益との関係において、交渉経過については、明らかにすることはできるだけ慎重でなければならないということは御理解いただきたいと思います。
ただ、一方で、日・EU・EPAについては多くの国民の皆さんから大きな関心を持って見られている、これは事実でありますので、今申し上げました条件の中にあっても、最大限説明努力は政府として行っていかなければならない、このことは政府としてもしっかり考えておかなければならないとは思っています。
○畠山分科員
お聞きしたいことは、なぜこのようにEUとの交渉で今回まだ不安が広がっているかというと、日本政府の側の基本姿勢にあるのでないかと私は思っているんです。
というのは、安倍首相みずからが、今後の通商政策においてはTPPをスタンダードにするということを述べられてきたことが根本にあるのではないかと思っています。御存じのように、もちろんTPPというのは原則は関税撤廃でありますし、非関税障壁においても、さまざまな、食の安全、保険などについての懸念を委員会などで私も指摘をしてきました。ISDSのように一国の主権が脅かされるかもしれない中身についてはEUからも、強い反発が市民からもあると報じられてもいます。だから不安の声が今回においてはさらに強まっているんだと私は思うんですね。
そこで、EUとの関係で最後に確認したいのは、先ほど、総理が述べたようにTPPが今後の通商政策のスタンダードだと言っていたことは、今回の交渉においてもそれが同じ基本姿勢として進められているのかどうか、最後に確認したいと思います。
○岸田国務大臣
御指摘の総理答弁のように、TPPにおいて得られた成果というのは今後の我が国の経済連携交渉の一つのモデルになると思っていますし、また、二十一世紀型の経済連携のスタンダードになる、こうした認識は持っております。
ただ、経済連携交渉は、それぞれ相手によってセンシティビティーは異なります、それから関心分野も異なります。ですので、単純にこれを比較するということはなかなか難しいのではないかと思います。それぞれの条約交渉において、我が国の国益を最大限考えた上で全力で交渉に臨んでいく、こうしたことなのではないかと思います。
日・EU・EPAにおいても、同様に、我が国の国益を最大のものにするようしっかりと努力をしていきたいと考えます。
○畠山分科員
これは主張の範囲ですが、TPPのような経済主権や食料主権を脅かすような協定には賛同することはできません。何より、今、国民や、国会においてもさらなる説明を強く求めておきたいというふうに思います。
日ロの交渉の話に進みます。
G20のボン外相会合の場で、十七日、岸田大臣とロシアのラブロフ外相との会談が行われました。昨年の日ロ首脳会談を受けた後の外相会談ですので、当然注目すべき会談だと思っていました。
それで、まずこれも事実としての確認ですが、その外相会合の場で、平和条約、領土問題でどのような話をラブロフ外相としたのかしなかったのか確認したいと思いますが、同時に、それにあわせて、とりわけクリミア問題で経済制裁中である中で、その点も含めてかかわった話し合いはどうだったのか、基本姿勢はどのようにして臨んだのかについて、まず伺います。
○岸田国務大臣
先日、G20の外相会談の際に行われた日ロ外相会合ですが、昨年十二月の日ロ首脳会談において平和条約問題を解決するという両国首脳の真摯な決意が表明されたのを受けて、外相間でも緊密に話し合って、四島における共同経済活動と、また旧島民の皆さんの四島への往来、こうした協議についてしっかり進展を図っていく、こういったことで一致をいたしました。その上で、十八日にこの問題について次官級の協議を行う、これを両国で確認したということであります。
そして、一方で、ウクライナ問題に関する制裁、そして我が国の立場についてですが、力による一方的な現状変更の試み、これは認められない、この方針、態度は全く変わっておりません。この方針に基づいてロシアともこの議論を行っているところでありますし、この問題につきましては引き続きG7の連帯をしっかり重視しながら対応を考えていきたい、このように考えております。
○畠山分科員
共同経済活動はこの後話を進めたいと思いますが、やはりちょっと基本のことについて、二月三日の予算委員会でも私は総理に対して質問をしましたので、改めてこの場でも一言確認しておきたいと思うんです。
結局、今回、首脳会談においてのプレス向け声明で、領土のことについては共同経済活動の文脈では出ているけれども、実際の返還に向けた記述がないのではないかということで、非常に落胆の声が上がりました。棚上げなのかという根強い声があります。
このとき、二月三日ですが、予算委員会で、私がヤルタ協定という戦後処理の不公正を正す交渉姿勢で臨むべきだと主張したのに対し、岸田大臣も総理もですが、ヤルタ協定は当時の連合国の首脳で戦後処理方針を述べたにすぎない、当事国でない日本がヤルタ協定の内容と領土不拡大原則の関係を説明する立場にないとの答弁をされました。だから交渉では領土問題を正面から取り上げなかったのか、そういうふうに吐露したんじゃないかということを私は改めて受けとめたいと思うんです。
長い交渉の歴史を肌で感じている元島民や根室の皆さんからすれば、今回の結果に落胆の声が上がるのも当然だと私は思いました。
そこで、いろいろとレクチャーなども、外務省を含めて聞くんですが、改めて判然としないなと思うのが、総理の言う新しいアプローチというのが何なのか。これは地元の皆さんもよくわからないと言うんですよ。結局、領土との関係はどうなるのか、経済活動一辺倒にならないか、不安の声がたくさんあります。領土交渉の棚上げではないと言うのであるならば、改めて、どうやってその新しいアプローチが領土返還につながるものなのか、しっかりと御説明をいただきたいと思います。
○岸田国務大臣
北方領土問題そして平和条約締結交渉につきましては、戦後七十年以上にわたって両国で激しい議論を続けてきました。
私も、二〇一三年の四月に初めて、ロシアのラブロフ外相と、ロンドンにおきまして日ロ外相会談に臨みました。昼食を挟んで、長時間にわたって北方領土問題そして平和条約問題について議論を行いましたが、実際、内容は、歴史的な解釈あるいは両国のこの問題における法的な立場、これについて延々と議論をするということでありました。
その後、ウクライナ問題もありまして、この議論が一時期途絶えたわけでありますが、一昨年の九月に、また引き続きこの議論を始めようということを確認し、そして昨年の四月の段階で、我々、ラブロフ外相と私もそうですし、多くの先輩たちが戦後ずっとこの議論を続けてきましたが、歴史的な解釈あるいは法的な立場について議論を続けるということになりますと、私が日本の法的な立場や歴史的な解釈を幾ら説得してもラブロフ外相もわかりましたということにはなかなかならないでしょう、私自身も幾らあなたからこれを説得されても日本の立場は絶対譲ることはできません、これは当然のことですということを申し上げ、確かに両国の間には法的な立場の違い、歴史的な解釈の違いは存在するけれども、未来に向けて両国が受け入れられる、こうしたものを考えることはできないだろうか、こういったことを、去年の四月、日ロ外相間で話をしたわけであります。
新しいアプローチということについては、具体的なことはまだ交渉の最中ですので申し上げることは今控えなければならないと思いますが、新しいアプローチは、その四月の外相会議の後、五月に両国の首脳間で確認したものであります。基本的には今申し上げましたような考え方に基づいて新しいアプローチというものを両国首脳間で確認したものであると考えております。
○畠山分科員
予算委員会の際に、私が総理にぜひ根室へお越しくださいという要請をしたのは、やはりそういう中身を市民の皆さん、元島民の方々がきちんと聞きたいという思いを強く持たれているからです。
原則については改めて今繰り返すことはしませんけれども、先日ですか、三つの無人島にロシア側が旧ソ連軍幹部などの名前をつけるということの発表もありまして、日本としては遺憾を表明したとも報じられています。こういうたびに改めて日本政府としては原則的で強い姿勢を示す必要はあるかと思いますが、根本的には戦後処理の不公正を正す外交姿勢の確立を改めて述べておきたいと思います。
それで、共同経済活動について、後半、伺いたいと思います。
七日、共同経済活動関連協議会が開催されました。岸田大臣を座長に、世耕担当大臣、野上内閣官房副長官らが出席して設置されたとのことです。
この協議会の目的と意義について簡潔に、まずお示しください。
○岸田国務大臣
二月七日に開催しました共同経済活動関連協議会ですが、これは、昨年十二月の日ロ首脳会談の結果を踏まえ、北方四島における共同活動を具体化していくために考え得るプロジェクトについて、外務大臣を座長として関係省庁と調整していく、このために設置されたものであります。
○畠山分科員
共同経済活動で思い起こされるのが一九九八年のモスクワ宣言の後の取り組みであります。このときも、二〇〇〇年までに平和条約を締結することを目指して、国境画定に関する委員会と共同経済活動に関する委員会の設置が指示をされて、具体的な作業や議論が行われましたが、実を結びませんでした。
現状においては、当時よりもさらに、先ほどからあるように、ロシア側の領土問題についてのかたい態度表明などもされてきて、なかなか主権の問題では今後の協議が難航することは予想されます。
どのような態度で基本姿勢として臨まれるか、お答えください。
○岸田国務大臣
こうした共同経済活動につきましては、委員御指摘のように、過去においてもさまざまな議論が行われてきました。その際に、やはりネックになりましたのは、それぞれの法的な立場を害するということになってしまっては基本的な立場自身が揺らいでしまいますので、これが一つのネックになってきたというふうに感じております。
その部分にしっかり着目をした上で、今回、知恵を出そうではないかということで、両国首脳間で合意に至ったわけであります。国際約束など、さまざまな知恵を出すことによって、お互いの法的立場を害することなく共同経済活動を行うことを目指そうということになったわけであります。
そのことによって初めて日本人とロシア人が北方四島において経済活動を行うことができるようになる、そのことによって両国の間の信頼関係が生まれてくる、あるいは、北方四島で暮らしておられるロシアの方々にとって日本に対する理解が進むなど、北方四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結するという我が国の方針にも大きなプラスになる、このように考えている次第であります。
○畠山分科員
なかなか、歴史的にも議論などが進んできた中身ですから、言うはやすく行うはかたしの課題であろうというふうに私はもちろん思っております。
そこで、現実的に、今根室市などを含めた現状を紹介しながら、一方で、目の前に迫っている、元島民の生活であったり根室市の経済をどうするかということが非常に深刻であることを最後に訴えたいと思うんです。
島が返ってこないことで直接的な打撃を受けてきたのが水産業でありました。関連する製造業や流通業に打撃があって、とりわけ昨年はサケ・マスの流し網漁が禁止されたことによって、試験操業しましたが、たった四千四百二十キログラムでした。サケ・マスのみならず、二〇一六年の根室市の漁獲量は約六万七千トンで、前年比約八千トン減少、金額でも約二百二十四億円で、前年比三十一億円減少です。漁獲量の水準は、実は、一九五五年、昭和三十年以来の六十一年ぶりの低水準となって、そのために、魚が来なければ仕事にならない製造業、流通業にとっては、倒産や廃業を余儀なくされるおそれが出ています。
ですから、こういう当面の対策と中長期の対策などと分けて考える必要もあります。
水産庁に確認します。まず、当面の対策について端的に述べてください。
○保科政府参考人
サケ・マスの流し網漁の禁止に伴う道東地域を中心とした関連産業への影響を最小限に抑えるために、平成二十八年度の補正予算におきまして緊急対策を講じたところでございまして、現地において十分活用をいただいていると考えております。来年度以降にも、必要に応じて既存の水産予算を活用して支援に努めることにしております。
特に関係の漁業者からの要請の強い、ロシアの二百海里水域において禁止された流し網漁法にかわる新たな漁法の可能性の検討、それから、ロシア二百海里水域での五月から七月のサケ・マスの流し網の操業から、公海あるいは日本の二百海里水域でのサンマ、サバ、イワシ等の操業への転換の支援、これらにつきましては、これまでの実施状況を踏まえまして、必要な額を平成二十九年度の予算にも計上しているところでございます。
○畠山分科員
当面は予算措置も含めてしっかりやるべきであることを改めて要望しておきたいと思います。
共同経済活動においては、漁業において、安全操業などについて先例的にやってきた経験があるということを地元でもおっしゃっておられました。先に進めようとするとこういう経験があるのではないかという現場の知恵です。
そこで、これも水産庁に確認しますが、例えば第一歩として共同資源調査などができないか、そういう点の可能性や課題はどのように考えていますか。
○保科政府参考人
まず、先ほどのお答えの中で、補正予算の措置について、平成二十八年度と申し上げましたけれども、平成二十七年度の間違いです。訂正させていただきます。
次に、水産資源調査でございますけれども、水産庁では、北太平洋に広く生息するサンマ等の資源評価を実施してきておりまして、来年度は、我が国同様サンマ等の資源の沿岸漁業国であるロシアと共同で、公海でですけれども、資源調査を実施することにしております。両国の研究者の知見を活用しまして、サンマ等の資源評価の精度向上を図ってまいりたいと考えております。
このような共同調査をさらに拡大していくということですけれども、そのような場合には、これまでの調査の結果ですとか、あるいは今後の調査の必要性を踏まえて、ロシア側と協議しつつ検討していく必要があると考えております。
なお、北方四島における共同調査、共同経済活動については、我が国の法的立場を害さないことが前提であると承知しておりまして、こうした立場を確保しながら検討していく必要があると考えております。
○畠山分科員
こういう地域経済や水産業の状態が今何を招いているかといいますと、地域経済が回らないものですから、地元企業も雇用がぎりぎりなんですね。ですから、昔のように返還運動を企業も後押しして東京の集会なんかに送り出すということができなくなってきているんだそうですよ。したがって、そもそも若い人の雇用が減ってきているわけですから運動の後継者も減っていくということを聞きまして、本当に深刻だなと改めて思いました。
そこで、最後に問いたいのが北方基金の問題です。
隣接地域の振興事業や啓発事業などを行ってきましたが、利率の低下で運用益が大きく減ってきています。運用益の最高時がいつで何億円、そして直近がどうなっているかの事実だけ、内閣府の方に確認します。
○山本政府参考人
お答え申し上げます。
運用益の最高額は、平成三年度における五億九千百万円であります。
平成二十八年度の見込み額は一億五千五百万円となっております。
○畠山分科員
実に四分の一まで減ってしまっているわけです。これを、隣接地域の一市四町で一億五千万円を分けてもどれだけの振興策ができるかということになります。具体的に先ほどのような全国キャラバンを展開するにしても、十分な日当も出ない、手弁当状態だというふうに聞きました。
そこで、最後に岸田大臣に伺います。
北特法においても、主務大臣として外務大臣の名前が挙げられております。総理や国交大臣もおりますが、財政問題については、新たな枠組みも視野に入れた安定的な財源対策が必要だと思いますが、最後に答弁を求めます。
○葉梨主査
岸田外務大臣。
時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。
○岸田国務大臣
先ほど来議論に出ておりますように、国内においては共同経済活動関連協議会を立ち上げました。そして、三月十八日には日ロ間で次官級協議も行われます。
こうした議論が続いております中ですので、今の段階で具体的なプロジェクト、ましてや財源について何か申し上げるのはまだ時期尚早だとは思いますが、ただ、委員の御指摘を聞いておりまして、やはり、地元のニーズ、さらには北方領土の地理的な環境、こういったものをしっかり念頭に置きながら、具体的なプロジェクト、さらには財源等についても考えていかなければならないな、このようには感じました。
ぜひ、そういったことも念頭に引き続き議論を続けていきたい、このように考えます。
○畠山分科員
墓参などの拡充の強い要望もあることを最後に添えまして、私の質問を終わります。

第193回国会 予算委員会公聴会 第1号  平成二十九年二月二十一日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
四人の公述人の皆様には、お忙しい中、足をお運びいただき、貴重な公述もいただきました。本当にありがとうございます。
限られた時間の中で、私は、働き方改革を中心にした質問をさせていただきたいと思っています。
今国会でも安倍政権がこの働き方改革の実現を大きな柱に据えているんですが、改めて第一回の働き方改革実現会議の安倍首相の発言を読みますと、これは、第三の矢、構造改革の柱と位置づけがされていまして、社会問題であるだけでなく、経済問題だという位置づけをしています。
長時間労働によって、言ってみれば、購買する時間も機会もないことだとか、賃金が低過ぎて購買力が低下しているという文脈であれば理解はできるわけですが、先ほどから話がありましたように、実際は裁量労働制の導入などで、本当に労働者のための改革になるのかという疑念があります。
そこで、まず初めに小田川公述人に伺いたいと思います。
こういう改革と名が打たれたときに何を基準と考えるかということの一つに、国際基準を据えてはどうかと私は思います。労働の現場でいえばILO、また、きょう小田川公述人の資料にはEU指令などの文言も見られました。今、日本の働き方が国際基準から見てどのようにあるとお考えか、御意見をいただければと思います。
○小田川公述人
例えば労働時間にかかわって申し上げれば、御案内のように、ILOの条約を、残念ながら日本は労働時間関係については批准をしていない。そのこともあって、一日八時間、週四十時間という法定労働時間がありながら、それを抜けていくようなさまざまな仕組み、三六協定であるとか特別条項というものを認めるような法制度になっているというふうに思います。
諸外国の例を言えば、一定時間の上限を設けて、それ以上は時間外も含めて認めないという仕組みを持っているところは幾つかあるように承知をしますので、その点での日本の働き方の国際基準からの立ちおくれというのがあるのではないかと思います。
賃金の水準については、先ほど申し上げたとおりであります。
○畠山委員
ありがとうございます。
もう一つ小田川公述人には伺いたいんですが、先ほどの質疑の中で、逢見公述人への裁量労働制についての質問がありました。この点については私も非常に危惧を持っています。社会的な問題になった高橋まつりさんの亡くなられた件で、この点で実は参議院で我が党の議員が質問を行っています。
先ほどもありましたように、今度の対象業務が拡大される中に課題解決型提案営業が含まれる見込みで、これは先ほど名前を挙げた高橋まつりさんがかかわるネット広告に関する企画提案などが当たるのではないかということを問うたのに対して、厚労大臣から、三年から五年お勤めになった一定の技術を持った方が対象になるので、新人であった高橋まつりさんは当たらないという大臣の答弁だったんですね。
そういうことも含めて、まだ労働基準法については議論の進行中でありますけれども、この裁量労働制の考え方について、改めて小田川公述人に、こういう現場の実態を踏まえた上での御意見をいただければと思います。
○小田川公述人
現在国会に上程をされています労働基準法改正法案に対する意見は、先ほど逢見公述人がおっしゃられた立場と全く一緒でありまして、私ども全労連としても反対の立場であります。
現状から申し上げれば、現行の裁量労働制も、言えば、対象業務が現実の運用の中では拡大をされて十分規制がかかり切れていない現状であるとか、そのことによる過労死あるいは健康を損なう労働者の存在が繰り返し私どもの相談でも寄せられていることなどを踏まえれば、裁量労働制という働き方そのものに大きな問題があるというふうに考えています。
○畠山委員
ありがとうございます。
本当に長時間労働をいかに克服していくかということは大きな課題でありまして、国会でも引き続き議論していきたいと思います。
そこで、これは逢見公述人と小田川公述人お二方に同じテーマでお聞きしたいのですが、その規制に当たっては、上限を規制するということとともに、インターバルの規制ということも挙げられていると思います。こちらのインターバル規制についてはなかなか取り上げる機会もないものですから、こういうせっかくの機会でもありますので、その意義や必要性なども、現場の実態なども踏まえてこの機会に公述していただければと思います。
お二人の公述人にお願いいたします。
○逢見公述人
インターバル規制の必要性についてですが、今の我が国の労働基準法では、一つの勤務が終わってその次の勤務に入るまでの時間というのが、勤務中の休憩時間はあっても、次の勤務に入るまでのインターバルについての記載が全くない。したがって、例えば夜勤が明けてそのまま日勤に入っても、それは労基法上違法にならないということです。
現実に、例えば、ファストフードとかあるいはコンビニエンスストアで次の交代で来る予定の人が来なかったというときに、結局、自分がかわりの人が来るまでずっとそこで仕事を連続しなければいけなかったということで、夜勤からそのまま昼間の勤務に入ってしまったというのがあります。
それから、ホワイトカラーでは、さまざまなクライアントから仕事の注文を受けてそれをこなしていくわけですけれども、製造業のラインの作業とは違って、そういうクライアントから仕事が一遍に来ることもあるわけです。そうすると、それを受けるためには自分が担当しているものをこなさなきゃいけないので、そのためには徹夜してでも準備をして、そして翌朝にはすぐ相手先へ行っていろいろなクライアントとの折衝、営業をやるということになると、その人本人にとっては連続した労働が日付をまたいで行われる。
これが過労死、過労自殺の原因になっているのではないかというふうに思っておりまして、そういう意味で、ヨーロッパではEU指令によって入っておりますインターバル規制を我が国にも入れる必要があるというふうに思っております。
○小田川公述人
さまざまな働き方、多様な働き方があるかと思うんですけれども、自律的な働き方もあれば他律的な働き方もあって、先ほどおっしゃいましたように、顧客の皆さんあるいは親企業からの要請によって、自分たちで時間管理ができない働き方はたくさんあると思います。あるいは、御紹介をしましたように、バスであるとかトラックであるとかのように、流通関係のところでも、自分たちできちっと決めた時間だけで物事を貫徹できないという他律的な要素を持っている労働はたくさんあると思うんです。
そういうところで、長時間であると同時に次の勤務との間が非常に短くなって、例えば、先ほど御紹介をしたバスの運転手の例で申し上げますと、六時間程度の休憩で次の運転に入っていくというような事例がたくさんあります。あるいは看護師さんの職場でいえば、十六時間連続の二交代制というのがあるわけであって、そういう場合には、八時間の間に、次にあるのは一般的な休憩時間しかないという状況になっていて、それを過ぎた後になお次の日の深夜に入るという場合があるような事例も散見をされていると思います。
そういう意味で、先ほども申し上げましたけれども、二十四時間を単位として人間の生体リズムはできているわけで、それを壊すような働かせ方が現に起きていることに目を向ければ、インターバル規制、勤務と勤務の間に一定時間を置いて休憩を保障するという仕組みは絶対に必要だというふうに考えております。
○畠山委員
貴重な御意見をありがとうございました。
手塚公述人に、中小企業における働き方改革について伺います。
中小企業において、賃金の引き上げや労働時間は、もちろん法令遵守の立場であることは、多くの中小企業はその立場であることは間違いないんですが、現実はなかなか大変なことがあるかと思います。
先ほどの公述でも、最後の要望の中で、賃上げの原資をどうするか、またあるいは、納期に応える物づくりの世界ですので、そこにおいての労働現場というのは、かなり社員さんの御苦労はあるかと思います。経営者としての御苦労もあるかと思います。
下請と元請の関係でいえば、安倍首相が言っていましたが、五十年ぶりに下請法を改定したということもありますが、労働時間をどうするかというのは中小企業においても必要な観点だと思います。
そこで、元請との関係で、手塚公述人の元請の関係を話すと角が立ちますので、一般論や同業者などとのことでも構わないと思いますが、実際の納期、働き方の関係で、こういう機会ですから、そこがやはり一つ大きな鍵を握るのではないかと思いますし、賃金の原資にかかわっても、先ほど最後に述べられたことの問題意識とあわせて御意見をいただければと思います。
○手塚公述人
ありがとうございます。
ひたすら、これはお客様との交渉以外にはないと思っております。もちろん、私どもの会社は粉じん職場で、労基上、二時間以上の残業はできないことになっておりますので、私どもの経営理念の中にも法令を遵守するということを明記している以上、それをきちんと守っておりますので、お客様には御理解をいただき、お受けするときに、これぐらいの納期がかかりますということでお話をさせていただき、交渉させていただいております。
賃金の方に関しましては、賃金の原資は、私が賃金の原資を持っているわけではなくて、お客様からいただくものですから、安倍内閣においては、賃上げに関しての原資をお客様にお願いしていくということも土俵に上げられるようになっておりますので、そのあたりを今後お客様にお話をしていきたいと思っております。
○畠山委員
非常に控え目に御回答いただきまして、本当に社長さんのお人柄がよくわかりました。
本当に、中小企業に至るまで安心して働ける環境をどうつくるかというのは、先ほど小田川公述人の記載にもありましたけれども、一体的に考えていかなければいけないことだろうと思います。
そこで、最後に中空公述人に、ちょっと時間が短いんですが、法人税の減税などが、ちょっと分野が違うことかもしれませんが、この間一貫して経済界なども要求があり、しかし、日本においては、一方で、内部留保がたまりにたまってしまい、これが、麻生副総理もよく言いますが、賃金や設備投資に回っていないということが日本の経済の成長性もとめているのではないかという問題意識が今広くなってきていると思います。この辺についての御見解を最後に伺えればと思います。
○中空公述人
ありがとうございます。では、手短にお話をしたいと思います。
法人税減税は、国際基準から考えると下げるのは仕方がないというふうに思っています。それが高いままだとやはりグローバル競争力で負けるというのはもう基本だと思っています。
また、民間がためている内部留保に関しては、内部留保を使いたくなるような設備投資先がないから動いていないというふうに私は思っていて、何も自分で全部持っていることが正しいと言っているわけではないと思っているんですね。設備投資をしたら利益が上がるというような環境さえあれば内部留保は必ず出てくるというふうに思っています。何かが違っているんだということだと思っていて、なので、企業が節約して持ってしまっているんだという発想は、できれば捨てていただけたらというふうに思います。
以上です。
○畠山委員
四人の公述人の皆さんに改めて感謝を申し上げます。ありがとうございました。

第193回国会 農林水産委員会 第2号   平成二十九年二月十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
本題に入る前に、京都の米卸業者による米偽装疑惑について一言述べておきたいと思います。調査結果を待ちたいわけですが、それ以前にも一つ提起したいことがあります。
食品偽装は、繰り返し繰り返し発覚してきたたびに農水省としてさまざまな対策も講じてきました。事故米の不正規流通事件が起きた後は米トレサが成立しましたけれども、当時の議事録を読むと、売買事業の実態把握が議論されていました。
二〇〇九年四月十四日参議院の農水委員会で、これは我が党の紙智子参議院議員の質疑ですが、その点について質問をし、石破大臣が、事業者捕捉の規模要件は二十トン以上と答えています。それ以下の販売業者は無届けということで、意図を持った事業者が入れば同じことが起きないかということを重ねて質問したときに、米の取扱規模にかかわらず、巡回調査などを把握して行う省としての必要性を当時石破大臣が答えておりました。
対象の業者に対する今行っている調査自体はもちろん厳格に進める必要があると思いますが、足元の農水省の行政機能や体制についても、結果次第によっては考えることがあるのではないかと思いますし、組織の長としての大臣の頭の中に入れておいていただきたいということが提起です。
コメント、通告していませんが、ございますか。
○山本(有)国務大臣
再発防止において重要な点であると思いますので、十分検討させていただきます。
○畠山委員
調査を待ちたいと思います。
本題に入ります。
大臣は、所信表明で、生乳の生産、流通について、需給状況に応じた乳製品の安定供給の確保等を図るため、生産者補給交付金等の交付対象となる事業者の範囲を拡大する等の措置を講ずることを述べました。この点にかかわってきょうは質問いたします。
私は、昨年十二月十三日の本委員会で、補給金支給の交付対象を拡大することについて、それでは生産者側がばらけてしまうことにならないかと提起しました。もちろん、今、法案にかかわっては検討中ということを踏まえた上でお聞きします。
当時の質疑で、私は、「指定団体制度が乳価の交渉においても大きな役割を発揮していると思います」と大臣の認識を伺いましたが、山本大臣からは、改革の意義については述べられましたが、これまでの乳価交渉力の意義については触れていなかったと思います。そこで、私、重ねて答弁を求めたわけですが、そこで大臣からは、今後ともその機能を適正に発揮していただけることが生産者にとっての重要なウエートを占めるという答弁でした。
まだはっきりしないんですが、この答弁に基づいて、改めて指定団体の認識についてもう一度伺います。「その機能を適正に発揮」と当時言っていた、「その機能」というのを具体的に御説明いただきたいわけです。これまでの指定団体制度が乳価の交渉において重要な機能を持っていたという理解でよろしいのでしょうか。
○山本(有)国務大臣
この暫定法ができる以前、昭和四十一年までのいわば生乳の集荷や販売、また乳価の交渉力というのはばらばらの感があり、酪農家が安定的、永続的経営が難しかったのではないか、こう思っております。
その意味において、今の指定生乳団体が行われます乳価交渉力、一元集荷、多元販売、こういった機能は、十分、その後、四十一年から満たされることになったというように評価をしております。
しかし、長い経過がございます。その中で、市場で要求される話、あるいは酪農家がまた将来にわたって希望する話、さまざまな要因が重ね合って今日まで来たということも理解しておるところでございます。
○畠山委員
今大切な答弁があったと思います。現指定団体の制度が始まる前にばらばらであったことから、その乳価交渉力を高めるために現制度として必要性があったということをお認めになった発言で、大事にしたいと思います。
農水省の生産局が出している資料にも、この団体制度の機能について、やはり乳価交渉力の確保を掲げているんですよね。それで、つまり、なぜこのことを繰り返し聞いているかといえば、指定団体が果たしてきた役割や機能について、今の制度を、ではどこを変える必要があるのかないのかという根本にかかわる問題だから、繰り返し聞いていたというわけです。
もう一つ、今大臣がちょっと触れていましたが、角度を変えて、この点も確認しておきます。
ですから、指定団体の持つこの乳価交渉力というのは、全量委託の共販を背景に、一元集荷、多元販売が確保されているからこそだ、この点は否定されませんね。いかがですか。
○山本(有)国務大臣
昭和四十一年の立法事実の中では、それが大きな要因でございました。
しかし、今回、そうした中にありまして、指定団体以外でもその生産者が補給金を交付したいというときに、現在、排除をする、そういう要因はむしろなく、公平感を持って平等に取り扱わなければならないのではないか。あるいは、全量委託ではなくて部分委託で酪農経営をやっていきたいというニーズがある方々に対しても、そうした何らかの措置を講ずべき時代背景もあるというように考えております。
○畠山委員
きょうは時間が私は短いので、そこから先については今後の議論に委ねたいと思うのですが、二〇〇七年前後に輸入飼料などで価格が上がったときに、生産コストが大幅に上がりました。多くの酪農家が、これでは経営できないと大変苦しまれました。そのときにやはり乳価引き上げに指定団体が果たしてきた役割は大きかったと思っているんです。それは、繰り返しになりますが、生産者がばらばらでなくて全量委託も担保されてきたことで、乳価交渉力の強さが証明されたことではないかと私は思います。
言いたいことは、政府は農家の所得向上ということを常に言うわけですが、指定団体の乳価交渉力が弱まるような改革では逆行になってしまう。ですから、内容についてこれからもちろん議論したいと思いますが、その点を指摘して、次の点を伺いたいと思います。
畜産農家の支援にかかわって、マルキン事業について、事実をまず確認しておきたいと思います。
昨年、TPP関連法の一つとして、牛マルキンと豚マルキンの法制化が提出、可決されました。これによりまして、牛・豚マルキンとも補填率は八割から九割に引き上がり、豚マルキンは国庫負担水準を、国と生産者が一対一から、国と生産者が三対一と引き上がることとなります。
そこで、事務方で結構ですので、事実を確認します。
来年度予算において、このマルキン関連予算は幾らで、それは補填率を何割と見込んでのものでしょうか。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
平成二十九年度の予算案におきまして、牛のマルキンで八百六十九億円、豚マルキンで百億円を措置しているところでございます。また、粗収益が生産コストを下回った場合に、その差額に対する補填率は八割、その補填財源の国庫負担割合は、牛マルキンで国三、生産者一、豚マルキンで国一、生産者一というふうになっております。
○畠山委員
九割にせっかく引き上げたものでありますが、今言ったように、来年度予算は補填率は八割ということです。
わかって聞くわけですけれども、その理由を改めて述べてください。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
さきの臨時国会におきまして成立いただきましたTPP整備法におきまして、牛・豚マルキンの法制化、またそれに伴います補填率の引き上げ等につきましては、TPP協定の発効日に施行されることとされてございます。
二十九年度の予算案におきましては、TPP協定の発効時期が具体化していないため、現行の補填率及び国庫負担水準としているものでございます。
○畠山委員
TPP発効日が施行日となるからであります。
ということは、政府の認識は、少なくとも来年度はTPPは発効されないということなのでしょうか。
○枝元政府参考人
お答え申し上げます。
さきの臨時国会で成立いただきましたTPP整備法で、法制化は発効日に施行ということでございます。
この協定の発効につきましては、各参加国が国内手続を完了する場合など、参加国の国内手続の進捗に依存してございますので、ある程度確実に発効が見通せた時点で予算措置することが適当と考えておりまして、その際には必要な予算を措置してまいりたいと考えてございます。
仮に年度途中に協定が発効いたしまして追加の予算額が必要となる場合には、政策大綱におきまして、「既存の農林水産予算に支障を来さないよう政府全体で責任を持って毎年の予算編成過程で確保する」というふうにされているところでございまして、その際にはまた適切に対応してまいりたいと存じます。
○畠山委員
御存じのようにアメリカ大統領が離脱を署名したわけですから、もう諦めて、新しい枠組みを考える必要があると思います。
そこで最後に、だから大臣にお伺いします。
TPPが発効してもしなくても生産基盤の強化が必要であることは、大臣も常々口にしてきました。そのために生産費の補填策が必要であることも、また誰も否定はできないと思います。だから、これまでマルキン事業については、拡充の要望はあれ、当然ですが廃止の議論などもありませんでした。
先日、二月八日に、ALICから昨年十、十一、十二月の牛マルキン補填金の単価が公表されました。とりわけ乳用種で、十月は四万五千三百円、十一月で五万一千五百円、十二月六万一千百円と、一昨年以来の高い水準となりました。これは素畜費がさかのぼるところの時点で高かったことによるものだと思いますが、こういう背景があれば、やはりマルキン拡充の要望が出るのは当然だと私は思います。
さらに、改正法の第一条では次のように目的を定めています。「交付金の交付又は価格の安定に関する措置を講ずることにより、畜産経営の安定を図り、」というのが新たに挿入されて、「もつて畜産及びその関連産業の健全な発展を促進」することが改正法の目的です。
TPPが発効しない現実と、畜産農家の現状と、そしてこの改正法の目的を実現する立場に立つなら、施行期日を変更すべきではありませんか。
○山本(有)国務大臣
畜産農家の将来の経営安定についての認識は私も同じものだと考えておるところでございますけれども、このTPP整備法により法制化されて、TPP協定の発効日に牛・豚マルキン、これを補填率の引き上げ等を行うというように、法律のスキームはあくまで経営安定、そして輸入に対する経営環境の激変、これに対応するものであるというように、依然、私の方ではしっかりとそれを位置づけておるものでございます。
その意味におきまして、この施行日というようなことはあくまでTPP協定の発効日でございますので、どうかひとつ御認識いただきたいというように思っております。
○畠山委員
残念ながら認識できません。
野党四党では、施行期日を公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日を施行とする改正案を提出しております。委員会での審議と賛同を心から呼びかけて、私の質問を終わります。

第193回国会 予算委員会 第6号     平成二十九年二月三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
日ロ首脳会談の結果と、今後の領土交渉の姿勢について質問します。
日ソ共同宣言から六十年がたちました。領土問題における日ロ交渉の行き詰まりをどう打開するかは大きな問題です。元島民の平均年齢は八十一歳を超えました。
我が党は一貫して、平和的な領土交渉の到達点を国境画定の土台に据えるべきと主張してきました。すなわち、北海道の一部である歯舞群島と色丹島については中間的な友好条約によって速やかな返還を求めること、そして、ヤルタ協定の不公正とサンフランシスコ条約での千島関連条項を廃棄、無効化して、平和的な日ロ間の領土交渉の結果として全千島列島が日本の歴史的領土となった一八七五年の樺太千島交換条約を土台にすること、以上の段階的解決による平和条約締結を主張してきました。
一旦結んだ条約でも、沖縄の本土復帰が実現したように、国際的な道理に照らして問題点があれば是正していく経験を我が国は持っています。戦後処理の不公正を正すという立場こそ必要ということが、日ソ共同宣言から六十周年の歴史の教訓だと思います。
この立場から、昨年十二月の首脳会談について初めに聞きます。
資料の一枚目をごらんください。これは、外務省ホームページ「北方領土問題とは?」というところより抜粋したものです。
日本の北方領土に対する基本的立場は、「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」であり、解決に当たっては、「北方領土の日本への帰属が確認されるのであれば、実際の返還の時期及び態様については、柔軟に対応する、」とあります。
まず、総理に確認します。基本的方針として、これは間違いありませんね。
○岸田国務大臣
御指摘の文言につきましては、我が国の基本的な方針そのものであると承知をしております。
○畠山委員
総理にも確認します。
○安倍内閣総理大臣
外務省のホームページについてでもございましたから、外務大臣から答弁させていただきましたが、こうした記載、今御紹介いただいた記載は、我が国の北方領土交渉の方針そのものであります。
○畠山委員
我が国の方針であるという答弁で確認いたします。
それで、両首脳が合意した内容のプレス向け声明、これは資料の三枚目につけているものですが、四島については、共同経済活動にかかわり協議を開始すると触れていますが、領土交渉の内容としては触れられておりません。
資料の二枚目をごらんください。ロシアがプーチン大統領になってからの日本との共同声明における領土問題についての部分の抜粋を、二〇一三年の共同声明も含めてまとめたものです。
二〇〇〇年の九月五日、二〇〇一年の三月二十五日、二〇〇三年一月十日、いずれも、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を締結すると明記されてきました。
安倍政権になってからはどうなのか。
そこで、二〇一三年四月二十九日の共同声明です。ここの第七項目で、四島の名前はありません、「その問題を、双方に受入れ可能な形」での解決が記述されて、八項目めで「これまでに採択された全ての諸文書及び諸合意に基づいて進める」と書いているところで、辛うじて到達点を踏まえてきていると読むことはできます。なお、この共同声明は、両首脳のサインはないという事実は一言述べておきます。
そして、今回です。四島について、先ほどの三枚目のプレス向け声明ですが、領土交渉の内容としては触れられておりません。
一日の本委員会で、この点に関する質問に対して、重要なのは会議全体の成果であり、両首脳で今までの成果文書を踏まえた上で協議を行うことを確認したとの答弁がありました。
それならば、総理に確認いたします。先ほど初めに聞いた、日本政府の方針である北方領土の日本への帰属について、今回の会談で言葉にして確認したのかしていないのか、お答えください。
○安倍内閣総理大臣
二人のやりとりについて、詳細についてお話を申し上げることは差し控えさせていただきますが、日本の基本的な立場について主張しているのは当然でございますし、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、これが基本的な日本の立場であります。
これは詳細について述べることは差し控えさせていただきますが、今、基本のところでございますから申し上げれば、当然その主張はしている。これは当たり前のことでございまして、再々その主張はしているところでございます。
いわば、その意味において、四島の帰属問題を解決して平和条約締結交渉をする、平和条約を締結する、その平和条約をまさに私たちの手で締結しようではないかということを申し上げているわけでありますが、その前提についてももちろん申し上げているところでございます。
○畠山委員
なぜこのことを質問したかといいますと、プーチン大統領が交渉の前に、日本の報道を通じて、ロシアには領土問題は全くないと思っていると発言したからです。読売新聞、二〇一六年十二月十四日付で、これは総理も御存じのことと思います。
総理は、領土返還のための信頼づくりが必要だと、四島での共同経済活動の意義を述べてきました。しかし、相手が領土問題は全くないと言っている以上、それでは何のための共同経済活動なのかとなるのではないのでしょうか。
四島での共同経済活動は、一九九八年の小渕・エリツィン会談後に、共同経済活動に関する委員会が設置をされました。このときには、あわせて国境画定に関する委員会も設置されました。つまり、日本政府の基本方針を踏まえるならば、領土交渉や国境画定に関する取り組みを担保してきたということではないのでしょうか。
だから、今回、事前にプーチン大統領が領土問題は全くないと言ったことに反論なく共同経済活動を進めるのであれば、懸念が生まれるのは当然です。特に元島民や根室など近隣地域では、そのような歴史を知っているからなおさらです。
そこで、総理にもう一度、事実として確認します。今度は、プーチン大統領の、領土問題は全くないと言っていたその発言に対して、何か指摘はしたのでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
中身についてはつまびらかにできませんが、二人だけで九十五分間、会談をしているわけであります。基本的には、そのほとんどは領土問題と平和条約の締結でありますから、平和条約の締結の核心は領土問題でありますから、大体、そのことについてこちらは大統領にこちらの立場をずっと申し上げてきているわけでありますから、そこから推察をしていただきたいと思うわけであります。
こちらの立場を主張しない交渉はそもそもないわけでありますから。当然、私が九十五分ずっと相手の言うことを聞いていたわけではありませんから。私は、口を開けば、日本の基本的立場を申し上げているわけでございます。
そこで、小渕総理のときの取り組みについてお話をされたわけでありますが、あの取り組みは取り組みとして、努力で終わりましたが、結果としては全然そこは進まなかったわけであります。共同経済活動についても進まなかったのは事実でありますし、帰属の問題も進まなかったのは事実であります。
要は、進めていくことが大切であるということが一つと、特別な制度のもとでの四島での共同経済活動も平和条約締結への一環であるということについては、私は、日ロで、プーチン大統領との間で合意ができている、このように考えております。
○畠山委員
全て明らかにしろとはもちろん言っておりませんが、今私が質問したことは、先ほど総理も述べたように、基本的な方針のことであり、元島民や根室の皆さんが知りたい中心点であるわけです。それが、共同記者会見、プレス向け声明の後にはそういったことはありませんでした。私、記事を全部読みました。だから、きょうの質問もそうですけれども、元島民の方などが注目しているわけです。
私、選出は比例北海道ですが、改めて、先日、根室市へ行って、元島民の方などから話を伺いました。
率直に言えば残念だったという深い落胆の声などが出されてきて、なぜかといえば、領土が返還されないことで元島民や根室市などで何が起きてきたか、その歴史を聞いてほしいというふうに言っているんですよ。樺太経由で引き揚げさせられた方もいたし、船の吹きさらしの甲板で耐えた元島民の方もいらっしゃったし、樺太に抑留されて亡くなった方もいたし、島で多くの方も亡くなりました。このような話を元島民の方がするだけでも胸が苦しむと言っている方もいらっしゃいます。
水産の町である根室市など周辺自治体で、一九四六年から二〇一五年までの漁船拿捕数は、外務省が認めた数によれば千三百四十一隻です。銃撃を受けて亡くなった漁民もいらっしゃいました。たった十年前のことです。
昨年は、サケ・マスの流し網漁がロシアで禁止されたことによって、水揚げ量は前年比八千トン減りました。根室市の一般会計予算は約百七十億円ですが、昨年の十二月二十一日付日経新聞地方版によれば、流し網漁禁止の損失は二百億円と報じられています。
根室市長は町の存亡問題と述べて、地元の水産加工業や運輸業では仕事がない、地域経済が落ち込んでいくと、危機感だらけです。何度も私も根室へ行きましたが、島さえ返ってくればと、行くたびに話を聞いてきました。
総理、この苦しみの根源は領土が返ってこないゆえだ、そうですよね。
○安倍内閣総理大臣
それはまさにそのとおりであると私も思います。
私も、十二月十五日のプーチン大統領との会談を行う前に、島民の皆様と昼食をともにしながらお話を伺いました。その際に、島民の皆様からは、総理大臣と食事をしながら自分たちの考え方を述べるのは実は初めてだった、よくこういう機会をつくっていただいたと言われました。私も、第一次政権もありますし、今までの四、五年間、そうした機会をつくらなかったことは大変申しわけないと思いました。しかし、長い長い間そういうチャンスがなかったのも事実であります。
そして、今回、島民の皆様からお預かりしたお手紙と写真をプーチン大統領にお見せしたわけであります。私の目の前で読んでいただいた。七十歳から勉強したロシア語で書かれていた手紙を読んでいただいたんです。これは、初めて島民の気持ちが直接大統領、ロシアの最高権力者に伝わったと私は思いました。プーチン大統領も、胸を打たれる思いだということをおっしゃったのは事実であります。
そこで、しかし、今まで七十年間返ってこなかったのは事実でありますから、今までのやり方で返ってこなかったんですから、どうやって取り返すか。それはやはり新しいアプローチしかない、このように決意をしたわけでございます。
○畠山委員
新しいアプローチについては別個に議論したいと思っているんですが、手紙や写真を渡されて、しかし、その結果、先ほど述べたように、共同記者会見では中心的な部分でさえ、全部つまびらかにしろと私はさっき言っていないけれども、そこも言われていないことに現地ではがっかり感が強いと先ほど言ったじゃありませんか。
総理に要請したいことがあります。
先ほど、考え方を元島民の方と総理が話し合うのは初めてだ、総理としてですかね、これまでの歴代総理としてということでしたので、ぜひ根室市へ行ってほしいんです。もちろん、私が紹介したような話を聞いてほしいというのもありますし、四島での共同経済活動で深刻な地域経済が少しでもよくなればという一縷の望みを持ってもいます。
この点についてはいろいろ意見があるので別の機会に質問したいと思っていますが、元島民や根室市などでは総理に聞きたいことがたくさんあるんです。だって、七十年待ってきたわけですよ。
先日行われた日ロ次官級協議では、墓参の拡大も議論されております。高齢で時間もない中、急ぐべき課題であり、これは拡充を強く求めておきます。そして、総理には重ねて、根室市への訪問を強く要望しておきたいと思います。
後半は、では、どのような道理で交渉するのかについて質問します。
総理は、先ほどから私が述べている首脳会談後の共同記者会見で、あるいは本委員会でも、領土問題について、日本の立場の正しさを確信していると言いつつも、互いにそれぞれの正義を何度主張し合っても、このままではこの問題を解決することはできませんと述べました。
では、ロシア側の正義というのは何なんでしょう。プーチン大統領は、その共同記者会見のときに、一九四五年の戦争の後、向こうの言葉ですが、南クリル列島の島々をも取り戻しましたと述べています。その根拠の一つとしているのがヤルタ協定だと思います。一九四五年二月に、当時のソ連の指導者スターリンに千島の引き渡し、これを対日参戦の条件として、米国、英国が認めた秘密協定です。
外務大臣に確認いたします。このヤルタ協定についての日本の考え方、立場を御説明ください。
○岸田国務大臣
御指摘の、米英ソによるヤルタ協定ですが、樺太の南部及びこれに隣接する全ての諸島がソビエト連邦に返還されること、及び千島列島がソビエト連邦に引き渡されること、こうしたことが記されております。
他方、このヤルタ協定は、当時の連合国の首脳者の間で戦後処理方針を述べたにすぎないものであり、関係連合国間において領土問題の最終的処理につき決定したものではないと考えます。
そして、我が国はヤルタ協定に参加しておらず、いかなる意味でもこれに拘束されることはないというのが我が国の立場であります。
○畠山委員
ヤルタ協定の法的効果は否定するということです。
国際社会の戦後処理の大原則は、言うまでもなく領土不拡大です。第二次大戦で数千万人が命を落とし、多大な犠牲の上に成り立っている国際秩序です。それを一方的に破ったのが、この密約であるヤルタ協定です。
総理に認識を問います。このヤルタ協定、密約自体が領土不拡大という国際原則に反するという認識を総理もお持ちになっていますか。総理の認識です。
〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕
○安倍内閣総理大臣
外務大臣からも答弁をさせていただきましたが、そもそもこのヤルタ協定は、当時の連合国の首脳の間で戦後処理方針を述べたにすぎないものであり、関係連合国間において領土問題の最終的処理について決定したものではない。また、ヤルタ協定は、一九四六年二月まで秘密にされており、また、そもそも我が国は参加しておらず、いかなる意味でもこれに拘束されることはないわけであります。
その当事国でない我が国は、ヤルタ協定の内容と領土不拡大原則の関係につき説明する立場にはないわけでございますが、要すれば、大西洋憲章及びカイロ宣言で明確にうたわれたいわゆる領土不拡大原則は、第二次世界大戦における重要な原則となり、その後、ポツダム宣言にも継承されています。このポツダム宣言は、ソ連を含む連合国と我が国との間での戦争終結のための基本的な合意であり、その中に引用されている領土不拡大原則は、戦争終結のための一つの条件としての性格を有しています。
いずれにせよ、北方四島は日本固有の領土であるというのが我が国の一貫した立場であり、そして、この四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するというのが基本方針でありますが、先般のプーチン大統領との会談の後の記者会見においては、プーチン大統領自体が、大事なのは平和条約だと明確に述べているわけでありますし、この問題を解決していく真摯な決意を両首脳が示す、これは声明にもうたわれているところでございます。
○畠山委員
まだそこまで何も聞いていませんから。
私が聞いたのは、まだ、プーチン大統領と何をどうしたかということではなくて、一般的に、このヤルタ協定、密約自体が領土不拡大という国際原則に反するという認識を総理が持っているかと聞いたんです。明確にお答えはありませんでした。
私、今手元に、外務省の「われらの北方領土二〇一五年版」があります。よく記録としてまとめているものだと思って読みました。日本側から指摘や反論をしたときには、きちんと記録としてそれも残っているわけです。
総理は先日、相手を論破して領土が戻るのかと言っていましたが、そもそも、歴史的事実や国際原則に基づいて反論するのは当然のことです。総理もよく、国際社会における法と正義、法による支配の重要性、こう述べているではありませんか。
総理に確認します。このヤルタ協定の不公正について、先日の首脳会談でプーチン大統領に指摘や反論はしたのですか。
〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕
○安倍内閣総理大臣
私は、もう第一次政権のときから十五回首脳会談を行っています。その経験に基づいて私は申し上げているんです。
今まで日本は、歴史的な経緯、国際法との関係について、我々の主張の正しさをずっと述べてきました。私も述べてきましたよ、ずっと。私以下のところで行う次官級あるいは審議官級、局長級のときの議論というのは、ほとんどそこに焦点が当たって、延々と議論するんですよ、延々と。延々と議論して、まさに、例えば一八五五年のプチャーチンが来たときから始まって、ずっと議論して、またそれから始まるんですよ。延々と議論するんですね。
しかし、そこで議論して、こちらの主張は述べます。我々は当然、ロシア側が、ただしこれは戦争の帰結の問題であるということをよく主張するわけでありますが、それに対してこちらとしては、今委員がおっしゃったさまざまな論点もあります、そういう論点も含めて反論しております。
しかし、そこで反論していても、これは一ミリも動きませんよ、はっきりと申し上げて、私の経験上から。私も、五六年の交渉のときから、ずっと交渉の記録を全部、極秘の交渉も全部見てきました。ずっとこれをやっているときには、実は一ミリも動かないんですよ。
では、どうやってお互いに一歩踏み出せるかということを一緒に考えるときに初めて議論は建設的なものになるわけでありまして、私はそういう意味で申し上げているのであって、我が国の立場の正当性を主張するのは当然のことであります。でも、私が言いたいのは、これを主張して、向こうが、わかりました、ではお返ししますということになるような単純な問題ではないということは申し上げておきたいと思います。
○畠山委員
ヤルタ協定について中心的に今お聞きしております。さまざまなことが、総理、そのようにされてきていること自体としては承知はしているつもりです。
二〇〇六年二月一日の日経新聞で、ヤルタ協定について、プーチン大統領がこのときに初めて公式の場で述べたのではなかったかと思います。
そのときの新聞によれば、プーチン大統領は記者会見で、両国が受け入れ可能な解決策を探り始めたと述べて、国際的な合意に基づき解決策を探ると言明、当時、ロシアが北方四島を含む千島列島を自国領とする根拠であるヤルタ協定、ポツダム宣言などを挙げたとの報道です。
今述べたように、このときがプーチン大統領がヤルタ協定を根拠として言明した最初のことではないかと思うし、総理は当時官房長官でしたから御存じだと思います。
今私がずっと述べてきたヤルタ協定の言明に対して、総理はいろいろという形で述べたけれども、日本政府の反論や指摘などはこれに、「われらの北方領土二〇一五年版」にも出てこないわけですよ、最初に外務大臣がヤルタ協定についての日本の政府の立場を括弧書きで書いているだけで。そういうことが、プーチン大統領が今回に至るまで日本政府に、領土交渉は全くないとまでの発言につながってきてしまったのではないのでしょうか。
総理、それならば、ヤルタ協定の不公正をプーチン大統領に明確に、今までだって反論や指摘をしたことはきちんとここに、外務省の公式文書として記録に残しているではありませんか。今度またロシアに早いうちに、前半に行くというのであるならば、きちんとこのヤルタ協定、戦後処理の不公正について指摘や反論することを求めますが、いかがですか。
○安倍内閣総理大臣
今申し上げましたとおり、領土不拡大原則は戦争終結のための一つの条件としての性格を有しているわけでありますが、先ほど申し上げたとおりでありまして、当事国ではない我が国は、ヤルタ協定の内容と領土不拡大原則の関係について説明する立場にはないわけであります。
しかし、いずれにせよ、根本として、北方四島については我が国固有の領土であるということはもう既に申し上げてきているとおりでございまして、その立場は変わりがないわけであります。
そこで、もう既にさまざまな議論をしてきたということは繰り返し述べてきたとおりでありまして、また、例えば私とプーチン大統領との間でその議論に戻ったら、延々とまさにヤルタのときから今日に至るまでの議論をまたしなければいけなくなって、これは三日ぐらいかかっちゃいますから、そんなことよりも、既に今決めている新しいアプローチにおいて少しでも平和条約締結、四島の帰属の解決に近づく方がプラスであって、私たちの主張が間違っているということではありませんよ。
今委員がおっしゃっていることを私は否定するものでは全くないわけでございまして、そうしたことは今までさんざんやってきたということは申し上げておきたいと思います。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、戦後処理の不公正、領土不拡大の原則を破った事実を主張すべきであるし、これまでの日本政府の領土交渉の方針の抜本的な再検討を改めて強く求めて、質問を終わります。