○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
 私からも、TPPについて質問を行います。
 先日、甘利大臣からは、妥結に向けて来月中にも一気に進むかとの交渉姿勢もかいま見られました。それで、先ほどからもありましたように、TPAについては上院での可決ということになりました。
 農業者はもちろんですけれども、御存じのように、TPPはさまざまな分野に影響が及ぶわけでして、医療関係者などなどからも同じように不安が高まってきている状況にあると思います。そういう中で、一瀉千里に交渉を進めるべきではないというふうに思うわけです。
 この間も一月余り、TPA法案をめぐって交渉が一旦とまるような形にはなっていましたが、その間にも、TPPの中身や交渉のあり方に疑問が示されている ことが相次ぎました。例えば、六月八日付農業新聞ですが、「TPP人権に悪影響 国連専門家懸念を表明 秘密交渉も問題視」との記事が掲載されました。国 連の専門家グループが、TPPを含む貿易協定について、人権への悪影響だけでなく、交渉の秘密性を懸念する声明を発表したとのことです。
 まず外務省に伺いますが、この専門家グループというのはどういう方々であると理解していますか。
○山上政府参考人 お答えいたします。
 まず、委員御指摘の国連の専門家ということでございます。
 どういう制度かと申しますと、国連の人権理事会では、特定の国の状況または特定の人権テーマに関し調査報告を行うために、個人の資格として専門家を任命しておる、こういう制度がございます。
 そこで、御指摘の声明でございますが、こうした専門家の十名が、ことしの六月二日に声明を発表したということでございます。具体的には、例えば、民主的 国際秩序、こういった問題についての専門家が中心となりまして、国連の人権理事会から求められている報告書作成とは別に、自主的に発表したということでご ざいます。
 そこで、こうした見解の位置づけでございますが、これらの専門家の見解は、独立した個人としての資格によるものでございまして、出身国政府を代表するものではございません。また、公表された声明等に含まれる勧告には法的拘束力はないと理解しております。
○畠山委員 私は何も法的拘束力の話なんか聞いていません。どういう立場の方々がこの声明を出したかということを聞いたわけであって、もう一度きちんと正面から答えてください。
○江藤委員長 それぞれの立場について、明確な答弁をしてください。
○山上政府参考人 お答えいたします。
 立場ということでいえば、私は十名の専門家ということで申し上げました。民主的国際秩序に関する独立専門家、それから障害者の特別報告者、健康の権利に 関する特別報告者、文化的権利に関する特別報告者、法曹家の独立に関する特別報告者、食料の権利に関する特別報告者、対外債務に関する独立専門家、安全な 水と衛生の権利についての特別報告者、先住民族の権利に関する特別報告者、国際的な団結に関する独立専門家、この十名でございます。
○畠山委員 時間が限られているんですから、きちんとした答弁を求めます。
 今ありましたように、さまざまな立場の方々からの懸念であることを重く受けとめる必要があると思います。
 今、そのような幅広い専門家の方々が、どのような中身だったかといいますと、食品安全や健康保護、労働条件の基準が引き下げられる可能性があるとの見方を示し、さらに、ISD条項についても懸念が特に示されたと記事には書かれています。
 これは、内閣官房と農水省、それぞれに伺いますが、この声明について今承知しているのかどうか、そしてそれをどのように受けとめているか、それぞれお答えください。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
 声明は承知しております。ホームページに掲載されたものを見ているところでございます。
 TPPについてさまざまな御批判あるいは御懸念の声が国内外からあるのは承知しております。十二カ国で、特にルール部分について議論する際も、それを常に念頭に置いて今調整、議論をしているところでございます。
 先生御指摘の声明の中で、例えば、指摘を受けた食の安全、労働水準、それからISDS、ISDSは国家の規制機能を危険にさらす、そういう指摘でございますが、五月一日、私どもが、「TPPの概要」というものを公表いたしました。
 その中で、TPPの現在のテキストの中では、食の安全に関する我が国の制度変更を求められるようなことにはなっていない、それから、労働については、貿 易や投資促進のために労働基準を緩和することのないように、そういう議論になっているということ、それから、ISDSについては、保健、安全、環境保護を 含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が、現行のテキストに、今の交渉テキストには明記されているという旨を紹介しているところでございま す。
 いずれにいたしましても、そうした懸念があることを十分踏まえて交渉を行っていきたいと思っております。
○林国務大臣 今説明のあった、人権問題を担当する専門家が、条文案について国会議員等に開示すべきであり、貿易協定が食品安全にも悪影響を及ぼし得るという声明を発出したことは承知をしております。
 これまでの政府が行った情報提供の中において、食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていないということは明らかにされて おるところでございますが、今後とも、秘密保持の制約の中で可能な限り情報を提供していくことが重要でありまして、どういう工夫をして情報提供していくの か、TPP政府対策本部のもとで引き続き検討してまいらなければならないと思っております。
○畠山委員 今、情報提供の話も大臣からありました。
 この声明では、いろいろな懸念が表明されているんですけれども、その後に、幾つかの勧告というのがあるんですね。私も英文を読みましたけれども、そのう ちの一つに、国会議員や市民団体が検討できるよう条文草案を公開することという勧告があります。国会議員だけでなく、国民にも示すべきだという意味は、そ れだけ国民生活全般に影響が大きいことを踏まえて検討した結果、その反映であるというふうに私は思うんですね。
 それで、情報公開については、きょうも議論がありましたけれども、本委員会では何度も要求をしてきました。その必要性が、国連も通じて、このように証明された形でもあるというふうに思います。
 情報公開のあり方については、検討するということは何度も答弁があったんですけれども、この段に及んで一体どうするのか、ここまで来て、情報公開について具体的にするのかしないのか、きちんと答弁していただきたいというふうに思います。
○澁谷政府参考人 お答えいたします。
 御指摘の国連の専門家の御意見は、御紹介いただいたように、議員や市民が十分な時間を持ってレビューできるように、交渉テキストをパブリッシュするべきだ、こういう内容でございます。
 アメリカにおいても同じような議論がされておりまして、一般に対して早くパブリッシュするべきだという議論がされております。オバマ大統領は、交渉中は できないけれども、しかし、これまで、一般的に、署名後、テキストをパブリッシュしてきたものを、今の新TPA法案が成立すれば、署名の二カ月前にテキス トをパブリッシュするということになっているので、十分な時間的余裕を持ってレビューできるんだということをアメリカも言っているところでございます。
 我が国も、これは仮に合意すればという話になるわけでございますが、仮に大筋合意された場合は、今御指摘いただいたようなさまざまな御懸念も含めて、合 意内容をできるだけ詳細に、かつ丁寧に、国民の皆さん、議員の先生方に詳しく説明をする形で努力していきたいというふうに思っております。
○畠山委員 大筋合意した後に、ふたをあけたら何だこれはということになってはならないから、こういう形で国連の専門家からも懸念が表明されているわけです。そこはやはり改めて指摘をしておきたい。
 情報公開だけではなく、勧告にはほかにもいろいろあるんですが、労働組合、消費者団体、環境保護団体、保健専門家など全ての関係者の協議や参加によっ て、透明性を持って交渉することとあります。そもそも、秘密交渉自体に疑義が投げかけられる形であって、交渉の時点から、ステークホルダー、利害関係者を 交えるということも含まれています。
 TPPは自由貿易だというふうに言うけれども、このように、実態が人権に悪影響を及ぼすのではないかという指摘は重要だというふうに思います。アメリカ でTPA法案が成立したら一気に交渉が進んでいくようなことがあってはならないということを強く指摘しておきたいと思います。
 残り時間がちょっとありませんが、バター不足と、酪農、畜産の支援についても一言伺っておきます。
 農業の成長産業化については、酪農、畜産分野にも及んでいます。昨年四月二十四日の産業競争力会議農業分科会で主査を務めた新浪氏が、「「農業の産業 化」に向けて」との提案文書を出していまして、その中に「北海道の酪農輸出拠点化」という項目があって、「「酪農」に焦点を当てた「北海道ブランドの確 立」を核に、輸出拠点化のための具体的取組を強化・加速化することが必要」と述べています。
 ですが、御存じのとおり、北海道の酪農家は年間二百戸のペースで離農、離脱が続いてきました。現場の実感からいえば、あしたの酪農経営をまず支えてほしいんだ、そういう話は机上の論理ではないかなどの声も私は聞いてきたところです。
 バター不足の問題は、北海道を初め全国で、明らかに酪農家が経営に苦しんでいることの反映だと思いますが、今のこの酪農経営を支えるために、政策のかなめとして、農水省として何を進めてきているか、何だと考えているか、御答弁ください。
○林国務大臣 昨年来のバター不足については、乳用牛の飼養頭数の減少に伴いまして生乳の生産量が減少しまして、その結果、牛乳・乳製品の需給調整弁と言っていいと思いますが、バターの国内生産量が大きく減少した、これが背景にあると考えております。
 ことし三月に、いわゆる酪肉近、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針を策定いたしましたが、これにおいても、生乳の生産基盤を強化する、これを最優先の課題としたところでございます。
 我が省としては、酪肉近に即しまして、畜産クラスターの仕組みも活用して、地域全体で畜産の収益性向上を図るために、家族経営、法人経営を問わず、ともに地域の担い手として育成して、生乳生産基盤の強化を図っていきたい、こう考えております。
○畠山委員 緊急的なバター輸入はあるにせよ、やはり家族経営を含めて、広く地域全体を支えるということはどうしても大事だ、これは共通だと思うんですね。
 私が一月の閉会中審査のときに質問したとき、畜産クラスターについても使い勝手のいい柔軟な対応をということを求めました。また、規模拡大だけを前提に した支援策でなく、今大臣から答弁もあったように、家族経営を含めた幅広い、後継者対策であったり新規就農者対策というのを、裾野を広げることを進める必 要があると思うんですね。
 そこで、きょうは資料を提出させていただきました。昨年七月九日付の日本農業新聞北海道版で、足寄町の新規就農のことを取り上げています。
 足寄町で放牧している吉川友二さんが、九十六頭飼われていらっしゃいます。下から三段落目のところですが、一頭当たり年間六千キロの生乳生産量は、道内 平均を二五%ほど下回っています。ただ、八十ヘクタールの草地を存分に活用し、高コストな濃厚飼料は極力使わないため、所得率は約四割と、道内平均の一 三・六%を大幅に上回っている。そして、春先に分娩を集中させる季節繁殖を徹底し、一、二月は搾乳しないということが紹介されています。
 酪農経営において、みずから規模拡大される方はもちろんいらっしゃるでしょうが、家族で牛を見るということであれば、百頭ぐらい、これぐらいがぎりぎり のところではないのかなと。ずっと休まず牛舎に詰めて働くのだし、新規就農するにしても、いきなり大規模を目指すということになるわけではないですから、 家族経営をきちんと支えることが大事だということを具体的にこのように示しているというふうに思うんです。
 時間もありませんので、こういう家族経営について、新規も含めた、総合的に支える必要についてということを、この例では自治体や元農協職員も含めて応援 しているという中身なんですね。この大事さを示していると思いますが、最後に、この支援のあり方についてのさらなる拡充を求めたいと思いますが、大臣、い かがですか。
○林国務大臣 先ほど申し上げました酪肉近でも、「法人経営、家族経営が共に地域の担い手として発展することを目指す。」こういうふうに書 かせていただいておりまして、例えば畜産クラスター事業においても、規模の大小にかかわらず、地域の中心的な経営体と位置づけがなされますと、家族経営で も支援対象としておりますし、酪農ヘルパーやコントラクター、こういう支援組織の取り組みに対してもしっかりと支援をしていくということで、今取り上げら れたこういういい例もしっかりとやっていけるように取り組んでいきたいと思っております。
○畠山委員 意欲を持って経営に臨んでも、TPPとなればその意欲が沈んでしまうわけですので、重ねて撤退を求めることも最後に述べて、質問を終わります。
○江藤委員長 次に、篠原孝君。