○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
 所信表明で大臣が述べた食料・農業・農村基本計画の見直しにかかわって、先日の審議会において、農水省は、食料自給率について、前計画の二〇二〇年まで に五〇%とした目標を、二〇二五年までに四五%へと引き下げました。その理由を、農水省は、計画期間内における実現可能性を考慮して設定したとしていま す。
 果たして、所信表明の内容で自給率は本当に上がるのか、それでは、どのように自給率を引き上げるべきなのかについて質問いたします。
 食料自給率は、カロリーベースで、一九六〇年度の七九%を最高に、冷害のあった一九九三年度で三七%、そして今や三九%と低下傾向を続けてきました。
 まず、食料自給率を引き上げる意義、なぜ自給率を引き上げなければいけないかについて、大臣の所見を伺います。
○林国務大臣 世界の食料の需給また貿易、これが不安定な要素を有しております中で、やはり食料の安定供給を将来にわたって確保していくと いうことは国民に対する最も基本的な責務の一つでありまして、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させることは大変重要であると考えております。
 食料・農業・農村基本法におきましても、食料自給率について、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして目標を定めること、こういう規定になっておるところでございます。
 新たな食料・農業・農村基本計画における食料自給率目標につきましては、こうした規定に即しまして、カロリーベースで、今御指摘のあった、現状三九%か ら四五%に、生産額ベースでは現状六五%から七三%に引き上げる、こういう案を去る三月十七日に食料・農業・農村政策審議会に提示したところでございま す。
○畠山委員 食料の安定供給を将来にわたって確保するという点で、引き上げにはもちろん大臣も異論はないわけであります。問題は、では、なぜ自給率が下がってきたのかということです。
 昨年十月に農水省が発表しています「よくわかる食料自給率」では、低下した要因として、「消費面では、米の消費量の減少など食生活の大幅な変化、生産面では、農地面積の減少など国内供給力の低下」を挙げています。
 大臣に伺いますが、低下をしてきた原因というのはこれだけなのでしょうか。
○林国務大臣 それも我が省の資料でございますので、おおむねそういうことでございますが、先ほどちょっと委員からも昔の数字も触れていた だきましたけれども、昭和三十五年、私が生まれるころでございますが、七九%、生産額ベースは九三%、これが二十五年度に、カロリーベースで三九、生産額 ベースで六五まで低下してきたわけでございます。
 やはり背景としては、食生活の洋風化等が進んで、自給率の高い米、米はほとんど自給できておりますが、この米の消費が減少しているということ、それか ら、畜産物、肉類等、これは餌の多くを輸入に依存しておりますが、この畜産物等の消費が増加をしたということが消費面では言えると思います。
 それから、生産体制そのものについてお触れいただきましたが、さらに言いますと、こういう食料消費の変化に国内の生産体制が対応し切れなかった、こういう側面があるのではないかと考えておるところでございます。
○畠山委員 農水省が出す白書では、近年では書いていないんですけれども、二〇〇七年度の食料・農業・農村白書では、「食の外部化の進展とともに食料品等の輸入が増加」、また「海外現地法人からの輸入が増加」していることも並べて記載をしています。
 大臣は触れませんでしたけれども、このようにふえ続ける農産物等の輸入が自給率を引き下げることにつながったのは明らかだと思います。
 この上に、この間のTPP交渉をめぐる報道では、米の輸入枠を五万トンふやすとか、牛肉、豚肉の関税を下げるなどと報じられてもおります。これでは、さらに自給率が大幅に下がることは間違いないのではないか。
 これは農水省の事務方に確認しますが、今回、自給率を検討する際の、実現可能性を踏まえた検討という中に、TPPに参加した場合の検討も含まれているのか、事実の確認だけですので、端的にお答えください。
○あべ副大臣 委員にお答えいたします。
 食料自給率目標を含む新たな食料・農業・農村基本計画につきましては、現時点ではTPP交渉の妥結の時期が確定しているわけではないため、TPP交渉を前提とはしていません。
○畠山委員 そのとおりに、改定したこの目標の前提にTPPはもちろん入っていないわけです。
 ですが、随分と議論もされてきたように、TPPの妥結となれば、肝心の生産現場が壊れていくのではないか。そうなると、やはり、これで本当に食料自給率が上がるのだろうかというような根本的な疑問が湧いて当然だと思うんですね。
 これまでも、農産物等の輸入が進められて、低価格競争に日本の農家が太刀打ちできませんでした。それに対抗するためと、政府が規模拡大あるいは生産費のカットなどを進めてきました。
 きょうは資料を用意しておりますので、まず一枚目をごらんください。米農家の農業所得に占める直接支払交付金の割合の表です。
 これを見て、平均もそうですが、二十ヘクタール以上の米をつくる農家でも国の交付金等への依存度が高くなっております。先ほど斉藤議員も質問したよう に、ミニマムアクセス米の輸入なども反映しておりまして、規模を拡大しても低価格競争に苦しめられてきた、それをこのように交付金等で補う形でやってきた わけです。
 しかし、この直接支払交付金を外していく、TPPになれば関税も外されていく、あるいは、米で新たな輸入枠を設けるなどとなれば、どうしてこれで自給率を上げられると言えるのか、納得がいく根拠を示してもらえませんでしょうか。
○林国務大臣 自給率の向上のためには、食料消費、農業生産の両面における諸課題について、その解決を図っていくということが必要だと考えております。需要に見合ったものをしっかりと生産していく、こういうことではないかというふうに思います。
 やはり、消費者や食品産業事業者等がより国産農産物の消費拡大に取り組んでいただく、これが重要だ、こういうふうに思っておりますので、国内外での国産 農産物の需要拡大、それから食育の推進、食品に対する消費者の信頼の確保、こういうものに取り組んでいかなければならないと思っております。
 農業生産については、農業者等が、国内生産による食料生産能力の向上を図りながら、マーケットインの発想によって多様かつ高度な消費者ニーズに対応した 国内農業の生産を拡大する、これが重要であると思っておりまして、優良農地の確保と担い手への農地集積、集約化をする、担い手そのものの育成、確保をす る、それから、農業の技術革新、食品産業事業者との連携等による生産、供給体制の構築等の実現、こういうものをしっかりと取り組んでいく、これが大変大事 なことではないかというふうに考えております。
○畠山委員 国内の需要拡大はもちろん大事なんですが、今、基本に立ち返った議論が必要だと思うんですよ。
 食料・農業・農村基本法の第二条には、「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんが み、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」と定めています。
 輸入及び備蓄は適切にとしているんですが、二〇一三年の農林水産物輸入の確定値では、八兆九千五百三十一億円と過去最高を記録しています。
 食料の安定的供給という基本に立ち返って、輸入のあり方や農業者支援を考えるべきだと思います。特に、圧倒的多数である家族型経営を支えるために、その議論をこの農林水産委員会でも行ってきたと思うんですよね。
 私、この数年間の会議録をずっと読んできました。口蹄疫が発生したときには、農家を救えと真剣な議論がされていました。民主党政権のときの戸別所得補償についての意義をめぐって議論もされていましたし、土地改良の必要性も熱心に議論されていました。
 その中で、民主党政権時の二〇一〇年三月十一日、ある自民党委員が質問でこう述べているんです。「ちゃんと国境措置をすることによって、お米は七七〇% もの関税をかけることによって、日本の農業を守っているんです。いわば農業は防衛なんですよ。」途中略しますが、「上限関税の問題やらさまざまな荒波にさ らされているわけですから、そういう意識をきっちり持ってもらわないと。」と大臣に迫っているわけです。
 農水省に確認しますが、このときの質問者はどなたでしょうか。
○梶島政府参考人 お答え申し上げます。
 稲田朋美議員でございます。
○畠山委員 今、安倍農政改革の先頭に立たれている稲田議員の質問とは思えないほどでありました。
 林大臣、この稲田議員の言葉でそのままお聞きいたします。
 ちゃんと国境措置をすることによって、日本の農業を守っているんですよ。自給率を上げるなら、今の国境措置、関税のあり方を見直して、歯どめなき農産物輸入拡大を今立ちどまって考えるべきではないのですか。
○林国務大臣 そのときに赤松大臣がどういうふうに答弁されたか、ちょっと手元に資料はございませんが、当然、食料自給率は国境措置との関係で低下する懸念があるのではないか、こういうお尋ねだと思います。
 今交渉中の経済連携またWTOそのものについても、この結果が食料自給率にどういう影響を及ぼすかという仮定の話にお答えするということは、交渉内容に 予断を与えることになるために、差し控えさせていただきたいと思いますが、経済連携交渉、これはTPPも含まれますけれども、我が国の農林水産品が、これ らの交渉において慎重に扱うべき事項、いわゆるセンシティビティーを持っている、こういうことを十分配慮して、重要品目の再生産が引き続き可能となるよう 交渉を行っているところでございます。
○畠山委員 WTOのことはもちろん承知はしているんですけれども、そういう体制のもとでも自給率を引き上げてきている国々はあるわけでし て、そういった欧米諸国は、自分の国の主要農産物を守るための国境措置や再生産できるだけの実質的な価格支持政策を行っているのは、これは農水省自身が一 番知っていることだと思います。
 EUでは、支持価格の引き下げはこの間ありましたけれども、加盟国の機関が買い支えを行っている。アメリカでは、ローンレートで、市場価格を下回った分の支えがあります。アメリカは、昨年農業法がつくられまして、さまざまなことが議論されてきております。
 日本政府の白書でも、二〇〇七年度ですが、イギリスが四十年間で自給率を二七ポイント上げたことを取り上げています。その要因として四つ挙げて、消費 面、生産面のほかに、イギリスは平たん地が多いことや品種改良で単収を上げたことなどとともに、当時のEC加盟で農産物価格支持と国境措置による手厚い保 護を受けることになったと書いています。
 ですから、本気で自給率を引き上げるということを考えるのであるならば、歯どめなき農産物輸入にストップをかけることと、生産コストも補償して再生産が続けられるようにして、今いる大多数の家族経営を応援することだというふうに思います。
 資料の二枚目をごらんください。
 実際、特に被災地においては、あすの経営をどうするかということにも苦しみの声が上げられているわけです。これは、昨年の総選挙中に、十二月八日ですが、河北新報において紹介されている記事です。「「担い手消える」 被災地の農家に嘆き」とあります。
 「石巻市の生産者は、津波被災から復旧した水田を、営農を諦めた近隣の七十戸分も請け負っており、本年産米の価格暴落に苦しむ。」として、文中ですが、 同市の農家、大内さん五十二歳は、「今年、計四十五ヘクタールの水田でコメを作った。」「震災前、受託による規模拡大でコメの栽培面積が二十ヘクタール だった大内さん。自宅と農機具は流失を免れたことから、復旧した被災水田での生産を進んで請け負った。結果、昨年の栽培面積は四十ヘクタール以上に倍増し た。」
 少し飛びますが、小見出しに「使命感で支える」というところがあります。「小作料、手伝いの手当、燃料代などを除くと、純利益が十アール当たり一万円残 るかどうか」だ。もともと覚悟していて、ここまでやってきたわけです。その下の五行目になりますが、「町内では来春、さらに三十ヘクタールで稲作が可能に なる。うち十ヘクタールを大内さんが」またさらに「引き受け、受託先は八十戸以上に増える。」
 最後に、では、この大内さんは実際にどう考えているかというのが、このように述べています。「TPP参加に向けて小さな農家を一掃するのが、政府の狙い ではないかと勘ぐりたくなる」「復興への配慮も支援も消え、被災地が経済原理に投げ込まれれば、地域で踏ん張る担い手、支え手はいなくなる。」と厳しい目 を農家の方自身が被災地から向けています。
 繰り返しになりますが、自給率を上げるというふうに言うんだけれども、交付金は減らす、TPPにも参加する、これでは農家は続けられないという声が上 がっているわけです。農外企業や六次産業化に期待しても、参入した農外企業がもうけが上がらないと撤退した例も、これまでも幾つかありました。特に、被災 地のような、リスクを抱えるようなところへ農外企業が参入するのか、食料自給率の向上にどのような貢献をするのかというふうに思うわけです。
 大臣、このように河北新報で紹介されている農家のリアルな実態や声に、どのように応えますか。
○林国務大臣 これは被災地で、単なる復旧にとどまらずに、大内さんですか、その前の規模よりも結果として大きな規模になって、しっかりと覚悟を決めてやっていただいているという例ではないかというふうに思っております。
 一方、自給率との関係でいくと、米は、先ほど申し上げたように、ほぼ自給ということでございますので、さらにこの自給率という意味では、自給ができている米の消費面というのが大事になってくるのではないかと思います。
 そういう意味では、消費拡大の国民運動や、国産農産物を求める食品産業事業者、米を原料として使ってもらうというところも含めてやっていくということ と、それから、この大内さんの場合は多分それはできているんだと思いますが、やはり集積をしていくことによってコスト縮減を図っていく、そういう中で、い わゆる売り上げから生産費を引いた所得というものをなるべく上げていく、こういうことをしっかりとお支えしていく、この両面でもってやっていかなければな らないと思っております。
 さらに、米以外のところで申し上げますと、先ほど言いました、食生活が変わっていく中で、畜産物、あるいは麦、大豆といったような今自給率が低いところ にもしっかりといろいろな施策を用いて、ここの向上を図っていくということもあわせて考えてまいらなければならない、こういうふうに思っております。
○畠山委員 自給率引き上げは国民的な願いでもあります。しかし、今回の所信表明から出てくる結論はそうならないのではないか、一部の農家しか生き残れない農業改革ではないのかという問題点を、これからの審議で徹底的に議論していきたいと思っています。
 なお、最後に、この後、議題になる山村振興法の改正案について一言だけ申し上げます。
 山村をめぐる状況に鑑みて、一層の振興に向けて国が役割を果たすべきことは当然です。
 新たに設けられる基本理念に基づいて、森林、農用地の保全事業の推進や産業振興に対する支援策の具体化等、一層の国の取り組みを日本共産党は求めるものです。
 質問を終わります。