○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
 TPPが日本に何をもたらすかについて質問いたします。
 政府はTPPが決まったかのように補正予算や対策などなどをこの間述べてきていますが、まだ最終文書もサインされていませんし、国会での批准もまだまだです。アメリカでも、次期大統領候補からは反対や慎重の声が相次いでいます。
 日本共産党は、全国各地で農家や農業関係者との懇談や調査を行ってきました。どこでも共通していたのは、TPPへの不安とともに、安倍政権の農政に対する不満です。
 資料をごらんください。
 ことし一月四日の日本農業新聞によれば、JA組合長へのアンケート結果で、TPPの国会決議が守られていないと答えた組合長は九二%に及んでいます。多くの農家も同じ気持ちでしょう。
 そこで、まず総理に伺います。
 これだけ農業関係者から、国会決議が守られていない、このように突きつけられて、総理はどう答えますか。
    〔委員長退席、平沢委員長代理着席〕
○安倍内閣総理大臣 このアンケートについては、我々がまとめました総合的なTPP関連政策大綱をお示しする大分前からアンケートをとり始めていたわけでございまして、十分に反映されていない、こう考えております。
 我々はしっかりと農業者の皆様に御説明をし、再生産が十分に可能である、安心して再生産に取り組むことができるように、我々もしっかりと説明を全国で展開していきたい、こう考えているところでございます。
○畠山委員 政策大綱、対策や補正予算をまとめれば決議を守れたというふうに言うんでしょうか。つまり、対策や予算がなければ守れていないということの告白じゃないですか。
 もう一つ、資料をごらんください。
 農産物の関税撤廃ですが、全体で八割にとどめたと言いますが、八割、千八百八十五品目に及びます。米、麦など重要五品目は決議で引き続き再生産可能とな るよう除外または再協議の対象とすることとしていたにもかかわらず、うち約三割もの品目は関税撤廃です。トマト、カボチャ、キャベツなどは即時撤廃、タマ ネギ、サツマイモなどは最大で十一年かけて、全ての野菜が関税ゼロとなります。果実、果汁も同様です。
 その上、協定の第二章第四条には、関税撤廃の品目について前倒しして議論すると定められています。米国や豪州など五カ国とは七年目の再協議も規定されています。どんどん輸入がふえるのは明らかではないでしょうか。
 そこで、きょう私がまず問いたいのは、食料自給率がどうなるかです。これまでも、農産物の輸入の増加に合わせて食料自給率は下がってきました。
 総理、確認しますが、今の日本の食料自給率は御存じですね。
○安倍内閣総理大臣 我が国の食料自給率は、平成二十六年度において、カロリーベースで三九%、金額ベースで六四%となっております。
○畠山委員 今答弁がありましたように、三九%です。つまり、約六割は外国に食料を依存しているというのが日本の現実です。その結果、日本の農産物輸入がどのような状況に置かれているか、総理は知っているでしょうか。
 世界人口比の一・八%である日本が、小麦でいえば全世界の輸入量の三・七%、トウモロコシでは一二・六%を輸入しています。配付資料にまとめています。 その結果、サウジアラビアやエジプトなどのアフリカ諸国や、人口が最も多い中国を抑えて、日本は穀物輸入量で堂々の世界一です。これこそ爆買いです。
 総理、これは異常な状況だと思いませんか。総理の認識。
○森山国務大臣 お答えをいたします。
 委員御承知のとおり、穀物輸入の中で一番多いのはトウモロコシでございます。これが千百四十万トンでございます。飼料の関係がありますので、飼料として の穀物の輸入が多いということが典型的ではないかと思っております。あと、もう少し小麦の輸入ももちろんありますので、これについても、今後もしっかりし た対応をしていくということは大事なことだと思っております。
○畠山委員 この状況を異常と思わないかと、私は総理の認識を聞いたんです。TPPでさまざまな経済効果については誇らしげにいつも言うけれども、この自給率の状況を異常だと思わないか。TPPでその悪化がさらに進むと懸念されているのに、総理から聞いたことは私はないんですよ。
 食料自給率のこの状況、現状を異常だと思いませんか。
○安倍内閣総理大臣 私は、食料自給率、食料の安定供給を将来にわたって確保していくことは、国民に対する国家の最も基本的な責務であり、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させていくことが重要であると考えています。
 このため、安倍内閣では、昨年三月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画において、農業の成長産業化を実現するための多様な施策を講じることによって 食料自給率を引き上げ、平成三十七年度において、カロリーベースでは四五%、金額ベースでは七三%とする目標を設定したところであります。
 なお、今般の基本計画においては、食料安全保障の議論を深める観点から、国内の農地を最大限活用した場合にどこまで供給できるかをあらわす食料自給力指 標を新たに示しております。この指標は、食用とならない花やカロリーの少ない野菜のかわりに米や芋類を作付した場合に得られる供給可能なカロリーを、栄養 バランスも考慮した複数のパターンに分けて示しています。この数値の方が、食料の安全保障という観点からは、より正しい実態を示す数値になるのではないか と思います。
 これは、一定の仮定を置いて試算したものであることから自給率のように目標とすることにはなじみませんが、我が国の食料の潜在生産能力を示すものとして、食料自給率とあわせてその向上を図っていくことが重要であると考えております。
○畠山委員 今、私は、食料自給力の話は聞いていないんですよ。TPPとなれば、食料輸入がさらに進んで自給率が下がることになるんじゃないかという不安が全国各地から聞かれているわけです。
 これまで日本がFTA、EPAを結んだ国々のうち、二〇一二年の日本の農林水産物輸入額上位五カ国を調べました。配付資料にあります。フィリピンもチリ もマレーシアも、フィリピンでいえば二倍、チリでいえば二・五倍、マレーシアでいえば三・九倍も日本は輸入額がふえています。それ以外の国々も調べました けれども、同じ傾向にあります。
 今回は、TPPで、豪州、ニュージーランド、そしてアメリカなどの農業大国が加わるわけです。これまで以上に農産物輸入がふえるのは火を見るより明らかではありませんか。
 それでも総理は、先ほど言った自給率目標四五%を上げられると胸を張って言えるんですか。本気で食料自給率を上げるんだったら、このような歯どめなき農産物輸入の拡大を見直すべきではないんですか。どうやって上げるというんですか。答弁してください。
○森山国務大臣 お答えいたします。
 先生のお示しいただいている資料でございますけれども、この数字の中には、酒、たばこのような農林水産省所管物以外である貿易額の多いものも含まれております。そしてまた、林産物が除かれているといった問題がございます。
 加えて、輸入額を二〇〇二年と二〇一二年で比較していただいているわけでありますけれども、たしか二〇〇二年は対ドルの為替のところは百二十五円ぐらい だったのではないかと思います。二〇一二年はたしか七十九円台だったのではないかと思いますので、為替のこともこれには影響しているというふうに考えてお りまして、過去に締結したEPAの国内農林水産業への影響について、EPA締結後、輸入額の変化は増減さまざまでありますけれども、輸出国の関係や為替 レートの関係も考えられることから、現段階で確たる評価を行うということは困難ではないかというふうに理解をしております。
○畠山委員 そんな逃げの答弁でいいんですか。だって、貿易の自由化がFTAそしてこのTPPでしょう、輸入額がふえるのは当たり前じゃないですか。ウルグアイ・ラウンドの後の四年間でも食料自給率は六%下がった、その事実を何と説明するんですか。
 ウルグアイ・ラウンドの対策大綱をもう一度読みましたよ。担い手への農地利用の集積とか、農産物の付加価値向上とか、スケールメリットを生かした畑作経 営の展開とか、今と同じじゃないですか。これらの対策を講じても食料自給率が下がった事実を正面から受けとめるべきです。
 対策をとるから大丈夫というのであるならば、それはそもそもTPPでは食料自給率が下がるということの証明じゃないですか。しかも、今回は、過去に例の ないほどの関税撤廃と削減です。自給率を上げるというなら、日本共産党はこの間TPPからの撤退を求めてきましたが、引き続き要求していきたいと思いま す。
 話を次に進めます。
 TPP対策として政府が掲げているのは農業の成長産業化です。攻めの農業です。政策大綱では、農家の体質強化対策をとって外国にも売れるようにする、そ うすれば農家も所得がふえるかのように言って、今、農林水産物、食品の輸出額一兆円を目標にしていますが、前倒しをするとしています。しかし、その中身は よく見る必要があると思います。
 農水省が農林水産物・食品の国別・品目別輸出戦略において目標一兆円を掲げていますが、そのうち多い方、上位三項目は何で、金額は何か。農水大臣、御答弁ください。
○森山国務大臣 平成二十五年度に策定をいたしました国別・品目別輸出戦略、これは二〇二〇年に輸出額一兆円を目標にしているわけでありま すけれども、水産物を除く上位三項目はそれぞれ加工食品であります。一番は、みそ、しょうゆ等の調味料であります。二番は、飲料水、菓子類であります。三 番は、健康食品、レトルト食品、その他加工品でございます。それが一番から三番まででございます。
○畠山委員 今述べたように、清涼飲料水とか健康食品とか、加工品ばかりですよね。菓子類も、中身を見たら、煎餅じゃなくてチョコレートと かキャンディーですよ。みそやしょうゆといっても、今、日本の大豆の自給率は何%ですか。七%でしょう。一体どこに日本の農産物を用いて海外に輸出して、 利益を上げるというふうになるか。それなのに、政府は、昨年は輸出七千億円まで到達しそうだと誇っています。
 では、聞きます。
 それでは、今度は、純然たる農産物と言えるような米とか牛肉とか青果物、お茶などなどでは、どれくらいの金額が実績なんですか。
○森山国務大臣 重点品目のうち、平成二十七年の一月から十一月までの累計で、多い順に申し上げますと、青果物が百八十六億円でございまし て、前年同期比四一・六%の増加でございます。次が、米、米加工品が百八十一億円でございます。あと牛肉が九十六億円でございます。緑茶が九十億円でござ います。花卉が六十八億円の順番になっております。
 先生のお地元であります十勝の川西農協を中心にやっておられます長芋の輸出も随分伸びてきておりまして、二十二億円ぐらいになっていると思います。
○畠山委員 川西長芋のことを宣伝されて結構ですけれども、そのことは聞いていないんです。
 それで、今言われたものとか全部足しますと、六百二十一億円なんですね。六千六百九十億円まで来ていると言っているうちの、わずか九・二八%です。一割にも満たない。
 輸出一兆円といって、国産農産物を使った食品で占めるんだったらまだ話はわかりますよ。だけれども、今言ったように、純然たる日本の農産物では結局一割 にも満たないというのがこの間の実績じゃないですか。輸出一兆円ということで、それで全ての農家の所得がふえるかのようなことは幻想じゃないですか。
 所得を上げるというんだったら、私たちはずっと言ってきましたよ、生産費を補うような補償をするのが一番です。今、農家が何に苦しんでいるんですか。こ れまでの農政のもとで、安い農産物の輸入が拡大して、国産農産物の価格も下がり、生産費も賄えなくなったことでしょう。またTPPで同じことを繰り返すん ですか。
 これは、政府が発表した経済効果分析でもこう書いています。関税削減等の影響で価格低下による生産額の減少が生じると認めているじゃないですか。その結果、過小評価だと私は思うけれども、農林水産物は約一千三百億円から二千百億円の減少ときちんと書いていますよ。
 それで、さっきの輸出目標一兆円のうち純然たる国内農産物にかかわっては、結局、一割なら一兆円でも一千億円ですよ。一千三百億から二千百億円減少が出るというのと比較したら、生産額の減少分さえ輸出で賄えないじゃないですか。どういうことですか、これ。
○森山国務大臣 先生、加工食品につきましても、データを見ますと、大体原料の七割ぐらいが国産品を使っておりますので、それが全て違うという理屈にはならないのだろうというふうに思っております。
 また、加工食品で六次加工をするということは地域の雇用にも影響することでございますから、これはさらに進めさせていただかなければいけないなというふうに思っております。
 今後も、政策大綱に示してありますように、体質強化対策を集中的に講じさせていただきまして、生産コストの低減や品質向上を図るということによって、輸 入品との差別化をしっかり図って、収益性の向上を図る等々の政策をしっかり進めさせていただくことが大事だと思っております。
 一兆円の目標についても、それはいろいろ考え方はあると思いますけれども、先日、実はシンガポールに国会のお許しをいただきまして出張させていただきま したが、そこの百貨店では、鹿児島県のサツマイモを原料とした煎餅とか、そういうものも売られておりまして、いろいろな分野で輸出食品というのは広がって いるんだなというふうに思いますので、目標達成に向かって努力をするということが大事だと思っています。
    〔平沢委員長代理退席、委員長着席〕
○畠山委員 加工の七割は国産とか言いますけれども、私は全部の品目を調べましたよ、清涼飲料水とか菓子類とか。さっき言ったじゃないですか。先ほど言ったように、生産額の千三百億円から二千百億円の減少が出る、それでも純然たる国内農産物で賄えないというのは数字が示しています。
 そして、減少額自体も、私は見込み自体が過小評価だと思いますよ。その過小評価でさえ、減少分は輸出で賄えないと。TPPで輸出で稼いで農家に生き残れというようなことを言ってきて、でも本当に生き残れるかと、農家はみんなそれを言っているわけじゃないですか。
 総理、今私が数字で示した政府の試算からも、そんなことは言えないじゃないか、農家はそう言っているわけですよ。どう答えますか。
○安倍内閣総理大臣 TPPにつきましては、農林水産品について、国会決議を後ろ盾といたしまして各国と厳しく交渉した結果、重要五品目を 中心に、国家貿易制度の堅持、既存の関税割り当て品目の枠外税率の維持、そして関税割り当てやセーフガードの創設、関税削減期間を長期とするなどの有効な 措置を認めさせたわけでございます。
 また、先ほど申し上げましたように、総合的なTPP関連政策大綱をお示ししているわけでありまして、しっかりと農業の再生産に取り組んでいきたい、こう思っているわけでございます。
 また、輸出の一兆円につきましては、いわばこの三年間、連続で過去最高を記録して七千億円まで到達したわけでありまして、一兆円は前倒して達成できそうな状況であります。
 確かに、中身について今いろいろ御指摘がございました。しかし、その中におきましても、いわばこの分野においても徐々に成果は出てきているわけでありま して、しっかりとしたルール、ルートをまたつくっていく、そしてみんなが意欲を持っていけば、これが大きくふえていくという可能性も十分にあるんだろう。
 今、まだその意欲が高まり始めたばかりでございますし、実際にこのTPPが動いて新しい経済圏の中で日本の作物がさまざまな関税障壁がなくなって輸出で きるという状況にはなっていないわけでありますから、そういう中においてしっかりとそうしたものもさらに成果を上げていきたい、こう考えているところでご ざいます。
○畠山委員 そういう話をすればするほど農家の不安が広がっていると今言ったばかりじゃないですか。価格の低下でどれだけ農家が不安に思っているか、わからないんですか。
 全国一の生乳生産量を誇る北海道別海町へ調査に行きました。酪農が基幹産業の町で、人口の四割が第一次産業に従事している町です。大規模農家や法人経営もありますけれども、主体は数十頭規模の家族経営です。町も、町営の研修牧場を持っているわけです。
 こうした努力で年間三、四戸が就農しても、年間二十戸の離農のペースに追いつかず、六十頭を飼育している農家は、現在の乳価の水準なら夫婦二人の暮らし が成り立つが、五円下がれば生活費がそっくり失われると話して、そして町からも、いつ離農かと待機している農家が百戸いる、離農が波を打って押し寄せると 話しています。
 このような、現実に全く向き合わないTPP推進の姿勢を改めて強く批判して、私の質問を終わります。