○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
 四人の参考人の先生、きょうお時間をとっていただきまして、本当にありがとうございます。私からも改めて感謝を申し上げます。
 早速、四人のお一人お一人に質問をさせていただきます。
 まず、土肥参考人にお伺いいたします。
 著作権の問題については、先ほど福井参考人からもありましたけれども、今、コンテンツ産業としてこのように市場としてもどんどん広がっている状況がある中で、日本は輸入超過、コンテンツの輸入大国となっているところから、支払い負担の問題は確かに存在しているというふうに思います。ですから、これが延長されるということにおいては、そのような作用が起こることは私もあり得ると思うんですね。もちろん、一般に著作権保護ということが重要であることは私たちも理解していますし、大事だと思っています。
 ですので、特に今日、このようにコンテンツ産業が盛んになる中において、そのバランスというのは、権利と産業のはざまでなかなか難しい判断は確かにあるかと思いますが、よく見ておく必要があるかと思います。その点の御見解についてお聞かせいただけますでしょうか。
○土肥参考人 御質問ありがとうございます。
 確かに非常に難しいところなんですけれども、使用料の支払い超過というのは、これは主としてソフトウエアですよね。つまり、我々のパソコンの中に入っているソフトウエアを考えてみると、大体、アメリカのソフトウエアメーカーのものが入っておるわけでありまして、こういったようなものにかわるものを産業的に国全体でつくっていくということがなければ、なかなかこの状態は解消しないんだろうと思います。
 しかし、私が若いころ、ゼロックスは永久に不滅である、百年ぐらい先まで大丈夫だというふうに聞いたことがございますけれども、しかし、例えば、先ほど福井参考人が御紹介になった、外国の企業のトップファイブか何かが挙がっておりましたけれども、あの中にはありませんでしたよね。つまり、時代の経過の中でやはりこれも変わり得る。
 日本も、例えば、かつては「千と千尋の神隠し」みたいなものもございましたし、今は「君の名は。」というようなものが大変ヒットしております。つまり、これはまずい、まずいということよりも、この七十年になったことを利用してというか逆手にとって、そういう市場戦略、産業戦略を構築していただきたい、このように考えております。
○畠山委員 ありがとうございます。
 そこで、福井参考人にも、似たような角度と、もう一つ、非親告罪化の問題についてお伺いしたいと思います。
 先ほど、福井参考人の資料で、今私が述べたような支払い負担の問題について記載がありました。こういう状況の中で、もちろん、知的財産においては、TPPの協定の議論の中で医療分野をめぐっても広く議論がされてきたところではありますが、そもそも、著作権のあり方と経済、産業とのあり方についてやはり根本的な考え方を据える必要があるのかなと思っています。
 そこで、その点の福井参考人の御見解をお聞かせいただきたいことが一つ。
 もう一つ、非親告罪化については、これはふたをあけてみないとわからないということを福井参考人がさまざまなところでも言われていらっしゃいます。これまでも、いろいろな形でよくも悪くも曖昧な処理をして、裁量に任せられていた部分があったんだろうと思いますが、非親告罪化することによってその裁量がどのような形で厳しくなるのかならないのかということは心配の一つの焦点だろうと思います。
 最後に、整理すべき問題があるとして、法定化にかかわって前倒ししていいのかという問題提起がありました。その関係なども含めて、御見解をお聞かせください。
○福井参考人 ありがとうございます。
 いずれも非常に重要な問題であろうかというふうに思います。
 まず、大きなパラダイムの変換の話を冒頭で申し上げました。プラットホーム企業と言われる米国西海岸発の企業が世界の企業の時価総額のトップファイブを占める状況、これは確かに余りに急速に起きたわけであります。そのとき、しばしば、いや、こういうことはまたいずれ変化が起こるであろうということが言われるわけであります。
 ただし、このトップファイブに入っているプラットホーム企業は、フィナンシャル・タイムズ時価総額でのトップテンに入った時期は皆それぞれ数十年前から昨年に至るまでまちまちですが、いずれの企業も、一回入ったら最後、ただの一度たりともトップテンから外れたことはありません。極めて高い上位固定性を示しておりますね。
 これはインターネットのサイトのアクセス数も全く同じであります。もう上位のサイトは全く変更がありません。これはネットワーク効果という、テクノロジーの世界では大変有名な効果に基づくもので、大きくなれば大きくなるほど、そのこと自体が価値であるというテクノロジーの特質によります。
 よって、そう簡単に上位の変更は起きないかもしれない中で、我々はかなり真剣に対応を考えなければいけない。言ってみれば、それどころじゃないよという話がたくさんほかにある中で、このことの重要性は高いだろうというふうに思います。
 そうしたときに、二番目の問題点として輸入超過の話がありました。
 これは、確かにソフトウエアが項目として一番高いことは事実なんですが、我々はデータに基づいて議論すべきだと思うんですね。
 米国商務省が内訳を発表しております。それによるならば、オーディオビジュアルを初めとした文化的コンテンツだけで、日本は、米国一国からの輸出金額は八億八千二百万ドル、これが昨年の数字です。すなわち、九百億円近い輸入額ですね。それに対して輸出額は一億ドル台の前半ぐらいということで、文化的コンテンツ一つとっても極めて大幅な赤字であるということは直視すべきです。
 さて、米国は、ミッキーマウスに代表されるように、あるいはアメコミのヒーローたちに代表されるように、古い作品での輸出が極めて強い国です。ドラキュラ、フランケンシュタイン、こうしたことも挙げられますね。ですから、保護期間の延長は、彼らにとって、いわば著作権使用料の収入増加に大幅に寄与するでしょう。
 日本です。アニメ、ゲーム、確かに力強いものがあります。私も非常に心強く感じています。しかし、それらはごく最近の作品ばかりです。保護期間の延長によって海外からの収入はふえません。当面はそんな時期はやってきません。
 我々は、現実に即した話をすべきですね。今後、海外に打って出る、日本は輸出で、コンテンツで稼げる国になるんだとおっしゃるのなら、稼げるような制度をつくろうじゃないですか。それと逆行する制度をつくりながらコンテンツで稼ぐ、これはおかしいことだと私は思います。赤字が固定するような制度をつくりながらコンテンツ立国はできません。
 三番目、非親告罪化。
 確かに、個別で原作のまま利用する、しかし許可がなかなかとりようがないものというのはあるわけです。繰り返しになりますが、企業や研究機関あるいは教育機関での資料のコピーは、現実には許可のとりようのないものもたくさん入ってきているんです。複製権センターのようなところでは許可のとれないものもたくさん入ってくるから、現実に行われておりますね、原作のまま使われています。
 あるいは、解析用のビッグデータの第三者提供。さっき一言触れただけでしたが、恐らく、これが進まないとAIネットワーク化は到底産業振興できません。現行法の解釈上、恐らくこれはできません。四十七条の七というのがあるんですが、解釈上恐らくそこまではできないだろうと考えられている。商用アーカイブや商用オンライン講義もしかりです。これらに対しては、萎縮が進まないような運用が非常に重要になるだろうというふうに思います。
 最後の論点です。いろいろなことが議論できる中で、今それを前倒し立法する理由は果たして何だろうということですね。
 ほかの分野のことは、私は専門外ですからわかりません。しかし、知財に関しては日進月歩だということだけは申し上げられる。将来を見越した議論などはできない。
 非親告罪化の今の議論にしたところで、政府、政治家の皆さんの努力は我々は大いに感謝するが、最初に問題提起したのは我々です。我々が問題提起して、こんなことが大きな問題になってくるよと言って、その声を酌み上げていただいたんです。三年先の状況を読めていないじゃないですか。なら、なぜ今ルールをつくるのか。
 例えば、保護期間の延長に関して、なぜか孤児作品の対策だけすればいいというふうに議論が絞られてしまっていることを感じますけれども、先ほど来データが出ているように、孤児作品は過去の全作品の五〇%にしかすぎません。残りの五〇%は、捜せば権利者が見つかるんです。でも、メガコンテンツについて捜せますか、そのコストを負担できますかという話です。できません。ですから、ギガコンテンツ発信なんかはできないんです。孤児著作物対策だけではこれはできないんです。
 では、保護期間延長に対して本当にダウンサイドをとめるなら何をするか。
 アメリカでローレンス・レッシグという教授がかつて提唱したのは、登録した作品だけ保護期間を延長するというアイデアです。大変合理性のあるアイデアです。これはあと二年あればつくれるじゃないですか。
 長くなりました。こういう議論をぜひ推進派の皆さんとこそしたいなと思ってきょうは参りました。
○畠山委員 ありがとうございました。
 ISDSにかかわって、鈴木参考人、岩月参考人、ちょっと時間の関係もありますので、お二人に初めに質問をさせていただきます。
 まず、鈴木参考人にですけれども、ISDSは国民的にもなかなかわからないと言われておりまして、先ほどからあるように、過去に条約で触れられていることではありますが、日本共産党としては、TPPに反対の立場ではありますけれども、やはり中身はこの機会に国民的によく知られておく必要はあると思っております。
 仲裁人が三人ということで、いわゆるそれぞれの当事者国と、合意に基づいて第三人目、合意されない場合は世界銀行などからですか、ということになりますが、法理による解決ということでこの条項がつくられてきた中で、いわば上告ができないような形になっている。つまり一発勝負のような形で裁定されていくという点では、これは、法理に基づいて考えれば、そういう解決すべき問題点はあるのではないかというのは素朴に思います。その点での御見解をお聞かせください。
 そして、岩月参考人にお伺いします。
 私は、間接収用の問題に非常に強い関心を持っています。
 そもそも収用自体は、直接収用が、途上国といいますか植民地支配がされていたときから、独立する際にいろいろ直接に収用される事態があったことに対して対抗するものとして始まったというふうに私は理解しております。
 それに比べて、間接まで収用が広がってきた経過といいますか、そこにやはり今回のISDSとかかわる本質があるのではないかと思います。間接収用をめぐれば濫訴防止の議論ともかかわってくると思いますので、間接収用とISDSの関係について、岩月参考人の御見解をお聞かせください。
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 上訴制度がないということが御質問の趣旨であろうかと思います。
 確かに、ISDS、特に、仲裁に基づく判断プロセスにおいて不服申し立て審がないということは、これまでも懸念事項として挙げられてまいりました。いろいろな形でこれを補完しよう、あるいは修正しようという努力はなされておりますが、現在のところ、上訴制度は存在しないまま、通常の仲裁裁判と同じような形で進行しております。
 なお、幾つかの理由がございまして、一つは、上訴制度がないことによって判断の統一がとれないのではないかというのが批判の一つの原因でございました。
 ただ、今回のTPPにおきましては、御承知のように、その条項の中に、TPPの条項の解釈についてはTPP委員会が一定の解釈を示すことができ、それを示した場合には仲裁廷は拘束されるという形になっております。ですから、TPP加盟国の間では、その委員会を活用することによって一定の法的安定性が確保できる道がつくられたというふうに考えます。
 それからもう一つは、確かに個別事案でございますので、抽象的なルールの解釈の統一だけではなくて、個別事案についての上訴といいますか、レビューが必要になるというのが御質問の趣旨だと思います。
 おっしゃるとおりでございますが、このTPPでは、今、現状の仲裁制度を前提にしてつくり上げられておりまして、将来、上訴が設けられる可能性を否定しておりません。
 そして、中の規定では、上訴が構築される場合にはそれに従った検討を行うということが条文上明示されておりまして、将来、上訴制度を置くことについて道も開かれているということでございますが、現状は、今使われておりますICSIDあるいはUNCITRALの仲裁制度と同じ仲裁制度のもとで判断がされるという構造になっております。
 御質問ありがとうございます。
○岩月参考人 御質問のとおり、ISD条項は、一九五八年に西ドイツとパキスタンの間で結ばれたものが最も古いとされています。途上国で直接の収用、没収のようなことがされて資産が奪われたときの最終的な救済手段として構想されました。
 それがどのように間接収用を含むように変貌していったかというと、一九九四年に発効したNAFTAで、米国の企業がカナダ、メキシコの環境規制にかかわる措置について相次いで提訴をする。負けたり勝ったりということを繰り返すわけですけれども、そういうことがされた結果、おお、このような場合にも収用と言えるんだと、事後的になっていくような経過をたどっています。
 アメリカの場合は、既に間接収用の法理というのはその前から確立しておりましたので、それが三国に広がっていったというような経過だと思うんですが、そういう次第で間接収用というのが広がっていったということです。
 だから、最終的に国際慣習法というふうな縛りがかかっておるというふうに言われますが、もともとの出自は、多分、アメリカの州と州の間の通商に関する慣習を国際慣習法というふうに呼んでいたんだと私は理解しております。
 以上です。
○畠山委員 時間がまだ少しありますので、岩月参考人、もう一言お伺いしてよろしいでしょうか。
 過去のさまざまな事例が先ほど述べられましたけれども、主に一国、とりわけアメリカが勝利することが多くあったというふうな事実を述べられていましたが、一言で言ってその理由というのは何だとお考えですか。
○岩月参考人 それはちょっとよくわかりません。訴訟社会で非常に鍛えられているということは、アメリカのローヤーについては言える。
 だから、なぜアメリカ企業だけが勝っているかということはちょっと言いにくいんですが、アメリカ政府が負けない理由だけはよくわかります。アメリカ政府を負かしてしまうと、ISDの本家本元で、ISDが嫌だということが完全に顕在化してしまうからであります。
 ちなみに、日本政府は、これまで投資協定を結んでいたけれども訴えられたことがないじゃないか、非常に公正な扱いをしているから訴えられる心配はないというような御意見がございますが、では、NAFTAのカナダを見てみましょう。三十八件訴えられています。そのうち、アメリカから三十七件、メキシコから一件でございます。カナダは非常に不公正なことをしている。全六十九件のうち、カナダが訴えられたのが三十八件でございます。そのことはちょっと御念頭に置いていただいた方がいいかというふうに思います。
○畠山委員 ありがとうございました。
 北海道へ公聴会に行ったときに、知的財産にかかわりまして、陳述者の方から、さらに勉強会がしたいなということを中小企業の方の立場から言われました。
 模倣品対策などは、締約国以外の国で広く起きていることから、TPPにかかわる分野とそうでない分野の区別と整理をした議論が必要ではないですかと私は述べたんですけれども、そのとおりですという御発言で、国会ではまだそういう議論がされていませんので、やる必要があると思っています。
 また、ISDSにかかわっても、鈴木参考人からTPP委員会の性格についても御発言がありまして、これは今後、私も質疑したいと思っているんです。
 TPPは生きた協定と言われる中で、その司令塔や中身、組織の機構のあり方についても十分な議論が必要だと私は思っていますので、きょうの参考人の皆さんの御意見をもとに、さらに審議を深めていきたいということを述べまして、私の質問を終わります。