○畠山委員 日本共産党の畠山和也です。
 四人の参考人の皆様には、本当に貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。本当に、この法案の重要性が反映してと思うんですが、非常にたくさんの御意見をお聞きしましたので、私からの質問は手短に、端的にして、できる限りお話をお聞かせいただければと思っています。
 それで、四人の参考人に共通してまず聞きたいのが、この法案が生産者の所得向上にどれだけ資するかということです。
 山下参考人はそもそも所得の向上性の必要がないという前提がありますけれども、理屈の問題としてどのように作用するかということを含めて四人にお聞きしたいんですが、そもそも、押しなべて生産者の所得向上になるのか。地域があるいは規模が、さまざまなことも含めて考えられますし、当面なのか中長期的なのか。さまざまなお立場から、所得向上にかかわってこの法案の果たす役割、果たさない役割について率直なことをお聞きしたいと思っています。
 これは先ほど、前提が違うということもありましたので、山下参考人から御意見をいただき、その後、須藤参考人、小林参考人、清水池参考人の順でお願いしたいと思っています。
○山下参考人 もし、その所得向上が農政の目的だということであるとしても、この法案自体は所得の向上にほとんど寄与しないというふうに思っています。
 実は、私の資料の九ページのところに書いているんですけれども、もし、第二指定団体、第二ホクレンというのができたとして、そうすると、生乳が第二ホクレンに行くでしょう。第二ホクレンの方がプール乳価は高いわけですね。ホクレンの方が全部やっているとすると、加工向け乳代が全体のプール乳価の水準を下げるわけですね。飲用向けを主体にして第二ホクレンというのができるとすれば、それは、高いプール乳価が、飲用向け乳価がほとんどプール乳価になりますから、百円ぐらいの乳代になるわけですね。今でいくと、もっと超えているんですかね。そうすると、八十円ぐらいのプール乳価をホクレンに出してホクレンからもらうよりも、百円のプール乳価をもらった方が有利だということで、生乳はホクレンから第二指定団体に流れていくと思います。
 ところが、これは、全体の生乳の需給、飲用向けと加工向けの比率が変わらないということであれば、全体の北海道の四百万トン近い生乳の配分が第二指定団体とホクレンの間で変わっていくだけであって、全体の飲用向けの比率が上がらない限り、トータルとしての酪農の所得の向上にはつながらないというふうに思います。
○須藤参考人 今、牛乳が本当に足らないんですね。ということであると、私たちが、幾らやめる人の分を法人経営、大規模経営がサポートしても、追っつかないんですね。という中で、今後五年後、十年後、もっと牛乳が減っちゃって、本当に価格がどんと上がるのか。こういう需給調整の中で、安定化というのが最大の要因でございます、大事なことです。
 しかしながら、これだけ牛乳が減って、ないということであると、加工に回す牛乳も当然少ないわけでございます。となると、本当に、酪農家は、牛乳だけではなくて、個体販売というものが大変今景気がようございまして、それで大変もうかっているように見えております。しかしながら、本当は牛乳屋さんなんですね。ですから、牛乳がいかに利益を生まないと、酪農家は継続ができないわけでございます。大変、個体販売というのは一過性のものが強いわけでございまして、いつまた安くなるかというのはわかりません。
 今、酪農家が減って、牛を生産する農家が当然減っているわけでございます。ですから、牛も足らないんです。ですから、そういう悪循環が今つながって連鎖が起きて、こんなに牛が高いんです。
 酪農は、肉牛屋さん、肥育屋さんの下請もしております。酪農の中で、和牛だとかF1と言われる一代交雑種も酪農家が一生懸命つくっております。となりますと、酪農というのがなくてはならない。それは、肉牛屋さんも困るんです。となりますと、同じ牛屋さんですけれども、お互いにリンクして、ともにウイン・ウインの関係になっていかないと所得向上は望めません。
 ですから、私たちは、今、景気がいいお肉の方にシフトしている人が多いわけでございまして、牛乳はそんなに搾らなくてもいいや、まあまあでいいや、もう少しこの高いお肉で稼ごうというのが、今、日本の酪農家のスタイルです。これがどこまで続くのかわかりませんけれども、酪農が衰退している中で、今、減少が起きているわけでございます。だから、そこを何とかしないと右肩上がりにはなりません。酪農家がふえていかなければ肥育屋さんもふえないんです。そういう循環をどこかで断ち切らないと私は難しいと思っています。
 ですから、この法案がもしそれに寄与することであれば、下支えをしてくれるとなれば、ほかにすがるものがございませんから、ぜひひとつやっていただかざるを得ないかなというふうに私は正直思っております。
 以上です。
○小林参考人 御質問ありがとうございました。
 最初に、酪農所得の現状について事実確認をしたいと思うんですが、一千万円あるじゃないかというお話があったんですが、これは多分北海道の酪農家のことだと思うんですが、ただ、これも、大体酪農家は二人半ぐらいの方が働いてやっておりますので、一人当たりにすると四百万円ということで、それほど高いとは思わないんですね。
 もう一つ、事実認識として、統計を見ますと、平成十二年ぐらいまでのいわゆる不足払いがきちっと機能していたころまでは、一キログラム当たりは右上がりに上がってきて、それと同時に規模拡大がありましたので、総所得は上がってきております。その後、制度改革等がありまして、酪農家の所得というのは、結構、右下がり、あるいは変動しているという状況で、最初申し上げましたように、平成二十年は一時間当たりの所得が七百六十六円、世帯全体で四百五十万円、そういう所得までに落ちてしまったという問題があります。
 そういう状況があらわれてしまったら、そこで酪農家の方はやめてしまう、やめてしまったらそれを回復するというのは非常に難しいということです。ですから、セーフティーネットというものをぜひ入れていただきたいということを申し上げているわけです。
 ですから、所得が高いときは何も所得を補填するようなものは要らないわけですけれども、そういった所得が非常に急激に落ち込むようなときにちゃんとしたセーフティーネットがあるということで、安心して、後継者ですとかあるいは若い新規参入者が酪農に参入できるというような環境をつくっていただきたいということが一つです。
 やはり後継者が、価格が多いというのは、所得が多い、規模が大きいというところとパラレルですので、やはり所得というものは重要だというふうに思っております。
 最近は、一キロ当たり所得はおっこっています。これは乳価が上がっておるんですけれども、コストも上がっているということで、結果的には、その差額である所得が下がっているということであります。
 今は上がっているというお話がありました。これも今、須藤参考人の方から御説明があったように、個体販売が異常に高くなっているということで、いわば酪農家が一息ついているという状況があります。ただ、これは異常であって、非常に問題がある状況であるというふうに考えています。九十万、百万円のはらみの牛を買って、その後、どうなるのかということがあります。
 もう一つ、酪農の委員会ですけれども、肉牛経営、これも酪農がリンクしていることですけれども、酪農経営が今、子牛は一時的な個体販売価格の高騰で潤っていますが、こんなことが未来永劫続くということは誰も考えていません。ですから、この時期にもうやめちゃおうという農家の方も結構いますし、一番問題なのは、肥育経営が、あと二年して、八十万、九十万で買った子牛を幾らで売れるのか、百二十万、三十万で本当に売れるのか。そのときに、一体、どういうことが日本で肥育牛経営に起こるのか、非常に大きな問題だと思います。
 日本の中から肥育牛経営がなくなってしまうというのはちょっとオーバーかもしれませんが、そのくらいの問題があって、それに対しての対処というのがなっていないのではないか。つまり、TPP絡みで、新マルキンですとか豚マルキンが法制化されるのを見送られているというふうに聞いておりますが、今やらなければ、二年後、間に合わないわけですね。そのときにどうなるのかということを本当に心配しております。
 先ほどの御質問、この改定案が酪農家の所得に寄与するのかどうかということだったと思うんですが、短期的には、北海道を中心として支払われる補給金の総額というのはふえますから、その結果、北海道の所得というのは若干ふえると思いますが、中長期的に見ると、繰り返し申しますように、指定生乳生産者団体制度が崩れることによって競争が激化し、結果的には、酪農家の所得は低下あるいは乱高下するという状況になってしまうのではないかというふうに思います。
 以上です。
○清水池参考人 御質問ありがとうございます。お答えいたします。
 今回の改正法案の中身で制度を変えても、生産者の所得が押しなべて上がるということにはならないと思います。当然ながら、この制度は所得補償制度でございませんので、そういう効果はありません。一部の生産者の所得を上げる効果はあるというふうには思いますけれども、そうでない人の方が多いというふうにも思っております。
 今回の制度改正は、要は、生産者の販売選択肢をふやすということがポイントだと思うんですけれども、その場合に、自分で乳製品を加工するか、あるいはメーカーと直接つながって乳製品を加工するという方法がまず一つあると思うんですけれども、いわゆる六次化も含むことですが、これに関しては、この制度改正で特に六次化がしやすくなるわけでは必ずしもありません。なぜなら、自家加工に関しては、今の部分委託の制度でもできます。
 あと、これからの乳製品の加工で非常に大事なのはチーズだと私は思っておりますけれども、山下参考人も言われておりましたが、チーズに関しては、共販が非常にチーズ乳価を安く供給しておりますので、むしろ、その共販の中にとどまった状態で、共販から買いながらチーズをつくった方が非常に有利なわけですね。
 ですから、北海道にも非常にいわゆる小規模なチーズ工房がふえてきておりまして、技術もかなり水準も上がっています。一部はヨーロッパ並みになっているとも言われていますけれども、ですから、そういう意味でいうと、もしもそういうチーズ業者さんたちが共販の外から、共販を通さずに買うとかとなりますと、非常に高い乳価を払わないといけなくなってしまいますので、多分、多くの工房の経営が成り立たなくなるおそれがあります。ですから、むしろ共販が大事ということになります。
 一方、飲用向けに関しては、先ほども少し申し上げましたけれども、今まで乳製品主体だったものを飲用向けで仮にある生産者が売ることができれば、確かに一時的に所得がふえる可能性はあります。
 ですが、先ほども申し上げましたように、それによって飲用向け市場の競争が非常に強まってしまいますと飲用向け乳価が下がってしまいますので、ですから、そうしますと、結局、その所得向上の効果は長続きしないのではないかというふうに考えております。
 以上です。
○畠山委員 ありがとうございました。
 四人の参考人に共通して、疑問符がつくというふうに理解させていただきます。所得向上に直接すぐに結びつく法案ではないというふうに私は理解しております。
 それで、これは清水池参考人にお聞きしたいんですけれども、便宜上、インとアウトという言葉を使わせていただきますが、インとアウトにかかわって、もうたくさんいろいろな方々とお会いしてきていると伺っています。
 それで、きょうも話になっている選択の幅を拡大するという点では、例えば日量三トンというのを今回みたいに全部撤廃するのでなく、これまでも、一トンから三トンとか、限定的というか緩やかといいますか、実情に応じる形での選択の幅の拡大ということはされてきたと思います。
 生産者の創意を生かす道と、そして安定的な経営を図る、これは先ほどからある需給調整とかを含めた総体としての政策のパッケージにもかかわると思うんですが、やはりこれが両立されていくことは大事だろうと思うんです。
 今回のような三トン撤廃をいきなり行うということは余りにも行き過ぎであると私は思うんですが、生産者の創意をやはり段階的に丁寧に生かしていく道ということは同時に必要だと思いますが、実際にいろいろな方々のお話を聞いていて、清水池参考人の御感想をせっかくですのでお聞かせいただければと思います。
○清水池参考人 お答えいたします。
 部分委託の問題も含めて、販売選択肢の幅と全体的な安定のバランスというものが非常に重要になってくると思います。
 特に、部分委託の上限撤廃に関しては、私は、ちょっとこれは、いきなり撤廃するのはやはりやり過ぎであるというふうに感じておりまして、何らかの制限を残すべきであるというふうに考えております。
 実際に、部分委託の条件をどうするのかというのは政省令等で規定されるということもあるんですけれども、今の内容が余り抑制的なものになっていないので、実際に生産者と農協との契約の中で具体的には決まっていくというふうになると思うんですが、その場合、農協は組合員のための組織ですので、生産者からいろいろ要望があれば可能な限り受けていくというのがやはり農協のあり方なんですけれども、でも、そうしますと、全体の安定という意味では非常に問題が出てくる場合もあるので、それは完全に民間にその辺は任せるのではなくて、国である程度の基準を設けるのがやはり妥当であろうというふうに考えております。
 いろいろな方とお話ししておりましても、要は、極端なことをお互いに望んでいるわけではなくて、お互いが納得できる着地点を見つけたいというふうには当然考えていらっしゃるわけですけれども、でも、それが今の状態だと、何も歯どめがない中で、ただ、ではやってくださいとなると、やはり全体としてコントロールするのが難しい状況になってしまうおそれがあるので、その辺は、ですから、一定の基準があった方がいいのではないかと考えております。
 以上です。
○畠山委員 ありがとうございます。
 そこで、最後に、年間販売計画を国の方で定めるということについてお聞きしたいんです。これは、小林参考人と清水池参考人にお伺いします。
 一言で言えば、実質、それは担保となるのか、ならないのか、この点についての所見を最後に伺えればと思います。
○小林参考人 ありがとうございました。
 年間販売計画自体は重要だと思いますけれども、それが本当に担保になるかというと、計画と実績の乖離というのがどんなふうになるのかということも考えますと、ちょっとクエスチョンマークをつけたいということが率直なところでございます。
 以上です。
○清水池参考人 お答えいたします。
 年間販売計画に関しては、確かに、そのようなものがないと、法として需給の安定を目指すというものにならないんですけれども、先ほどの意見陳述でも申し上げましたが、計画というのはあくまでも計画にすぎません。年間計画、年間トータルでの計画はそれなりに意味があるんですけれども、月単位とかになってきますと、やはり計画からずれてくることもあります。
 しかも、その事前に立てた計画を守っていれば需給が安定するのではなくて、先ほども言いましたように、予定、計画からずれてくれば、フレキシブルに変えて対応していかないといけないというのがその需給調整の難しいところなんですね。
 ですから、要は、計画を守っていたから需給の安定が達成されるわけでは必ずしもないということで、だから、その辺の需給の安定を担保するという制度的な枠組みでいうと、私は不安があるというふうに考えております。
 以上です。
○畠山委員 ありがとうございました。
 今後の質疑においても非常に重要なお話をお聞きすることができたと思っていますので、充実した審議に向けていきたいということを最後に述べまして、感謝とともに質問を終えたいと思います。
 ありがとうございました。