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2015年 議事録

2015年 議事録


 

第189回国会 農林水産委員会 第24号  平成二十七年十二月十日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
さきの連合審査のときにも要求をしましたが、臨時国会の開催の意義は消えていないと思います。重ねて要求をしたいと思います。
きょうは、畜産、酪農を中心とした論議が行われて、私の方からも、これまで政府が酪農を初め農業全般について、TPPがあろうがなかろうが、日本の農業は危機的だということを述べてきました。
そこで、きょうの審議の中で、二つのことを質問したいと思っています。一つは、日本の畜産、酪農が経営が苦しくなってきているのはなぜで、それではどうしたらいいのかということを検証したい、これが一つです。そして、もう一つがTPPにかかわってです。
この十年間だけを見ますと、全国の乳用牛の飼養戸数は二万六千六百戸から約一万七千七百戸へ約八千九百戸が減少しました。肉用牛の方を見れば、同じく飼 養戸数は約八万五千六百戸から五万四千四百戸へ三万一千二百戸が減っています。北海道では毎年二百戸もの酪農家が離農、離脱してきたということは大臣も御 存じのとおりだと思います。
そこで、農水省はことしの三月、新しい酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針、酪肉近を発表しました。その第一の「近年の情勢の変化」の中で生産基盤が弱体化している三つの要素を挙げていますが、これを確認のために答弁してください。
○今城政府参考人
お答えいたします。
本年三月に策定いたしましたいわゆる酪肉近におきましては、人、牛、飼料の視点から生産基盤を強化することが最優先の課題とされております。
この中で、弱体化ということの三つの要因は、一つは人手不足ということでございまして、厳しい経営環境などを背景に、担い手の高齢化、後継者不足等により離農が増加し、酪農及び肉用牛飼養戸数は減少が続いている。
二つ目、飼養頭数の減少。これにつきましては、飼養戸数の減少による飼養頭数の減少が規模の拡大では補い切れず、また、肉用牛資源の確保を優先し、乳用後継牛を確保、育成しない大規模経営も見られる、こういうこと。
三点目が飼料価格の上昇でございます。これにつきましては、畜産経営は相当部分を輸入飼料に依存してきておりますけれども、アジア諸国等の人口の増加やバイオ燃料の利用拡大等を背景として、穀物価格は高水準で推移している、こういう三点でございます。
○畠山委員
今ありましたように、人、それから飼養頭数、そして餌、飼料の三つの点を確認します。
その中で、きょうは私は飼養頭数の点から取り上げたいと思うんですね。人手不足についても、あるいは飼料不足からもそれぞれ政策のアプローチはあるかと思うんですが、きょうは飼養頭数のことから取り上げたい。
この十年間で、戸数は、先ほど私が述べたように、減少もし、頭数も減少してきています。しかし、一戸当たりの飼養頭数は、乳用牛で六十一・五頭から七十七・五頭へ約一・三倍、そして肉用牛は三十二・二頭から四十五・八頭へ約一・四倍です。
しかし、頭数がふえれば新たな問題が起きることをこの酪肉近でもきちんと書いていますよね。
例えばこう書いています。「酪農経営においては、」「乳用牛飼養頭数が減少している。その背景としては、飼養規模の拡大に伴う大型施設の投資負担に加 え、飼料生産基盤や労働力が確保できないという実態がある。 規模の拡大に応じて深刻化する環境問題や、一頭ごとのきめ細かい飼養管理が難しくなるという 事情も聞かれる。」とあります。
肉用牛は、加えて、この間、子牛価格の高騰が肥育経営を圧迫しています。
そこで、解決するための方針として書かれているのが、「生産構造の転換等による規模拡大」とあります。そこに、生産を効率化するだとか分業化するだとかなどの省力化も書かれていますよね。
そこで、純粋に疑問に思うんですが、規模を拡大することで本当に農家の経営基盤が強化されて、所得向上にどれだけ貢献しているのか、改めて確認して伺いたい。
○今城政府参考人
お答えいたします。
規模を拡大するということになりますれば、やはりスケールメリットというのは出てまいりますので、外部労働力に依存するということの裏腹ですけれども、 家族労働費が減るとか、そういう面はありますけれども、ただ、規模拡大一辺倒だけではなく、やはり省力化ですとか、そういう問題をしっかり支援していくと いうことも大切だというふうに考えております。
○畠山委員
規模拡大一辺倒だけではないというふうに今話をされました。
そうなんですね。規模拡大が行き過ぎたことであれば、先ほど酪肉近の文章を引用したように、大型設備の投資だとかさまざまな負担が生じることは今お認めになったと思うんです。つまり、行き過ぎれば経営を苦しめることになると思うんですね。
では、実際に所得はどういうふうに考えたらいいかは、きょうは資料を提出していますので、その一枚目をごらんになってください。これは、農水省の資料をもとに、搾乳牛の頭数の規模別農業所得率を調査室で作成し、それを編集したものです。
グラフを見れば、所得率が平均して高いのが三十から五十頭と五十から八十頭となっています。最近は率が上がっていますけれども、百頭以上というのは所得率が低い部類に入っています。
以前に農水省がさまざまな資料も出していますが、頭数が八十以上など、多い方が所得率は低いという傾向があると思うんです。なぜか。先ほど引用したよう に、施設の大型化で投資の負担が大きくなったり、労働力の確保も大変だし、ふん尿処理の費用も対策も大変になる。加えて、飼料高騰などが重なれば規模が大 きいほど影響も大きくなる。
もう一度伺います。規模拡大、行き過ぎたものでなく、農家の経営基盤を強化する上で検討をさらに深める必要がありませんか。
○今城政府参考人
お答えいたします。
御提出いただいている資料、これは私どもの営農類型別経営統計をお使いになっておつくりになった資料というふうに理解しております。
この中で、数字にございますように、いわゆる農業所得率ですね、農業粗収益を分母にし、農業所得を分子にし、その比率だけで見れば、百頭以上のところが 一二・七で低くなっており、八十から九十九ですとか五十から七十九のその上のところは一八%台で、それよりは高い。この率だけで見れば確かにそうでござい ます。
ただ、ここの率ということに限れば、飼養規模の拡大によって生産コストが削減されるという事実は、やはり一般論としてございます。したがいまして、例え ば北海道の酪農経営における生産コストは、飼養頭数三十から四十九頭規模層では、同じ統計をもとに言えば、生産物である生乳一キログラム当たりは九十二・ 八円でございますが、これが百頭規模以上では七十九・八円。これは、一キログラムの生産にどれだけかかっているかということでは、百頭規模以上の方が低く なっているということになっております。
したがいまして、規模が拡大すれば生乳一キログラム当たりで見た場合の設備投資に係る償却費用を含む物財費が増大する、これはおっしゃるとおりでござい ますけれども、一方、先ほど申し上げましたとおり、家族労働費が減少する結果として、所得率という先生がお示しになった数字自体は低下するものの、生乳一 キログラム当たりのコストそのものは減少するということになります。
いずれにしましても、生産コストを下げるということをどう表現するかということではないかと考えております。
○畠山委員
所得率を上げるということが大事な議論で言っているわけですから、今のでは違うと思いますよ。
それで、この間、さまざまな、経営基盤強化だとか経営支援の対策で畜産クラスターですとかやっていますけれども、その申し込みが多い背景ですとか、あるいは老朽施設の改築や効率化の必要性は私ももちろん理解はしています。
しかし、経営基盤を強化するといったときに、所得を支える安定的な仕組みがどうしても大事で、それで、きょう、本来、加工用の補給金の制度で、そこに大きな意義があるというふうに思うんですよ。
大規模な農家も、初めから大規模にしようと思っていた農家はそう多くなくて、農水省が言うような、頭数をふやして、あるいは施設も大きくした方がさまざまな効果もあるよということも受けて大きくしたところはあると思うんですよね。
しかし、そうなれば、十年、二十年かけて負債を返すことになりますので、安定的な価格や所得がどうしても必要になるし、それは大規模だけでなく中小家族経営ももちろん一緒の願いであろうと思います。
しかし、ことしは、先ほども議論がありましたが、子牛価格も高かったので、それで補給金を下げても大丈夫ではないかなどの報道や、さまざまな出どころもあります。
これは大臣に伺います。
今言ったように、補給金というのは、酪農家を大規模、家族経営ともども支えている重要な仕組みであることはもちろんですが、ことし、安心してさらにこう いう経営を続けていくためにも、私は補給金を下げるべきでない、絶対に引き下げないということを求めます。いかがでしょうか。
○森山国務大臣
畠山委員にお答えをいたします。
加工原料乳の生産者補給金については、上げるとか下げるとかということを前提に金額を決めるわけではありません。先生御承知のとおり、ルールによって決めさせていただくということでございますので、ここはしっかり守らせていただきたいというふうに思っております。
いろいろな対策も含めて、酪農家の皆さんが意欲を持って再生産に取り組んでいただけるようにするということは当然のことであろうと考えております。
○畠山委員
算定式のことについても含めて、少しそれで提案したいと思うんですよね。
酪肉近の「まえがき」でも、「生産基盤の弱体化により、」中略ですが、「このような状態を放置すれば、今後の酪農及び肉用牛生産の持続的な発展に支障が生じかねない。」と書いています。農水省としても、生産基盤が崩壊寸前だという認識がありますよね。
そこで、算定式はもちろん承知はしているんですが、酪農、畜産をどう支えるかという点では、私は維持が必要だと思っていますし、率直な議論をし合いたいと思っています。
独立行政法人の農畜産業振興機構が出している年報畜産二〇一五というのをきょう私は持ってきたんですが、これを読んだんですよ。それで、外国の政策にも学び合いたいと思って、少し紹介します。
例えば、豪州は一戸当たりの経産牛飼養頭数は二〇一四年で二百六十八頭、ニュージーランドは一戸当たり同じく四百十三頭。一頭当たりの乳量は、豪州で年 間五千四百六十七リットル、ニュージーランドでは四千百九十六リットルです。もちろん確かに大規模ですし、両国とも価格支持政策がないんですね。
しかし、広大な草地での放牧中心ということでコストが安く済んでいるということでもあり、輸出産業としての強みがあるということは理解ができます。
それで、この機構の年報畜産二〇一五は、それ以外にもEUですとか各国のものも載っています。
EUでは、国によってばらつきはもちろんありますが、最大のデンマークで一戸当たり飼養頭数は、二〇一〇年ですが、百九頭。平均では十三・四頭。そし て、一頭当たりの乳量が、これは単位が違いますが、デンマークで八千六百六十キログラム。平均で六千五十七キログラムです。
日本が今大体一頭当たり八千から九千程度だと思いますから、豪州やニュージーランドほどEUは農地が広くなく、日本に近い規模ということは言えるだろうと思います。
そして、先ほど豪州やニュージーランドには価格支持政策はないと言いましたけれども、EUの価格や所得の下支えについてここに詳しく書いているんですね。
バター及び脱脂粉乳の介入買い入れ、あるいは大幅な価格下落があった場合の民間在庫の補助、肉牛などは、繁殖雌牛奨励金、屠畜奨励金、雄牛や去勢牛を飼養する生産者への特別奨励金などなどの直接支払いが数多くあります。
EUでも規模の拡大はもちろん進んでいますが、経営基盤を強化する独自の施策があります。ヨーロッパは、国民、消費者が自国の農産物を守り、食べるという風土があって、税金の投入にも寛容的といいますか国民的合意があるということは背景にはあろうかとは思います。
しかし、そこで、日本はどうするかですが、酪肉近でも放牧の推進は掲げています。それ自体は必要なことかもと思います。しかし、豪州やニュージーランド に比べたら、北海道とはいえ農地は少ないわけで、コスト低減にも限界が生じると思います。そこで補給金の制度が、当初は不足払い制度としての意義を持っ て、家族経営はもちろん、大規模経営も支える役割を果たしてきたのではなかったのでしょうか。ここ一、二年は、業界の懸命の努力の反映がありまして乳価も よくて、そして補給金の支えもあって一息ついているというのが実態だと思うんですよね。
そこで、大臣に伺います。
もちろん、EUに全てをまねる必要はないとは思っています。しかし、本当に経営基盤を強化するのであるならば、今例で挙げたような価格や所得を支えてい くための仕組みの構築は必要ではないかと思うんです。その中に、補給金の算定式については、いろいろ変更などの議論も含めて、考える時期にあるのではない かというふうに思いますが、その検討について、大臣、どのようにお考えになりますか。
○森山国務大臣
酪農の施策というのは、それぞれの国の酪農の発展の歴史によって大きく違うんだろうなというふうに思っております。例え ば、飲用主体なのか、あるいは乳製品が主体なのかということもあるでしょうし、そこの国が輸入国であるのか輸出国であるのかということ等もあるのだろうと いうふうに思っております。
日本においても、北海道と本州の方はまた少し違いますので、そういう意味では、加工原料乳補給金制度というのは、どちらかというと乳製品向けの生乳の主 産地である北海道と、飲用向けの生乳の主産地である都府県の特徴を維持しつつ、全国の生乳需給の安定と酪農経営の安定を図るという、我が国の実情に適した 制度であるということは、先生と私は意見が一致するのではないかなというふうに思います。
ただ、いろいろな変化がありますので、補給金制度についてどう考えるかというのは少し勉強をさせていただきたいというふうに思っておりますし、TPP対 策におきましてもいろいろな対策を出してまいりましたし、生クリーム等についても対象にするということにいたしておりまして、これはいろいろなデータ等の 関係もありまして二十八年からは無理でございますので、何とか二十九年には間に合わせて仕組みをつくっていって、酪農家の皆さんが安心をして再生産に取り 組んでいただけるようなことを頑張っていかなきゃいけないな、こう考えております。
○畠山委員
TPPのことも含めて、とりわけ畜産、酪農にかかわる方々は非常に不安、心配をしていますし、本委員会も含めた議論を注視して いると思うんですよね。先ほど私述べましたけれども、この間、子牛の価格や業界の努力などで一息ついているという状況がありつつも、しかし、ここで下がっ ていったらどうなるかということの不安は、もちろん畑作にしてもお米をつくっている方もそうなんですが、さらに心配や不安の度合いも大きいだろうというふ うに思うんです。
先日、調査で北海道の別海町へ行きました。この十年間で百五十六戸が離農したといいます。町は酪農研修牧場をつくって新規就農者を育てる努力をしてきていますが、年三から四戸のペースで、離農数に全然追いついていないというお話を伺いました。
規模を拡大してきた農家も離農をされていますので、その後の農地をどう確保するかということでも苦労があるというお話だったんですね。適切な規模で適切 な経営が進められるには、価格の安定や所得の保障ということがどうしても必要になると思いますし、その意味では、今、補給金にかかわる新たな検討なども含 めて求めたいと思います。
加えて、酪農、畜産だけではありませんが、団塊世代以上の方が多くて、間もなく年金をもらう年となれば、このTPPを機に離農を考えるという方もいらっしゃると聞きます。
新規就農などの支援策や畜産クラスターを、規模拡大を要件としないで柔軟な対応をするということも重ねて要求したいと思います。
それで、後半に、TPPのことにかかわって質問します。
先日の連合審査で、私は、影響試算が出ていないもとで、何を根拠に対策と補正予算の検討をしたんですかと甘利大臣に質問しました。甘利大臣は、対策とい うよりは、いずれにしても待ったなしの必要な政策でありまして、いわゆる影響試算を前提にするものではないと答弁しました。政策大綱は影響試算を前提とし ていないと読める重要な答弁です。
私がその後に、政策大綱の中にある「経営安定・安定供給のための備え(重要五品目関連)」のことについて、これはTPP前提でないのかと森山大臣に質問 したことに対して、大臣からは、米の備蓄やマルキン拡充はTPP協定の発効に合わせて措置することが適当と答弁されました。続けて、その後の答弁にも、 TPP協定の発効に合わせて措置する対策を明らかにすることは政府として当然のことと答えています。
甘利大臣は、政策だから影響試算を前提としないと述べました。森山大臣の答弁を信じれば、対策ということであるならば、影響試算があるということになるのでしょうか。
先ほどからの議論の中で、年内に出すということを内閣府は言っておりましたし、農水省もそれに合わせてということは先ほどの答弁にもありましたが、私が 前回に聞いたその質問で、大臣が何に基づいてそれでは対策を検討したのか、その影響試算というものがあるのかないのか、もう一度確認したい。
影響試算をもとにして対策をしたということなんでしょうか。
○森山国務大臣
甘利大臣と私が申し上げていることにはそごはないのだろうと思っております。
TPP大筋合意がなされましたので、どういう方向性になるなということはよくわかっているわけでございますから、農家の皆さんの、現場の皆さんの不安を 取り除くために、急いでやらなければならない経営安定対策というのはこういうものですよ、こういうことをしっかりやるんですということをお示しさせていた だいているわけでありますし、また、そのほかのことでも、どういうことをやるというのは、来年の秋までにも、またいろいろな議論をいただいて、決めさせて いただくということでございまして、二段階になっておりまして、当面、はっきりしていることは急いでやろう、こういうふうに御理解をいただければいいので はないかと考えております。
○畠山委員
二段階というのは、先ほど影響試算のことについて質問したときに、これからまだ数字が動いているような答弁と私は理解したんですけれども、それとは前の段階に数字が一定確定したものに基づいて対策というふうなことを考えたと理解していいんでしょうか。
○森山国務大臣
全ての数字がコンクリートされてから対策をやるということでは、やはり現場の皆さんの不安というのは募るだろうというふう に思いますので、方向性としてははっきりしているわけですから、それに対応できる対策というのは政策大綱に基づいて方針を決めさせていただいて、補正予算 で対応できるものはそれでしっかりやっていくことによって、現場の皆さんの不安というものを和らげることができるのではないか、そんな思いでおります。
○畠山委員
方向性で出したということであるならば、例えばマルキンについても、これは長年の関係する皆さんの要望が強く出されていたもの でしたよね。そうであるならば、政策大綱に書いているようなTPP発効に合わせてとせずに措置をするべきなのではないのでしょうか。大臣、いかがですか。
○森山国務大臣
そういう御意見もあることは承知をいたしておりますが、まだTPPが発効しているわけではありませんので、発効を待ってやるというのが方針でございますので、その方針にのっとってやらせていただきたいと考えております。
○畠山委員
繰り返しで申しわけありませんけれども、政策として、方向性として必要なことだと先ほど御答弁がありました。ということは、TPPであろうがなかろうが、これは必要なことだと私は思うんですよ。
これまでこの委員会でも、酪農、畜産にかかわってはさまざまな議論があって、マルキンの必要性は、先ほど委員からありましたけれども、そもそも緊急のキ ンですから、それだけ求められてきた事業であるというならば、TPP発効を待たずして進めていく必要があると思いますが、もう一度答弁ください。
○森山国務大臣
今すぐ関税が下がるわけではありませんので、やはりTPPが発効した時点でしっかり対応ができる制度をつくっておくということが大事なことだというふうに思っておりますので、そこはぜひ御理解をいただきたいと思います。
○畠山委員
ただ、影響試算などをもとにした対策ということの順番については、先ほど別の委員からも質問があったように、それでこそ対策の 本来の意義があると思うんです。それとは別に、大臣が先ほど話されたように、これまでに必要なことを合わせた方向性の趣旨として出されたものだというので あるならば、TPP発効を待たずして実施する必要があるということを重ねて要求したいと思います。
それで、同じく先日の連合審査で、私は、TPPのテキストを甘利大臣は読んだんですかという質問をしたことに対し、内容については、それぞれ所管が英文 で全部読んでおります、所管ごとに概要の説明を私が受けておると答弁しました。甘利大臣に聞きたいことはあるんですが、きょうは森山大臣に伺います。
確認ですけれども、森山大臣はTPPのテキストや交換文書はもちろん読まれていますね。
○森山国務大臣
一通り目を通しております。
○畠山委員
それでは、第二章の四条「関税の撤廃」と、十七条「物品の貿易に関する小委員会」については、これも御存じですね。
○森山国務大臣
承知をしているつもりでおります。
○畠山委員
今手元にないからすぐ出ないかと思いますが、それなら事務方でも結構ですが、この十七条の小委員会の機能について、アルファベット(a)、(b)、(c)とある(a)項で、何について協議すると書かれていますか。答えられる方はいますか。
○森山国務大臣
関税の撤廃時期の繰り上げについて協議をするという規定が二章の四条ではないかと思っております。それはどこでやるかとい うことが二章の十七条で、小委員会で取り扱うということにつながりますので、撤廃時期の繰り上げについて協議をするということがこの小委員会の役割ではな いかと理解しております。
○畠山委員
資料の二枚目を開いてごらんになってください。TPPはまだ正文の日本語訳がありませんので、私の事務所の責任のもとで翻訳したものが左側にあります。正文の翻訳がどうなるかわかりませんが、そういう趣旨のものと御理解ください。
そこでは、今大臣が答弁されたように、四条の「関税の撤廃」は、3のところで、線を引いているところですが、「附属文書2D(関税撤廃)に記載された関 税撤廃時期の繰上げについて検討するため協議しなければならない。」同じく十七条の(a)は、「本協定の下での関税撤廃時期の繰上げについて、」「協議す ることなどを通じて、締約国間で物品に関する貿易を促進すること」とあります。
この小委員会で、関税撤廃の品目はさまざま重要五品目の中を含めてありましたけれども、それらどの物品もここで協議される可能性は排除されていませんね。いかがでしょうか。
○森山国務大臣
この協議規定は、協議の対象は関税を撤廃する品目だけで、関税を撤廃しない品目は対象外であるというふうに理解をしております。また、協議が調わなければ約束内容の変更は必要がないという性格のものであると思います。
○畠山委員
もちろん、関税が撤廃時期のということになりますので、撤廃がなっているものの前倒しというか繰り上げ、英文ではアクセルレーティングと書いていたかと思うんですけれども、そういうことになろうかと思うんです。
それで、協議が調わなければというふうに言いました。これは、これまでの日豪EPAですとか、さまざまな同じような議論が、EPA、FTAにも同じよう に小委員会の項目があるので、国会でも議論されていて、少し調べたんですけれども、今大臣がおっしゃったように、協議をしなければとか合意がなければしな いということは一貫した話にはなっているわけですよ。もちろん、それは合意しなければ話が進まないのは当然でして、本当に合意しないで頑張れるのかどうか ということが問われてくるわけです。
ただ、今回のTPPの小委員会というのは、例えば日豪EPAなどと比べても、この関税撤廃時期の繰り上げについては表現が異なる、極めて機能が明確に書 かれた、目的のはっきりした小委員会だということを私はきょう取り上げたいんです。日豪EPA以上になっていると思います。
先ほどの資料の右側に、日豪EPAに同じく関係する項目をそれぞれ並べました。日豪EPAは、外務省のホームページですから、確定している和文のテキストとなります。
日豪EPAをごらんください。二十条の「市場アクセス及び競争力の保護に関する見直し」のところで、これも同じく線を引いている箇所の前後になります が、「当該見直しは、例えば、より迅速な関税の引下げ又は撤廃、」云々かんぬんとなり、「への対処等の措置を通じて、市場アクセスの条件を改善する観点か ら行われる。」日豪EPAについては、関税撤廃の時期の、ここは「迅速な」という表現にしていますけれども、これについては「例えば、」という例示扱いに なっているんですね。
小委員会について、二十一条をごらんください。その(b)項では、線を引いているところです、「両締約国間の物品の貿易を促進すること」、これが小委員 会の任務として書かれています。その後の括弧書きで、「(この協定に基づく関税の更なる自由化及び関税の撤廃時期の繰上げに関する協議による促進を含 む。)。」つまり、日豪EPAの小委員会は括弧づきで、それ以前の、前のものは一般的な規定にとどまっているということになるのではないか。
それに比べてTPPはどうか。そこで私が先ほど指摘した内容になるわけです。改めて見れば、四条「関税の撤廃」では、附属文書に記載された関税撤廃時期 の繰り上げについて検討するため協議しなければならないと、例えばではなく、これがもう明確な目的となっています。そして、同じく小委員会についても、 (a)項で、本協定のもとでの関税撤廃時期の繰り上げについて、協議することなどを通じて貿易を促進すると明確です。
このように、日豪EPAと比較しても、TPPというのは、関税撤廃された品目をさらに繰り上げて、早めていくことが盛り込まれている、そういうレールは敷かれているのではないかというふうに思うんです。
そこで、大臣は先ほどこの章のことを承知されていると答弁されました。この内容も含めて承知していたのか、承知した上で国会決議も守れたと認識しているのか。そうであるなら、守れたという根拠をぜひ示していただきたい。いかがでしょうか。
○森山国務大臣
私は、国会決議は過去に答弁をしたとおりでございますけれども、日豪EPAは日本と豪州の二国間のことであり、TPPは十 二カ国、複数国家のことでありますから、それぞれ全く別の貿易交渉であるというふうに理解をいたしております。その結果、当然のこととして、内容が異なる ことはあると考えます。
○畠山委員
それは、もちろん違う条約ですから、違うことが生まれるのは当たり前の話でありまして、今言ったようなことを承知していたのかということは、それでは、いかがですか。改めて確認します。
○森山国務大臣
承知しております。
○畠山委員
それでは、これを承知した上で、国会決議は守られているという判断でよろしいんですね。
○森山国務大臣
私が今の立場で決議が守れたかどうかということを申し上げる立場にないことは御理解をいただいて、それは国会がお決めにな ることでございますから、そう御理解をいただきたいと思いますし、協議は、協議が調わなければ意味がないわけでございますので、そこはぜひ御理解をいただ きたいと思います。
○畠山委員
再協議などは七年後ということなども言われて、ただ、それ以前に、このようなレールが敷かれている事実のもとで対策をすると言って、農家が信用できるかどうか。
ある農協組合長から私は言われました。国会決議との整合性は徹底的に審議してくれ。当然の要求だろうというふうに思います。ですから、概要、本当にわず かなページですよ。概要だけではやはりだめなんですよ。全文を和文で、日本語文で出していただく。影響試算もちゃんと出す。今まで、交渉中だから情報が出 せないと言ってきたわけですから、今必要な情報を出さずしていつ出すのかということだと思います。
重ねて、今、農家の不安がかき立てられている状況を払拭していくと重ねて言うのであるならば、これらの要求にも応えていただきたいことを述べて、質問を終わります。

第189回国会 内閣委員会農林水産委員会連合審査会 第2号  平成二十七年十二月三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
TPPの大筋合意が発表されて二カ月近くたちますが、まだ国会には何の報告もありません。一方で、政策大綱が発表され、補正予算まで検討されている中 で、憲法の定めに基づいて野党から臨時国会開催を要求したにもかかわらず、それに政府・与党は応じようとしてきませんでした。
国民の負託を受けた私たち国会議員の責務と、最高法規である憲法の定めを何だと思っているんでしょうか。この場からも改めて臨時国会の開催を要求いたします。
TPPは、批准したわけではもちろんなく、また、既成事実のように進めるということも許されません。日本共産党はこれまで、TPP交渉からの撤退を要求してきました。それは、日本の経済主権や食料主権が脅かされるということを理由にしてのものでした。
資料をごらんください。一枚目ですが、これは内閣府による二〇一三年三月十五日の試算で、これはもちろん全て関税撤廃という前提のものでありましたが、 そのもとでは、農林水産物の生産額が三兆円も減少し、農業の多面的機能の喪失は一兆六千億円に上ると示されました。このような試算をもとにして、これまで TPPの論議をしてきたのではなかったのでしょうか。しかし、今回はまだTPPによる影響試算は出されておりません。限定的などの言葉がありますが、それ では農家も、理解も納得もできません。
初めに甘利大臣に伺います。政策大綱や対策予算がこういうふうに決められるという状況の中で、しかし、今言ったように影響試算も出ていないし、私たちに は薄っぺらな概要ということだけでは、全然その根拠がわかりません。概要のみで全容が把握できないで、そんな国会審議でいいんでしょうか。
審議の大前提として、全文をまず日本語訳として出すべきであることを要求したい。そして、何を根拠にして対策と補正予算などの検討がされてきたのか、そ の根拠を示していただきたいし、甘利大臣、結局、全文は英語で読んだんですか、日本語で読んだんですか。あわせてお聞きします。
○甘利国務大臣
内容については、それぞれ所管が英文で全部読んでおります。そして、所管ごとに概要の説明を私が受けておるということです。
今いろいろ、法的整合性とか、各国が確認作業を統合してやっております。そういう過程で、概要で出せるものは出していこうと。基本はこの協定の中で言わ れている国の言葉で行っていくということになっているわけでありますから、その中で日本の作業がどのぐらい進められるかということだというふうに思いま す。
それから、TPP協定の大筋合意後。今、署名に向けて作業が進んでいる中で、総合的なTPP関連政策大綱というものを打ち出したわけであります。これ は、大筋合意後、各地で説明会を開いております。その説明会を開催しますと、まず、中小企業の方々から、TPPを活用して海外展開の準備を始めたいと。 TPPの発効というのは、まだ、署名後、国会手続を終えてですから、巷間言われているのは一年半とか二年かかってしまうかもしらぬということを言われてい ますけれども、その前から準備することが必要であるということ。それから、農林水産業につきましても、体質強化に向けた施策を早期に示してほしいと。それ が現場から大分寄せられているわけであります。
それに応える必要がありますからこの大綱を取りまとめたところでありまして、これは、実際に影響を受けて補填をすべき必要性というのは、具体的な動きが 始まるのはまだ先でありますけれども、現時点で、その政策に沿って必要な施策というものを明らかにしたものであります。これは、対策というよりも政策とい うことの御理解をいただきたいと思います。
そして、中小企業等の海外展開支援、それから国内産業の生産性向上、それからさらには農業の成長産業化などについては、申し上げたように、対策というよ りは、いずれにしても待ったなしで必要な政策でありまして、いわゆる影響試算を前提にするものではないということであります。
なお、農林水産業につきましては、政策大綱の検討過程において、農産品等への影響についての農林水産省による分析結果を提示してきておりまして、それを踏まえつつ必要な政策の検討を行ってきたところでございます。
○畠山委員
政策大綱が対策でなくて政策だということなんですか。端的にもう一度確認します。
○甘利国務大臣
対策というのは、具体的に、その政策を受けて必要な施策を検討して、それを予算化していくわけです。ですから、それは予算 編成過程の中でどういう政策が必要かということを示しているわけです。その政策をとっていくためにはどういう施策が必要で、それが予算に今年度はどう反映 していくか、いや、この施策は今すぐやるわけではないからもう少し先だとか、この施策は強化策だから今から始めようというのが予算編成過程で決まっていく わけです。
今から全予算をいきなりとって、使わないでずっと置いておくというわけにはいきませんから、タイムスケジュールと合わせて、向かっていくべき方向性を具体的な施策にして、それを予算化していくという手順をとっていくということです。
○畠山委員
ちょっと角度を変えて、では中身で確認します。それでは、これは森山大臣に伺います。
政策大綱の中にも、「経営安定・安定供給のための備え」という項目があります。経営安定にそれで万全を期すとあります。しかし、この備えのところは、協定発効に合わせて措置を講ずるというふうにあります。
TPP前提ですよね。それでは、協定が発効しなければ措置しないということになるんですか。どうなんですか。
○森山国務大臣
畠山委員にお答えをいたします。
大綱に掲げてあります「経営安定・安定供給のための備え」につきましては、一つは、主食用米の需要、価格に与える影響を遮断するために、国別枠輸入枠に 相当する国産米の政府備蓄米としての買い入れが一つあります。もう一つは、牛や豚のマルキンを拡充していくという措置を講ずることとされております。これ らは、TPP発効に伴い、関税削減等への備えであることから、TPP協定の発効に合わせて措置することが適当ではないかというふうに考えております。
なお、協定の署名及び発効に向けて、各国が国内の支持を取りつけて、必要な国内手続を速やかに進めることにつきましては、各国の首脳間でも確認がされて いるところでありますので、TPP協定の早期発効に向けて、政府としてできるだけ早く国会の承認をいただけるように努力をしていくこととしておりまして、 TPP協定の発効に合わせて措置する対策を明らかにすることは、政府として当然のことではないかと思っております。
○畠山委員
いや、わからないですよ。
ちょっともう一度聞きますよ。
それでは、マルキンの法制化ですとか、これは農家が本当に前々から望んでいたことは、大臣御存じのことですよね。TPPがあろうがなかろうが、農家の支援は大事だということをずっと農水委員会では議論してきて、これはTPPをやらなくてもやるべきことですよ。
それなのに、協定発効に合わせて措置を講ずるなら、協定発効しなかったらマルキンの法制化とかはしないということになるんですか。
○森山国務大臣
先ほども申し上げましたけれども、協定の発効に伴いまして、関税削減等への備えとして法制化等についての考え方が示されているところでございますので、現段階におきましては、TPP協定の発効に伴う措置として考えているということでございます。
○畠山委員
これはTPP前提ですよ。それでは今の農家の苦しみに応えていないじゃないですか。
日本の農家は、これまでも農産物の輸入拡大の波に耐えてきて、コスト削減も大規模化も、ずっと政府の示したとおりやってきた方々がたくさんいらっしゃい ます。そして、生産仲間と相談しながら地域を支えた方々もいる。ウルグアイ・ラウンド、WTOなどの波もこうやって越えてきた農家から今、大きな不安や批 判が聞こえているじゃありませんか。
根拠も、対策はどこから示してきたかわからない、そして日本語訳もまだはっきり出ていない。委員長、これは、連合審査ですけれども、それぞれの委員会ということになると思いますが、日本語訳の提出をお願いしたいというふうに思います。
○田村(憲)委員長代理
ただいまの件は理事会で協議をいたします。
○畠山委員
それで、重要なことは、農業への打撃はTPPで終わらないということになります。
このTPPの後に、これは甘利大臣、言い続けていますけれども、RCEPとか、FTAAP、日中韓FTA、日・EU・EPAなどなど、それから、TPP に新たな国が加わることも歓迎するという中に、今後、これらの交渉についてはTPPのルールや基準を標準とするという趣旨の話をされてきたというふうに思 います。
TPPのルールを標準としていくのなら、さらに、今回と同じように、日本の農林水産業に危機的な状況が生まれ得るという可能性はあると思うんですが、甘利大臣、いかがですか。
○甘利国務大臣
TPPというのは、一つの側面として、チェーンリアクションの側面がある。つまり、連鎖反応を起こすということですね。
今、経済連携というのはどうも停滞しています。WTOはもうスタックしていますし、RCEPも延々として続いている、FTAAPはもう何年やっているん だろうと。それは、多くの国が集まると、それぞれの主張に部分的に合わせていくと、結局、自由化レベルは極めて低くなってしまう、WTOと大して変わらな いじゃないか、だったら急ぐ必要がないとか、いや、こういう、自由化をもっと上げろという強い主張があると反対する国があるというので、なかなか難しいん ですね。
TPPはルールのたたき台になるということを申し上げております。TPPのルール、まあ、関税は、多国間でも、二国間を積み上げていくということになり ますし、そして基本的な部分は全面展開をしていくというやり方をやるわけですね。それがどこまでそれ以外の国に参加してもらえるかということはあるんです けれども、それは必ず全く全ての国が同じじゃなくて、国ごとに事情は違う部分も確かにTPPはあるんです。それはあると思います。
ただ、ルールについては、投資の透明性とか、知財をちゃんと守るとか、これは絶対にとった方がいいものです。途上国においてそういうルールが守られな い、模倣品、海賊版が横行して、それを訴えても取り締まるルールがないとか、日本の知財コンテンツが本当に被害を受けているということですから、これはそ のとおりやった方がいいと思うんです。
投資のルールでも、先ほど来申し上げているように、技術を移転しろと強要されたり、あるいはソースコードを開示しろと。そんなことをしたら、ソフトウエ アの企業はもう終わりですよ。そういう要求をされる、それができなくなる。これをよそに展開していくということは絶対に有利なんですね。
TPPの中でつくったルールというのは、十二カ国が承知をしてつくっている、十二カ国にとって受け入れやすい、そして自由度の高いルールなんです。それ をよそに展開していくということは、我々の庭先のルールを展開していく面積が広まるということですから、絶対にいいことなんですよ。そういう意味では、こ のTPPのルール、あるいは関税の方針を理解して入ってくる人はそれに合わせていただくわけですから、我々の庭先がどんどん広がっていくということは十二 カ国にとっても非常にいいことであろうというふうに思っています。
○畠山委員
私は農林漁業に影響があるかということを質問したんですから、それに正面からお答えいただきたい。
攻めの農林漁業で一兆円の目標を掲げて前倒しで進めるということなども言ってきました。今、正面からお答えになりませんでしたけれども、否定をしなかったということじゃないんですか。
資料の二枚目をごらんください。その目標一兆円でも、攻めの農林漁業にしても、幻想であるんじゃないか。
例えば、みそ、しょうゆ一千六百億円を筆頭にして、清涼飲料水、菓子で一千四百億円、即席麺、レトルトで二千億円と、これだけで半分を占めます。みそ、 しょうゆの原料となる大豆の国内自給率はわずか今七%です。清涼飲料水や即席麺などがどのように国内農家の経営に関係するんでしょうか。今でも原料は外国 産農産物を使って加工されているという状況もあります。これで農家の所得がどうして上がるのか、全く合理的な説明はされていない。攻めの農林漁業なども含 めて、そのような形で対策をすることに幻想があると思いますよ。
それで、ちょっと時間がありませんので、甘利大臣にこのことも伺いたい。
先日、十一月二十四日の第十九回経済財政諮問会議の場で、希望を生み出す強い経済実現に向けた緊急対応策(案)というのを大臣の名前で出されました。そ の中で、「攻めの農業の構築」という中に、海外輸出はチャンスだから、農地の集約化、農業の企業経営化、六次産業化、農林水産物の付加価値向上などにより 農業の生産性を高める政策を進めるとあります。
日本のように中山間地が多くて手間がかかる中で、食料生産と地域社会を支えてきたのは家族経営。そして、私が選出されている北海道も一戸当たりの規模は大きいわけですが、その北海道といえども主力は家族経営です。
先日訪れた北海道の酪農家はこう言っていました。家族経営の意義を政府は理解すべきだ、大規模にしたら、その農家がやめたときに農地を引き継げない、機 械も大規模にしないといけないし、それだけ負債も大きくなるからリスクも高まる、小規模、中規模の家族経営の方が天変地異にも強いんだ、こういう農家こそ 励ます政策をしてくれれば生産の意欲を持って取り組めるという声です。
今、農家の経営が大変だ、所得を上げることが必要だと言うのならば、こういう声に応えるべきです。
そこで、甘利大臣、希望を生み出す強い経済というのであるならば、農業分野では、今言ったような方向に進むべきだと私は思います。しかし、この緊急対応 策のように、家族経営をやめて企業型にすべきだと言うのか、あるいは企業参入もすべきだというふうに甘利大臣は考えるんでしょうか。強い経済の実現のため には、家族経営は必要ないとでも言うのでしょうか。
○甘利国務大臣
日本の人口は、残念ながら減っていきます。国内だけに頼れば消費力は減っていくわけです。現に、ガット・ウルグアイ・ラウ ンド以降、数兆円の対策を投じましたけれども、生産額は十兆から八兆に減りました。手をこまねいているんですか。家族経営といえども、例えば、中小企業、 零細企業はどうしますか。いいものだけをつくっていれば誰かが売ってくれる、そんなことはないと思います。
ここは経営感覚で、どういう層を狙っていこうか、うちはグローバルニッチだとか、そういう経営計画があるんです。農業産品に戦う力がなければそれは言え ないかもしれません。しかし、日本の農産品は、海外での評価というのは非常に高いです。もっと自信を持って、農家に、農業に経営感覚を持ち込むことが大事 なんです。
随分前ですけれども、九州経済連合会の麻生会長、麻生セメントの会長が私のところに来られました。
何の用で来られたかといったら、九州経済連合会は、九州の農家と連携をしてたしか香港に売り込みをしていますと。前回は一生懸命やったけれども売れ残り ました、今回は全部はけました、年契約もとれました、売った作物は同じものです、売りに行った人も同じ人です、何が違うと思いますかと私は聞かれました。
何が違うんですかと。前回は、売り手百人、買い手、バイヤー二人、ですから買い手市場で買いたたかれました、売れ残りました。一計を案じて、経済連合会 が支援するんだからということで、根回しをしてバイヤーの数をうんとふやしました。そうしましたら、売り手対買い手がタイになりました、取り合いになりま した、年契約もとりました。売っているものは同じものです、売っている人も同じ人です。違いはそこです、バイヤーをふやした、これは商売人の感覚なんだと 言われたんです。私は非常に勉強になりました。
つまり、私が言いたいのは、日本の農家はいいものをつくっているんです、評価も高いんです、安全性の信用もあります、ただ、売り方を、同じ価格帯で、安 いところの価格帯で競って、規模を拡大しないと価格で勝てない、別のところで勝負したらいいじゃないですか。マーケティングでそこの層を狙って、そういう 感覚が大事だから。だから、家族経営は大事ですよ。経営感覚を持ち込みましょうよ、企業だったら、中小企業だったらどうするだろうかと。それを助ける体制 を持っていかない限り、国内のシュリンクしている市場で、あなたが行きなさい、後を継ぐ人はいますか。
我々は、後継者に夢を持たせたいんですよ、自信を持たせたいんですよ。だからやっているんです。
○畠山委員
ことし農林水産委員会で農協法を議論したときに、この家族経営の問題について私もよく議論させていただきました。自発的に六次産業化を進められている農家の方ももちろんいらっしゃいます。しかし、もちろん全ての農家ができるわけでもありません。
ある農家の方から話を聞きました。その地域では本当に先進的で、経産牛を百頭ぐらい持って、本当に地域の商業モデルだというふうに言われている酪農家の方は、ビジネスと百姓は違うんだと明確に言われました。なぜか。
森山大臣に伺いたいと思うんです。
自由貿易とはいえ、国民の命と生活を守る食の分野まで不安定な状況に追い込むべきではないと私は思います。
資料の一枚目を、戻ってごらんください。
食料自給率との関係で、先ほど言ったように、この一枚目は、全てを関税撤廃し何の対策も講じないという当時の前提でも、カロリーベースで食料自給率は四 〇%当時から二七%に下がり、生産額ベースでも七〇%から五五%まで下がると試算しています。安い農産物の輸入拡大は自給率を下げることになると認めてき たわけです。
そこで、TPPでは、農産品二千三百二十八品目中千八百八十五品目の関税は撤廃されます。それでは、森山大臣、現状では食料自給率がどれくらい下がると想定されますか。
○森山国務大臣
自給率がどれぐらい下がるかというお尋ねでありますが、今それを予測することは難しいと思っております。今からいろいろな 対策をどう講じていくかということもありますので、それは自給率が大事なことはもう重々承知をしておりますから、自給率が下がることのないようにしっかり した対策をさせていただくということが大事であろうと思います。
○畠山委員
政府として目標を四五%に先日決定したわけですよね。
そこで、食料・農業・農村基本法を改めて見れば、第二条二項に「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を 有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」このように 書かれています。
森山大臣に伺います。
自給率を向上することが大事だと今、答弁されました。そうであるならば、この法律に反するような条約は結ぶべきではないと私は思いますが、そう思いませんか。
○森山国務大臣
結ぶべきではないという考え方には少し私は同意ができません。
基本法は大事でありますし、自給率を高めていくということは我々農林水産省に課せられた最も大事な課題だと思っておりますので、それに向けて政策をしっかりとつくり上げて、予算を獲得し、自給率を上げていくという努力を今後も真摯に続けさせていただきたいと思います。
○畠山委員
これまで食料自給率が下がった歴史を振り返れば、農産物輸入の拡大が反映して、それが符合してきたと私は思うんですよ。TPPというのは、結局この国をどうするかということにかかわると思います。
そこで、これは事務方で結構ですが、国連の世界人口白書二〇一三年版には、世界人口は二〇五〇年に九十六億人にまで達すると予測されていて、農水省も、 二〇五〇年における世界の食料需給見通しというのを出しています。世界全体の食料需要は五十年間でどれだけふえるのか、その規模について端的にお答えくだ さい。
○佐藤政府参考人
お答え申し上げます。
平成二十四年六月に公表いたしました二〇五〇年における世界の食料需給見通しでございますが、需要面で、世界の人口や経済成長、バイオ燃料の見通しを、供給面で、気候変動ですとか単収の増加、収穫面積の動向をそれぞれ勘案して予測をいたしました。
この予測では、世界人口が九十二億人に増加する中で、特に開発途上国ですとか中間国で食料需要が増加すると見通しておりまして、それに対応するため、世 界の食料生産を二〇五〇年には二〇〇〇年の一・六倍の六十九億トンまで引き上げることが必要という結果が得られております。
○畠山委員
森山大臣に改めて伺います。
このような国際情勢のもとで、基本法に書かれているとおり、世界の食料の需給及び貿易には不安定な要素を有しているということは認めますね。
○森山国務大臣
不安定な要素はそのとおりだろうと思いますが、そういうことにならないように対応をしっかりさせていただきたいと思います。
○畠山委員
先ほどの二〇五〇年における世界の食料需給見通しの結びにも、我が国として食料自給率の向上ということが必要だと書いてあります。自給率を下げるようなTPPなら、食料の安定供給という国の責任は果たせないということは強く指摘しておきたいと思います。
最後に、国会決議に関しても一言伺います。
国会決議では、重要五品目について、「引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」とあります。
米、小麦、脱脂粉乳、ホエー、バターなどの乳製品、てん菜糖などの糖類は、これまでのEPAにおいても除外以外の対応をしたことがありませんでした。除外としてきたのは、日本の食料を安定的に供給する上で必要なものだったという認識からだったのではないのでしょうか。
しかし、タリフラインで五百八十六品目中百七十四品目、三割の関税が撤廃されることになり、豚肉でも高価格部位は十年間で関税をゼロにするなど、国会決議を改めて読んでみても、どうしても決議違反だとしか私は思えません。
しかし、森山大臣は、就任会見で、今後の対策の必要性をつけ加えた上でもということですが、決議は守られたと述べました。私は理解できません。守られたという根拠を示してください。
○森山国務大臣
TPPにつきましては、国会決議を後ろ盾にして、しっかりした交渉がなされたと思っております。
農林水産品の総タリフラインは二千三百二十八ラインでありましたけれども、このうちの四百四十三ラインを関税撤廃の例外とすることができましたし、ま た、重要五品目を中心に、国家貿易制度や枠外税率の維持、関税割り当てやセーフガードの創設、長期の関税削減期間の確保等、有効な措置を認めさせることが できましたので、交渉の結果としては最善なものになったのではないかというふうに考えております。
一方、保秘義務がかかった交渉であったことからも、現場になお不安の声があることは私もよく承知をしています。
先般、総合的なTPP関連政策大綱がまとめられましたので、意欲のある農林水産業者が確実に再生産できるように、さらに将来に向けて希望を持って経営に 取り組めるように、交渉で獲得した措置とあわせて、政府全体で責任を持って万全の国内対策を講じてまいりたいと考えております。
最終的には国会で御審議をいただくことになりますけれども、政府としては、国会決議の趣旨に沿っているものと評価をしていただけると考えております。
○畠山委員
時間ですので終わりますが、JAグループ福岡が、先日の県大会で、重要五項目の関税維持を求めた国会決議を守っていないとの特 別決議を上げ、同じように、秋田の県大会でも、国会決議の内容を逸脱しているとの指摘の特別決議が上げられて、そういう思いは生産者にあふれています。
大筋合意はまだ決定ではもちろんありません。徹底的に議論するために、改めて臨時国会の開催を重ねて要求し、引き続き論戦に挑む決意を最後に表明して、私の質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第21号  平成二十七年九月二日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
関連はしますが、法案の本題に入る前に、北海道の日本海側で増加しているトドの漁業被害について一言伺いたいと思っています。
トドは、環境省版レッドリストにおいて絶滅危惧種2類に分類されてきました。しかし、個体数が増加傾向にありまして、二〇一二年の見直しで準絶滅危惧種にランクを下げました。
そこで、直近三年間のトドによる被害額と対策についてと、漁業資源の減少も同地域では続いてきまして、スケトウダラやニシンなどの資源量の傾向についても、あわせて一緒に伺いたいと思います。
○佐藤政府参考人
お答えいたします。
まず、トドの被害でございますが、主に北海道の日本海側におきまして、漁具の破損や漁獲物の食害等の漁業被害を及ぼしており、北海道庁によりますれば、 直近三カ年でございますが、平成二十三年度で十五億円、平成二十四年度で約十六億円、平成二十五年度で約二十億円の漁業被害が報告されておるところでござ いまして、二十六年度の被害額については現在取りまとめ中というふうに聞いているところでございます。
このようなトド漁業被害対策といたしましては、北海道の離島海域における駆除活動、あるいは強化刺し網の実証試験や定置網、底建て網の強化網の導入、あ るいは一斉に駆除するといったような効果的、効率的な追い払い手法や駆除手法の実証といった取り組みを支援しているところでございます。
また、先ほど御質問がございました資源との関係で、特にスケトウダラやニシンとの関係でございますが、国立研究開発法人水産総合研究センターが行った資源評価におきましては、スケトウダラ日本海北部系群及びニシンについては低位横ばいとなっております。
資源が低位となっている要因といたしましては、スケトウダラ日本海北部系群につきましては、水温の上昇が再生産に悪影響を及ぼしている可能性があるので はないか、またニシンにつきましては、長期的な資源変動の中で、現在、低位の状態にある可能性があることが指摘されております。
なお、トドの胃の内容物調査によりますと、スケトウダラはほとんど確認されておりませんが、ニシンについては確認されておるところでございます。ただし、これによりどの程度漁獲高が減少したかについては不明であるところでございます。
以上でございます。
○畠山委員
資源については、低位横ばい、長期的に見れば減少傾向というふうに言えると思うんですが、それとあわせて、今のいわゆるトドにおける漁業被害という二重の苦難ということを確認したいと思います。
こういう苦しい漁業経営の実態を前に、道庁などでも養殖などの特別対策が検討されていることです。現場に行って話も伺ってきたんですが、この後確認しま すけれども、採捕数はふやしてきて、だからハンターがもっと必要なんだけれども今も少ないとか、あるいは駆除にかかる資金ももちろんかかるということで、 これは先ほど出されているような対策でも盛り込まれているわけです。
ただ、そもそも資源をふやさなければいけないということで、一九九七年からニシンの資源増大に向けたプロジェクトが行われてきました。それによれば、二〇〇九年の報告書は次のように書いています。
これらの結果、二百万尾以上の種苗を生産できるようになり、また、研究結果に基づく初回産卵親魚の保護などの資源管理に関する取り組みなどが進められた ことにより、平成十五年には漁獲量が千二百トンを超える漁獲量を記録し、最近の二カ年では千トン前後の漁獲を続けるまでに復活したというふうにあります。
長く、なかなかとれなかったものが現場の努力と、後ほど触れる研究に関する努力が相まってここまで来たんだけれども、せっかくふやした資源がトドに食い荒らされたのでは納得もいかないという現場のお気持ちがあるわけです。
それでどうするかで、先ほど答弁があったような対策に、さらに種苗や放流にかかわる支援ですとか、そのためのセンター機能を現地につくるだとか、なかな か難しいんだという話でしたけれども、被害を受けた際の休漁補償であるとか、さらなる現場の声を受けとめた支援の拡充が必要というふうに考えますが、この 点はいかがでしょうか。
○佐藤政府参考人
お答えいたします。
今先生の方から御指摘がございましたように、トドの漁業被害対策につきましては、先ほど申し上げた従来の対策に加えまして、より効果的、効率的な対策の 実施を目的といたしまして、長距離音響発生装置を使用した追い払い、あるいは網囲いや箱わなによる捕獲等について実証を行うこととしており、今度の平成二 十八年度予算要求において拡充要求しているところでございます。
これらの取り組みを実施することで、トドによる漁業被害の軽減、防止をより一層図ってまいりたい、このように考えているところでございます。
○畠山委員
漁業者にとっては死活問題になってきている部分がありますので、さらに重ねて要望をしたいというふうに思います。
それで本題ですが、先ほど答弁の中にもありましたように、この被害などにかかわっても大きな力を発揮しているのが水産総合研究センターであります。北海道の北海道区水産研究所、札幌に視察に行ってきました。ニシンやサケの資源管理に重要な役割を果たしております。
それで、勉強させられたんですけれども、資源をどう調べるかという方法の一つに耳石を調べるというのがあるんですね。卵のときに、温度の変化でバーコー ドのようなマークをつけて放流して、回収した際にこの耳石をとって確認する、そういう気の遠くなるような積み重ねの上に資源管理の研究結果があるというこ とでありました。こういうように、ニシンやあるいはサケの放流、回遊、来遊の研究や、科学的な資源管理に貢献しているというのが水産総合研究センターであ ります。
ロシアで流し網漁禁止法案が可決されてしまいましたけれども、日ロの漁業合同委員会で、このセンターの力もあって、資源数の協議については、この調査に基づいて、共通見解を持てた部分もあったというふうに伺いました。
それで、水産のこのような機関と、今回のそのほか農業系の機関と、それぞれが固有の役割や研究領域を持ってきたというふうに思います。これらの独立行政法人が我が国の農林水産業の発展に果たしてきた役割についての認識を確認したいというふうに思います。
○あべ副大臣
委員にお答えいたします。
統合対象となる今回の六法人でございますが、農林水産大臣が定めました目標の達成に向けまして、自律的かつ効率的な業務運営を行うこととしておりまし て、農林水産省と連携いたしまして、委員がおっしゃった重要な研究開発また人材育成の面から、我が国の農林水産業の発展に大きな役割を果たしてきたと私ど もも考えているところでございます。
今後も、研究成果がもたらす技術革新、また将来の水産業を担う人材の育成を通じまして、攻めの農林水産業に貢献することが期待されておりまして、引き続きその役割は重要であるというふうに私どもも考えております。
○畠山委員
これまでの役割の重要性を確認いたします。
それを具体的な形でさらに確認していきたいんですが、研究が委託されている状況からも、それが改めてわかるんですね。
例えば、二〇一四年度、平成二十六年度で結構ですが、種苗管理センターの受託収入のうち、国から委託されたものというのはどれくらいを占めますでしょうか。
○櫻庭政府参考人
お答えを申し上げます。
種苗管理センターは、平成二十六年度におきまして、先ほどの受託収入は五千百万円でございます。
その内訳といたしましては、農林水産省からの委託事業として、登録品種の標本、DNA保存が五百万円、種苗病害検査手法の開発が四百万円、遺伝子組み換 え植物の緊急検査が百万円、また独法からということで、農業生物資源研究所からの委託事業として、遺伝資源の保存技術の開発が二百万円、同研究所のサブバ ンク、ジーンバンクのサブバンクといたしまして栄養繁殖植物の保存等が四千百万円という内訳になっております。
ただし、ここの種苗管理センターの事業の性格上、種苗管理センターは、受託収入以外にバレイショ及びサトウキビの原原種の配布、種苗検査手数料等の民間からの収入が二億二千三百万円あるところでございます。
○畠山委員
今後半に述べた原原種の配布価格については後ほど取り上げたいと思います。
受託収入にかかわっては、国からの、独立行政法人も含むとなりますが、委託は一〇〇%であります。
資料を配付していますので、ごらんください。
資料の下の段に、統合対象となる研究所などの受託収入で、国、これは独立行政法人を含むになっていますが、民間、その他などの割合を示した一覧表であります。
それぞれ、国からの委託を調べてパーセントの数字を示しておりますが、種苗管理センターで一〇〇%、農業・食品産業技術総合研究機構で九一・四%、農業 生物資源研究所で九七・六%、農業環境技術研究所九三・〇%、水産総合研究センター九五・九%、水産大学校は五八・四%と、おおむね九割を超えておりま す。現在でも、各機関が国の方から必要とされている証明だというふうに思います。
そこで、なぜ統合するのかということですが、統合することで研究結果が共用できるなどなどのシナジー効果が発揮されることが理由とされています。組織の 整理や統合というのは一般にあり得ることだというふうに私たちも考えます。問題はその効果や必然性だと思います。統合でシナジー効果が生まれるというな ら、もちろん限度はありますが、統合すればするほどシナジー効果が発揮されるのかということですから、中身はよく見なければならないと思います。
そこで、農業・食品産業技術総合研究機構は、これは資料の上の方にまとめておりますが、独立行政法人制度の発足以降、既に十六もの試験研究機関などと統 合されてきています。研究分野の融合が進んで、新たな成果も見られるという一方で、多様な分野の業務が加わることで組織管理が困難になりつつあるという指 摘も見られます。この指摘にどのように検討をされてきたのか、お答えください。
○西郷政府参考人
御指摘のように、農業・食品産業技術総合研究機構は累次統合を繰り返してきております。その際に、どのように組織運営の 効率化を図ったかということでございますけれども、要するに、いろいろな研究のコンポーネントを再編したり、統合したりとか、それとか、研究予算や人員等 のリソース配分の裁量権を集中することによりまして、機動的な組織運営を行ってきたわけでございます。
例えば平成十八年には、この先生の図にもございますけれども、農業・食品産業技術総合研究機構は、農業工学研究所、これは土地改良とかそういった技術の 研究所でございます、それから食品総合研究所、これは食品の研究所でございますが、これらと統合いたしまして、別々に行っていた、例えばサトウキビの残渣 からバイオエタノールをつくる技術など、いろいろな研究所の成果を融合したようなプロジェクトをつくったりという関係で、各研究所の壁を越えたような総合 的なプロジェクト研究も推進してきたところでございます。
これまで、こういったような統合の成果も上げてきておりますものですから、今回も、そのような統合のシナジーが得られますような対策を講じてまいりたいというふうに思っております。
○畠山委員
よくわからないんですね。
これだけにかかわらず、今回、種苗管理センターの統合についても、経緯を見ても、改めてこれは確認したいんですが、二〇〇七年の計画では種苗管理セン ターの統合相手は農業生物資源研究所と農業環境技術研究所、二〇一二年の計画では統合相手は家畜改良センター、そして、今回の統合相手は農業生物資源研究 所と農業環境技術研究所とこの機構と。
何でこんなふうに統合先が二転三転せざるを得なかったのか。変わるたびに、変えた理由が何かに記されているのか。公式な文書で何か示したものというのはあったんでしょうか。
○西郷政府参考人
御指摘のとおり、種苗管理センターにつきましては、平成十九年の閣議決定におきましては農業生物資源研究所、それと農業 環境技術研究所と統合することとされました。これは、先端的研究と種苗に関する知的財産の保護、活用を結びつけるという相乗効果を狙ったものでございま す。
今回の法案では、これに応用面での研究、普及の研究をやっております農業・食品産業技術総合研究機構を加えた四法人の統合となっておりまして、これは十九年の考え方に加えまして、研究成果を現場で早く普及するという観点を重視したものでございます。
一方、御指摘の平成二十四年の閣議決定では、種苗管理センターは家畜改良センターと統合し、それから農業・食品産業技術総合研究機構などは、農業研究四 法人で研究としてこれを統合するということとされておりました。これは、要するに、研究開発型同士の法人を統合する、あるいは家畜改良センターと種苗管理 センターのように非研究開発の技術のセンターを統合するという考え方に基づいたものと考えております。
このように、当時の、統合の全体の考え方の違いによりまして組み合わせに変更があったわけでございますけれども、いずれも、その当時、政策効果を最大化する意図をもって検討されたものというふうに認識しております。
なお、考え方が公表されているかというお尋ねでございますけれども、こういった検討経緯につきましては、内閣官房行政改革推進本部でいろいろな分科会がございますけれども、それでの検討経緯が議事録として公表されているところでございます。
○畠山委員
二転三転したことによって、該当機関から、ただ要望があったわけではないというふうには思うわけです。
それで、統合による二つの問題ということを指摘したいと思います。
一つは、職員や研究者の身分と労働環境、研究環境がどうなるかについては、先ほどからも繰り返し各委員から指摘がされたとおりであります。
一例ですが、例えば農業環境技術研究所では、二〇〇六年度、平成十八年度から二〇一四年度、平成二十六年度で、研究職員に占める任期付研究員の割合が、 これは質問しようと思っていましたが、時間の関係でこちらでもう言います、五・二%から九・八%へと約二倍になっている。また、水産総合研究センターで も、同様に三・一%から七・七%へと二・六倍になっております。それぞれによってもちろん数字のばらつきはありますが、研究職員全体が減る中で任期つきの 研究職員がふえて、非正規化が拡大しているのではないかというふうに思います。研究の安定には身分の安定が必要であることをまず訴えたい。
二つ目の問題、運営費交付金の削減の問題です。
発足当初から比べて、農業関係の二〇一四年度交付金は約二五%の削減、水産関係で同じく約一六%の削減となっています。そこで、節約のほかに、先ほども出ましたけれども、資金確保のさらなる努力が求められるようになりました。
そこで、種苗管理センターの、例えば北海道のバレイショ、原原種配布について、その価格が上がったというふうに思いますけれども、二〇一一年と現在で比べてどのように上がったか、お答えください。
○櫻庭政府参考人
お答え申し上げます。
平成二十二年十二月に閣議決定されました独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針の中で、バレイショの原原種の生産コストと配布価格に大きな乖離があるため、配布価格を引き上げることによって自己収入の拡大を図ることとされました。
種苗管理センターでは、本基本方針に基づきまして、農林水産省と協議の上、バレイショの原原種の配布価格を、平成二十二年の二十キロ当たり千七百七十円から、平成二十三年度に千八百円、平成二十五年度に二千七百七十円に改定したところでございます。
ただし、原原種から種芋になるまで二回増殖いたします。これは一回につき十倍になりますので、大体千円が百倍に増殖されることになりますので、農家にとっての負担という形で考えますと、二十キロ当たり十円の御負担をお願いしたということでございます。
○畠山委員
そうやって負担額が薄まるという話もお聞きはしましたが、ただ、いずれにしても、そのような形で受益者の方にしわ寄せが行かざるを得ないという、金額の問題でなく、そのようなことがどうしても起こらざるを得ないというふうに思うんですよ。
実際、そのように配布価格が一・五倍にもなって、当時、引き上げるときには北海道のJA関係なども回って話し合いを重ねたといいますから、相当な努力や御苦労をされたというふうに思うんです。
ほかにも、種苗管理センターは、茶原種の生産及び配布業務の廃止に伴った原種生産のための農場廃止等もありましたし、水産総合研究センターが、たしか二 〇〇八年だと思うんですが、原油高騰の影響があったときに、調査に出す船の油代を捻出するのにすごい苦労があったというんですね。国の機関だったら補正予 算で対応できるんだけれども、独立行政法人だからそれはできないで、当初の予算内でやってくれということで、かなり御苦労をされたとも聞きました。
こういう一層の苦労が強いられることがないか、業務の縮小や研究環境の後退が懸念されるというふうなことが心配されます。農水省として、その認識について伺いたいと思います。
○林国務大臣
今回の農研機構ほか三法人の統合、これは閣議決定で、独立行政法人改革等に関する基本方針に基づきまして、研究開発成果の最 大化を達成するために、基礎から応用まで一貫した研究推進体制の整備等を図る、こういうことでございまして、業務の縮小とか研究環境を後退させる、こうい うものではないというふうに考えております。
○畠山委員
やはりもともとのことについても、最後に一言伺いたいんですよ。
きょうは、総務省にも来てもらっております。
内閣官房行政改革推進本部の独法改革等に関する分科会ワーキンググループの議事録を読みました。農水省から一生懸命に研究の重要性を説明しています。
しかし、例えばワーキンググループの第四回で、名前はわかりませんが、ある委員から、受益者負担という考え方でそれなりに適正な出願料とか登録料とかを取るべきでないかと、交付金の削減を前提に受益者負担の方向を強めろという意見が出されておりました。
また、ワーキンググループの第二回では、シナジー効果の説明をさせられて、統合十二年でようやく実を結びつつあると農水省から説明をしたら、ある委員か らは、それでは遅いんだ、もうすぐにやってくださいというのが独法の使命あるいは御省の使命のように私は思いますという発言をされた委員もいるんですね。
現場の苦労や努力を理解していない意見なのではないかなと私は読んでいて思いました。
農作物の研究成果はすぐ出るんでしょうか。北海道の米だって、最近になって特Aランクをいただいていますけれども、コシホマレから優良品種となったきら ら三九七まで十九年かかっているんですよ。そこから今のゆめぴりかまで十五年さらにかかっているわけです。これが研究の世界だろうというふうに思うんです ね。交付金を減らして、研究者の身分も不安定な中で頑張っているのに、早く結果を出すということだけ迫るとは私は何事かというふうに思います。
そこで、今担当されている総務省に伺います。
今回の改革は、このような議論を踏まえた効率化や合理化を促進するものなのか。いや、それは違うんだ、目的はシナジー効果を発揮してもらうものだというのだったらば、必要な交付金の維持や研究者の身分を守ることが必要だと思いますが、いかがですか。
○長屋政府参考人
お答え申し上げます。
今回の改革につきましては、厳しい財政状況の中で、業務運営を効率化して、国民に対する説明責任を果たしていくという側面と、特に研究開発法人につきましては、その研究開発機能の最大化を目指すという両面がございまして、取り組んだものでございます。
具体的に紹介しますと、制度的改正の中では、これまで一律に規定におきまして規律していた仕組みを改めまして、法人を三類型にして、研究開発法人につい ては、その特性を踏まえまして、目標期間を長期化して状況を見ていくというようなこととか、あるいは、研究開発法人につきましては、法人の目的につきまし て研究開発成果の最大化であることを法律上明記して、中期目標等につきましてこれに関する事項を記載するなど、制度的改正部分でも組んでおりますし、ま た、運用も柔軟にしていくということで、研究開発法人としての特性がより発揮され得るようにしております。
そのような中で、今回、研究開発法人におきましては、改革の趣旨を踏まえまして、統合法人におきましては、統合効果を発揮しながら、法人の長のリーダー シップを発揮して、運営費交付金の確保などにつながるような成果を出していただく、こういったことが重要であると考えているところでございます。
○畠山委員
生産者の努力と研究者の努力が相まって、日本の農林水産業が発展してきた事実を改めて確認して、質問を終わります。

第189回国会 東日本大震災復興特別委員会 第5号  平成二十七年七月九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
早速ですが、質問させていただきます。
集中復興期間以降のことについて、きょうも議論が行われました。先月二十四日、復興推進会議において、平成二十八年度以降、二〇一六年度以降の復旧・復興事業についてが決定されました。
この文書では、初めに基本的考え方として、復興についての現状を次のように書いています。
東日本大震災の発災から四年三カ月が経過し、これまで累次にわたり講じてきた加速化措置などの復興加速化のための施策の結果、特に地震・津波被災地を 中心として、復興は着実に進展している。復興交付金事業計画がある八十五市町村のうち、少なくとも住まいの確保に関する事業が平成二十七年度までに全て完 了予定としている市町村が六十四となっているなど、復旧・復興事業の完了に向けた見通しが立ちつつあり、復興は新たなステージを迎えている。
というふうに冒頭に書かれています。率直に言って、読んでいて私自身はとても違和感を感じました。
私ごとで恐縮なんですが、女川町に漁師をしていたおじがおりまして、津波で船も家も流されてしまいました。ここの集落に住む人と一緒になって宮城県外の ところで避難生活を送ってきた後に、それぞれいろいろ考えるところがあって、うちのおじは石巻で、その後、新しく浜の仕事をすることになったわけなんです けれども、こういう経過を私は知っているんですが、決して着実というようなことでは表現されないのではないのかなというふうには思っているんです。こうい うことが被災地は今も続いているというふうに思います。
それで、お手元に渡しました資料をごらんください。河北新報の三月十日付で、被災者へ国や自治体への要求は何かとのアンケートをとっています。要望の多 い順に、医療費の緩和が六〇・八%、医療福祉の充実が五四・一%、生活資金の支援が四二・四%など、年を追って要望がふえているというのがこのグラフから わかります。
その下にある資料の二は、早稲田大学とNHKの共同調査です。被災三県一万人アンケートで、主に健康の状態について聞いたものですが、震災前の持病が悪 化したという方が三五・四%、震災後に新たな病気にかかったという方が三二・四%いる。その中身を見れば、高血圧とか高脂血症、精神疾患など、運動不足や ストレスを原因とする疾患が多いとも報じられています。
先ほど申し上げたこの基本的な考え方に、復興は着実に進展という言葉があったわけですが、それならば、なぜこのような医療への要望や健康不安の実態が生まれるのか、どのように被災者の現状を今この時点で大臣は認識しているか、改めて伺いたいと思います。
○竹下国務大臣
遅いと言われれば、私はそのとおりだとお答えをせざるを得ないと思います。
しかし、幾つかの事業でおくれが出ていることは事実でありますが、一つ一つの事業はそれぞれきちっと進展をしつつあり、少なくとも、ハード面では復興の最終局面というのが見え始めたというところまで進展してきていることは、これは事実であろう、こう思っております。
さまざまな医療の要求、あるいは、先ほどありました生活資金の要求等々、いろいろな思いが被災地の皆さん方の中にあるということは我々もかなりの部分存 じ上げております。なかなか全てにお応えすることはできない。そして、仮設住宅に長くいらっしゃるということは、長期化に伴うさまざまな障害がより大きく 出てきておるということも、これも多分否めない事実であろうと思います。
我々は、今、復興のステージに合わせた対応をしなければならない。一つは、長期化に伴うそういった心のケア、健康のケアについて、今までより、今まで八 百人ぐらいでした見守りの皆さん方を千二百人にふやしまして、まさにこの分野こそ、これから一番の問題の分野になるんじゃないかな、そういう認識のもとで 取り組んでおります。
○畠山委員
例えば、長期間の仮設入居などで障害が大きくなっているという御認識だったと思うんですね。
確かに、仮設の老朽化、特にカビの発生でぜんそくなどがふえているということが、きょうも午前中の資料にありましたが、厚労省の研究班の調べによって、調査した仮設入居者のうち二割に、カビが原因による呼吸器異常が見つかったなどとしているわけです。
しかし、病院に行きたくても、先ほどあったように、生活資金の問題でお困りの方がいらっしゃるわけであって、医療費負担に耐えられずに我慢しているという現状があるわけです。
それで、私は、四年前のこの委員会で復興基本法を議論したときの議事録や当時の復興基本方針も改めて読み直したんですね。当時の基本方針の同じく基本的な考え方のところにも、「被災地域の復興は、活力ある日本の再生の先導的役割を担うもの」とある。
当時の議論もそうでしたけれども、この復興事業や巨額の補助金を奇貨として大手企業が利益を上げる一方、被災者が置き去りにされてくるんじゃないのか、現在、四年四カ月たって、こういう現実が結構生まれてきているんじゃないか。
今回の、同じように出されている基本的な考え方を読むと、「平成二十八年度以降の復興支援については、被災地の「自立」につながるものとしていく必要が ある。復興の新たなステージにおいて、日本の再生と成長を牽引し、地方創生のモデルとなることを目指すこと」とある。その後、各論で暮らしの問題などが出 てくるんですが、被災者の暮らしなどがこの考え方でほとんど出てこないんです。これでは、これからの復興・創生期間でもますます被災者が置き去りとされる んじゃないかと思わざるを得ないです。
そこで、大臣に改めて確認したいんですけれども、私が言いたいのは、事業完了という視点と暮らしとなりわいの再建という視点は異なるんじゃないか。大臣の基本姿勢として、改めて、暮らしとなりわいの再建こそ基本であるということを確認したいんですが、いかがですか。
○竹下国務大臣
両方だと思います。両方必要なんです。
まず、恒久の住まいを我々は今急いでつくっているさなかでありますが、それをやらなければならない。
だけれども、家ができたから、ではすぐ帰れるか、違うと思います。商店街も必要ですし、病院も必要ですし、近くに行くのに必要なバスあるいはそういった 交通インフラも必要です。そういうものが整わない限り、どうぞ帰ってください、家ができましたよと言ってもなかなか帰っていただけない。
つまり、ハードの面とソフトの面と両方同時に動いていかなければ、被災地は、特に、活力を生むという方向について考えた場合、特にその側面は強いと思います。両方必要だと思っています。
○畠山委員
被災者を中心としたまちづくりということは、もちろん必要だというふうに思っています。
先ほど述べたんですけれども、私はきょうは防潮堤のことも最後に質問したいと思っているんですが、いろいろな大きな事業を通じて、これを奇貨とするようなことがあってはならないというふうに同時に思うんですね。
それで、先ほど出てきた基本的な考え方における中身で、きょうも午前中から議論があったリスクや自立の問題についても、私から一言述べたいと思うんです。
被災自治体の負担についても決定され、それに先立って大臣も被災三県の知事と会って、要望も踏まえて負担額も圧縮はされたということにはなっています。 先ほどの文書などでも被災自治体の自立という言葉が出てきて、そのつなげていく観点から、事業において一定の負担を求めるとされています。このことも、私 自身でいえば感情的に受けとめました。
大臣に改めて、この自立ということは何を指すのか、もう一度伺います。
○竹下国務大臣
二つに分けてお話しした方がいいかもしれません。
一つは、被災者お一人お一人について、我々の復興の目的は、お一人お一人に自立をしていただくということが復興の目的です。例えば、病気である、年齢で ある、自立できそうにない、それは社会福祉の分野等々でしっかりと対応してまいりますが、まずは、お一人お一人の人生でありますので、きちっと自立をして いただくということが復興の目的であります。
それから、自治体についてでございますが、自治体についても、我々は自立をしていただきたい、こういう思いも込めて、全ての理由がそれであるというわけ ではありません、ほんの一部の理由ではありますけれども、そういう思いも込めて、自立をしていただきたいという思いも込めて、地元負担の導入を決定させて いただいたところでございます。
○畠山委員
先ほど私、感情的にこの言葉を受けとめさせていただいたというふうに言ったんですけれども、やはり感情的に納得いかないんですよ。
被災者や自治体の必死さが足りないというようなことなども大臣は話されて、もっと必死にやれと。六月三日の記者会見では、さらに魂をたたき込んでやって いただくという表現も使った。こう畳みかけられると、被災者、私も被災地に家族、両親とかいますけれども、その必死さが理解されていないんじゃないかとい うふうに思うのも当然なんです。午前の質疑でもこういうことがあって、自治体に向けての話だとか、今のところでは被災者に向けての自立だということも話を されましたけれども。
では、実際に被災者がどう受けとめているかということを、資料の二枚目、資料三のところに、六月二十日付の岩手日報で、きょうは紹介したいと思って持っ てきたんです。大臣がさらに必死のギアをもう一段上げていただきたいと述べた発言への県民の反応を、ここでは紹介しています。
例えば、二段落目になりますが、行政と連携して移動図書館を開設している釜石市栗林町の団体職員三木真冴さんは、被災地の人はすごく必死にやっていると 一蹴、一部負担したからギアが上がったり、リスクがあって精度が上がるということはなく、本気になる、よりよくなることとは直接関係ないというような懸念 が述べられています。ずっと飛んで最後の段落の真ん中に、宮古市田老のグリーンピア三陸みやこ仮設住宅に暮らす自営業の方の言葉が次に載っています。復興 がおくれる中、大臣の方がよっぽど必死のギアを入れかえてほしいと切り捨てたと。手厳しい、このような被災地の声があるわけです。
例えば、自治体に対して、先ほどあったように、必死にやってほしいと。住民からいろいろ役場に要望があったりしても、職員も被災して、例えば御家族を亡 くした方もいらっしゃったりして、努力していることは、被災者みんな理解しているんですよ。未曽有の大震災というふうに言いますけれども、一人一人の人生 ですとか、これもまた未曽有の被害体験だし、一つ一つの町からすれば未曽有の大きな被害だったわけです。
だから、資料で紹介したような、これが率直な被災者の思いであるということをやはり改めて受けとめていただきたいと思うんですよ。
大臣、いかがですか。
○竹下国務大臣
この人たちがおっしゃっていらっしゃることは、多分そうだろうと思います。私は、否定しようとは思いません。しかし、もっともっと別の意見もあるということもあります。
私は、まだ数は少ないですが、せいぜい三、四十回被災地に入らせていただきまして、さまざまな方と、本当にさまざまな方と議論をさせていただいたり、お 話を伺ったり、陳情を受けたり、いろいろなことをしてまいりました。そういう中で、私の感じたことは私の感じたこととしてお話をさせていただいておるわけ でありまして、この人たちが別に間違ったことを言っていると言うつもりは全くありません。そう思った方もいらっしゃるかもしれない。それは、私の人徳の至 らないところだなと思っているだけであります。
○畠山委員
大臣が人徳を至らないと御謙遜されるのはよろしいんですけれども、復興大臣として、こういう被災者の声があるということをやはり受けとめていただきたいと思うんです。
負担の問題について、時間もあるので、具体的な中身で確認していきたいと思います。
自治体負担となる対象事業のうちに効果促進事業があります。それで、国が全額負担をしてきたものですが、なぜ、基幹事業だけでなく効果促進事業も国が全 額負担してきたのか。あわせて、次に聞こうと思っていましたけれども、申しわけないですが二つまとめてお聞きしますが、基幹事業と一体にこうやって進めて きたからこそ復旧復興が進む、そういうフレームになると思うんですけれども、では、なぜ今回、割合はどうかというのは別として、効果促進事業は負担を求め ることにしたのかということについてお伺いします。
○長島副大臣
私の方からお答えをさせていただきたいと思います。
集中復興期間中、自治体負担をゼロとしてきたのは、今回の震災が、町全体が壊滅的な打撃を受け、また比較的財政力が低く、膨大な復興事業を実施するための十分な財源がないと見込まれる被災団体が多かったことにより、五年間実施をしてまいりました。
そして、ここで負担を求めることにしたことについては、最前から大臣がお答えをしておりますが、発災から四年以上経過をし、復旧と復興事業は、先ほど御指摘もいただきましたけれども、着実に進捗をしながら、将来を見据える状況に来ているというふうに認識をしております。
ただ一方で、全国共通の課題、つまり、全国の市町村があわせ持つような性格の事業については、被災地以外の、公平性と申し上げますか、どういったらいい か、負担の思いを共有してもらうためにも、復興交付金の効果促進事業について、一部負担を求める。その負担額については最低限に抑えさせていただきたい。
そして、そのことの、今やっている事業、そしてこれからやる事業についても、大幅に復興庁として、きちんと協力をしながら、できるだけ負担のないようにという配慮のもとで負担をいただきたいというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
基幹事業と効果促進事業を分けて、各自治体でいろいろやってきた経過があると思うんですよね。
つまり、例えば私も先月、岩手県、宮城県のいろいろな自治体に行って、首長さんからお話も伺いましたけれども、そこで、例えば新たな市街地づくりをする のに盛り土をする、そこに必要な下水道の整備とか消火栓とか、こういうのをつくっていくことにもちろんなるんですけれども、これは効果促進事業でというふ うに、これがどうなるかと、当時、そういう不安もあったわけですよ。
それで、自治体でこういうまちづくりをしたいという取り組みたい計画があって、そのときに、これは基幹事業だとか、これは効果促進事業とか、復興庁もこ うやって職員さんが相談をしながら振り分けてきた経過があるというふうに聞いたんですよね。つまり、どっちも、当時でいえば、国が一括してちゃんと全部負 担するんだということが背景にあったからだと思うんです。
これもまた限られた予算の中で、しかも復旧復興はワンパターンでいかないわけだから、さまざまな振り分けをして、最大限前に進めるようにしてきたんだろうということは理解できるんです。
ですから、大臣も、六月一日の参議院の特別委員会だったと思いますが、この問題についての質問がありまして、高台に住居を移転するならアクセス道路はもちろん必要になるし、そういうものは全て認めているというふうな答弁をされています。
私は、この時期に自治体負担は求めるべきでないというふうには思っていますが、丁寧に自治体と話し合った柔軟な対応が必要であるというふうに思うわけです。
今回の自治体負担が、先ほどからも繰り返しありますけれども、復旧復興の足を引っ張るような、こういうことになってはいけないと思いますが、大臣、改めて答弁いかがですか。
○竹下国務大臣
事業のおくれがあってはいけない、それは起こさせないという大前提の中で、さまざまな判断をさせていただきました。
効果促進事業というのは本当にいろいろなことをやっているんです。いわゆる基幹的な事業に付随する事業もありますし、それとはちょっと離れた事業もありますし、いろいろなことをやっているんです。ぜひ御理解を賜りたいと思います。
復興庁が全部仕分けしているというのではなくて、地元から話が出てこなければ復興庁は対応のしようがありませんので、地元から、これをやりたいけれども と。それは効果促進でやったらいいんじゃないですかというお話をしたことは何回もありますが、復興庁から、こうしなさいという方向でお話をしたことは、基 本的にそれは余りやっちゃいかぬことだと思っております。
○畠山委員
先ほど私も述べたように、それぞれの町の計画があって、相談しながらこういうふうにやってきた経過があるというふうに述べました。その経過はもちろん承知はしています。
ただ、こういう効果促進事業が、割合は別として負担を新たに求められることになり、それでも、これまで、この間事業が進んでこなかったのは、自治体の努 力ではどうしようもない、入札が応じられなかったとか人手が足りないとか、さまざまな理由があったわけで、加えて、五年後に東京オリンピック・パラリン ピックも工事が並行して行われることになれば、五年後までに事業が終わるんだろうかという不安は率直に出てくると思うんですよ。先ほどの質問でもそれは出 てきました。
午前の質疑の中で、これは通告していませんでしたけれども、福島の支援にかかわって、十年という期間を迎えても、その後しっかり国の責任を果たされるような趣旨を大臣が答弁されたというふうに思うんですね。
同じように、もちろんまだこれから五年間あるわけだけれども、十年の復興期間が終わった後に、この後また、被災自治体の状況に関係なく、負担をこれまでどおりに求めるというようなことはあるのかないのか、ちょっと大臣、今、考えをお聞かせいただけますか。
○竹下国務大臣
まず、福島につきましては、いわゆる復興期間の十年、今設定しております十年間では、もう誰が考えても全てが終わるという 状況にはならない、こう思っておりますので、何らかの対応は必要であるということは痛感をいたしております。ではどうするかということは、まだ今決めるべ きことではないかな、もう少し様子を見てから議論をして決めるべきことではないかな、こう思っております。
それから、それ以外の宮城、岩手につきましては、基本的には十年以内に、少なくともハードの部分は全て終わるということを目標に我々は今取り組んでおります。
○畠山委員
先ほども述べましたが、復興が途上で、少なくともこの四年四カ月ではなかなか事業が、自分たちの努力ではどうにもならないとこ ろがあって進まなかった。さまざまな不安が今出ているわけですし、暮らしの面でも、冒頭に紹介したように、本当に被災地の皆さんが大変苦しまれている現状 があります。この時期に被災自治体に負担を求めるべきではないということは改めて申し上げたいというふうに思います。
それで、最後、残った時間に、防潮堤の問題について一言伺いたいと思います。
朝日新聞の五月二十五日付で、「膨らむ防潮堤予算苦慮」という見出しの記事が掲載されました。一方、この記事では、防潮堤の高さや費用について、工事費の急騰、それから地元負担、あるいは観光業者や住民の話し合いなども受けた取り組みも紹介されています。
海岸管理者である自治体が計画をつくった後でも、いざ工事が始まってみたら、海が見えないからやはり高さを下げてくれとか、逆に、もう少し高さを上げて ほしいとか、あるいはここは必要ないんじゃないかとか、住民からの要望がさまざま出て、計画を適切に変更することなどはできるのか。これは国交省の方に確 認したいと思います。
○池内政府参考人
お答え申し上げます。
防潮堤の計画につきましては、町の安全、ハード、ソフトの組み合わせ、環境保全や市町村によるまちづくりの議論などを踏まえまして、海岸管理者である県などが適切に定めることとなっております。
防潮堤については、どういう計画が地元にとって望ましいかについて十分に話し合っていただきながら合意形成を進めていくことが大切だと考えております。
どのように合意形成を行うかにつきましては、海岸管理者である県におきまして適切に判断しておられると認識しております。
実際に、砂浜を残してほしいとの地元の御要望を踏まえまして防潮堤の位置を変更する予定のところや、地元の御意見を踏まえまして防潮堤の高さ等を変更することとしたところもあるなど、見直すべきところは見直すという対応をとっていると聞いております。
いずれにいたしましても、引き続き、県には丁寧に対応していただくとともに、合意形成がなされた海岸につきましては速やかに復旧が進むよう最大限の支援を行ってまいりたいと考えております。
○畠山委員
さらに確認しますが、事業主体者は海岸管理者である県とか自治体ですけれども、防潮堤の復旧復興のあり方について、それでは国がどのような関与をされるか、端的にお答えください。
○池内政府参考人
お答え申し上げます。
防潮堤につきましては、東日本大震災などの最大クラスではなくて、先ほど大臣からも御答弁がございましたように、比較的発生頻度の高い津波を対象として設計することを基本としております。
このような基本的な考え方は国から海岸管理者に示しておりますが、これはあくまでも基本的な考え方でございまして、具体的な防潮堤の計画は、町の安全、 ハード、ソフトの組み合わせ、環境保全や市町村によるまちづくりの議論などを踏まえまして、海岸管理者である県などが適切に定めることになっております。
いずれにいたしましても、引き続き、県には丁寧に対応していただくとともに、合意形成がなされた海岸につきましては速やかに復旧が進むよう最大限の支援を行ってまいります。
○畠山委員
そうしたら、国交省は計画だけ示して、あと、県が計画をつくったら、何も関与しない、内容は確認していないということですか。内容は確認するんですよね。ちょっとその点をもう一度。
○池内政府参考人
まず、基本的な考え方とかスペック、そういったものは国がお示しいたします。具体的には、国は、設計津波の水位の設定方 法ですとか、海岸堤防等の粘り強い構造、それから……(畠山委員「聞いたことに答えてください」と呼ぶ)ええ。要は、基本的な考え方、マニュアルについて はお示しいたします。
それから、県等から御相談があった場合、こういった場合には、例えば、国総研、国土技術政策総合研究所などが相談に応じて、技術的な助言を行っております。また、場合によっては、職員が現地に赴きまして、さまざまなアドバイス、そういったものを行っております。
○畠山委員
なかなか内容は確認していますと言わないんだけれども、いろいろな形で、ちゃんと相談であったり、現地へ行ったり、中身は確認しているということを確認します。
そこで、具体的な事例で聞きます。
石巻市白浜地区の防潮堤です。この地域は海水浴場としても有名で、県から国交省への報告によれば、防潮堤を建てるにも、砂浜を生かしたいから少し内陸側 にしてほしいとか、流された集落を高台に移転して、もとの場所には観光施設もつくりたいような計画も確認して着工されています。問題は、そこよりさらに延 びている部分についてです。
これは資料をごらんください。三枚目です。
写真を見ると、切り立っている丘というのか崖というのか、この下に防潮堤が建設中になります。高さ、TPは八・四メートルで、ですから、これから見ると 大体二十メートルぐらいの高さに崖というか丘はなると思うんですが、八・四メートル自体がどうかという問題はあるんですけれども、今私が述べたように、こ この集落の方が、この崖なのか丘の上の方の高台に移転するんですね。
この崖の真下にあるこの防潮堤というのは、一体何を守っていることになるんですか。これは何が事業目的なんですか。何と報告を聞いていますか。
○池内政府参考人
お答え申し上げます。
防潮堤につきましては、一連の海岸で、全体的なまちづくりと整合をとりながら進めております。
具体的には、この白浜地区の海岸は、東日本大震災の前は、その背後地に、海水浴客の利用施設とか水産加工工場、住区等がございまして、津波や高潮、高波から守るために防潮堤がございました。
東日本大震災によりまして防潮堤は被災いたしまして、背後地も大きな被害をこうむったところでございますが、石巻市では、海水浴客の利用施設や水産加工 工場を再建するまちづくりを行うこととされておられます。(畠山委員「これは何を守っているか、答えてください」と呼ぶ)だから、この地点だけではなく て、一体として整合のとれた防潮堤の計画をしておられます。
実は、今写真にある部分は、もともと市道がございまして、その市道の前面に防潮堤がございました。もともとは当時の計画での津波の防潮堤でございますが、それが東日本大震災で壊れた。そういったものを戻そうとしております。
それを戻すときに、従前と大きく形状が変わっております。具体的には、市道が被災したために、復旧を行う際に、もともとと同じ計画ではなくて、造成地の 残土を使って道路をかさ上げする。そのときに、もとの堤防ではなくて、道路の整備と一体となって、道路前面の護岸という形で復旧を行っております。
○畠山委員
わかりません。
ちょっと時間がないのでシンプルに聞きたいんですけれども、やはりこういう事業は、何の関係があるのか、全然理解できないんですよ。
そこで、大臣、これは時間がないので最後に要望としてお聞きしたいんですけれども、限られた復興関連予算で、地元からすれば、事業、暮らしと防潮堤とい うのは別々というのはもちろん承知していますけれども、こういうところにお金を使うぐらいなら暮らしに回せという思いが出るのは当然ですよ。
先ほどあったように、いろいろな限られた予算で、午前中、国民の大事なお金だという話もあったじゃないですか。こういうこと自体がモラルハザードになっていくんじゃないか。
ですから、国交省とも連携をとって、せめて県に、現状を把握して、この事業に何の効果があるのか、再度調べるよう要請したいんですが、この点だけ最後にお聞きします。
○竹下国務大臣
調べてはみます。調べてはみますが、我々は、地元が合意をして、地元の県が合意をしてきたことが国交省に上がり、我々にも上がってきて、予算は復興予算でやるということになっておるわけで、合意のないものは、我々、やりません。
○畠山委員
時間がないので、終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第19号  平成二十七年六月二十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
短時間ですので、早速、本題の質問に入ります。
初めに、改めて総理の基本的認識を確認します。
全中、県中、単協など農協系統が日本の農業においてこれまで果たしてきた役割について、まず、首相はどのように認識しているかを伺います。
○安倍内閣総理大臣
我が国には、自立自助を基本として、誰かが困っていればみんながお互いに助け合っていくという共助の精神が生きている、こう思います。
農協は、こうした助け合いの理念のもとに設立をされました農業者の協同組合であり、昭和二十二年に農協法が制定されて以降、小規模で多数の農業者が共同して事業を行うことにより、農産物の流通や生産資材の供給などにおいて大きな役割を果たしてきたと思います。
また、全中及び県中の根拠となる中央会制度は、昭和二十九年に、経営的に困難な状況にあった農協組織の再建を目的に導入をされました。当時一万を超えていた農協は、合併の促進等によって約七百に集約をされ、地域農協の経営基盤の強化に成果を上げたと考えています。
このように、中央会制度は、それぞれの地域農協が自立できる環境を整備することに貢献してきたものと考えております。
○畠山委員
今、農業者の協同組織として大きな役割を果たしてきたということを答弁されたことをまず確認いたします。
そこで、総理は、この農協改革の目的について、強い農業をつくるための改革、また、農家の所得をふやすための改革と述べてきました。
しかし、先ほど委員からも出ているように、本委員会の参考人質疑や地方公聴会では、JA中央会や単協の総合農協としての役割や必要性が語られてきたわけ です。先ほど総理が述べたように、役割をきちんと果たしてきたんだと。また、農業委員会の公選制の廃止や農業生産法人の要件緩和に対するさまざまな不安も 語られました。この改革が農家の所得向上にどう結びつくのかわからないといった声も出されました。
今回のこの審議を通じて、現場の農業者が望んでいる改革ではないという思いが強まったというのが私の実感です。
そこで、もう中身については先ほどから総理が答弁していますけれども、私が聞きたいのは、総理は現場の農業者の理解が得られていると考えますか。
○安倍内閣総理大臣
これまで、政府や自民党の検討の場では、地域農協を初めとするJAグループの関係者のみならず、東北の米生産農家、九 州の露地野菜中心の法人、都市近郊の畜産経営体など多様な農業者からヒアリングを行ってまいりました。本年二月には、最終的にJAグループの合意を得て改 革の骨格を取りまとめたわけでございます。また、この四月には、JAグループの皆さんとお会いをし、同じ方向を向いて改革を進めていくことを確認したとこ ろであります。
当初は、例えば自民党の部会においても、そこに出席をしてきた農協を含め、農業関係者あるいは議員の皆さんからも、ほとんどは反対の意見でございまし た。その中において、お互いに議論を深めていく中においては、最終的に、今申し上げましたように、農協の皆さんにも、多くの生産農家の皆さんにも、あるい は農業を専門的に取り組んできた多くの議員の皆様からも賛成をいただく中において今回の法改正は行われた、このように認識をしております。
○畠山委員
いや、それなら、先ほども資料でありましたけれども、この間の地方公聴会などでは、いまだに疑念や不安の声が多く出されているわけですよ。
例えば、八日の山梨会場の地方公聴会で、法人化されて自社直売なども進めている方が、農業改革、何度も申しますが、実際の農業者が全く論外になっているのではないかというふうに思っているところも多くございますと述べています。これが実感だと私は思うんですよ。
それでは、何で論外という言葉が出てくるのか。私は、今回の法改正は、先ほど総理も述べられましたけれども、規制改革会議だとか産業競争力会議だとかか らの議論が出発点となって、企業の農業参入に邪魔な規制をなくそうということが出発点だったからではないかと私は思っているんです。
例えば、農業生産法人の出資要件の緩和についても、農外からの出資要件を二分の一未満、半分ぎりぎりまで改正案では認めることとしています。
それで、総理が議長を務める国家戦略特区の諮問会議では、昨年来、企業の農地所有解禁が挙げられて、二〇一五年までの集中取り組み期間に特区でこれを実 現しようとしています。特区で突破口を開いて、全国展開のために法改正で進めていく、押しつける。総理が議長となるこの会議から、いわば官邸主導のような やり方で、現場の農業者の理解が得られないということになるのは私は当然だと思うんです。
また、改革の狙いの一つに、TPP反対の運動の封じ込めではないかというようなことも、これは三月五日付農業新聞でも指摘している学者もいらっしゃるわけです。そういう目が向けられている。
総理、今生産者が望んでいるのは何か。昨年、米価が大幅に下がりました。参考人質疑でも、七千円から八千円の水準では赤字だ、米をつくっている専業農家、大規模農家こそどんどんやめていくという危惧が示されたんですよ。一番の要求は、価格の安定で、所得の保障です。
それなのに、昨年、交付金の削減があって、減反廃止への不安もあるし、そして、TPP交渉で、国会決議がありながら、米についての新たな輸入枠や牛肉、豚肉の関税引き下げなども報じられて、今が潮どきかと感じている農家もいるというふうに聞くんですよ。
だから、農家の現状やこういう声を前にして、総理は、この改革が本当に農家のための改革と自信を持って言えるんですか、本当に農家の理解を得られると思っているんですか。もう一度答弁してください。
○安倍内閣総理大臣
今回の改革は、今委員がおっしゃったような目的では決してないわけでございまして、まさに先ほども申し上げたように、 今や農業者の平均年齢は六十六歳以上になろうとしているわけでございまして、このままでは大切な農業を守り抜くことはできないだろう、こう思うわけでござ います。そして、余り時間がないわけでありますから、ですから、我々は、全面的な改革を今こそ行わなければならない、こう決断をしたわけでございます。
その中において、まさに農業者の皆さんの創意工夫が生かされ、自由に能力が生かされていくような、そういう環境をつくっていく、ブランドをつくってい く、あるいは海外に展開をしていく、そういうことについて、担い手とあるいはまた地域の農協が一緒になって取り組んでいく、そういう農業に変えていきた い、こう考えているわけでございまして、その中におきましては、今回の改革が必要であろう、こう思っているところでございます。
○畠山委員
それで、繰り返しになりますけれども、先ほど言ったように、今農家が求めているのは価格の安定です。再生産可能な経営をきちん とやれるようにしてほしいというところで、それが今回の農協改革とどう結びつくのか、先ほどからあるように、ずっと、わからないという声が出てきているん ですよ。
総理は、二月二十五日の予算委員会で、私の質問に、家族経営を大事にしてきたのは自民党という自負があるという答弁をされました。その家族経営というのは、総合農協のもとで支えられてきたんじゃないんでしょうか。
先ほど、冒頭に総理も答弁されたように、農業者の協同組織として農協は大きな役割を果たしてきたというふうに認めておられます。そして、今回の改革が一 体本当に農業者のためになるのかどうかというのは、まだみんなわからない。先ほどからあったように、これでいいのかというさなかにあると思うんですね。
そして、私が最後に述べたいのは、この農協改革を含む全般の農政にかかわって、二〇一三年七月十七日の国家戦略特区ワーキンググループでこんな議論がさ れています。「減反廃止が安倍さん流に言えば農業改革の一丁目一番地で、減反をなくして、例えば三年後、十年後に向けて価格は国内の需給で見ればこれぐら いになってくる、需給均衡で見ればこれぐらい下がるということがわかる。さあ、あなたは農家を続けますか、やめますかと。三年以内にやめるのだったら、あ る程度の退職金を出しますよという話。」だというような、そんな議論がされているんですよね。
これは総理も同じ考えですか。こういうあけすけに、いずれ米価は下がるんだ、今のうちにやめれば退職金を出すようなものに乗っていくような話ですか。家 族経営をこれまで守ってきたんだということであるならば、こういうので一体どういうふうに家族経営を守るのか、最後に答弁してください。
○安倍内閣総理大臣
我々も、今おっしゃった米価についての価格安定についての対応というのは当然手当てをしているわけでございますが、私たちが進めている改革については、法人経営であれ家族経営であれ、幅広く我々は支援をしていくわけでございます。
また、今回の農協改革では、地域農協が意欲ある担い手と力を合わせて創意工夫を発揮して、自由な経済活動を行うことによって、農産物の有利販売に全力投 球できるようにすることを基本的な考え方としておりまして、法人経営と家族経営の取り扱いについても何ら差を設けていないわけでございます。
いずれにしても、こうした改革を通じて、法人経営、家族経営のいかんにかかわらず、農業の担い手が消費者ニーズに応えた強い農業をつくり上げていけば、農業の可能性は広がっていくと考えているわけでございます。
最初御紹介をいただいたように、まさに日本の農業の主体というのは家族経営であったわけでございます。だんだん、この六十年の中におきまして、家族経営 をしようにも息子が後を継がない、娘が後を継がないという現状が今あるわけでございます。その中において、新たな担い手が登場してくる必要があるわけであ りますが、そういう新たな担い手の中におきましては、もちろん、家族で入ってくる、あるいはまた法人という形で入ってくる、そういう多様な担い手を私たち は必要としているし、そういう多様な担い手が登場してくることによって初めて農業は活性化していく、このように確信をしているところでございます。
○畠山委員
本改正は、家族経営を支えてきた総合農協の協同組合としての性格をゆがめて、全中監査の廃止や准組合員規制の検討など、農協の存立の根幹を崩す、農業組織の解体につながるようなものだというふうに思っています。
当事者、全中の意見表明も聞けませんでした。きょうの審議でも、午前中からさまざまな問題点も明らかになって、さらなる審議が本来必要であるということを最後に表明しまして、私の質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第19号  平成二十七年六月二十五日 一般質疑

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
私からも、TPPについて質問を行います。
先日、甘利大臣からは、妥結に向けて来月中にも一気に進むかとの交渉姿勢もかいま見られました。それで、先ほどからもありましたように、TPAについては上院での可決ということになりました。
農業者はもちろんですけれども、御存じのように、TPPはさまざまな分野に影響が及ぶわけでして、医療関係者などなどからも同じように不安が高まってきている状況にあると思います。そういう中で、一瀉千里に交渉を進めるべきではないというふうに思うわけです。
この間も一月余り、TPA法案をめぐって交渉が一旦とまるような形にはなっていましたが、その間にも、TPPの中身や交渉のあり方に疑問が示されている ことが相次ぎました。例えば、六月八日付農業新聞ですが、「TPP人権に悪影響 国連専門家懸念を表明 秘密交渉も問題視」との記事が掲載されました。国 連の専門家グループが、TPPを含む貿易協定について、人権への悪影響だけでなく、交渉の秘密性を懸念する声明を発表したとのことです。
まず外務省に伺いますが、この専門家グループというのはどういう方々であると理解していますか。
○山上政府参考人
お答えいたします。
まず、委員御指摘の国連の専門家ということでございます。
どういう制度かと申しますと、国連の人権理事会では、特定の国の状況または特定の人権テーマに関し調査報告を行うために、個人の資格として専門家を任命しておる、こういう制度がございます。
そこで、御指摘の声明でございますが、こうした専門家の十名が、ことしの六月二日に声明を発表したということでございます。具体的には、例えば、民主的 国際秩序、こういった問題についての専門家が中心となりまして、国連の人権理事会から求められている報告書作成とは別に、自主的に発表したということでご ざいます。
そこで、こうした見解の位置づけでございますが、これらの専門家の見解は、独立した個人としての資格によるものでございまして、出身国政府を代表するものではございません。また、公表された声明等に含まれる勧告には法的拘束力はないと理解しております。
○畠山委員
私は何も法的拘束力の話なんか聞いていません。どういう立場の方々がこの声明を出したかということを聞いたわけであって、もう一度きちんと正面から答えてください。
○江藤委員長
それぞれの立場について、明確な答弁をしてください。
○山上政府参考人
お答えいたします。
立場ということでいえば、私は十名の専門家ということで申し上げました。民主的国際秩序に関する独立専門家、それから障害者の特別報告者、健康の権利に 関する特別報告者、文化的権利に関する特別報告者、法曹家の独立に関する特別報告者、食料の権利に関する特別報告者、対外債務に関する独立専門家、安全な 水と衛生の権利についての特別報告者、先住民族の権利に関する特別報告者、国際的な団結に関する独立専門家、この十名でございます。
○畠山委員
時間が限られているんですから、きちんとした答弁を求めます。
今ありましたように、さまざまな立場の方々からの懸念であることを重く受けとめる必要があると思います。
今、そのような幅広い専門家の方々が、どのような中身だったかといいますと、食品安全や健康保護、労働条件の基準が引き下げられる可能性があるとの見方を示し、さらに、ISD条項についても懸念が特に示されたと記事には書かれています。
これは、内閣官房と農水省、それぞれに伺いますが、この声明について今承知しているのかどうか、そしてそれをどのように受けとめているか、それぞれお答えください。
○澁谷政府参考人
お答え申し上げます。
声明は承知しております。ホームページに掲載されたものを見ているところでございます。
TPPについてさまざまな御批判あるいは御懸念の声が国内外からあるのは承知しております。十二カ国で、特にルール部分について議論する際も、それを常に念頭に置いて今調整、議論をしているところでございます。
先生御指摘の声明の中で、例えば、指摘を受けた食の安全、労働水準、それからISDS、ISDSは国家の規制機能を危険にさらす、そういう指摘でございますが、五月一日、私どもが、「TPPの概要」というものを公表いたしました。
その中で、TPPの現在のテキストの中では、食の安全に関する我が国の制度変更を求められるようなことにはなっていない、それから、労働については、貿 易や投資促進のために労働基準を緩和することのないように、そういう議論になっているということ、それから、ISDSについては、保健、安全、環境保護を 含む公共の利益を保護する政府の権限に配慮した規定が、現行のテキストに、今の交渉テキストには明記されているという旨を紹介しているところでございま す。
いずれにいたしましても、そうした懸念があることを十分踏まえて交渉を行っていきたいと思っております。
○林国務大臣
今説明のあった、人権問題を担当する専門家が、条文案について国会議員等に開示すべきであり、貿易協定が食品安全にも悪影響を及ぼし得るという声明を発出したことは承知をしております。
これまでの政府が行った情報提供の中において、食の安全に関する我が国の制度の変更を求められるような議論は行われていないということは明らかにされて おるところでございますが、今後とも、秘密保持の制約の中で可能な限り情報を提供していくことが重要でありまして、どういう工夫をして情報提供していくの か、TPP政府対策本部のもとで引き続き検討してまいらなければならないと思っております。
○畠山委員
今、情報提供の話も大臣からありました。
この声明では、いろいろな懸念が表明されているんですけれども、その後に、幾つかの勧告というのがあるんですね。私も英文を読みましたけれども、そのう ちの一つに、国会議員や市民団体が検討できるよう条文草案を公開することという勧告があります。国会議員だけでなく、国民にも示すべきだという意味は、そ れだけ国民生活全般に影響が大きいことを踏まえて検討した結果、その反映であるというふうに私は思うんですね。
それで、情報公開については、きょうも議論がありましたけれども、本委員会では何度も要求をしてきました。その必要性が、国連も通じて、このように証明された形でもあるというふうに思います。
情報公開のあり方については、検討するということは何度も答弁があったんですけれども、この段に及んで一体どうするのか、ここまで来て、情報公開について具体的にするのかしないのか、きちんと答弁していただきたいというふうに思います。
○澁谷政府参考人
お答えいたします。
御指摘の国連の専門家の御意見は、御紹介いただいたように、議員や市民が十分な時間を持ってレビューできるように、交渉テキストをパブリッシュするべきだ、こういう内容でございます。
アメリカにおいても同じような議論がされておりまして、一般に対して早くパブリッシュするべきだという議論がされております。オバマ大統領は、交渉中は できないけれども、しかし、これまで、一般的に、署名後、テキストをパブリッシュしてきたものを、今の新TPA法案が成立すれば、署名の二カ月前にテキス トをパブリッシュするということになっているので、十分な時間的余裕を持ってレビューできるんだということをアメリカも言っているところでございます。
我が国も、これは仮に合意すればという話になるわけでございますが、仮に大筋合意された場合は、今御指摘いただいたようなさまざまな御懸念も含めて、合 意内容をできるだけ詳細に、かつ丁寧に、国民の皆さん、議員の先生方に詳しく説明をする形で努力していきたいというふうに思っております。
○畠山委員
大筋合意した後に、ふたをあけたら何だこれはということになってはならないから、こういう形で国連の専門家からも懸念が表明されているわけです。そこはやはり改めて指摘をしておきたい。
情報公開だけではなく、勧告にはほかにもいろいろあるんですが、労働組合、消費者団体、環境保護団体、保健専門家など全ての関係者の協議や参加によっ て、透明性を持って交渉することとあります。そもそも、秘密交渉自体に疑義が投げかけられる形であって、交渉の時点から、ステークホルダー、利害関係者を 交えるということも含まれています。
TPPは自由貿易だというふうに言うけれども、このように、実態が人権に悪影響を及ぼすのではないかという指摘は重要だというふうに思います。アメリカ でTPA法案が成立したら一気に交渉が進んでいくようなことがあってはならないということを強く指摘しておきたいと思います。
残り時間がちょっとありませんが、バター不足と、酪農、畜産の支援についても一言伺っておきます。
農業の成長産業化については、酪農、畜産分野にも及んでいます。昨年四月二十四日の産業競争力会議農業分科会で主査を務めた新浪氏が、「「農業の産業 化」に向けて」との提案文書を出していまして、その中に「北海道の酪農輸出拠点化」という項目があって、「「酪農」に焦点を当てた「北海道ブランドの確 立」を核に、輸出拠点化のための具体的取組を強化・加速化することが必要」と述べています。
ですが、御存じのとおり、北海道の酪農家は年間二百戸のペースで離農、離脱が続いてきました。現場の実感からいえば、あしたの酪農経営をまず支えてほしいんだ、そういう話は机上の論理ではないかなどの声も私は聞いてきたところです。
バター不足の問題は、北海道を初め全国で、明らかに酪農家が経営に苦しんでいることの反映だと思いますが、今のこの酪農経営を支えるために、政策のかなめとして、農水省として何を進めてきているか、何だと考えているか、御答弁ください。
○林国務大臣
昨年来のバター不足については、乳用牛の飼養頭数の減少に伴いまして生乳の生産量が減少しまして、その結果、牛乳・乳製品の需給調整弁と言っていいと思いますが、バターの国内生産量が大きく減少した、これが背景にあると考えております。
ことし三月に、いわゆる酪肉近、酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針を策定いたしましたが、これにおいても、生乳の生産基盤を強化する、これを最優先の課題としたところでございます。
我が省としては、酪肉近に即しまして、畜産クラスターの仕組みも活用して、地域全体で畜産の収益性向上を図るために、家族経営、法人経営を問わず、ともに地域の担い手として育成して、生乳生産基盤の強化を図っていきたい、こう考えております。
○畠山委員
緊急的なバター輸入はあるにせよ、やはり家族経営を含めて、広く地域全体を支えるということはどうしても大事だ、これは共通だと思うんですね。
私が一月の閉会中審査のときに質問したとき、畜産クラスターについても使い勝手のいい柔軟な対応をということを求めました。また、規模拡大だけを前提に した支援策でなく、今大臣から答弁もあったように、家族経営を含めた幅広い、後継者対策であったり新規就農者対策というのを、裾野を広げることを進める必 要があると思うんですね。
そこで、きょうは資料を提出させていただきました。昨年七月九日付の日本農業新聞北海道版で、足寄町の新規就農のことを取り上げています。
足寄町で放牧している吉川友二さんが、九十六頭飼われていらっしゃいます。下から三段落目のところですが、一頭当たり年間六千キロの生乳生産量は、道内 平均を二五%ほど下回っています。ただ、八十ヘクタールの草地を存分に活用し、高コストな濃厚飼料は極力使わないため、所得率は約四割と、道内平均の一 三・六%を大幅に上回っている。そして、春先に分娩を集中させる季節繁殖を徹底し、一、二月は搾乳しないということが紹介されています。
酪農経営において、みずから規模拡大される方はもちろんいらっしゃるでしょうが、家族で牛を見るということであれば、百頭ぐらい、これぐらいがぎりぎり のところではないのかなと。ずっと休まず牛舎に詰めて働くのだし、新規就農するにしても、いきなり大規模を目指すということになるわけではないですから、 家族経営をきちんと支えることが大事だということを具体的にこのように示しているというふうに思うんです。
時間もありませんので、こういう家族経営について、新規も含めた、総合的に支える必要についてということを、この例では自治体や元農協職員も含めて応援 しているという中身なんですね。この大事さを示していると思いますが、最後に、この支援のあり方についてのさらなる拡充を求めたいと思いますが、大臣、い かがですか。
○林国務大臣
先ほど申し上げました酪肉近でも、「法人経営、家族経営が共に地域の担い手として発展することを目指す。」こういうふうに書 かせていただいておりまして、例えば畜産クラスター事業においても、規模の大小にかかわらず、地域の中心的な経営体と位置づけがなされますと、家族経営で も支援対象としておりますし、酪農ヘルパーやコントラクター、こういう支援組織の取り組みに対してもしっかりと支援をしていくということで、今取り上げら れたこういういい例もしっかりとやっていけるように取り組んでいきたいと思っております。
○畠山委員
意欲を持って経営に臨んでも、TPPとなればその意欲が沈んでしまうわけですので、重ねて撤退を求めることも最後に述べて、質問を終わります。
○江藤委員長
次に、篠原孝君。

第189回国会 農林水産委員会 第18号  平成二十七年六月十七日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
本題に入る前に、日ロサケ・マス政府間協議の問題について伺いたいと思います。
先週十一日、ロシア二百海里水域分における日ロサケ・マス政府間協議が妥結されました。漁獲枠が、前年六千六百三十トンだったものが、ことしは約千九百 六十二トンと七割の削減となりました。その分、入漁料は昨年の二十億円から六億円へと減ることにはなっていますが、操業期間も六月二十七日からの一カ月に とどまって、操業も、中型船はことしの出漁を断念し、小型船十九隻のみの漁となる。
ことしの協議の進展について、私は、四月二十三日の本委員会で、おくれていた交渉の進展を強く求めると質問しました。
結果として、昨年より漁獲枠がこのように減って、操業期間も短くなったわけですが、なぜこれだけ協議が長引いたのか、まず経過を説明してください。
○香川政府参考人
本年の日ロサケ・マス漁業交渉は、まず、例年よりおくれて開会をしたことに加えまして、開会当初から、ロシア側が提案した漁獲枠、入漁料水準などの操業条件、あるいは取り締まり条件が、日本側としては到底受け入れられない厳しい内容でございました。
これに対しまして、日本側は、ロシア側が提案した個々の項目に関する日本側の立場を粘り強く説明し、我が方の漁業者にとって好ましい操業条件を得るべく臨んだところ、協議が長期化したものでございます。
この結果といたしまして、操業期間が昨年と比べて一カ月短くなった、操業条件が非常に厳しい状況が続いたことから、中型漁船団が今期の操業を見送ったと いうことに伴いまして、我が国漁船が必要とする漁獲枠が相応に減少し、昨年に比べて漁獲枠が大きく減少するなどの結果となったものでございます。
○畠山委員
中型船の出漁や加工場で働く人の確保など、関係支所では準備を進めてきていたわけです。準備をしながら、今回の政府間協議と同時に進んできているロシアの流し網漁の禁止法案の動向にも、漁業者は不安でいっぱいだったはずです。
流し網漁が来年から仮に禁止された場合の影響について、根室市は、道東地域の経済への影響額が二百五十億円で、うち八割は根室市だと試算しています。私 は、根室に行くたびに、領土問題が未解決なために、いつも漁業者は苦しんできたんだよという話を伺ってきました。道東地方のサケ・マス漁と水産関連や地域 経済にとって、これまでにない不安が広がっていると思います。
ことしのこの政府間協議の結果を受けて、政府として、影響を調査することや、調査をもとにした対策なども急いで検討する必要はないのですか。
○林国務大臣
今回の政府間協議で、今御報告いたしましたように、操業期間が一カ月間短くなったこと、また、操業条件が非常に厳しい状態が 続いておりまして、中型漁船団が今期の操業を見送ったこと、こういうことに伴いまして、漁獲枠が相応に減少して、昨年に比べて漁獲枠が大きく減少する、こ ういう結果に政府間協議はなったということでございます。
昨年に比べて規模が縮小することとなったところでございますが、今後、サケ・マス操業や、それから兼業されておられる秋のサンマの操業、この辺の現地の操業等をしっかりと注視して今後の対応を考えていきたいと思っております。
○畠山委員
林大臣も、先日、現地代表団と面会されて、切なる実態を聞いたというふうに思います。
これまでも、北海道東部の漁業者、水産業界、自治体からは、強力な漁業外交の展開が要望されてきているはずです。あわせて、さまざま現地からも聞きまし たけれども、国は水揚げの影響についての試算は出すけれども、関連産業についての試算がなかなか出てこないんじゃないか、地元の雇用と経済に与える影響を しっかり考えて外交や現地への対策を検討してほしいとのことです。
林大臣、改めてもう一声、先ほど、代表団も来ているということも、面会していることは私も承知しているんですが、今回、これまでにない大変な事態が予測される中で、改めて、政府としての決意や具体化に向かう上での大臣の所見をお伺いします。
○林国務大臣
今回の交渉結果等については、近々、担当官が現地に赴き、関係者に説明することとしております。そういう場で現地の皆さんとも意見交換がいろいろできるのではないか、こういうふうに思っております。
また、これに関連しまして、これはロシアの国会の話でございますから、まだ何とも言えないところでございますが、禁止法案なるものも、下院をたしか通っ て、上院に行っている、こういう厳しい状況も認識をしておりますので、しっかりと現場の皆様のお話を聞きながら対応を考えていきたい、こういうふうに思っ ております。
○畠山委員
サケ・マスは、道東地方はもちろんですが、北海道にとってもブランドであり、重要な経済資源であります。
日本と北海道の実態を筋道を通して訴えるとともに、これまでの蓄積や協議を通して生まれている知恵も使って対策を立てていくことなどもあわせて要望したいというふうに思います。
本題に入ります。
農協法等の審議で、前回の委員会で時間の関係上飛ばしていた項目があったので、そのことを先に伺いたいと思います。
農業委員会にかかわる農地利用最適化推進委員について伺います。
この間、政府の答弁では、農業委員と推進委員の役割について、農業委員の方は集まって多数決などで決めていただく許認可のことを中心にする方、そして、 推進委員は現場で動いていただく方と分けた方が効率的ではないかという答弁をしてきました。しかし、これが実態に合っているのかどうか。私は、実態に見 合っていないことがあるんじゃないかと思うんですよ。
委員を分けたら、情報をさまざまな形で共有をしていく作業や、その実務的処理も必要になりますし、農業委員が許認可のために本当に現場をきちんと見よう と責任を持って考えたのならば、もちろん現場に行かないとわからないわけですし、そういう意味では、結局二度手間になっていくこともあり得ます。
これは、今まで農業委員がそれを一手に担っていた、このことこそ効率的な面があったと思うんですよ。二つに分けることが、かえって非効率になることはないのか。その点も含めて、推進委員の業務内容を改めて明確に合理的に説明していただけますか。
○奥原政府参考人
現在の農業委員の役割は大きく二つに分けられるところでございます。
一つは委員会としての決定行為、それからもう一つは委員の各地域での活動、この二つに分けられるわけですけれども、今回、それぞれの機能が的確に果たされるようにということで考えているわけでございます。
そのために、今回の法改正では、農業委員とは別に農地利用最適化推進委員を設けるということにしておりますが、改正後はこの二つに分かれまして、農業委 員の方は、合議体としての意思決定を行うということが中心になりますので、具体的には、農業委員会の総会、それから部会の会議に出席をして議決権を行使す る、農地の権利移動ですとか農地転用の許可に当たって具申すべき意見等を審議する。この審議も、やはり現場を見たり、そういうことは当然あると思います。 案件ごとにきちんと判断をして、多数決で決めていただく、これが一つでございます。
それと、もう一つの推進委員の方につきましては、みずからの担当区域におきまして、担い手への農地利用の集積、集約化、それから、耕作放棄地の発生防止 や、発生したものの解消、こういった農地等の利用の最適化の推進に関する活動、具体的には、積極的に出し手農家に働きかけて、担い手の方に流動化させてい く、こういった仕事をしていただく、こういうことになるわけでございます。
ただ、先生御指摘のように、現在の農業委員一本の体制で成果が上がっている地域も中にはございます。担い手への農地利用の集積が相当進んでいる、あるい は耕作放棄地がほとんど発生していない、こういった地域もあるわけでございますので、今回この法制度をつくるに当たりましては、現在の農業委員一本の制度 のもとで、農地利用の集積あるいは耕作放棄地の発生防止等が相当程度図られていること等の基準に該当する市町村につきましては、この農地利用最適化推進委 員を置かなくてもよい、要するに、従来の農業委員一本の体制でやることができるという例外規定も置いているということでございます。
○畠山委員
最初にそのことが答弁されたので、ちょっと確認だけ改めてしたいと思うんですけれども、関連して、推進委員の定数については、政令で定める基準に基づいて、条例で定めるというふうにしています。
今のこともかかわって、改めて具体的に、定数や置く置かないなど、今話したことについて、どういうような基準が想定されているか、お答えできますか。
○奥原政府参考人
推進委員の定数につきましては、今御指摘のように、政令でもって基準を決めるということになりますけれども、一つイメー ジをしておりますのは、二十四年度からやっております人・農地プランがございます。それぞれの地域で話し合いをしていただいて、農地を担い手のところに集 めていく、これをやるときの単位が、市町村を幾つかの区画に分けてできておりますけれども、これは地域によってまちまちでございますが、こういったものが きちんと進んでいくということが一つの大きな要素でございます。
そういったことも考慮しながら、この推進委員の定数についてはきちんと決めていきたいというふうに考えております。
○畠山委員
先ほどあったように、地域ごとにさまざまな実態があるわけですから、弾力的な運用なども改めて私は求めておきたい。
それで、先ほどの議論に戻るんですけれども、役目が二つあるから分けられると言うけれども、その二つが一体となれたから農業委員が果たせてきた役割が あったというふうに思いますよ。だから、現場から、違いがわからないという声がいまだに出てきているというふうに思うんです。
農業委員を半分にしたとして、推進委員を置いて、トータルでふえるなどのような答弁もありますけれども、そういうことをしないで、そもそも本来は、農業委員の定数を見直して、ふやしていくような方向があるべきだったのではないかと思うんです。
それについては、実例で、大臣に伺いたいと思います。
八日の地方公聴会で、加賀市農業委員会の小川会長は市町村合併前と合併後の違いを述べています。合併前の農業委員数は三十八名で、農業委員一人当たりの 担当が百ヘクタールだったのが、合併後は、二十四名で、一人当たりの担当は平均百四十五ヘクタールと話されておりました。合併した町では定数基準によって 農業委員一人当たりの受け持ち面積がふえて、これ以上減らさないでほしいというふうに言ってきているわけです。
だから、分ければいいという性格の問題ではなくて、本来、こういう実情も含めて、ふやすべきだったのではないか、そうやって農業委員会の本来の役割を果たせるようにすべきだったのではないかと思いますが、いかがですか。
○林国務大臣
先ほど局長から答弁いたしましたように、二つの機能というものがあって、それから、確かにうまくいっていた地域もあって、そういうところはあえて置かなくてもいいというような、いろいろな原則と例外を定めていく、こういうことだというふうに思います。
やはり、一般的には、今委員がおっしゃったように、推進委員を置かずに、例えば農業委員の数をふやす、こういうふうになった場合は、まず、農業委員の数 がふえてしまいますので、総会を機動的に開くということが難しくなっていく、こういうおそれがあるということでございます。それから、各農業委員がこれま でと同様に農業委員会としての決定行為と各地域での活動をあわせて行うということになりますと、そうしますと、現場における農地利用の最適化のための活 動、まさに今例に出していただいたように、一人頭のところがふえておりますので、なかなか手が届かなくなるんだ、こういうことでございます。
一方で、農業委員会そのものは意思決定機関として機動的に開いていただく、そのことを追求すると同時に、各農業委員と推進委員が役割分担をすることに よって、その最適化のための活動もしっかりと、あるいはチームでやっていただくことも含めて、機動的にやっていただけるようにしようというのが我々の趣旨 でございます。
○畠山委員
農業委員が仮に半分になるとして、推進委員も同じ数だけ置いて、結局、その総数の半分ずつですから、同じところをやるとなれ ば、それぞれの面積がさらに広くなるということにならないですか。素朴にそうやって計算すると、なることになって、これで本当に全体の、今機動的なと言っ ていることが担保できるんでしょうか。いかがですか。
○奥原政府参考人
これは結局、推進委員の定数をどうするかという問題になると思いますので、先ほど申し上げましたけれども、各地域の人・ 農地プランの話し合いが円滑に進んでいく、それぞれの地域の担い手への農地利用の集積がちゃんと進む、それから、耕作放棄地の発生防止がきちんとできる、 このことを旨として、定数につきましては機能できるようにきちんと決めていきたいというふうに考えております。
○畠山委員
やはり、ちょっと話がまだ抽象的過ぎて、今言ったように、具体的な数で照らし合わせてみると、一人当たりの受け持つ面積が間違いなくふえていくことになるのではないかというふうに思うんですよ。
それで、先ほど紹介した加賀市の農業委員会の小川会長さんが、だから、今の人数がもう最低限だ、人を減らせば、これまでの業務を進めるのに懸念があるというふうな意見を表明されました。
ですから、本来であれば農業委員やあるいは事務局員をふやすべきであって、減らすこと自体が今述べたような問題を発生させるのではないかということを指摘しておきたいというふうに思います。
農地法の改正案について伺います。
本改正案では、農地を所有できる法人の要件緩和が盛り込まれています。一つに、農業者以外の構成員の有する議決権等の要件に関し、総株主の議決権等の二 分の一未満まで認めること、もう一つに、法人の理事等の農作業従事要件に関して、その法人の理事等及び農林水産省令で定める使用人のうち、一人以上が農作 業に農林水産省令で定める日数以上従事すれば事足りるということです。
その理由について、この間の答弁では、現行の要件がネックとなって、六次産業化など経営の発展に対応できない面があるというふうに言ってきました。しかし、六次産業化の発展と農林漁業の成長産業化というのは議論の整理が必要だと私は考えます。
そこで、まず、そもそも六次産業化というのは何なのか、どの法律にどのようにその意義が述べられているか確認します。
○櫻庭政府参考人
お答え申し上げます。
六次産業化の意義につきましては、地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律、平成二十二年の法 律第六十七号でございますが、いわゆる六次産業化・地産地消法、この前文におきまして、一次産業としての農林漁業と、二次産業としての製造業、三次産業と しての小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図り、地域資源を活用した新たな付加価値を生み出す取り組みであるとされておりまして、いわゆる地産地 消等の取り組みと相まって、農林漁業者の所得の確保を通じて農林漁業の持続的かつ健全な発展を可能とするとともに、農山漁村の活力の再生等に重要な役割を 担うものと位置づけられているところでございます。
○畠山委員
今述べてもらいましたけれども、六次産業化の出発点というのは、地域の雇用も含めてきちんと地域が安定していく、そして、何より農林漁業者が主体となって地域の二次産業、三次産業と一体的に推進するものである。まず、そのことを確認しておきたいというふうに思います。
それで、この間、参考人質疑や地方公聴会で、六次産業化を進めてこられた方の話も聞いてきました。私自身も独自の調査も行ってきました。共通しているの は、しっかりと地域に根差していることだと思います。安定的生産を第一にして、市場が求めるからと過大な投資をするのじゃなくて、事業拡大も協議と合意の 上で進めていることが特徴だと思います。繰り返しになりますが、極めて農林漁業者が中心であるということだと思います。
それで、農林水産業・地域の活力創造プランですが、ここでは、「六次産業化等の推進」の中で次のような方向が示されています。「農林漁業成長産業化ファ ンド(A―FIVE)の積極的な活用等により、農林漁業者主導の取組に加え、企業のアイディア・ノウハウも活用した多様な事業者による地域資源を活用した 地域ぐるみの六次産業化を推進する」とあります。
「農林漁業者主導の取組に加え、」と、別の形の六次産業化の姿が提示されているのではないか。ちょっとこの点について、具体的にこれは何なのか、お答えいただけますか。
○櫻庭政府参考人
お答え申し上げます。
これは、六次産業化を進める上で、まず、農林漁業者が主導して取り組むことを基本とする、その上で、地域の食品産業等の企業を初め多様な関係者のアイデ アあるいはノウハウを結集して取り組むことが、地域の活性化に大きな効果を発揮し得ると考えられるケースがあるとして記載されたものと承知しております。
具体的には、例えば、市町村が策定する六次産業化戦略に基づきまして農林漁業者が新商品の開発あるいは販路開拓に取り組む場合、試作品の開発等に対する 補助率を三分の一以内から二分の一以内にかさ上げする、あるいは農林漁業者による新商品開発を推進するための市町村等による加工機械の整備に対する補助と いったぐあいに、市町村の戦略のもとで六次化に取り組む農林漁業者に対する支援メニューを充実するということでございます。
農林水産省としては、このような措置の現場での活用を促しながら、地域ぐるみの六次産業化の先進事例となる取り組みを創出しまして、その横展開を図ることで、農山漁村の所得の向上や雇用の確保の実現に努めてまいりたいと考えているところでございます。
○畠山委員
ここでも、あくまで農林漁業者が主導であるということが大事であるということを確認しておきたいと思います。
そこで、今回の改正案ですが、六次産業化のネックになっているからと、先ほど述べました農業生産法人における農業者以外の議決権要件を、二分の一ぎりぎりまで持ってよいとなります。
これは、例えば別の株主を一人や二人確保できれば、簡単に二分の一を超えてしまうということでもあると思います。参入する企業なり商社によってひっくり 返されるというおそれが、ここには数字上から見てもあり得るわけでありまして、そうなると、この要件緩和というのが、先ほどから話がありましたように、六 次産業化を推進していく上でも、とりわけ農林漁業者が中心であるという根本が危うくなるのではないか。
このあたりの認識はいかがですか。
○林国務大臣
農地を所有できる農業生産法人ですが、継続的に農業に取り組んでいかれることを担保する観点で、役員や議決権等について一定 の要件を設けておるところでございますが、今委員から御指摘があったように、六次産業化等の経営展開を進めていく場合にネックになることがあるということ で、今回の改正において、六次産業化等に取り組む際の障害を取り除こうということで、この要件の見直しということになったわけでございます。
今お話があった件でございますが、この見直しを行ったとしても、法人の総議決権の過半数は農業者が保有するという要件が課される、それから、役員の過半 が農業に常時従事する構成員という要件が維持されるということでございますので、改正後においても、農業者による経営支配が確保されているという農業生産 法人の基本的な性格、これには変わりがないもの、こういうふうに考えております。
○畠山委員
今のはちょっと、先ほど私が言ったことの答弁になっていないかと思います。二分の一未満だけれども、逆に言えば、二分の一以上は確保しているから大丈夫だという趣旨の答弁ではないかと思うんですよ。
繰り返しますが、私が質問したことは、二分の一未満まで、逆に言えば、ぎりぎりまで保有できると、参入する企業や商社か何かわかりませんけれども、いろ いろな意思がどういうふうに働くかわかりません、株主が一人や二人ころっとかわれば、それはすぐ変わるところまで、ぎりぎりまでは認められることになるわ けです。それが、農林漁業者が主導であるということを、根本を危うくすることにはならないかと聞きました。
もう一度、改めて答弁してください。
○林国務大臣
最初の御質問が過半数というふうに聞いてしまいましたので、逆に言えば、農業者の方が過半数を持っている、こういうことを改 めて申し上げましたが、まさに議決権の過半数を持っているということであれば経営支配が確保されるということだろう、そういうことでございますし、それか ら、役員の要件も先ほど申し上げたとおりでございますので、私は、農業者が主導という、経営支配が確保されているという基本的な性格は変わらないのではな いかというふうに思っております。
○畠山委員
なかなかかみ合った答弁になっていないように思うんですが、つまり、この点にかかわっては、参考人質疑や地方公聴会で懸念や異論が出てきた点なんですよ。
五月二十七日の参考人質疑で、有限会社横浜ファーム代表取締役社長の笠原さんは、大手商社や大手企業と一緒にやった経験を引き合いにして、そういう方 は、損益分岐点が、だめだということになると引き揚げますよね、このことを私は危惧していると述べたわけです。六月八日の山梨会場での地方公聴会で、有限 会社ぶどうばたけ取締役の三森さんは、六次産業化というのは、やはり地域とか、地域の歴史、文化にのっとっていなければ六次化をしても進んでいかないと述 べていらっしゃいました。
だから、二分の一未満ぎりぎりまでいろいろな商社や企業の参入の道が広がれば六次産業化が自動的に進むというものではないし、農林漁業者が主体とならないことには不安や弊害があると当事者自身がこのように指摘をしているわけです。
繰り返しますけれども、こういうような指摘も踏まえて、どのように答えますか。
○林国務大臣
笠原さんがおっしゃっている、損益分岐点が違うので引き揚げられるということは、そもそもそういう資本が入ってきた場合とい うことであるから引き揚げるということがあるので、今回、御提案は、まさにそういうことは、別にやりたくなくても無理やり入ってこられるということではな くて、これは上場した企業が株を買われてしまうということと違いまして、もともと、皆さんがそういう資本構成にしようという場合にそういう選択ができると いうだけでございますから、そういう選択をされなければ、まさに二分の一を超えて、お決めになったところでやれるということですが、今の仕組みですと、こ れを超えてしまうと農業生産法人としてなれない、こういう制約があるので、そこの制約は、今委員が御心配になるような点もありますので、ぎりぎり過半まで はやっていこうということでございます。
あくまで、法人の皆さんの判断によってそういうことが行えるということでございますから、その判断において、しっかりとそういう御懸念がないようにしていっていただきたいし、そういうことを我々もしっかりと説明を申し上げていきたい、こういうふうに思っております。
○畠山委員
六次産業化自体については、それぞれの地域で、農林漁業者の皆さんが主体的にさまざまな意欲を発揮して、地域の二次産業、三次 産業と皆さんが本当に一緒に頑張ってきている実態を私も承知していますし、私流に言えば、身の丈に合った六次産業化ということこそ大事ではないかというふ うに思います。
繰り返しになりますが、そのかなめとなるのが、農林漁業者が主体ということであって、こういうような原則を踏み外すことがないような改革でなければならないということを指摘しておきたいというふうに思います。
時間の関係もありますので、最後に、きょうも議論がありましたが、准組合員問題についても質問をしておきたいというふうに思います。
附則五十一条第二項では、きょうも議論になりましたが、准組合員についてだけでなく、改革の実施状況もセットにして調査し、検討を踏まえて結論を得ると しています。その中身については、五年間、正組合員と准組合員ごとの利用量や地域におけるサービスの状況を把握し、今回の農協改革の成果も見きわめた上で 結論を得るとの答弁がされてきました。
それで、なぜ准組合員の規制を検討するかといえば、これはきょうも大臣の答弁がありましたけれども、農業者の協同組織である、正組合員へのサービスがおろそかになってはならないということが一つの理由とされています。ただ、それが本当なんだろうか。
きょうも議論がありましたが、北海道では准組合員が八割いますけれども、信用、共済事業だけではなく経済事業でも黒字の単協さんも多くあるわけです。こういう実態があるのに、正組合員へのサービスがおろそかだというふうには言えないんじゃないか。
端的に、イエスなのかノーなのか、確認したいと思います。
○林国務大臣
まさに今、畠山先生御自身もおっしゃっていただいたように、そういうところもあるし、また、自分のところはそうではないとい う声も実はヒアリングでも出てきたということですから、いろいろなケースが多分あるんだろうということでございまして、まさに、いろいろな地域によって、 また、いろいろな単協によってもいろいろなケースがある、こういうことを踏まえて利用実態の調査をして、その上で議論をしていこう、こういうことにしたと ころでございます。
○畠山委員
いろいろなケースがあるんですよ、今大臣がそれこそおっしゃったように。だから、正組合員へのサービスがおろそかになるから准 組合員についての規制の検討云々かんぬんと、十把一からげ的な言い分といいますか答弁ということでは実態に合わないんじゃないかというふうに私は言ってい るわけです。
それで、地方公聴会で、准組合員についての実態の発言が相次ぎました。小松市農協の西沢組合長さんの発言は、私のところは、事業の全体額からすると、約 四割を准組合員の方が利用しています、この農協法の改正というのは、農業を成長産業にしよう、あるいは農家の所得を向上させようということではありますけ れども、准組合員を制限すると、むしろ逆行するというふうに思いますと述べて、営農指導員の給料などを例にして、准組合員の利用があるから費用を賄えてい ると話されました。そのとおり、実態はあると思うんです。
准組合員の規制こそ、このような正組合員への営農指導など、それこそ正組合員へのサービスが准組合員の規制をすることによっておろそかになってしまうのではないかという指摘です。
逆行するんじゃないか、そういうような実態が起こり得るような認識はありませんか。
○林国務大臣
西沢組合長が公聴会で、信用、共済事業の利益を営農指導のコストや農業関連事業の損失に充てているので、准組合員の利用を制限し、信用、共済事業の収益が上がらなくなると農業振興が図られない、こういう趣旨の発言をされたということは承知をしております。
金融事業の収益に依存をして、経済事業、中でも農産物販売や資材調達といった農業関連事業の改善というものが行われないということはあってはならない、こういうことでございます。
経済事業で黒字の農協というのは、実は全国で二割ございます。北海道では七割ということでございますから、やはり経済事業でも工夫次第で黒字にしていく ということはあるんだろう、こういうふうに思っておりますので、それぞれの事業の収支を改善していくということが重要だと考えておりまして、信用、共済で 黒字が出るので、農業関連事業や全体的な経済事業は赤字でいいんだという考え方では困るなということを申し上げているところでございます。
○畠山委員
経済事業を黒字にする必要があるということであるならば、いろいろ調べたら、こういう農水省自身の議論やペーパーなどもあったので、ちょっと最後にこれを述べたいと思うんです。
これまでも、農協法は何回か改定や検討を繰り返してきています。その中には、経済事業の活性化についても、もちろん議題がありました。
農水省が七年前に出した、平成十三年農協法改正法の附則・検討条項に係る検討結果という文書があります。この十三年改正というのは、地区外の継続的農協 事業利用者にも准組合員資格を付与することとしたものでした。その狙いは、「地区外利用者との安定的な取引関係の構築を通じた経済事業等の活性化」と書い ているわけです。
そして、この文書ではさらに、「今後の課題」というところでも、「優良事例の収集・周知等を通じ、地区外准組合員の加入をさらに進めることにより、経済 事業等の活性化に向けた自主的取組を促進」と書いています。ですから、農水省自身が経済事業の活性化に准組合員制度を位置づけていたという事実は、これは 隠せないわけです。
ですから、今回、反対の方向の検討ではないかというふうに思うんですが、では、ちょっと立ち戻って、農水省がこのように広げようとしていた優良事例というのが間違いだったということになるんでしょうか。
○奥原政府参考人
十三年の農協法改正のときの話は、確かに、准組合員の資格を付与するという話はあるんですけれども、考え方としては、六次産業化を進めるとかそういう観点でございます。
要するに、農協が農産物をいろいろなところに売っていく、そのときの取引先、こういう人たちにも准組合員になっていただければ、これからも円滑にその農産物が安定的に売れるのではないか、そういう意味のサポーター的なところをふやしていく、こういう発想でございます。
だから、その地域に住んでいる方々をどんどん准組合員にするとか、そういうのとはちょっと性格が違うものというふうに思っておりまして、農協の農産物販 売ですとかそういったことを円滑に進める上でこの准組合員資格をどう使うかということを議論したものだというふうに考えております。
○畠山委員
ですから、そういうことを通じて経済事業の活性化を図ろうとしていたというこの事実は間違いないんですよね。改めて確認します。
○奥原政府参考人
個人の方をどんどん准組合員でふやすということでは必ずしもないわけですけれども、農協の販売事業等を円滑に進めるために准組合員を活用するということはそのとおりでございます。
○畠山委員
今答弁したように、そのとおりなんですよ。そういうような形で准組合員をきちんと位置づけて、それで経済事業の活性化なども議論してきたわけではないですか。
それで、きょうもそうでしたし、この間の参考人質疑や地方公聴会でも、この准組合員の利用規制をしないでほしいというのは切なる現場からの訴えです。これはもう何度も何度も繰り返されて出ていることです。
このように、仮に准組合員の利用規制が強められることになれば、先ほど述べましたけれども、農協がいろいろな形で経済事業をやっている、営農指導などの こっちは赤字だ、それを穴埋めするのがけしからぬみたいな議論もあるけれども、こういうことで現場は成り立っているわけですから、これが規制されることに よって農協が農協たる運営ができなくなってしまっては困るというのが、この間繰り返されている現場からの意見だというふうに私は思います。
これが、農協が農協という運営ができなくなってしまえば、それこそ農協解体というふうになってしまうわけでありまして、この准組合員の問題については、利用規制をしない方向で進めることを強く指摘して、質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第18号  平成二十七年六月十七日 一般質疑

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうのこの一般質疑の中心的な議題ではありますが、今月十一日付の毎日新聞で、山田俊男参議院議員関連の政治四団体が行った政治資金パーティーにおい て、チケットは主に国の補助金を受けたJAグループなどが購入していたと報じられました。政治資金規正法ではパーティーの規制はありませんが、この記事で も、専門家からは、「制度の不備をついた「抜け道」的な事実上の献金ではないか。」と指摘をされています。
本委員会は、今国会の冒頭に農水大臣の交代があり、政治資金の問題は李下に冠を正さずの立場が一層求められているというふうに思います。
そこで、林大臣に伺います。
林大臣が就任した翌々日の二月二十五日の予算委員会で、我が党の穀田恵二議員が、政治家であって国務大臣等の公職にある者としての清廉さを保持し、政治 と行政への国民の信頼を確保することが大事ではないかとの指摘の上で、主要閣僚の二〇一三年の企業・団体献金と政治資金パーティーの収入について質問して います。
林大臣は、企業・団体献金は三千五百九十七万円、パーティーは九千八十三万円、そして、収入が一千万円以上の特定パーティーと政治資金規正法は規定していますが、二〇一三年においては五回開かれています。
大臣規範には「パーティーの開催自粛」という項目があって、政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものは自粛するとあります。
国民の疑惑を招かないようにするという点で、これだけ大規模な特定パーティーを開いたことについてどのように説明されるか、規範に反しているとは思っていないでしょうか。
○林国務大臣
今委員がおっしゃられましたように、大臣規範には、政治家であって国務大臣等の公職にある者としての清廉さを保持し、政治と 行政への国民の信頼を確保するとの観点から、国務大臣等がみずから律すべき規範、こういうことでこの規範が定められているものと承知をしております。
私としても、国民の疑惑を招かないように、大臣規範の趣旨にのっとって適切に対処している、こういうふうに考えております。
○畠山委員
このときの予算委員会で、安倍総理にこの点を穀田議員は質問していたんですけれども、大体、今大臣が述べられたように、法に のっとってとか、適切に処理をしているなどというふうに述べるんですが、やはりこれは大臣規範として、皆さん方で、自分たちで決めた規範であって、特にこ の政治資金の問題については、国民から厳しい視線が向けられている中で、適切に処理しているという言葉で済まさないで、きちんと規範は守って、大規模なも のは自粛するというふうに表明しないといけないんじゃないでしょうか。
もう一度、大臣、いかがですか。
○林国務大臣
今御紹介いただいた私のパーティーでございますが、これは大臣就任前から継続して開催している勉強会等でございまして、毎年大体同程度の規模で開催をしております。
したがって、特に大臣に就任したから大規模なパーティーを開催したものではない、こういうふうに考えておりまして、先ほど申し上げましたように、この規範の趣旨にのっとって適切に対処してまいりましたし、これからもしてまいりたいと思っております。
○畠山委員
ちょっとかみ合っていないように思います。
先ほど述べたように、国民からこの政治資金の問題については厳しい目線が向けられているということですから、やはりこういう大規模なものは規範にのっとって自粛するということをきちんと表明されることが必要ではないかというふうに思います。
我が党は、本国会に企業・団体献金の全面禁止法案を提出しています。根本的には、法においてこのように企業・団体献金について全面禁止することが必要であるという立場であることを、改めて述べておきたいというふうに思います。
あわせて、きょう、情勢において、TPPの問題も変化が起きていますので、このことについても伺いたい。
十二日の米国議会下院本会議でTPA法案は可決されましたが、それとセットになっているTAA法案が大差で否決をされました。このTAA法案は、十六日にも再採決かと報じられていましたが、その期限を七月三十日まで延期するとの報道も先日されました。
まず、確認ですが、このTPAとTAAの関係、及び、再採決が延期となった内容について明らかにしてください。
○宇山政府参考人
お答え申し上げます。
米国時間十二日、日本時間十三日、下院本会議におきまして貿易促進権限法案、いわゆるTPA法案でございますが、採決に付されまして、可決をされました。
しかし、上院において同法案と一体として採決されましたTAA、貿易調整支援法案、これが下院においては否決されたため、TPA法案の成立には、TAA法案の再度の採決などをめぐる与野党間の調整が必要となるというふうに承知をしております。
下院本会議では、TAA法案の否決を受けまして、再審議を求める動議が提出されていたところでございますが、米国時間の十六日、日本時間本日の未明でご ざいますが、同法案の再審議に関する手続の期限を七月三十日まで延長するという旨の議事進行規則が定められたというふうに承知をしております。
○畠山委員
このTAAが一緒に採決されなければ、オバマ大統領はサインできないというふうになっているところだと思うんですね。
それで、七月三十日までの延期ということであれば、そこまでで採決できるかといえば、今回の結果は大差の否決だったわけですので、七月三十日でも可決の見通しが立つかどうかはまだわからない、見通しがまだ立っていないというふうに思います。
そうなると、六月のTPP閣僚会合の開催どころか、七月においても、閣僚会合をすることさえ、開催が困難な情勢と言えるのではないのでしょうか。そうで なくても、知的所有権や関税あるいは国有企業問題などなど難航課題が山積している状況にあるのは、もちろん私も理解しています。
そうなってくると、今後の日程について、内閣府として今どのように情勢を捉えて考えているか、答弁してください。
○澁谷政府参考人
お答え申し上げます。
交渉に参加している各国とも、TPPを妥結するにはTPA法案が成立することが必要であると認識しているところでございます。TPPの閣僚会議を開催し て大筋合意に至るには、TPA法案がきちんと整い、さらに、今御指摘いただきました知的財産など難航している課題について各国の距離が縮まるということが 必要でございます。
我が国を含め、各国とも、アメリカにおけるTPA法案の状況を今注視しているところでございまして、現時点でTPPの閣僚会合の開催日程について何ら決まっていないというところでございます。
〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕
○畠山委員
今ありましたように、まだ決まっていないし、決められない、進めるには非常に困難な情勢にあるというふうに思います。
TPA法案については、四月二十四日の内閣委員会との連合審査において、その際、私が質問を行ったときに、外務省の資料をつけて質問を行いました。
その手続によれば、TPP交渉の妥結後、九十日間、約三カ月以内に協定署名を行い、それから、法案を米国議会に提出するということが義務づけられています。それから米国議会としての審議が始まるという日程であると思います。
確認しますが、この中身に間違いありませんね。
〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕
○宇山政府参考人
お答え申し上げます。
今御指摘のとおりでございます。
○畠山委員
そのように進んでいくことになるわけであります。
それで、問題は、仮に七月三十日という期限をぎりぎりまで行って、その後の閣僚会合等を通じて八月末に交渉を妥結したとして、米国議会に提出されるのは 十一月末という日程も起こり得るということはあり得ます。この時期は、二月からの大統領選挙の予備選に向けて、もう既にほとんど議会が機能しない状態に なっているのではないかと想定されます。
そこで、大臣に伺います。
今アメリカの議会でこのような情勢が進み、先ほど答弁もあったように、実際の閣僚会合がまだ見通せない状況にある中で、我が党は従来からTPP交渉から の撤退ということは主張してきましたけれども、現在の情勢から鑑みても、TPP交渉にしがみつくということはもう考え直した方がいいのではないかというふ うに思いますが、大臣は今このような状況をどのように考えますか。
○林国務大臣
御党の御主張はかねてより承っておりますので、変わっておられないということは改めて聞かせていただいたところでございます が、TPA法案については、今関係の各省から答弁をいたしましたような状況である、こういうことであります。したがって、TPAが不可欠であるというのは 各国の認識でございますから、やはりこの成立が不可欠だというふうに我々も認識をしております。
今御説明がありましたように、一本の法案の中のTAA部分とTPA部分について別々に採決をする、これは少しわかりにくいんですが、我々の国会のルール ですと一事不再議というのがあるので、一度否決をされますともうそれはこの国会では難しいということだと思うんですが、向こうのルールでは、まだこれは部 分的にやっているので、全体としてはまだ否決も可決もされていない、こういうふうになる、どうもこういうようなことであるようでございます。
まさに今、TAA部分について再度の採決へ向けた調整が行われている、こういうふうに聞いておりますので、引き続き米国議会の動向を注視していく必要がある、こういうふうに考えております。
○畠山委員
今回の状況で、TPPが漂流の危機などと報じられるものもあります。しかし、現実はこのように、実際、アメリカの議会の中で TPAあるいはTAAがセットで可決されないという状況が生まれてきて、現実的にはこの状態こそ漂流と言える状況にあるのではないかというふうに思いま す。
大臣、それでは最後にお聞きしますが、なぜ、アメリカではこのように議会で、TAAあるいはTPAでも、セットで考えたときに反対が強まっている、このような懸念が生まれているというふうに認識されますか。
○林国務大臣
アメリカ議会は私の所管ではございませんのでなかなかお答えしにくいところはあるのでございますが、私の拙い知識で申し上げ ると、アメリカの議会というのは党議拘束という仕組みがございませんので、例えば、共和党の中で賛成や反対の方がいらっしゃる、民主党の中でもいらっしゃ るということで、そもそもが、一つずつの法案やそれぞれの部分について、党としての方向性はあっても、党議として必ず賛成されるという仕組みになっていな いということが、こういうことがよく起こる一つの原因ではないかなというふうには見ております。
○畠山委員
林大臣に米議会を管轄してくれと要求したことは一度もありませんので。
ただ、やはり、こういう形で米国議会で再採決まで延期をする情勢となっているのは、TPPに対する警戒感が議会の中でも、あるいは国民の中でも、あらわれてきているのではないか、表面化し、ふえてきているのではないかというふうに思うわけです。
繰り返しになりますが、我が党はそのようなTPP交渉からの撤退をさらに重ねて主張して、質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第15号  平成二十七年六月九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
通告していないんですけれども、最初に奥原局長に、先ほど松木委員の質問でのやりとりについてちょっと伺いたいんですよ。
ICAの問題について問われて、これは以前に、私もICAから政府のこの間の取り組み方について懸念が示されていないかということを質問し、たしか小泉 副大臣からの御答弁だったと思うんですが、第二原則、第四原則、第七原則と、一つ一つ丁寧に御答弁をいただいて、そういうことを踏まえているものだと思う んですが、先ほど局長の答弁は、ICAの原則というのはできる限り尊重して、拘束されるものではないんだと、答弁が後退しているような印象を受けたんです が、小泉副大臣が述べたように、そういうような国際的な懸念があることを一応踏まえて今回このようにやってきたんだということだったのではなかったんです か。何でこのような、後退するような答弁をするんですか。
○奥原政府参考人
特に後退をしているつもりはございませんけれども、事柄の性格を先ほど申し上げたつもりでございます。
それと、この協同組合原則をできる限り尊重するということも申し上げたつもりでございますので、小泉副大臣から御答弁いただきましたように、ICAの協 同組合原則、第二原則、特に第四原則、それから第七でしょうか、こういった項目に即しましていろいろな検討を我々もさせていただいておりますし、基本的 に、我々の解釈です。我々は有権解釈権を持っておりませんけれども、我々の理解としては、これに即した法改正になっているというふうに理解をしておりま す。
○畠山委員
できる限り尊重するとか、一般的な話じゃないわけですよ。ICAというのは、あのときの質問でも言いましたけれども、歴史をきちんと持って、国連に対して提言もできる、そういう機関からの懸念が示されたということを重く受けとめてほしいという質問をしたはずです。
改めて小泉副大臣があのような答弁をした重みをきちんと感じてほしいし、答弁の中身というのは、質問者だけでなく、委員会全員と国民が聞いているわけですから、改めてその点を指摘しておきたいというふうに思います。
質問に入ります。
本来、この間行ってきた農協法の質問の続きをしたいんですけれども、農業委員会法もまた、今回重要な改正の中身が含まれていると思います。
そもそも農協法も農業委員会法も、そして農地法も重大な内容を含んでいるのに、三つ一遍に審議を進めるという点では、まだまだ質疑するべき内容が多くあるというふうに思っています。
昨年の冬に私は当選して、半年間、こちらの農林水産委員会で、ずっと会議録も読んできましたし、規制改革会議にさかのぼって、さまざま読んでもきました。その最初の方に、農地や農業委員会のことを出発点とする議論となっていることを記憶しているんですね。
ですから、この農業委員会法の改正というものも、やはり重大な中身を持って、議論するべきだというふうに思うんです。
一つ一つ確認していきます。
重要な論点の一つに、公選制から市町村長の選任制にすることと委員数の削減があります。
まず、現状を確認します。
現在の農業委員のうちの選挙委員は、専業農家、第一種兼業農家、それから第二種の兼業農家でそれぞれ何%を占めていますか。
○奥原政府参考人
全国の農業委員会の委員の総数でございますが、平成二十五年十月一日現在で三万五千五百十四人でございます。この中で、選挙委員の総数が二万六千六百五十六人、農業委員の総数の七五%を占めております。
この選挙委員の内訳でございますが、専業農家の全国の総数が一万四千四百二十一人で五四%、それから第一種兼業農家の全国の総数が三千六百七十人で一四%、それから第二種兼業農家の全国の総数が七千六百四十六人で二九%となっております。
○畠山委員
第一種、第二種の兼業農家を合わせて約四割いて、これは先ほども御答弁がありましたけれども、それが農業委員会の活動にかなり影響を与えているというふうに政府が問題視をしてきたわけです。
五月二十一日の本委員会の政府答弁で、農地の利用集積や、耕作放棄地が発生しないよう点検するためには、農業で本当に生活をしている方々というふうに局 長は答弁されているんですけれども、そういう表現で、この方々を中心に運営することがポイントで、その一つの代表として認定農業者を考えていると述べまし た。
認定農業者を改めて確認します。
認定農業者とは、農業経営基盤強化促進法に基づいて、市町村が策定する基本構想の目標を目指して農業者が策定した農業経営改善計画を認定するものである、間違いないですね。
○奥原政府参考人
御指摘のとおりだと思います。
○畠山委員
それでは、もう一つ伺います。
今言ったことが認定農業者ということなんですけれども、それ以外に、認定される要件として、それでは、専業なのか兼業なのかは問われますか。
○奥原政府参考人
ちょっと質問の通告を受けておりませんので、正確に記憶しておりませんけれども、基本的には、基盤強化法に基づきまして 自分の経営の五年間の経営改善計画をつくっていただいて、これが市町村の基本構想に基本的に合っている、そういうものを認定して、いろいろな支援をしてい くというのがこの認定農家の制度でございますので、そのときに、専業、兼業という区分は特別設けていないというふうに私は思っております。
○畠山委員
今答弁のように、専業、兼業は問われないわけですよ。ちゃんと農水省の資料でも、年齢、性別や専業、兼業の別などを問わないで、今言ったような計画で認定されているというふうに書かれている。
そうであるなら、兼業農家の多いことが問題だと言うけれども、認定農業者が兼業でふえていくということもあるわけで、認定農業者がふえれば解決するという理屈はおかしいんじゃないですか。
もっとおかしいのは、新たな農業委員の被選挙権の問題です。重要な問題ですので、これは大臣に伺います。
現行法では、区域内に住所を有することや耕作の業務を営むなどの被選挙要件があります。しかし、改正案では書かれていません。区域外からも、場合によっては国外からも入れるということになるんじゃないでしょうか。
この点を私は本会議で質問したんですが、そのときの総理の答弁でも、適切な人物が確実に就任するようにするというだけで、何の答弁にもなっていません。
なぜ、こういう住所や耕作するという要件をなくすのか。区域外で経営する人でも法人でも企業でも、例えば事業拡大の意図で、農業委員としても入ってこられるということになるんじゃありませんか。この問題をどう考えますか。
○林国務大臣
改正後の農業委員会法第九条で、選任制になりますので、市町村長が選任をすることになるわけですが、あらかじめ地域から推薦 を求めもしくは募集を行うということ、そして推薦を受けた者や募集に応募した者に関する情報を整理、公表する、その上で、その結果を尊重して委員を任命し なければならない、こういうふうになっております。
市町村長の選任制に変更しても、農業委員が地域の代表としての側面を持っておるということ、そしてその活動で地域の特性や地元の事情を適切に反映していくことは、改正後の九条で担保されるもの、こういうふうに考えております。
○畠山委員
それでは否定していないというふうに受けとめますよ。できるということではないですか。そういう、今私が懸念するようなことが起こらないかと。
区域内に住所を有することや耕作の業務を営むという現行の規定があるから、今、地域の代表者としての信頼が生まれているはずです。私がきのう行った地方 公聴会でも、農地を動かすためには顔の見える信頼と信任が大事だという意見がありました。その最良の手段が選挙だというふうに思うんです。だから、地域に 根差して農業委員は働けるということではありませんか。
政府は、この公選制をやめる理由に、選挙になっていないとか名誉職化しているとかなどなど言うけれども、最初に答弁してもらいましたが、現実は、選挙委 員のうちでも、専業農家だけでも五四%、第一種、第二種兼業農家を合わせて四割といいますけれども、第一種兼業も専業農家と合わせれば約七割になっていく わけです。政府が言うような農業で本当に生活をしている方々がこのように多数を占める結果と今なっている。公選制をやめる理由には私は思えないんですよ。 なぜこれで公選制をやめる理由と言えるのか。
改正案は、公選制をやめて市町村長による任命制にするとあります。地域推薦や公募を尊重することとしています。公募となれば、特定の地域や団体の利害を 代弁する人が出ることもあり得ます。また、今まで、選挙ですから公職選挙法で準拠してやっていたわけでして、この公選制をやめれば、地域の推薦をかち取る ための、例えば買収だとか供応が出たときにどうするのか。公職選挙法で対応できない。それでも、地域で選んだからといって、これでいいんですというふうに 政府として見過ごすことになるんですか。いかがですか。
○奥原政府参考人
地方の独立行政委員会というものはいろいろございますけれども、現在の状態では、選挙制をとっているのはこの農業委員会 と海区の漁業調整委員会の二つでございます。ほかは全て首長の選任制をとっておりまして、これが特に不公正に行われている認識は我々は持っておりません。
今回の選挙制から選任制への変更に際しまして、先生からも御指摘いただいておりますが、地域からの推薦をしたり、それから、それぞれ農家の方が公募に手 を挙げていただく仕組みを入れております。それも、単に手を挙げておしまいではなくて、誰が推薦されたか、誰が公募で手を挙げたか、きちんとガラス張りに してその地域の方々に見えるようにする、その上で、その推薦なり公募の結果を尊重して市町村長が選任をする、そこまで手続をこの法律の中に書き込んでおる ところでございます。ここをやることによって、より適切な選任が得られるのではないかというふうに我々は思っているところでございます。
○畠山委員
私は、公選制が必要だと言ったのは、きのう地方公聴会をされた地域の方の言葉をそのまま用いましたけれども、農地を動かすため には顔の見える信頼と信任が大事だ、それとして公選制の役割があったんだということを述べているわけですよ。ほかが選任制でやっているから農業委員会も選 任制にするんだみたいな、そんなことではやはりだめなわけですよ。
それで、不公正と思っていないと言うけれども、なぜ公選制にしてきたのか、そしてその結果、今農業委員がどのような役割を果たせているのかということが基本ではないかと思いますよ。
ガラス張りにして見えるようにすると言うけれども、それでは、具体的に公募や推薦があった人のいろいろな情報をずらっと並べて、何か報告書みたいにして全部の農家に配るようなやり方でもするんですか。ガラス張りにするというのはどういうふうにやるんですか。
○奥原政府参考人
手続の細部まで決めているわけではありませんが、推薦をされた方、それから公募で手を挙げられた方、この方々が一体どう いう農業経営をやっていらっしゃるかとか、農業委員あるいは推進委員になったときにどういう方針で仕事をされたいかとか、そういったことはきちんと整理を して、皆さんが見られるような形にはしなければいけないと思っております。
○畠山委員
余りにもちょっと、これから決めていくようなことばかりが、先ほどからも省令で決めるようなことがあっていいのかと思いますよ。
先ほどありましたけれども、地域に住所がない人も選ぶことができる、買収や供応も禁止できない、あるいは特定の地域や団体の利害も排除できないかもしれないし、参入企業の比率を高めることも可能にもなる、そういったことに狙いがあることになっちゃうんじゃないんですか。
繰り返しますけれども、農業委員は地域農業者から選挙で信任を得たから農地に責任を負うことができました。地域と結びつきが弱まるような農業委員会でい いのか。農地の管理や集積に本当に地域で責任を果たしてもらうのなら、公選制を維持すべきであることを主張しておきます。
通告では最適化推進委員のことも聞くことにしていましたが、飛ばします。
先に、建議の問題を伺います。
建議について、削除する理由が、これまで政府は、一言で縮めて言えば、主たる業務に専念してもらうということを言ってきました。これは、農地の集積など 実務的な業務を中心にしろという意味というふうに受けとめます。でも、これでは、建議や意見表明というのは何か副業にすると言っているようなものではない かというふうに私は受けとめるんですね。
まず、大臣に認識を伺います。
全国農業会議所のホームページがあります。この中で、「真に農業者や地域の農業の立場にたって、その進むべき方向とこれを実現するための政策のあり方を 明らかにしていくことは、農業者の代表として選ばれた農業委員で構成される農業委員会の極めて大事な役割」と建議について述べています。
現行法において建議が認められているというのは、このような全国農業会議所で述べているような理由によるものと確認してよろしいですね。
○林国務大臣
現行法は今お読みになっていただいたような規定でございますが、削除の理由というお尋ねでございますので、まさに今委員がお 触れになっていただいたように、主たる任務として、担い手への農地利用の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消、こういった現場の実務でございます が、今、耕作放棄地が拡大をしておりまして、必ずしも十分に機能していない面があるわけでございます。したがって、意見公表や建議というものは、法的根拠 がなくても当然できるわけでございます。
したがって、先ほど申し上げました農地利用の最適化の推進業務に集中して取り組むことができるようにするために、法的根拠がなくても行える意見公表や建議というものは、法令業務から削除をさせていただいた、こういうことでございます。
改正案の中で、農地に関する施策についてですが、農業委員会がその所掌事務の遂行を通じて得た知見につき、必要があると認めるときは、関係行政機関に対 して、農地等の利用の最適化の推進に関する施策についての具体的な改善意見を提出する義務を課すということにしておりますし、それから、改善意見を提出さ れた関係行政機関の方は、その意見を考慮しなければならない、三十八条でそういう規定を置いておるところでございます。
○畠山委員
第三十八条のことを今大臣は先に述べられましたけれども、答弁されたように、これにおいては、農地等の利用の最適化の推進に関する施策についての建議というふうになっているわけですよ。農業政策全般ではないんですよね。
だから、法的根拠がなくてもできるとか、あるいは、レクなんかでもそうですけれども、これまでの意見公表の機能は確保されるとか言うけれども、全然確保されていない。今言ったように、農地等の利用の最適化の推進に関する施策と限定されているんです。
先ほどホームページからの引用を紹介しましたけれども、農業者や地域の農業の立場に立って政策に反映させるという建議の性格が変わるんですよ。先ほど紹 介した全国農業会議所のホームページとあわせて、この建議について、農業者の公的代表機関としての性格を前面に押し出したものとしています。
大臣に、再度伺います。
改正案では、私が今述べたように、政策への反映としての意見公表は限定されるわけです。それでは、意見表明というのは何か副業扱いなのかと私が最初に疑問を述べたのは、ここに根拠があります。
公的代表機関とこのホームページで言っているような全国農業会議所の立場はもう認めません、限定された意見しか聞きませんということなんですか。
○林国務大臣
先ほど申し上げましたように、三十八条では、むしろ、農地の利用の最適化の推進に関する施策についての具体的な改善意見は、これは提出する義務があるということでございます。
それをもって、それ以外に関することを公表もしくは建議してはならないということはどこにも書いてございませんので、当然、法令業務の中から削除をした としても、意見公表などは自由に行うことはできる、こういうふうに申し上げたところでございまして、農業会議の方のホームページですか、今御引用なさった ような観点からいろいろな意見公表や政策提言をされるというのは今後もやっていただける、こういうことだと思います。
○畠山委員
自由と民主主義の国日本なわけですから、意見表明を自由にできるということは当然なわけです。
私が問題にしているのは、行政庁の農業施策に反映させるための手法が限定されたということではないかという問いです。
それなら、角度を変えて質問します。
二〇一四年二月三日の規制改革会議第八回農業ワーキング・グループでは、農地転用許可などの行政的な側面が農業委員会にあるのと、農業者の自治として意 見を述べる側面との二面性がある、このことについて次のような意見が出されています。このように農業委員会に両側面あることがいろいろ少し弊害を生んでい るというようなことから議論が進められているのが、このときのワーキンググループの議論なんです。
大臣も、農業委員会にこのような二つの側面はあると思いますけれども、このように両側面あることで弊害を生んできたという認識はありますか。これまで建議をこうやって認めてきたことによって、何か弊害でもあったんでしょうか。
○林国務大臣
今のところは御通告がございませんでしたので、規制改革会議で多分お読みになったような議論がなされたんだろう、そういうふうに拝聴いたしました。
我々が今御説明しているのは、市町村の独立行政委員会たる農業委員会の主たる任務としては、担い手への農地利用の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、 解消、こういうことが主たる任務である、こういうふうに御説明をしておるわけでございまして、これに集中して取り組むことができるように、法的な根拠がな くても行えるところは法令業務からは削除をする、そういうふうに申し上げているところでございます。
○畠山委員
この建議が外されるということは、後でもう一度振りますけれども、農業委員会としての性格を変えていくことにつながっていくというふうに私は思います。
農業委員会だって、もちろんこれまで好き勝手なことを言ってきたわけではありません。建議の中身が政府に厳しいことがあったとしても、それは地域の実態 を踏まえて出されてきた意見なわけです。きちんと踏まえて施策に反映させていくということが当たり前であって、私は、この建議の問題というものについて、 全面的に、これまでどおり残しておく必要があるということを指摘しておきます。
次に、ずっと読んできて、私はわからないことや疑問のものがたくさんあるんですけれども、情報開示にかかわって、いろいろなところで条文があります。
まず確認だけをしていきたいと思います。
第五十二条では、ネットワーク機構の情報提供についての定めがあります。その第一項に、農業経営を営み、または営もうとする者の求めに応じ、情報の提供を行うことができるというふうにあります。
今、農地ナビが運用されていて、農外から参入する方や法人に対して、かなりの農地の情報は入手できるというふうに思います。
この第一項で言っている中身というのは、農地ナビ以上のものも提供できるということになるんでしょうか。局長、お答えください。
○奥原政府参考人
基本的に、この第五十二条第一項で書いてございますのは、農地ナビの話を想定した規定でございます。
○畠山委員
農地ナビの範囲内ということで確認します。
ただ、問題は、農地ナビの範囲内というふうに出す方は考えるんですけれども、第五十二条だけでは、求めに応じて情報を提供しなければならないとしか書い ていないんですね。つまり、いろいろなことをとにかくじゃんじゃん聞かれて、しかし農地ナビの範囲内におさめなきゃいけないということであるならば、どこ かで何か条項に担保しなければいけないのではないかと思いますが、それはどのように考えますか。
○奥原政府参考人
農業委員会のネットワーク機構の仕事ということになりますので、ネットワーク機構については、いろいろな条文がございま して、特に、業務をやる場合について、業務規程というものをつくって、これは、県のネットワーク機構であれば県知事、それから全国のネットワーク機構であ れば農林水産大臣の認可を受けるということになっております。こういったところで、そこについてはきちんとコントロールをしたいというふうに考えておりま す。
○畠山委員
今の答弁の内容で確認しておきたいと思います。
それでは、情報と秘密にかかわって、どうしてもよくわからないのが、ずっと条文を読む中に、第十四条で、農業委員の秘密保持義務規定が新設されるんです ね。この秘密保持義務規定は、農業委員だけでなく、最適化推進やネットワーク機構などにも課せられる同じ規定があります。
今回、なぜ新設したのか、また、この場合の秘密というのは何を指すのでしょうか。
○奥原政府参考人
まず、農業委員の方でございますが、これは特別職の地方公務員ということになります。したがいまして、地方公務員法の対象外ということになりますので、地方公務員法第三十四条に書いてある守秘義務がかからないということにまず法的になります。
そこで、今般の改正では、近年、個人情報の保護の必要性が相当高まっておりますし、特に、農業者の多様化が進む中で、農業委員会がいろいろな相談を受け た場合に、相談者の個人情報ですとか企業の経営に関する秘密、こういったものについて慎重な取り扱いを行う必要が生じてきていることもございます。
それから、一昨年の農地法の改正、これは農地の中間管理機構のときの改正でございますけれども、これによりまして、先ほど御指摘いただきました農地台帳 ですが、農業委員会にその作成が義務づけられました。今回、農地ナビでもって、個人情報は除いておりますけれども、インターネットで情報を見ることができ るというふうになっているところでございます。
こういったことも考慮いたしまして、地方公務員法では守秘義務がかからない農業委員につきましても、法律の中できちんと秘密保持義務を課して、情報管理をすることが適当であるというふうに判断したものでございます。
○畠山委員
今までも、もちろん個人情報に農業委員の皆さんは触れることがあったはずなんですよね。いろいろ知り得ていたというふうに思う わけです。それでも、きちんと個人情報は守られていたのではないのか。わざわざ法律に書かなくとも、地域の農業者により選挙で選ばれた地域の代表としての 自覚や責任があるから、個人情報を含めた農地情報はきちんとこれまでも管理されてきたというふうに思うんです。いわば、公選制が秘密保持の担保として働い てきたのではないかというふうに思います。
しかし、今回、改正案では、公選制を変える。委員の要件も変える。先ほど指摘したように、いろいろな人が委員になるかもしれない。秘密保持義務規定を置 くことで、図らずも、信頼や責任を負えるかわからない人が委員に選ばれるおそれがあることを証明したのではないかというふうにも思うんですが、そういう想 定を含めてこの規定を新設したんですか、どうなんですか。
○奥原政府参考人
法案をつくるに際しましては、政府の中で、内閣法制局を含めて、相当議論をしてつくってきておりますけれども、この秘密保持義務に関しまして、公選制との関係で議論をしたことは一度もございません。
従来書いてございませんでしたけれども、これだけ個人情報の保護が非常に重要な課題になっているときに、やはりこれは書いておかなければいけない、そういう整理をしたということでございます。
○畠山委員
農地の個人情報は、今になって初めて農業委員が触れているものではないはずです。法律に書かれなくても、地域の代表としての自覚で自律的に守ってこられたというふうに思います。
新しい委員の要件で、農業に関する識見を有する人というふうにしていますよね。それでは秘密を守るのに不安だということになるのであれば、どれほどの識 見かということになるわけです。そもそも、要件の変更が生み出した問題ではないかというふうに私は思います。考え直すべきことを求めます。
時間が迫っていますので、農業委員会法の第一条について、先に進めます。
きょうは、農業委員の公選制、委員の要件変更、飛ばしましたけれども最適化推進委員、それから建議権の削除などなど、個別に見てもさまざまな重要な変更 があって、それが総じて農業委員会の性格を変えることになるというふうに思います。そもそも目的を定めた第一条を変えることに問題がある、ここが大問題だ と思います。
それで、現行法について、農業生産力の発展及び農業経営の合理化を図り、農民の地位の向上に寄与するため、農業委員会などについて定めることを目的とし ています。改正案では、きょう議論はされましたけれども、農民の地位の向上に寄与するという規定がなくなります。それに対しての政府の答弁は、戦後、そし て今現在との状況が異なるということが出発点のような答弁をしました。
ただ、当時、法の制定時と現状が異なるという説明だけでは、わざわざ目的を変える理由にはならないんじゃないかと私は思うんですね。
農業委員会は、農地転用の許認可だけが仕事ではなく、これは午前中の答弁でもあったと思うんですけれども、人と農地をきちんと守っていくという、人とい う言葉を局長は答弁されたと思うんです。農民という人の暮らしを支える仕事も農業委員は行ってきた、それが農業生産力においても重要な意味がある、これが 現行法の目的の当初のことだというふうに思うんです。それが今でも生きているはずです。
例えば、きょう、パンフレットを持ってきましたが、これは、二〇一三年度の「「家族経営協定」のすすめ」というパンフレットです。農水省の男女共同参画 加速化事業で推進協議会が編集、発行をしたものです。家族経営において、家族一人一人の役割や就業環境について家族で話し合い、協定を結ぼうという呼びか けのパンフレットです。
この協定を結ぶところが年々増加していますし、ページを開くと、家族経営協定を結ぶとこんな効果があるということで、経営理念などを家族みんなで共有で きるようになり、家族全員の経営意識が向上したとか、結束が強まったとか、経営の合理化が進んだなど、よいこと尽くしに書かれているわけです。
こういう事業にかかわって、農業委員はどのような役割を果たしていると認識していますか。
○奥原政府参考人
ちょっと通告がございませんでしたので、詳しく担当からまだ聞いておりませんけれども、農業委員の方々は、やはり地域の中で農家に働きかけて、この家族経営協定を結ぼうという働きかけは相当されているんじゃないかなというふうには思っております。
○畠山委員
局長が、人と農地を守るために農業委員の役割はあるんだと答弁されたように、これ自身も、家族、人を守るための、あるいは発展させていくための重要な協定をつくる作業として、農業委員が役割を果たしているわけです。
この家族経営協定を結ぶ手順の中に、普及指導センターや農業委員会などの指導機関からの意見も聞いてみましょうとか、協定を結ぶときは、家族員だけでな く、そのような指導機関の立ち会いがあるとさらに確かなものがありますということで、農業委員会は、農地の許認可だけでなく、このように、家族経営をさら によりよくしていくものも含めた役割を十分に果たしてきている、これが現状の仕事の中身の一つだと思うんですね。これは、現行第一条の精神で、農家の暮ら しと経営の改善に深くかかわってこられた、これが農業委員の中身だ、本旨だというふうに思います。
今回は、その目的が変わる。人と農地と言っていたものを、農地の方に重きを置いて、このような家族や農民、人というところにかかわる役割はもうしないと いうことにならないのか。定数が減らされるということになって、こういうような仕事というのは一体誰がやるのか、推進委員がやるんですか、どうするんです か。こういうような事業ということも含めて、農業委員の中身というのは検討されているんでしょうか。
○奥原政府参考人
今回の農業委員会法第一条の改正ですけれども、主眼が、農民の地位の向上に寄与するというのを落とすことにあるわけではございません。
先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今回の改正の中で、これまでの都道府県農業会議、それから全国農業会議所、これがそれぞれ農業委員会ネット ワーク機構に変わるという制度変更がございます。目的の中には、この県の農業会議と全国農業会議所が書いてございますので、ここはもう書きかえざるを得な いということで、この目的の部分の見直し、検討をした、こういうことでございます。それがなければ、この一条について、特に変えるという必要は生じなかっ たというふうに我々は考えておりますので、基本的に、従来やっていた、そこの部分の仕事が変わるというふうに我々は考えておりません。
○畠山委員
ちょっとよく理解できないんですけれども、同じような答弁が午前中もあったかと思いますが、つまり、組織を変えるから目的を変 えたということになるんですか。普通、目的がこのような、中身を変えるがゆえにこう組織を変えましょうとか、そういうことではなく、今言ったような話をも う一度。
○林国務大臣
一条の古い方と新しい方を比べていただきますと、現行の方は、農業委員会、都道府県農業会議及び全国農業会議所について、そ の組織及び運営を定めること云々、ここが今回の法律で新しい組織、農業委員会ネットワーク機構というふうに変わりますので、ここは変えなきゃいけないわけ ですね。したがって、この一条の所要の改正をしたということでございます。
当然、そのときに、その全体についての書きぶりを、いわば現代的なものに見直すということで、農民の地位向上という言葉は、昭和二十六年にこの法律が制 定された終戦後の間もない時期でありまして、地主が小作人を一方的に搾取する関係にあった農村の、民主化とか機械化等による農業生産力の発展を図っていく 必要性が高かった、こういうこともあって、農民の地位の向上、こういうことが目的規定になったわけでございますが、近年は、この昭和二十六年当時とは大き く変化をしておりまして、地主が小作人を一方的に搾取するというようなことはないわけでございまして、現在も変わらぬ課題である農業の健全な発展というこ とをそこに規定させていただいたわけでございます。
当然、農業の健全な発展をするに当たっては、今委員がおっしゃったような、その主体である農家の皆さんがしっかりといろいろなサポートを受けてやっていくということは、当然このことの前提になるというふうに考えております。
○畠山委員
きょうも、午前中議論がありましたけれども、小作農の話云々かんぬんはもちろん承知はしていますけれども、さまざまな産業があ る中で、農家の方々がきちんと安定した手取りを確保できる、安心して生活できるということが目的として書かれている中身だったんじゃないんですか。この第 一条の目的が変わることによって、逆の話も先ほどしていましたけれども、所掌事務も変わるし、建議についても、先ほど言った限定もかかわってくるというふ うに思うわけですよ。
こういう農業委員会が、いわば農地流動化の事務的な団体に矮小化されるんではないのか。政府の言う、担い手と参入企業への農地集積を進めるだけの機関に変質することになるんじゃないかというふうに指摘をしておきます。
最後に、時間がありませんので、農地法について一つだけ大臣に伺います。
規制改革会議では、農地法も第一条の目的規定から変えることが議論されています。現行第一条の結論を読むと、「もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。」とあります。ただ、今回はこの第一条は改正されません。
この第一条は変える必要はないということを確認していいですね。そのような認識でいいですね。
○林国務大臣
そのまま御提案をしているということは、今変えるということではない、そういう御提案でございます。
○畠山委員
確認しました。
農地法もこのようにまだ議論を始めたばかりですし、最初に述べたように、農協法についてはまだ質問すべきことがあるというふうに思っています。
引き続き審議をすることを改めて私から強調し、質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第13号  平成二十七年六月二日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
前回の質問に続いて、農協の性格や目的にかかわる部分から質問したいと思います。
現行の第八条の変更について、改めてこの間の経過なども調べました。
与党取りまとめを踏まえた法制度等の骨格という、この間もずっと見てきましたけれども、左側に昨年六月の与党取りまとめ、右側に法制度等の骨格という表 になっているものですけれども、そこで、現行第八条の取り扱いについて、与党からは特段の記述はないんですけれども、骨格では、それが翻訳されて、第八条 の改正というふうに出されています。これはなぜなんでしょうか。
○奥原政府参考人
現行法の第八条のところは、「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」ということが記述をされております。この 規定の趣旨につきましては、株式会社と協同組合は当然違いますので、出資配当を目的に事業をするわけではないということでございます。その意味で、別の条 項で、五十二条のところでは、出資配当の上限というものも決まっているということでございます。
ただ、この出資配当の上限ということで、営利を目的として仕事を行ってはいけないとは書いてございますが、この規定が関係者に誤解をされている部分が結 構あるのではないかというふうに思っておりまして、この規定があるために、そもそも利益を得てはならない、あるいはもうけてはいけないといった解釈もされ ている傾向が見られるところでございます。
今回の改正では、この規定を削除することによりまして、それぞれの地域農協が、本当に農産物の有利販売に取り組んでいただいて、農業所得の向上につなげ ていただくということを促す観点におきまして、この営利を目的として事業を行ってはならないという部分は削除しております。
そのかわりに、組合は、事業の実施に当たり、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければいけないというのを二項で書きまして、さらに、組合は、農畜産物 の販売等において、事業の的確な遂行により高い収益性を実現し、その収益で、事業の成長発展を図るための投資または事業利用分量配当に充てるよう努めなけ ればならないという規定を追加しているところでございます。
○畠山委員
きょうも議論になっていますけれども、この現行第八条の改定、変更の問題というのは真剣に論議しなきゃいけないというふうにやはり思うんですよね。
先日の参考人質疑でも、懸念の表明が相次ぎました。
谷口参考人は、持続性を担保する上で、営利が全くない状態でいけるかといったら、いけない、高い収益という言葉で実現できるようなことが求められる局面 がある、それはわかるんです、としても、それが最終目的かというと、そうではないだろうと指摘をしました。また、協同組合としての特性を踏まえながら、営 利規定ということで十分なので、前のままでいいというのが基本的な私の考えと表明しました。
また、石田参考人からも、協同組合の非営利原則というのは、高い利益を上げるかどうかということに関心があるわけじゃない、得た利益をどう分配するかに関心があるわけだなどと述べられました。
先ほども述べましたように、総じて、現行法第八条の改正が必要なのかどうか。前回の質問でも私は疑問があるということを述べましたが、このように、参考人からも現状でいいのではないかという指摘に対して、改めてどのように受けとめますか。
○奥原政府参考人
五月二十七日の参考人の質疑は私も聞かせていただきましたけれども、参考人の方々の御趣旨、十分私も理解できていないところがあるかもしれません。
今御指摘ございましたように、谷口参考人の方からは、農協は適切な利益を上げて還元すべきだけれども、利益の獲得が最終目的ではないことから、現行第八条は改正する必要はないという御意見だったのではないかと思っております。
それから、石田参考人からは、改正後の七条第二項につきまして、農協は准組合員にも奉仕するものであるので、農業所得の増大に配慮ということは削除すべきだという御意見もございました。
それから、太田原参考人からは、大いにもうけなければならないというふうに規定してしまうと、独禁法に抵触するのではないかといった御意見も出されたというふうに思っております。
これらの御意見につきまして、真意が十分わからないところもございますが、石田参考人の御意見につきましては、准組合員を含めて組合員の方に最大の奉仕 をするという部分を維持した上で、農業者の協同組織でございます、議決権を持っているのは正組合員の農業者でございます、そういったことを踏まえて、農業 所得の増大に配慮するように求めるという趣旨で今回入れているというふうに考えておりますし、それから、谷口参考人、太田原参考人の御意見につきまして は、改正後も、農協には出資配当には制限が課されております、五十二条は維持をされておりますので、農協が営利組織、出資配当を目的とする組織になってし まうことはないということでございますので、御指摘はちょっと当たらないのではないかなというふうに考えております。
今回の八条の改正の趣旨は、あくまでも、営利を目的として事業を行ってはならない、この規定の趣旨が誤解をされて、利益を得てはならないとか、もうけて はならない、こういった誤解がされがちであるということを考えまして、規定を削除するとともに、農業所得の増大に最大限配慮するということ、それから、販 売等において、的確な事業の遂行によって高い収益性を確保して、その収益で、成長発展を図るための投資ですとか事業利用分量配当に充てるといった趣旨のこ とを書き込んでいるということでございます。
○畠山委員
それは、もう何度も聞いてきて、誰が誤解しているのかということもさんざん議論してきたんですけれども、今言ったように、第五十二条の上限規定が残るから趣旨は残るということも、レクなどで何度も聞いてきました。
しかし、趣旨が残ることと新たな性格が加わることは意味が違う。農業所得の増大を目指して高い収益性を実現するとなれば、ハイリスクなことにも手を突っ 込むということがあり得るのではないのか。規制改革会議では、農協もリスクを負うべきだとの議論が見られます。そうなれば、もうこれは協同組合とは言えな くなってくると思います。
協同組合の特性を踏まえれば、出資配当の上限規定は残すにしても、今焦点となっているこの基本の現行第八条について、このままでいいんじゃないかと思いますが、改めていかがですか。
○奥原政府参考人
ただいまリスクの話がございましたが、農協にはやはり農産物の有利販売に積極的に取り組んでいただきたいと思っておりますけれども、それには、ある程度のリスクをとることが当然必要だというふうに我々は思っております。
現在の農協は、九六%ぐらい委託販売という形でやっておりますけれども、これは、農協にとってはリスクは非常に低いわけでございます。農産物の値段が下 がっても、そのリスクは農家の方が負うという形になるわけで、その結果として、農協の販売努力が本当に十分なのかといった問題も生じているというふうに 思っております。
そういう意味では、いきなり高いリスクをとるということを求めているわけではございませんので、昨年からの政府・与党の取りまとめの中でも、買い取り販 売を段階的にふやしていく、適切なリスクをとりながらリターンをふやしていく、農家の所得がふえるように創意工夫をしていくという趣旨のことをずっと書い てきているわけでございます。
そういう意味で、従来の第八条、今回、改正法第七条ということになりますが、この規定の改正は必要なことだというふうに考えております。
○畠山委員
参考人などが言っていたのは、そういう道を切り開くことに対する懸念が表明されてきているというふうに思うんですよ。そして、 産業競争力会議の議論などでも、今局長がおっしゃったように、フェアな競争ができる環境になっているかということから議論が始まって、さまざまな競争のイ コールフッティング論などがけしかけられてきているというふうには私も承知はしています。
ただ、今言ったように、これは農協の原点を変えてしまうものなのではないか。しかも、産業競争力会議や規制改革会議などの、上から変えていくようなことでいいのかという問題があると思います。
現行法のもとでも経済事業が良好な農協はあるわけですし、改正案のような、目的まで変える必要はないのではないかということを改めて指摘して、時間もありますので、きょうは、監査問題を少し中心的に伺っていきたいと思います。
これまで農水省は会計監査と業務監査を一体に行うからこそ単協の健全な経営を確保できたと認めてきたというふうに思うんですね。改正案は、公認会計士か監査法人による会計監査を受けることにしています。業務監査は任意にしています。
今後は、会計上の健全さのみが確保できればいいということなのでしょうか。なぜ業務監査は任意としたのですか。
○奥原政府参考人
監査の問題でございますが、今回の農協改革の中では、全中の監査の義務づけを廃止いたしまして、公認会計士の会計監査を義務づけるという改正をしているところでございます。
これは、准組合員が、農業者であります正組合員を上回るような状況になってきているということ、それから、農協の数も現在は減っておりまして七百農協に なっておりまして、一農協の貯金量の規模も非常に大きくなっております。平均でも一千億を超えておりますし、中には一兆円を超える貯金量の農協というもの も幾つか出ている状況でございます。こういったことに鑑みまして、農協が信用事業を今後とも安定的に継続できるようにするという観点で、会計監査につきま しては、ほかの金融機関、銀行、信金、信組と同様の監査体制をとることが必要というふうに判断をしたものでございます。
一方で、業務監査の方でございますけれども、これは、ほかの民間組織におきまして業務監査を受けることを義務づけられている組織は基本的にございませ ん。基本的に、それぞれの組織が自分たちで、内部で監査をやりますし、監事も置かれているということでございます。そういう意味におきまして、業務監査に つきましては、ほかと同様に任意にするということで、今回は規制をかけておりません。
したがいまして、農協の方からしますと、自分の農協の農産物の販売体制の刷新等を進めて農家の所得向上を図ろうとするときに、自由に能力のあるコンサルを選んで相談するですとか、いろいろなことが自由にできるようになってくる、こういうふうに考えております。
○畠山委員
先ほど、最初に言いましたけれども、これまで農水省は会計監査と業務監査を一体にやってきたからこそ意味があったという立場をずっととってきたじゃないですか。何で、他の組織で義務づけられていないから今回外しましたと、なぜ今になってそうなるのか。
少し進めます。
農協は、御存じのように、総合事業体で、例えば部門別で損益計算をやるとしますね。そうすれば、もちろん信用、共済が黒字で、それから農業関連、営農関 係を含めた事業が赤字というふうに分かれることは見込まれるでしょう。それで、会計士さんの方から赤字部門の効率化だったり改善ということが指摘されるこ とは、もちろん一般的にはあり得ることだと思うんですね。
そのような可能性はあるというふうに思うかどうか、それだけ確認します。
○奥原政府参考人
会計監査の仕事というのは、総会等に出します会計書類が正しいかどうか、これをきちんと判断して証明するという仕事でございます。それを踏まえて経営改善の指導とかをするのは、これはまた別の話でございます。
従来の全中の監査につきましては、全中は監査権限と同時に指導権限を持っておりましたので、そういうことも実態的にはあったかもしれませんけれども、基 本的に、監査というのは、出されている会計書類の数字が正しいということを証明する、それにとどまりますので、それを踏まえて組合員の方々がきちんと今後 の経営方針を決めていく、こういうことだというふうに考えております。
○畠山委員
それならば、では、改めて、これまで公認会計士さんが、さまざまな国による中身に含まれているものがあったんですけれども、結局、どういう役割を果たすことにならざるを得ないかということを少し具体例で述べたいと思うんですね。
北海道の赤平市というところの市立病院があります、ちょっと病院の話から始まって恐縮ですが。二〇〇七年に自治体財政健全化法が成立しました。これは、 特別会計や第三セクターも連結して、自治体財政に組み合わせてチェックするというものでした。当時、北海道でしたので、夕張の財政破綻が表面化して、もち ろんそれにかかわる流れだったというふうに思います。
もちろん、この市立病院でも多額の累積赤字を抱えていたわけです。そのときの国の支援策で行ったのが、公認会計士を送って経営改善策を提案させるという ことでした。先ほど局長がおっしゃったように、公認会計士としては本来やるべき別の中身はあるわけですけれども、ただ、その結果、いろいろ市の方でも努力 したり、苦労したり、病院とも相談したという経過は承知しているんですけれども、あらわれたものは、事務職員の契約社員化だったり、あるいは給食の外注化 などなどでした。
それで、患者の負担増や医療の質が低下する心配はないか、これは、当時、NHKの「クローズアップ現代」でも報道されたほどの問題だったんです。病院の 問題ということではなく、損益の計算をしていけば、どの事業でもこういうようなことは起こり得るということだと思うんですね。
先ほど述べたように、農協でいえば、赤字部門の典型は営農指導などの分野で、なかなかやはりこれを黒字にするということは難しい。しかし、組合員が今農 協に一番強化を求めている分野の一つにこそ、この営農指導があると思います。これが仮に赤字だからといって、人が減らされて、さらに現場に足が遠のいた り、賦課金や指導料の引き上げということになったりすれば、これは組合員の利益にならないし、負担もふえることにならないか。
私の言っていることに飛躍があるなら、それはそれでそう指摘してもらいたいんですけれども、そういうような現場の組合員にとって、この監査の制度を変えることがどのような影響を与えるかというのは、みんな、わからないし、非常に知りたいところだと思うんです。
監査を外せば所得がふえるという論理でこの問題はずっと議論されてきたと思うんですけれども、逆に、このような可能性がないというふうに言えますか。
○奥原政府参考人
先生が御指摘になった市立病院のケースですが、詳しいことを全く承知しておりませんけれども、今のお話を伺っております と、それは公認会計士の方が会計監査をしたというのを超えておりまして、多分、コンサル業務も頼まれているというケースだというふうに思っております。ま さに提案をさせるというふうに先生は今言われたと思いますけれども、その経営の状況、数値の面を含めた上で、具体的にこれからどうしていくかという提案を する、これは通常の会計監査を超えた話だと思います。
通常、会計監査を受けるだけであれば、会計書類の数字が正しいかどうかをチェックする。当然、部門ごとに赤字かどうかは正確にわかるようになってくると 思いますが、そのときに、それぞれの部門をどういうふうにするかは、それはそれぞれの組織が自分たちで決めていく。仮に赤字であっても、その地域にとって その事業は絶対必要であるという場合には、これは継続する判断は当然あり得ますし、従来もそういうふうに農協は判断をしてきているというふうに思っており ます。
○畠山委員
それでしたら、さらにもう少し聞きますけれども、今回の監査問題というのは、先ほど林大臣もおっしゃられたように、最後まで残った論点で、その結果、焦点が当たったというふうに話されましたけれども、残るのは残っただけの意味がやはりあったというふうに思うんですよ。
信用、共済で赤字の部門を埋めているとの指摘がされているのに対して、せめて透明化をして健全性を図らなければいけない、さまざまなそういう議論や経過などがあったことは私も承知はしているんです。
ただ、先ほどの繰り返しになりますけれども、監査を外すことによって農業所得が増大するという理屈はなかなか組合員や農業者の方が理解できないとずっと言ってきているじゃないですか。だから、この結果、監査を外してどうなるかということが組合員にとって重要なんです。
私が言ったように、実際、損益計算していったら、こんなふうに赤字の部門というものはどうしても効率化していく対象になっていくんじゃないか、それが促進されるんじゃないか、一般的にはそのようなことが考えられるんですけれども、改めていかがですか。
○奥原政府参考人
監査のところの制度を直したからといって、それで直ちに農業所得が上がる、こういう因果関係には基本的にないと思っております。
先ほどから御説明しておりますように、基本的に、今回の監査体制の変更につきましては、信用事業が相当大きな事業になっておりますので、一兆円を超える 貯金量を持っている農協も出てきている、こういう状況の中で、やはり農協が信用事業を安定して営んでいかなければ、これは農協にとっても、それから地域社 会にとっても困るという、この現実はやはりございます。そういう意味では、安定的に信用事業が営めるようにするためにどうするかという観点でございます。
従来から、全中が行っている監査につきましては純粋な外部監査とは言えないのではないかという指摘はいろいろなところから受けているわけでございますの で、そういった批判を受けることなく、これから安定的に信用事業をやっていけるようにするという観点で、会計監査については全中監査から公認会計士監査に 切りかえる、こういうことにしたわけでございます。
それから、業務監査の方につきましては、これも先ほど申し上げましたように、基本的に、ほかの民間組織でもって業務監査を義務づけられているというとこ ろはございません。これは、やはりその組織自体が自分たちで点検をしてやっていく世界が基本でございます。必要なときには部外者にコンサルでお願いすると いうことはもちろんあっても差し支えございませんけれども、全てのところに義務づけるという話ではございませんので、むしろ、必要なときに必要なところの コンサルを適切に頼めるという体制をつくった方がいいのではないか、こういう判断でございます。
○畠山委員
そうしたら、奥原局長、なかなか正面からお答えになってもらえませんので、二〇一三年五月三十日、第十一回規制改革会議ですけ れども、これは局長さん、御参加されていたはずで、このときに、いろいろ事業を展開していく上で農協の経営の透明性について外部監査を受ける必要があると いう議論がなされたのに対して、奥原局長さんはこのように述べられているんですね。
農協の方の経営の透明性ですけれども、
これにつきましては農協も金融事業をやっておりますので、金融の観点から他の業態と同じような規制は法律上かけております。
監査につきましては、公認会計士による外部監査を直接は義務付けておりませんけれども、全国農協中央会がやる監査を必ず受けなければいけないというの が法律で義務付けておりまして、しかも全中には公認会計士の方を三十人入れておりまして、この方の指導のもとに監査をするということになっております。
全中がやっている監査は会計監査だけではなくて業務監査もやっているのです。農協の場合には会計上の処理がきちんとしているだけではなくて、本当に農 家にメリットが出るようなきちんとした仕事の仕方をして欲しいということもございますので、全中が公認会計士の指導も受けながら、会計監査プラス業務監査 をやっているというのが今の法制度でございます。
ということで、この間、やはりずっと会計監査プラス業務監査を一体にやってきた趣旨を、きちんとこの会議の中で局長さんは述べられているじゃないですか。
このままでいいんじゃないんですか。何で変えるんですか。
○奥原政府参考人
今御指摘いただきましたのは、多分二年前ぐらいの規制改革会議での議論かと思いますけれども、それまでの農水省の考え方 をそこで御説明したことは間違いないと思いますが、まさにこの二年ぐらい前から、農協組織のあり方、事業のあり方をどうするかということが政府でも与党で も相当な議論になってまいりました。当日、私は今のようなことを御説明したかと思いますけれども、それに対しましてもいろいろな御意見をいただいたわけで ございます。
その後、政府・与党の中でいろいろ議論した上で、本当にどうやればこの農協組織全体が農家にとってメリットのある組織になっていくのかという観点で、単 協のところも、連合会のところも、中央会のところも、いろいろな見直しを検討させていただきました。その一環として、監査につきましてもこのような改正を する、こういうことになった次第でございます。
○畠山委員
林大臣に伺いますけれども、今言ったような経過だったり、規制改革会議の議論なども私も読ませていただきました。しかし、今 回、公認会計士をこのように入れる問題とともに、業務監査を任意にする問題について、その趣旨がやはり理解できないんですね。そして、先ほど局長さん、く しくも二年前のところで言っているように、業務監査と会計監査を一体にやることの意義の方が私は大きいと現時点においても思うわけです。
林大臣、この間のやりとりも含めて、今どのような認識をお持ちになりますか。
○林国務大臣
そこも大変な議論になったところでございますが、そもそも業務監査というのは、実は農協の世界から一歩外に出ますと、余りな い概念でございまして、まさに先ほど本社と支社というような例えをいたしましたけれども、単協が支社であれば、会社の組織の中として指導して、支社が本社 の方針に従ってやる、こういうことはあるけれども、独立した会社である場合には、任意にコンサルを受けて、もっと経営状況をよくしていこう、もっといい組 織運営をしていこうということがあれば、コンサルを受けるのは当然でありますが、一方、金融監査は、信用事業を営むに当たっては必須のものだ、こういうふ うにされておるわけで、これは必要なものでございます。
したがって、党の中でもいろいろ議論したときも、ここをやはり分けて、信用事業を持続的にしっかりやっていくための金融監査、これは新しい仕組みの中でしっかりと位置づけていく。
しかし、業務監査は、信用事業の健全性が担保されるという前提のもとで、いろいろなことをそれぞれの地域の特性に応じてやってもらう必要があるというこ とですから、一律に全中の金融監査と一体となった業務監査ではなくて、あくまで単位農協が必要であればやっていくということをしっかりと位置づけて、そし て、それぞれの創意工夫でもっていろいろなことをしっかりとやっていただく仕組みをつくっていこう、こういう議論がありまして今の形になった、こういうこ とでございます。
○畠山委員
時間も迫ってきたんですが、結局、監査を外すことによって何が生じるのかということは大きな焦点だと思うんですね。これを外すことによって農業所得がふえるんだというのが政府の議論のたてつけになっている。
しかし、組合員にとって不利益になる懸念があるのではないかというふうなことが私の疑問であります。しかも、農協にとって最も農協らしいと言える部分が もちろん切り捨てられてはならないわけでして、それが、ひいては農業者の所得がふえることにつながるのかどうかということを改めて指摘し、時間もないの で、最後、理事のことだけ一言質問して終わります。
理事の定数の三分の二については組合員でなければいけないとなって、組合員とは、第十二条で、農業者や、当該農協の地区内に住所を有する者や、同じく住 所を有する農民が主たる構成員や出資者となっている団体などとして定められています。つまり、その地区内に住所があるとか、地域に根差しているということ が原則だろうというふうに思います。
この点こそが地域農協たるゆえんだと思いますが、この理事の要件を変えることにかかわって、この点を含めた大臣の認識を改めて伺いたいと思います。
○林国務大臣
今先生から触れていただきましたように、現行の農協法は、理事の定数の三分の二以上が正組合員でなければならない、こういうふうにされております。
農協法が制定された当時、農地解放の直後であったということもあって農業者も均質であったことから、理事に占める農業者たる正組合員の割合を一定以上に すれば農業者のニーズに応えた農協運営を行うことができた、こういうことでこういう規定ぶりになっているということでございますが、申し上げてきたよう に、現在、農業者が大規模な担い手農業者と兼業農家、規模の小さい方が多いわけですが、こういうふうに階層が分かれてきて、組合員ニーズも多様化してきた ということでございますので、現行の理事要件だけでは、農業者、中でも担い手農業者のニーズに十分応えられなくなってきたというふうに認識をしておりま す。
したがって、地域農協が、農業者、なかんずく担い手の意向を踏まえて、農産物販売等農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行っていくことができるように、理事の過半数を認定農業者等とする見直しを行うこととしたということでございます。
○畠山委員
そういう説明でありますけれども、地域に根差しているからこそ、地域農協の意味と強みということがあると思うんです。
そこで、これは局長でよろしいんですけれども、確認ですが、理事に新たに加える農産物販売や経営のプロと言われる方々ですが、今回、法律をちゃんと読め ば、先ほど述べた、その区域内に住所を持たなくても、あるいは農業を営まないケースも、産業化していけばいろいろ出るからあるんだ、そういうケースもあり 得るということはよろしいですね。確認です。
○奥原政府参考人
従来からあります、理事の定数の三分の二以上は正組合員でなければならない、この規定は、今後ともそのまま、まず維持を されます。したがって、三分の二以上が正組合員であれば、三分の一未満の方々はそういう方でなくても今でも役員になれる、こういう仕組みになっているとい うことでございます。
そのことを前提にした上で、さらにこれに加えて、今度の、農協の理事の過半数を原則として認定農業者や農産物の販売や経営に関して実践的な能力を有する 者とするというのがかぶってくるわけでございますので、この販売や経営に関して実践的な能力を有する方というのは、これは地域外の方も当然いらっしゃると は思いますけれども、それでも、理事のトータルの三分の二以上が正組合員、地域の方であるという点は何ら変わらない、こういうことだと思います。
○畠山委員
終わりますが、多くの理事は地域から選ばれている実態もあって、だからこそ、組合員の実情も踏まえた議論と決定などがされてきたというふうに思います。
その地域農協たるゆえんが崩れないかという心配や懸念があることだけを最後に指摘して、質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第12号  平成二十七年五月二十七日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
参考人の四人の皆さんには、朝から足をお運びいただきまして、本当にありがとうございます。きょう、私が最後の質問者になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、小川参考人と鈴木参考人のお二人に、生産者の立場としてのお考えをお聞きしたいと思います。
農家の戸数がだんだん減ってきて、地域社会も成り立たなくなるのではないかと言われています。私は北海道選出の議員なんですけれども、北海道では、酪農 家が年間二百戸、離農や離脱が相次いで、ことしもまたバター不足という状況が生まれてきておりまして、新規参入ということはもちろん大事なんですけれど も、食料の安定供給を進めるという点から見れば、あわせて、高齢化というふうに地域は言われているんですけれども、今頑張っているけれども、余力はあるん だけれども、このように離農や離脱する方々に対しての支援も必要だろうというふうに思うんです。
いろいろな努力を各地でされていることを、北海道のみならず、この間、各地で聞いてきました。
加工や販売で六次産業化なども進めて、地域の雇用も一緒につくるんだ、そうやって若者の定着を図りたいんだと努力されているお話も、先日、私も聞いたん です。同時に、ただ、生産者とすれば、販売や加工の事業も考えるんだけれども、安心、安全な農産物をつくるのが私の本業なんだ、そういう点では、農産物の 価格が安定すれば農家は頑張れるんだよなというお話を聞いたことがすごく印象的だったんですね。ですから、いろいろな多様な生産者の存在が地域においては 必要不可欠だというふうに思うんです。
そこで、長い経験をされてこられた小川参考人の目からと、それから、若い感覚で今現場に向かわれている鈴木参考人の目から、農家や地域社会の維持に今何が必要かということをお聞かせいただきたいと思います。
○小川参考人
お答えします。
農家も非常に多様化しておりますけれども、その地域によって事情が違います。
例えば、中山間地の限界集落に近いような部分の地域もあります。そういった場所では、やはり人自身が減って、地域を守っていくのが容易じゃないという場所の中で農業をどうやって確立するか。特に鳥獣被害等を含めて非常に厳しい場所もあります。
また、北海道に仲間もいますけれども、北海道で六次産業化といっても、物はつくれるんだけれども、売れる場所がなかなかない。地域に人がいないから、つ くってはみてもなかなか売れない。ですから、都市近郊の農業とそういった場所は条件が違うんだよという話は北海道の方からよく伺っております。
根釧なんかへ行きますと、ほとんど酪農で、または肉牛ですけれども、牧草しかつくれないような地域ではございますよね。そういったところで六次産業化す るといえば、やはりチーズをつくったりバターをつくるしかないんだけれども、売る先がなかなかないという話は北海道の仲間からよく聞いております。
また、都市近郊では、そういった安心、安全も含めて、やはり農業の面積等を含めた生産基盤は小さいですけれども、逆に、消費者が近くにいるというメリッ トもあるんですね。そういった点で、直売所なんかも、地域の皆様に利用してもらっているというのは、やはりそれだけ人口が多くて、そういったものが得られ る。
それと、六次産業化を含めてそういったものに対応するのには、やはり地域の産業、先ほども申し上げましたけれども、うちの市ですと、商工会議所、それか ら旧町村の商工会という三つの団体があるんですけれども、そういった団体と連携していく上で、やはり地域にある程度の、群馬県でも伊勢崎市は人口増加率か らいいますと、市では一番です。交通の利便性もあるし、また住宅もふえて、人口もふえている場所でありますので、そういったところでは、地域の皆様といろ いろコラボしたり、また、農業だけじゃなくて地域おこしの面でも、農業者と商工業者が一つのイベントを開くとか、そういった連携も進めております。
ですから、地域の事情によって、なかなかこれも農家だけではなくて、一概に言えないというふうに思いますので、そういった面で御理解をお願いできればありがたいというふうに思います。
以上でございます。
○鈴木参考人
新しく農業を始めた新規参入者の目から見てということで、やはり、周りを見ていると、離農されていく方はいるなとは思うんで すけれども、ずっと農業に携わってきて、農業をされてきた方の技術だったりとか栽培のノウハウだったりとか、そういうものというのは、もう本当に僕みたい な新規参入者からするとすごい宝のように感じます。
でも、その方たちも体力の限界が来て離農を考えているという状態になったときに、例えばこんなことができたらいいなと思っているのは、では、その農地を そのままの状態でお貸しいただけませんかという形で、長年その方が育ててきた農地をお借りする。そのときに、農地をお借りするだけではなくて、やはり何ら かの形で、協力なのか雇用なのか、その方と一緒に協力体制がとれるような状態になると、我々みたいな新規参入者に早期に技術がつけられる先生が身近につい てもらえるという状態にもなりますし、その方たちの体力が、この辺の問題で離農をしようとしていたんだというところが、我々の持っている機械でそのあたり は対応できるということであれば、それ以外の細かい技術的な部分で一緒にやってもらうとか、そういった形ができると、地域の成長が早くなるというのか、農 村自体の成長が早くなるような気がしますし、また、それをきっかけに、ふだん余り触れ合うことのなかったような地域の方だったり年代の方たちとも接点がで きるのではないかなと思っていまして、そういう形の農地の譲渡というのか、利用権の譲渡も一つの形としてあったらいいなというふうには思っております。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございます。
それぞれ地域ごとにさまざまな、歴史も違いますし、農地のあり方、品目、あるいは技術で伝わってきたこともあるかと思うんですよね。
そこで、次に、谷口参考人と石田参考人に、お二人にこれもあわせてお伺いしたいと思います。
今回お出しいただきましたお二人の資料では、今回の改正案についての問題点が幾つか指摘をされております。その中でも、私も先日の委員会で質問を行いま したが、とりわけ現行の第八条の、農協が営利を目的としない組織から、高い収益性を実現する組織というふうに法案上には書かれて、削除から変更されるとい うふうになる点について少しお伺いしたいと思います。
そもそも、きょうも議論になっていますが、協同組合は、市場経済のもとで、組合員を守るために協同の力で事業を進めるということが本旨だったというふうに思います。
それで、改正案のように、高い収益性を求めるとなって、きょうも議論にずっとなっていましたけれども、株式会社の方向などに進むということになれば、そ の協同の組織という目的や性格が変わることになるのではないかということが大きな今回の改正案の論点だろうというふうに思います。
それで、きょう、朝からずっとお話を、あるいは質問もお伺いしまして、農協に対する意識改革だとか職員教育だとか、あるいはさまざまな青年部、女性部の 取り組みだとか、お話も伺ってきましたけれども、これは農協みずからの改革でだめなんだろうか。つまり、このように性格や目的にかかわるところまでの改正 案が必要なのかなということを先日の委員会でも私は疑問を述べたわけなんですが、この中心点になるであろう第八条の部分について、さらにお二人から、私が 最後の質問者ですので、言い残したことがありましたら、あわせてお答えいただければというふうに思います。
○谷口参考人
この点は非常に重要な改正にかかわる論点だと思います。
私は、営利という言葉が実際現場で使われるときに、法律の条文で書いてあることと同じなのかなという疑問があります。実は、JA出資法人というものを立 ち上げてやってきた中で、一番問題になったのはそこなんですね。つまり、JA出資法人は農協が出資している法人だから、農協と同じように営利を求めないよ なという、どこかで縛りがかかっているんですね、意識として。
しかし、私は、その問題を外しました。つまり、初めは収支均衡という路線から、適切な利益を上げて還元するようにすべきであると言いました。なぜかとい うと、営利というのは、営利そのものを組合の目的にするかどうかという話であって、持続性を担保する上で、営利が全くない状態でいけるかといったら、いけ ないですよね。
そもそも、最初から収支均衡を目指して収支均衡するなんということは曲芸です。恐らく、相当もうけられるようにやっていって、結構もうけが出たので、 ちょっと悪い言い方ですけれども、税金の方に行かないで、少し費用で落とすような方向で努力してみようかということで会計士さんの知恵をかりる、節税対策 をするということはあると思うんですけれども、最初からゼロにするようにやるなんというのはほとんど不可能だと思うんですね。
そういう意味では、経済的な利益を求めることが、そのこと自体が究極目的にはならないという意味では正しいんですけれども、今一番大事なことは、組織に しても、個別経営にしても、持続性なんですよね。持続的な経営体として、持続的な組織として、地域農業の担い手になり得るかどうかと考えたときに、高い収 益ということとそれは必ずしも一致しないだろう。
適切なということがあればいいわけであって、しかし、それは現実には困難があります。なぜならば、これだけ価格か何か乱高下があって、となると、もしか すると、高い収益という言葉で実現できるようなことが求められる局面があるということを私は否定できないと思います。しかし、問題は、それが最終目的かと いうと、そうではないだろう。
そういう意味で、協同組合としての特性を踏まえながら、営利規定ということで十分なので、前のままでいいというのが基本的な私の考えです。
○石田参考人
協同組合の非営利原則というのは、高い利益を上げるかどうかということに関心があるわけじゃないんですよ。得た利益をどう分 配するかに関心があるわけです。なぜなら、協同組合が上げる利益というのは、組合員さんからの取引の中で利益を上げるわけです。上がるとすれば、利益が上 がるわけでしょう。
一般の営利企業というのは、第三者との取引の中で営利を上げるから、より安く仕入れて、より高く売ってもうける、そして投資家に還元するというモデルで すよね。協同組合は、自分の組合、自分たちがつくっている、その人たちにサービスを提供して稼ぐわけですから、そこで営利が発生するという概念はないわけ です。もしここで大きな差額が出たら、それは利益を還元するというのがそもそもの協同組合の考え方ですから。
だから、できる限り利益を上げるというのは、私はあの表現に全然違和感を感じていません。でも、それは、最終的には利用者、組合員に還元すればいいんでしょう。わかりますね。
問題は、出資配当は地域農協には七%までですよというあれが入っているわけですから、あとは利用配当。だけれども、それだけやっていれば農協経営がよく なるのかというと、決してそうじゃなくて、将来的なことを考えながら内部留保を高めていかなければよくなりませんよね。わかりますか。
非営利原則というのは、金を稼いじゃいけないんじゃないんですよ。わかりますか。わかったのなら、もうこれで終わります。
○畠山委員
ありがとうございました。
時間もありませんので、最後にお聞きしたいんですけれども、監査の問題についてお聞きします。
ちょっと北海道に引き寄せた話で恐縮なんですけれども、組勘制度というのが北海道はありまして、言ってみれば、対人信用保証に属するものだというふうに 思うんですけれども、結局、公認会計士などが導入され、監査の制度が変わるという点で心配されることの論点の一つに、不採算なところは次々と指摘をされ て、いわば切り捨てられる方向に誘導されるのではないかというおそれが出されています。
そういったときに、先日も北海道へ行って聞いてきたんですけれども、このような組勘制度のように、対人信用ですからどうなるかよくわからないというよう なものだとか、あるいは、農家の倉庫なども、言ってみれば、年に二カ月か一定の期間しか使われないようなものなんかもうリースでいいんじゃないかと、次々 その地域の共有財産にもなっているようなことや、これまで業務として必要と考えられてきたことなどについてメスが入るのではないかという心配があります。
この点は、実際、監査が変わることによって、現場の組合員、生産者にどのように影響が及ぶと思われるか、これは谷口参考人の方にお聞きしたいと思います。
○谷口参考人
これは難しくて、多分答えることはできないと思いますけれども、あえて申し上げると、組勘制度に当たる内容のことを公認会計士がやった場合には、恐らく、やはり血も涙もない方向に行っちゃうでしょうね。
私はなぜそういうことを申し上げるかというと、会計士の方は、農民の方を見てやるよりも、ほかの監査する方々を見て、どうやっているかということを評価 されるんだと思うんですよね。そうすると、やはり、全国基準のものでいかにやれるかということに走りますよね。地域の事情を十分にそんたくして、彼らのた めになるようにとやるのは、相当勇気が要ることになっちゃうんじゃないんでしょうか。そこのところのずれが現実には生ずるだろう。
組勘というのは、個人の財産の侵害に至るぐらいまで極めて細かいことをやるわけですよね。例えば、ほぼ毎月のように、残高がどれだけ残っているか、予定 された出費に対してぼんと出た、何をやったんだ、車を買った、聞いていないぞ、そんな車を買う予定はなかったじゃないかくらいまで介入しているわけです よ。
しかし、それは、組合員の関係の中で農協がやるから認められているので、そうじゃない人が来て、おまえ使い過ぎだ何だと言われたら、これは耐えられない んじゃないかと思うんですね。そういうことをやりかねないような現実がやはり公認会計士にはあり得るのであって、むしろ公認会計士としてはそっちの方がす ばらしいというふうに評価されてしまうんじゃないかなというふうに思います。
このことをなぜ言うかというと、私自身、息子がそういう大手の法人の公認会計士をやっているわけですね。それで、中小企業から始まっていろいろ見ている のを聞くと、いろいろな業種があって、とても理解できないと。そこで、やることは何かといったら、やはり教科書に書いてあることをできるだけ正確に、 ちょっと心持ちを入れる程度しかできないと言うんですよね、たくさんのものを扱っていて。
そういう現実から見ると、恐らく、組勘でやるものは厳しいことになるだろうけれども、まだ血も涙もある、地域の実情を踏まえた形でもって組合員との関係が処理できるだろう。
しかし、そこに公認会計士が来れば、物を見て、とにかく切りなさいと、単純に土地を取り上げるだけみたいに使われてしまうことになるだろう。となると、 地域にまさに亀裂を持ち込むようなことになってしまって、地域農業の姿が、准組合員と組合の関係とかが全部崩れてきてしまうことになりかねないんじゃない か。
そういう点で、業務監査がそういうふうに変わると、地域農業において相当ゆがみが生じる可能性が私は高いんじゃないかな。実は、そのことは地域農業を発 展させるために、よりよい経営ができるために、そして、組勘というのは、だめな経営を捨てて、いい経営の土地を回していくんだ、資源を回していくんだとい う建前で一応動いているんですけれども、どうもその建前がうまく実現できない方向に向かって機能してしまうことの方を私は恐れているというのが、今のとこ ろの感覚です。
以上です。
○畠山委員
ありがとうございました。
終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第11号  平成二十七年五月二十一日

○畠山委員 
日本共産党の畠山和也です。
先日、六次産業化の取り組みで米の加工と販売を行っている米工房を立ち上げましたある県の農事組合法人のところへお話を伺いに行ってきたんです。そもそもは、女性グループの方々からみそをつくりたいという要望が出されて、当時の県の支援事業を使って加工場をつくったそうです。みそ以外にも、今度は米粉を使った商品などもつくり、広げて、道の駅とか大手のスーパーなどにも展開していったとのことでした。その農事組合法人の方なんですけれども、この後、米のブランド化も進めてきたところで、今度は株式会社も設立して、販売事業も力を入れるというふうなお話だったんです。
さらにいろいろ聞きまして、集落に若い人が減ってきているということもあって、何とか雇用の場を確保できないかという思いもあるんだという話を伺ってきたんですね。ですから、経営についても率直にいろいろ聞かせていただきまして、比較的順風なのかなと思って話を聞くと、いやいや、つくった商品もこれまた売れなくて、販売面ではなかなか苦労しているんだというお話でした。
あわせて、今回の農協法にかかわる関係や問題意識も伺ってきました。とめどなく話が出てくるわけです。農薬や肥料が高いんだとか、もっと農協が農家を束ねて戦略的に販売をしてくれだとか、こういう話は、私も行く先々でいろいろと問題意識は聞くわけなんです。だけれども、もちろん、農協は不要だとは思っていないし、農家のための農協という原点を進んでほしいというお話を伺ってきました。今回、法改正までやる必要があるのかという点では、私も疑問に思っています。
今のような実態や話などは、私も北海道でも聞いてきたし、これはどの党を問わず、いろいろと、きょうも議論が出されているように、共通して出されているような疑問であろうというふうに思うんですね。ですから、これから質問でも触れていきたいと思うんですが、農協の方に問題があるのであれば、それは系統組織や組合員を信頼して、自主的な改革を進めていくことでいいのではないかというふうに私は思っています。
それは、組合員自身に基づく自主的な改革と、今回のように、法改正までして行う改革との違いは何なのかということで、多くの農家の方も知りたがったり、不安が生まれています。この改革が、焦点にもなっている自分たちの経営や所得の向上に本当にどうかかわっていくのか、理解ができないという声も根強くあります。
しかも、農協法だけでなく、農業委員会、そして農地のことでもセットで変えるとなれば、渦中にいる生産者からすれば、自分たちの経営だけでなく、農業や地域そのものがどうなるかということを知りたがるのも当然だと思います。ただでさえTPPで次々と具体的な数字が出てくる中で、規模の大小を問わず、不安の声が広がるのも当然だというふうに思います。
きょうは、最初に言いたいことを全部言いましたので、具体的にこのような疑問や不安をもとにして聞き込んでいくということを中心に行っていきたいというふうに思います。
まず初めに、十四日の本会議で私が行った代表質問に総理が答弁した内容について、まず協同組合の原則にかかわる点で質問を行います。
私が、政府自身、国際協同組合年の二〇一二年に協同組合の価値と原則を尊重していたではないかということを指摘して、この協同組合の仕組みについての認識を質問いたしました。それへの答弁は、今回の農協改革は、国際協同組合同盟、ICAの声明にある協同組合原則にも合致するというものでした。
どこの部分で合致しているのか、まず具体的にお答えください。
○小泉副大臣 国際協同の関係でございますが、ICA、この原則の第二原則は、組合員による民主的な管理でございまして、これは、組合員は平等の表決権、一人一票ですね、これをお持ちになっているわけでありますので、協同組合が民主的な方法で管理されることを要求しているわけであります。
この点につきましては、今回の改革では、地域農協の理事の過半数を認定農業者などにすることを求めているが、これは、農業者の協同組織として、責任ある経営体制とするものでございまして、運営が一人一票制により民主的に行われることに変わりはないためということで、この第二原則に合致していると考えているわけであります。
また、ICAの協同組合原則の第四原則でございますが、自主自立でございまして、これは、協同組合は組合員が管理する自助自立の組織でございます。組合員による民主的な管理を確保し、また、組合の自主性を保つことを要求しているわけであります。
この点につきましては、これまでの中央会制度は、法律によりまして、行政にかわって指導や監査する権限を与えられまして、全国や都道府県に一つに限り設置するなど、真に自主的な組織とは言えなかったとあります。今回の改革によりまして、自律的な新たな制度に移行することとしていることから、この第四原則に合致することと考えております。
さらに、ICAの協同組合原則の第七原則でございますが、地域社会へのかかわりでございまして、これは、協同組合が地域社会の持続可能な発展に努めることを要求しているわけであります。
この点につきましては、今回の改革は、地域農協が農産物販売等を積極的に行い、農業者の所得向上に全力投球できるようにすることで地域農業の発展に寄与することとともに、地域農協の実際上果たしている地域のインフラとしての機能も否定するものではないため、この第七原則にも合致すると考えております。
○畠山委員 論点はいろいろあるかと思うんですけれども、きょうは、少し質問を進めたいと思うんですね。
このICAというのは、一八九五年に設立されて、御存じのように、国連への提言も行う、歴史や知見を持った組織です。今、第二、第四、第七まで述べられましたが、第七原則までありまして、もちろんその中身というものには、今言ったように、歴史や国際的な重みがあるというふうに思っています。
大臣に伺いますが、先ほどされた答弁と同じ認識でよろしいか、確認したいと思います。
○林国務大臣 副大臣が答弁したとおりでございます。
○畠山委員 今、第二、第四、第七だけ、なぜ引き抜いたのかというふうに思うんです。
これは二〇一四年十月九日のICA理事会で、その段階ででしたけれども、見通される農協法の改正の方向性について、ICA原則への侵害があると指摘された項目があって、それに対応する形で合致するようにしたという答弁だというふうに思うんですね。
その一つに、最初に述べられました第二原則、これは組合員による民主的な管理というのがありまして、当時の指摘ですけれども、組合員はその活動を発展させるための最もよいやり方を自分たち自身で決めなければならないと述べて、つづめて言えば、組合員抜きで決められることはあってはならないよという指摘が当時されたというふうに思うんです。
大臣に伺います。
今回、全中が十一月に改革案も出して、さまざまな、与党も含めた合意をされた上で法案を出したというふうに経過は承知はしているわけですけれども、組合員も含めてそういった議論や合意ができてきたという認識を伺いたいのですが、いかがですか。
○林国務大臣 今の御質問は、この法案をつくる過程、もしくはこの案をつくる過程において農協の皆さんの意見がどういうふうに反映されたか、こういう御質問である、こういうふうに思います。
当時私は、去年の九月三日から、この二月二十三日に戻ってくるまでは、党の方の農林水産戦略調査会という立場でございました。党でも何度もヒアリングをやりまして、そして党内の議論もそのヒアリングをベースにやってまいりましたし、党の役員、それから全中の幹部の皆さんとも何度も意見交換会をやりまして、そして最終的には、この案につきまして、向こうの役員の皆さんとお話をさせていただいた上で、正式に全中の理事会でこれを受け入れるということをお決めいただいた、こういう経緯だったというふうに承知をしております。
○畠山委員 全中から十一月に改革案も示されて、県によっていろいろあったのかもしれませんけれども、単協あるいは組合員のところまで議論する時間がなかったというふうに私は聞くわけです。末端の組合員まで議論が尽くされたのかという点ではいろいろなことがあるかと思うんですけれども、例えば私の選挙区のJA北海道では、JA北海道独自の改革プランも九月ころから議論をしてきて、理事会や青年部、女性部などでも議論を詰めてきたというふうなお話も伺いましたが、それでも時間が足りなかったという声を組合員からも聞いております。
確認ですけれども、こういう現状、少なくとも今組合員のそういう声が出るという現状が、先ほどのICAの原則にある最もよいやり方を自分たち自身で決めるという点で合致するのかどうか、その議論や組合員などの合意の上に成り立った現状と思っているかどうか、改めて大臣の認識を伺います。
○林国務大臣 これは、農協の系統の役員の皆さんから常々言われたことですが、大きな組織なのでやはり中でいろいろと議論するのに時間がかかるんです、こういうことを常々おっしゃっておられました。したがって、昨年の六月に大きな方向性をまとめ、それから、それを受けた形で、農協の中で自己改革をまとめられる間も時間をかけて御議論されたもの、こういうふうに承知をしております。
したがって、我々としては、そういう手続を踏んで、最終的には理事会で、先ほど申し上げたように、決定をしていただいた、こういう認識は持っておりますけれども、その中で、どの地域でどれぐらいの御議論をされたのかというのは、必ずしも今この時点で詳細に把握を私のところでしておるわけではございませんので、いろいろな意見があるということは、先生はお聞きになったということは今お聞きしましたけれども、基本的には農協の系統の組織の中で話し合いをされて、最終的に理事会で決定をされたもの、こういうふうに理解をしております。
○畠山委員 少し古い資料で恐縮なんですけれども、二〇〇二年の四月に、全中がJAの活動に関する全国一斉調査というのを行っています。なぜこれを引き合いにしたかというと、農協は県によっていろいろというのはありますけれども、多様なルートで意見の集約を図るルートや工夫というのをされてきている蓄積があるんですよね。
このときは、例えば准組合員の農協運営への参画について聞いたもので、総会の出席を認めているのが二九・一%あるとか、あるいは集落座談会への参加も四二・〇%でやっているとか、こういうさまざまな形で意見の集約や反映ということを行ってきた組織としての蓄積を持つJAで、先ほど述べたような、議論の時間をとれなかったという意見がある事実を重く見るべきであることだけをまず指摘しておきたいと思います。
あわせて、本会議のときの質問ですが、別の議員の質問への答弁で、総理が、農協は農業者が自主的に設立する組織だとも述べています。きょうも林大臣からそのような答弁がございました。組織という以上、その中心となる役員の構成は重要でして、農協でいえば、一つのかなめは理事であるというふうに思います。
改正案では、その理事について、過半数を、原則として、認定農業者や、農産物販売や経営のいわゆるプロとすることを求めています。きょうも議論がありましたけれども、改めて、農産物販売や経営のプロとはどういう人たちのことを指すのか、御答弁ください。
○林国務大臣 今お話がありましたように、今回の農協改革では、地域農協が、担い手農業者の意向も踏まえて、農業所得の増大に配慮した経済活動を積極的に行えるようにするために、農協の理事の過半数を、原則として、認定農業者、農産物の販売や経営に関し実践的な能力を有する者とすることを求める規定を置くことになっております。
認定農業者については、担い手の意向を農業の業務執行に反映していくことを目的として、また、実践的な能力を有する者については、大口の事業者等と渡り合って農産物の有利販売等を実現することを目的としておるわけでございます。
先ほども、稲津委員のときにお答えしたように、こういう原則を定めましたので、どういう方を具体的に任命するのかというのは、それぞれの地域農協、販売の方向とか経営の方向というのがそれぞれあると思いますので、それにきちっと合致をして、農産物販売事業等を発展させる観点に立って、適切な人物をそれぞれ役員として選出していただく、このことが重要だと考えております。
○畠山委員 この点に関して、私の方から本会議で質問した際の答弁でも、それぞれのところで農業所得の増大に向けて事業運営を行っていく観点からのものでもあるという答弁がされました。
先ほど述べたように、それぞれの組織の中心ともなる役員、今回でいえば、理事の要件ということは、本来は組織の内部自治に委ねるべきものであるというふうに思うんですが、今回、政策上の考えから改革するものであるというふうに思います。
今でも経済事業が良好な農協もありますし、その先例に学びながら経営していくということなら、アドバイザーであったりコンサルタントのようなものを招くということでも十分ではないのかという指摘があると思います。
全中の十一月の自己改革案でも、ガバナンス強化の項のところに、販売や経営など多様な分野の専門的な知見を有する学識経験者の活用と示されております。
この点について、何でアドバイザーではだめなんでしょうか、なぜここまでする必要があるのか、改めて伺います。
○奥原政府参考人 それぞれの農協で農産物の有利販売に本当に責任を持って取り組んでいただくということが必要でございますが、そのときに、経営責任を持っている方は誰かということだと思います。
それは、基本的には、農協法上、役員の体制は法律の中で決まっておりますので、この役員の方が経営責任を負っている。これは、農協に限らず、会社においても、あるいはほかの協同組合においても同じだと思いますが、この方々がきちんと責任を持って判断をして、いろいろな工夫をしていただく。そういう体制をつくるためには、アドバイザーという法律に位置づけられない役員ではなくて、正式な理事というところにこの枠組みをはめていくということが必要であるというふうに考えております。
○畠山委員 今、経営責任という言葉がありまして、そのとおり、部分的にはそうですよね、理事には議決権ももちろん伴いますし。
ただ、今回の、こうやって理事の要件を変えるという点では、後で触れますけれども、第八条に、目的にかかわるところで、収益を上げることに責任を負うようなことだけであってはならないわけです。収益を上げることが必要だからと役員の要件を政策的に変えていく。もう少し別な言い方をしますと、その時々の政府の政策によって、きょうは、最初から議論してきた協同組合の原則を変えることになっていかないか。
きょうの質問を準備する上で、ほかの国の協同組合についても私は調べましたけれども、基本法にかかわっては、とりわけ内部自治や性格にかかわることは極めて抑制的に議論や法の制度がされているというふうに思うんです。
今言ったような形で、経営責任にこのような、かかわるという答弁でしたけれども、一方で、先ほどから述べている協同組合の内部自治の原則と合致しているというふうに、大臣はどのように御判断されますか。
○林国務大臣 そもそも、農業協同組合の目的というのは、農業者の利便の向上、こういうことが書かれておるわけでございますので、その目的を達成するためにどういうことにならなければならないのかということを改めて規定をさせていただいて、その選任については、先ほど申し上げましたように、これに委ねる、こういうふうになっておりますので、先ほど来御議論がありますように、この自治の原則というのが貫かれている、こういうふうに理解をしております。
○畠山委員 今、目的の話が出ましたので、あわせて、時間も残りわずかですので、現行法の第八条とかかわって一緒に質問をしたいと思います。
現行法第八条を今回削除するわけですけれども、改めてその理由を、これは事務方で結構ですので、端的にお答えください。
○奥原政府参考人 現行第八条のところに、農協は、「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という規定がございます。この趣旨は、株式会社のように、出資配当を目的として事業を行ってはならない、こういう意味でございます。
これは法制的に大体確定をした解釈でございますけれども、出資配当を目的として事業を行ってはならない、この趣旨につきましては、この条文だけではございませんで、出資配当に上限を設ける規定が従来から置かれております。農協法の五十二条第二項でございまして、この点は今回全く改正をしておりません。出資配当の上限は今後とも設けられます。
現在の「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」という、この書きぶりにつきまして、趣旨は先ほど申し上げたとおりですけれども、そもそも農協は利益を得てはならない、あるいはもうけてはいけないんだといったような解釈がされている側面もございます。
その結果として、農産物を有利に販売しようという意欲が十分でないということもございますので、今回の改正では、誤解を生んでおりますこの規定の部分を削除いたしまして、農協が農産物の有利販売等に積極的に取り組んでいただくということを促すために、これに追加をいたしまして、組合は、事業の実施に当たり、農業所得の増大に最大限の配慮をしなければいけないということを追加いたします。
それから、組合は、農産物の販売等において、事業の的確な遂行により高い収益性を実現し、その収益で、事業の成長発展を図るための投資または事業利用分量配当に充てるよう努めなければいけないというのを追加して、これを新しい第七条にしているということでございます。
○畠山委員 解釈で、利益を上げてはならないというふうに、いわば誤解が生じるような、さまざまレクなどでも聞いてきたんですけれども、いろいろな農協やその関係者から聞きますけれども、そういう利益を上げちゃだめだという誤解などは聞いたことがないです。
今、条文を挙げられた改正法では、より高い収益性の実現に努める旨が書かれていて、現行法では、協同組合が上げる経済上の利益は剰余と言ってきたはずです。
確認になりますけれども、収益と剰余の違いは、今回の法においては、何が違って、何でこのような違う言葉を使うようにしたのでしょうか。
○奥原政府参考人 農協法の中では、何カ所か剰余金という言葉を使っております。
この剰余金という言葉は、組合の経済的な事業活動によるものだけではなくて、例えば遊休資産の売却とか、こういった臨時の取引により生じたものを含めて、決算の結果計上された利益、これを剰余金という言葉で呼んでおります。この剰余金をベースにして配当するとか、そういうことが規定をされているということでございます。
今回の改正後の第七条、八条を改正して七条に変えるわけですけれども、この七条の中では、農協の事業の目的に農業所得の増大を規定して、それを実現するために、的確な事業活動によりもうけを出して、それを組合員に還元していく、こういう趣旨におきまして、決算の結果としての剰余金ではない、収益という言葉を使っているということでございます。
○畠山委員 剰余としてきたのは、協同組合がさまざまな組合員への、現行の法には最大の奉仕という言葉が入っていて、その最大の奉仕を行った後に残るから剰余としてきたわけです。
奉仕という言葉があるからこそ、例えば昨年度でも、米価下落に対する補填ができたりだとか、あるいは子牛価格が高騰して肥育農家が御苦労されている、その救済のために飼料の手数料の引き下げに取り組んだりするのに、期中における剰余の先取り的取り崩しとしてできてきたということがあったと思うんですね。これが、期末における最大限の収益、利益計上が目的となれば、今言ったような事業ができるのかという不安があるわけです。
ですから、第八条の規定を削除し、変更するとなれば、期末の収益、利益を追求することが目的化して、限りなく株式会社化して接近するのではないかとか、今さまざまな論点や疑問が出されてきたというふうに思うんですね。
時間になりましたので、この続きなども引き続き質問をしていきたいと思います。
終わります。

第189回国会 本会議 第23号      平成二十七年五月十四日

○畠山和也君
私は、日本共産党を代表し、農協法等の一部改正案について質問いたします。(拍手)
総理は、施政方針演説で、農業人口の減少や高齢化といった農家の現状を指摘し、強い農業をつくる、農家の所得をふやすために農政の大改革が必要だと述べ ました。しかし、なぜ農家が苦しんでいるかの原因や、本来国が責任を果たすべき国民への食料の安定供給についての言及は、全くありませんでした。
日本の農業は、工業製品の輸出拡大を進めて多国籍大企業の利益を優先する歴代政権のもと、農産物の輸入自由化が推進され、国内農産物の価格低下が押しつけられてきました。その結果、日本は世界有数の農産物輸入国となり、食料自給率も三九%まで低下しました。
さらに、昨年の米価下落に追い打ちをかける交付金削減や、急激な円安による飼料高騰に消費税増税も重なり、規模の大小を問わず多くの農家が、このままでは農業を続けられないと悲鳴を上げました。
まともに生計が立てられない状況に農業を追いやってきたのは、このような自民党農政ではありませんか。そうした認識と反省は総理にはありませんか。
総理は、先日の米国議会での演説で、TPPには、単なる経済的利益を超えた、長期的な、安全保障上の大きな意義があると述べました。
農家がこれだけ苦しんでいるときに、関税撤廃が原則のTPPを結び、どうして農家の所得をふやすことになるのですか。総理の言う安全保障上の意義とは何か、具体的にお答えください。
また、総理は、通商に関する権限を持つ米国議会に向かって、TPPを一緒になし遂げようと呼びかけた後、農協改革について触れています。それはなぜですか。農協がTPPに反対しているからなのですか。
総理は、ガット農業交渉のころ農業の開放に反対の立場をとった自身の行為を、血気盛んな若手議員だったと述べました。
ところが、ウルグアイ・ラウンド合意を受け入れた細川内閣に対して、当時、自民党はこの本会議場で、米について、ミニマムアクセスの受け入れで輸入量が 年々拡大されることになれば、全国の稲作農家及び畜産・畑作農家全てが崩壊に向かって進むと批判しました。これは間違いだったと言うのですか。
オバマ大統領は、TPP早期妥結の重要性について、我々がルールをつくらなければ中国がアジアでルールを確立してしまうと述べました。軍事的にも経済的 にもアジアでの影響力を強めたいアメリカのために、なぜ日本の食料主権、経済主権を脅かすTPPを推し進めなければならないのですか。答弁を求めます。
日本の農業に必要なことは、TPP受け入れと一体に家族経営と農協を潰す農協改革ではありません。農産物の輸入自由化路線を転換し、再生産可能な価格保障と所得補償で、日本の農家の多数を占める家族経営を支えていくことです。
今も、多くの農家が必死に農地を守り、農村を守っています。それができたのは、戦後の民主的改革の中で、営農と生活を守るためにつくられた農業協同組合をよりどころに、協同の力で家族経営の農家が農業生産を担ってきたからです。
日本の農協は、国際協同組合同盟、ICAからも、六十年にわたり日本経済におけるビジネスモデルの多様化に多大な貢献を果たしてきたと高く評価されています。
政府自身、国際協同組合年の二〇一二年に、協同組合の価値と原則の尊重を掲げていたではありませんか。
今必要なことは、こうした協同組合の価値と原則を最大限尊重し、地域における協同の力を発揮できる環境を整備することではありませんか。政府自身も価値と原則を尊重するとした協同組合の仕組みをどのように総理は認識しているのですか。
法案では、現行法第八条の、組合の事業が営利目的であってはならないとの規定を削除します。なぜ、株式会社とは異なる協同組合の性格を根本的に変えてしまうようなことをするのですか。明確にお答えください。
全中監査を廃止することも重大です。
約七百の総合農協は、農産物の販売や購買といった経済事業と、信用、共済事業をあわせて行っています。全中監査で会計監査と業務監査を一体に監査してきたからこそ、農協経営の健全性が保たれ、農家の支えとなってきたと政府も認めてきたはずです。
これを廃止し、営利企業のための公認会計士監査となれば、不採算部門の経済事業はどうなるのですか。結局、切り捨てられることになるのではありませんか。
そもそも、総合農協から信用と共済を分離せよと要求しているのはアメリカの経済界です。その要求に従って、全中監査の廃止も一つのてことして、農協系金融をアメリカ企業に開放しようということではありませんか。
次に、農協の役員構成についてです。
法案では、理事の過半を、認定農業者か、法人の経営に関して実践的な能力を有する者としています。
今でも、株式会社は農地を借りて認定農業者になることができます。それに加えて法人経営に関する者が理事になれるとすれば、本業が農業とは無関係な者が 理事の過半数を占めることも可能となるのではありませんか。本来地域に根差したはずの農協を営利最優先の経営に変えようというのですか。
准組合員の利用規制について、五年間の調査結果を踏まえ結論を得るとしましたが、規制改革会議などからは、規制すべきとの要求が強く出されています。し かし、准組合員は農協事業の日常的な利用者です。規制が必要な不都合があるのですか。調査結果を踏まえ、利用規制を行わないという判断もあるのですか。明 確な答弁を求めます。
農業委員会の公選制を廃止して市町村長の任命制とすることも問題です。
農業委員会は、地域の農地の守り手として、区域内に住所があり、一定の農地につき耕作の業務を営む者とされてきました。それをなぜ、その地域に住所がな くても、農業に従事していなくても農業委員に任命できるようにするのですか。それでどうして農地の守り手としての職責が果たせるというのですか。
また、法案は、農地を取得できる農業生産法人の要件を大幅に緩和し、構成員の半分未満まで農業者以外でもよいとし、役員のうち一人でも農作業に従事していれば要件を満たすとしています。なぜこうした要件緩和を行うのですか。
規制改革会議などの議論では、農地は集落のものという考えを乗り越えるべきと、あけすけに語られています。
農地は、地域の農家が自主的に管理し、土地改良を重ねて生産力を上げ、代々引き継いできたものです。愛着ある農地を営利企業の新たなもうけのために差し 出せとばかりに、農業委員会を変え、農業生産法人の要件緩和を進めるやり方で、食料の安定供給を保障し、日本の美しい農村の風景を守ることができるので しょうか。明確にお答えください。
今、世界では、規模拡大、企業参入という農業の効率化ではなく、家族農業の持つ多様な価値とそれを支える協同組合の大切さに改めて注目が集まっています。
総理は、予算委員会での私の質問に、家族経営を大切にしてきたのは自民党という自負があると強弁しました。その言葉が真実であるなら、この法案を撤回し、家族経営を基本にした多様な農家や生産組織などが展望を持って生産できる環境をつくるべきです。
何より、日本農業を一層窮地に追いやるTPP交渉から直ちに撤退すべきであることを強調し、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君)
畠山和也議員にお答えをいたします。
これまでの農政の総括についてお尋ねがありました。
これまで、農政においては、その時々の課題に対応するため、米の生産調整を初めさまざまな施策を展開し、国民への食料の安定供給等に努めてきましたが、 農産物価格の低下等による農業所得の減少、担い手の減少と高齢化の進展、耕作放棄地の増大など、現在の我が国の農業、農村をめぐる状況は厳しいものとなっ ております。
その要因として、食生活が変化する中で、米のように需要が減少する作物の生産転換が円滑に進まなかったこと、水田農業などにおける担い手への農地集積のおくれ、農産物価格が低迷する中で、高付加価値化が実現できなかったことなどの事情があったと認識しております。
こうした状況を一つ一つ克服し、我が国の農業の活性化を図っていくことは待ったなしの課題であり、安倍内閣では農政改革を進めているところであります。
TPPの意義についてお尋ねがありました。
我が国の同盟国である米国や自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった普遍的価値を共有する国々とともに新たなルールをつくり上げ、こうした国々と 経済的相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にも、また、この地域の安定にも資する戦略的意義を有しています。
また、成長著しいアジア太平洋地域の市場を取り込むことで、六次産業化など抜本的な農政改革と相まって、農業にとっても発展の機会が広がると考えています。
いずれにせよ、農産物について、衆議院、参議院の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめ、国益にかなう最善の道を追求してまいります。
米国議会演説においてTPPの次に農協改革に触れた理由についてお尋ねがありました。
御指摘の、TPPに続く演説部分は、日本の農業を守っていくためには、今、農政の大改革に踏み出さなければならない、その決意を申し上げたものであり、 農協改革だけを論じたものではありません。さらに、コーポレートガバナンスの強化、医療、エネルギー分野での岩盤規制打破、女性が輝く社会づくりなど、強 い日本の実現に向かって、我が国は諸改革を大胆に進めていかなければならないとの考えを示したものであります。
したがって、農協がTPPに反対しているからといった御指摘は全く当たりません。
ガット・ウルグアイ・ラウンド合意時の自民党の対応についてお尋ねがありました。
ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉当時、私は、日本の農業を守りたいとの思いから、国会前で農業の開放に反対する自民党の抗議活動に加わりました。
一方で、農業をめぐる現状は、農業従事者は高齢化し、農業生産額は減少するなど、その活性化は待ったなしの課題であり、今、日本の農業は変わらなければ なりません。これはTPPその他の国際交渉いかんにかかわらないことであり、安倍内閣では農政改革を進めているところです。
TPP交渉推進の目的についてお尋ねがありました。
TPPは、成長著しいアジア太平洋地域に人、物、資本が自由に行き交う大きな一つの経済圏を構築する野心的な試みであって、地域の発展にも、そして日本の成長、発展にも大きく寄与すると確信しています。
我が国としては、こうした観点から、国益にかなう最善の道を追求しており、米軍のためにTPPを推進しているという御指摘は当たりません。
協同組合の価値と原則の尊重についてお尋ねがありました。
今回の農協改革は、農業者の協同組合である地域農協がその価値を最大限発揮できるよう、その自己改革の枠組みを明確にするものです。これは、国際協同組合同盟の声明にある協同組合原則にも合致するものと考えております。
現行農協法第八条の削除についてお尋ねがありました。
第八条の「営利を目的としてその事業を行つてはならない。」との規定は、農協が、農産物を有利に販売し、利益を上げることを禁止しているとの誤解を招いていることから、今回削除することとします。
なお、この規定を削除しても、出資配当の上限があり、株式会社のように出資配当を目的として事業を行うことはできないので、農協の性格が変わるとの指摘は、これも当たりません。
全中監査の廃止についてお尋ねがありました。
今回の改正において、全中監査の義務づけを廃止し、公認会計士監査を義務づけました。これは、農協が今後も引き続き信用事業を安定的に行うに当たり、他の金融機関とのイコールフッティングを図るためのものであります。
したがって、今回の改革が農協系金融をアメリカ企業に開放するためのものとの指摘は、全く当てはまりません。
農協の理事要件についてお尋ねがありました。
地域農協が、農業者と力を合わせ、創意工夫しながら農業所得の増大に向けて事業運営を行っていくためには、農業に積極的に取り組んでいる担い手農業者の意見が農協運営に的確に反映されることが重要です。
こうした観点から、今回の農協改革では、地域農協の理事の過半数は原則として認定農業者などとすることを求めるものであり、営利最優先の経営へ変えることを目的としているといった御指摘は、これも全く当たりません。
准組合員の利用規制についてお尋ねがありました。
農協はあくまで農業者の協同組織であり、准組合員へのサービスのため、正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはなりません。
一方で、農協は、過疎化、高齢化等が進行する農村社会において、実際上、地域のインフラとしての側面を持っているのも事実です。
こうしたことを踏まえ、今回の法案では、准組合員の利用規制について、五年間、正組合員と准組合員ごとの利用量や地域におけるサービスの状況を把握し、今回の農協改革の成果も見きわめた上で、結論を得ることとしたものであります。
農業委員の選任のあり方についてお尋ねがありました。
農業委員会は、担い手への農地集積、集約化等を積極的に進めていくことが期待されています。
一方で、その活動状況は地域によってさまざまであり、農家への働きかけが形式的など、必ずしも農家に評価されているとは言いがたい状況も見られます。
こうしたことを踏まえ、農業委員会の委員に適切な人物が確実に就任するようにするため、公選制から市町村長の選任制に改めることとしているところです。これにより、若者が自分たちの情熱や能力によって新しい地平を切り開いていけるようにしていきたいと考えています。
農業生産法人の要件緩和についてお尋ねがありました。
農業の成長産業化を図るためには、意欲のある担い手が活躍しやすい環境を整備していくことが重要です。
農地を所有できる農業生産法人については、役員や議決権についての現行の要件がネックとなって、六次産業化など経営の発展に必ずしも対応できない面があります。
このため、今回の改革では、農業生産法人が六次産業化を行いやすくするため、役員要件及び議決権要件の見直しを行うこととしております。
農業委員会と農業生産法人の改革の意義についてのお尋ねがありました。
今回の改革は、農業委員会による担い手への農地利用の集積、集約化等の推進を通じ、生産コストの引き下げや農業所得の増大にもつながるものであります。また、農業生産法人が六次産業化に取り組みやすくなり、法人の経営発展が図られていくものであります。
このように、今回の改革は、農業の成長産業化を推進していくものであり、強い農林水産業と美しく活力ある農山漁村の実現に資するものであると考えております。
以上であります。(拍手)

第189回国会 農林水産委員会 第8号   平成二十七年五月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうは長い委員会になりましたけれども、最後ですので、どうぞよろしくお願いします。
西村内閣府副大臣のTPPの情報を開示するとしていた発言を撤回した件について、まず、私からも伺います。
TPPは、言うまでもなく、秘密交渉です。
まず確認ですが、これまで日本政府として、秘密保持契約にサインをして、情報を隠したまま交渉してきた例というのは過去にあったかなかったか、確認のために答弁をお願いします。
○西村(康)副大臣
一般に、過去の貿易交渉、経済交渉において、今回のTPP交渉参加の際に交換したような秘密保護に関する書簡、契約を交わした例はないというふうに承知をいたしております。
○畠山委員
今ありましたように、これまでの交渉は、逆に言えば、必ず情報を開示して進めてきたということになるわけです。
ですから、今進めているTPP交渉、秘密保持契約があるということは、これまでの交渉とは質が異なる交渉であるという認識はもちろんございますね。
○西村(康)副大臣
はい。そのような認識のもと、交渉を進めてきているところでございます。
○畠山委員
では、なぜこのように秘密保持が必要とされているかといえば、その中身、この間、二十一分野ありますけれども、ちょっと個別に いろいろ言いますけれども、農業、労働ですとか知的財産とかISDとか、さまざま、国の基本にもかかわってくるような問題で、多くの国民が不安を抱えるも のがたくさんあるわけです。
ですから、本来、情報が出ないということ自体がおかしいわけでありまして、だからアメリカにおいても、あるいはほかの国においても、さまざま制約がある とおっしゃいますけれども、情報を示してほしいと国民から迫られてもいますし、先ほど来議論があるように、日本国内でも、国会あるいは国民からも、情報を 出すべきであるという声が多いのは当然だというふうに思います。
連合審査の際に私の事務所の方で調べましたが、地方議会からのTPP反対、あるいは慎重審議を求める意見書が二千を超えて寄せられています。もちろん、 二度、三度と意見書を上げている議会があるにせよ、背景には数千万になるであろう国民の思いが反映していることでもありますし、仮にTPPが賛成であった にしても、情報がここまで出ないというのはちょっといかがなものかという声が出てくるのも当然だというふうに思います。
情報の開示というのは、もちろん国民からの強い要望でもあるという認識はお持ちですね。
○西村(康)副大臣
御指摘のとおり、もちろん、これだけの幅広い分野にわたる交渉でありますので、国民生活にも当然影響がございます。そ の意味で、秘密保持の契約は結んでおりますけれども、その範囲内でできる限り情報提供を行わなければいけないという気持ちも他方で持っておりまして、そう した観点から、これまでも、悩みながらでありますけれども、これは各国同じでありますけれども、悩みながらもできる限りの情報提供に努めてきたところでご ざいます。
○畠山委員
ですから、まとめますと、これまでに例のない秘密交渉であること、しかも、あらゆる分野が重大な内容を日本全体にかかわって 持っているということ、それから、国民からも強い要望があるということ、そして、アメリカでも国会議員は条件つきだけれどもアクセスできるということなど を見れば、だから日本でも開示を進めようというふうに考えるのは私は極めて自然なことだというふうに思うんですよ。
それで、きょうもずっと議論して、西村副大臣御自身のそのような思いから四日の会見では出たことなんだと繰り返し述べていらっしゃいますが、今言ったような背景があったからこそ、その気が生まれたということですよね。
○西村(康)副大臣
先ほど申し上げたとおりでございますけれども、これまでもできる限りの情報提供に努めてきたところでございまして、先 般、五月一日にも、いわゆるルールの交渉においての、テキストそのものではありませんけれども、交渉の状況について、これまで以上に詳しい内容のものも公 開をさせていただいて、できる限り多くの皆さんに情報を開示していこうということで努めてきたところでございます。
今般、アメリカで、アメリカの議員と意見交換する中で、閲覧をしているというようなことの情報にも接し、そしてまた、セミナー等においてもそうした情報 開示の話題が出る中で、私自身、非常に強い思いの中であのような発言に至ってしまったわけでございますが、特に、アメリカと同じように開示ができるかのよ うに受け取られてしまったことについて非常に反省をしておりまして、撤回をしたところでございます。
そうした反省も踏まえながら、引き続き、我が国の制度、制約の中でどういう工夫ができるのか、これについてはしっかりと考えていきたいというふうに思っております。
○畠山委員
TPP交渉については、もう最終局面だというような表現でも示されるほどですし、先ほど述べた、情報開示をめぐるさまざまな状 況、情勢から、情報開示を求める声が高まる、そういうのが出てくる、必然だというふうに思うんですよ。逆に言えば、この時点で出ないという方が、情報が開 示されないという方がおかしいのではないかと思います。
それで、なぜ撤回をされたのかは、きょうも午前中から議論がありました。
これは私の全くの個人の推測ですけれども、一旦情報開示に前向きになったけれども、もしかして、TPA法案の成立が長引きそうだ、あるいはまだ見通せな いという示唆があって、それなのに今情報を出すわけにいかないという判断などがあったのではないか。実際、きょう、上院本会議でTPA法案の動議は否決さ れたということでありました。そういうことではないのですか。
○西村(康)副大臣
繰り返しになりますけれども、従来よりこうした委員会での質疑等を通じて情報開示を強く求められてきましたし、それか ら、今般、アメリカでさまざまな情報に接する中で、もっと工夫して何か一定の、我が国の制度、制約はありますけれども、その中で何かできないのかという思 いを強くした中で私があのような発言をしてしまったわけでございまして、そのことについて、報道に接して、アメリカと同じような開示をするというふうに受 け取られてしまったこと、これについては、日米の制度も違いがあるし、同じようにはできないということでありますので、これは修正をしなきゃいけないとい うことで、私の誤解を招いたような発言について撤回をしたというのが経緯でございます。
○畠山委員
その話はきょう午前中からもう十回ぐらい聞いてきたわけでありまして、確かに、TPAがどうなろうとも、ただ、現状でアメリカでは国会議員がアクセスできていることは事実ですよね。
通商交渉は、アメリカは議会の権限が強くて、日本は政府の権限だと言い張るということではないと思いますけれども、そうだということであるならば、余り にも国会軽視ではないのかと言われてきたわけですし、出口が見えるという状況であるならこそ、ますます開示する必要はあるというふうに思うわけですよ。逆 に言えば、出口が遠のいたということなのですか。
○西村(康)副大臣
TPPの交渉が最終局面を迎えているのはもう事実だと思います。
しかしながら、最終に、交渉各国がいろいろなカードを切っていく、政治的な決断をしていく、これにはアメリカのTPA法案が必要だという認識も共有して おりますので、TPA法案の早期の成立を我々望んでおりますし、それがTPPの交渉妥結の前提だというふうに考えております。
そういう意味で、TPA法案の早期成立を私ども期待をしているところでございます。
○畠山委員
TPAをめぐる情勢は、きょう、先ほどあったように、動議は否決された状況でありまして、かなり厳しく、少なくとも今月中は厳しくなったのではないかとも報じられています。
いずれにしても、きょうもずっと議論がありましたように、このTPPについて、もちろん、国民的な関心や、この後、日本が進むべき道について、重要な問 題であるからこそ情報の開示をこのように求めてきているわけでありまして、国会への報告はもちろんですが、いわゆる国民に向けて今度説明会をされるという ことですけれども、本当はそういう国民向けの説明会も、東京一つだけではなく、私、出身、選挙区は北海道ですけれども、北海道はもちろんですし、全ての都 道府県でやるべきであろうことだというふうにも思うんですよ。
そういうように、さらに広くやはり開示していくということを改めて強く求めたいと思いますが、副大臣、この間ずっと、検討する検討するというふうに御答弁されましたが、いかがですか。
○西村(康)副大臣
情報開示の必要性につきましては、委員御指摘のとおりでございます。
さらにどういう工夫ができるのか、これは真剣に考えていきたいと思いますし、まずは十五日の日に、東京ではありますけれども、説明会を開かせていただ く。これまで以上に広い会場、これまで以上にというのは、各団体に説明してきた、関係団体に説明してきたこれまで以上に大きな会場で、千人規模の会場を確 保しておりますので、まずはその場でやらせていただいて、さらにどういうことができるか、これは真剣に考えていきたいというふうに思います。
○畠山委員
繰り返しになりますけれども、最終局面だと言われている状況の中での情報開示の必要性は言うまでもないと思いますので、検討ということは繰り返し述べられていますが、その必要性をやはり改めて強く指摘しておきたいというふうに思います。
次の質問に移ります。
副大臣、結構でございます。
安倍首相の米国連邦議会での演説について、きょうも玉木委員からありましたけれども、ちょっとそのことについて伺いたいというふうに思います。
演説の中で首相は、ガット・ウルグアイ・ラウンド農業交渉のときに、血気盛んな若手議員だった私は、農業の開放に反対の立場をとり、農家の代表と一緒に、国会前で抗議活動をしましたと演説しました。続けて、ところがこの二十年、日本の農業は衰えましたと述べました。
きょうも午前中からこの文脈の解釈で議論がされるほど、文脈の意味が、私だけなのかどうかわからないのですけれども、よく理解できないんです。関税を 守ったから日本の農業は衰えたと言いたいのか、農業開放に反対したんだけれども、それがかなわなくて日本の農業は衰えたと言いたいのか。それならば、やは り開放すべきではなかったというふうになっちゃうんですけれども。
一体ここの意味は、本来だったら安倍首相に問いただしたいところではあるんですけれども、まず、この意味はどういうことなのか、答弁できますか。
○林国務大臣
誰も手を挙げないものですから。
午前中もお答えしたように、事前にこの演説を、例えば総理が所信表明を日本の国会でされますときは、各省に担当のところが来まして事前に調整するという作業が通常あるわけでございますが、このアメリカでの内容については事前に承知をしておらなかったわけでございます。
これを読みますと、今まさに委員からお話がありましたように、「ところが」というのが、前の段落を言って逆説的につながるのが「ところが」でございます ので、一体どこが逆説になるのか、こういうことだろうというふうに思いますけれども、私は、農産品の市場開放が不十分であったことが農業が衰退した原因だ と述べたということではないんだろう、こういうふうに思っておるところでございます。
平均年齢が十歳上がって六十六歳を超えましたとか、それから、これは私どもいつも言っておりますが、耕作放棄地がふえているということは、市場開放云々 も全く影響がなかったと言うつもりはございませんが、農政の改革をして、待ったなしの改革というのは、対外的な交渉いかんにかかわらずやはり取り組んでい かなければならない課題である、こういう認識を示されたんであろう、こういうふうに理解をしております。
○畠山委員
交渉いかんにかかわらず取り組まなければいけないのならば、こんな難しい表現をしなくてもいいわけでありまして、一体この演説は何を意図したのかと、たしか本会議でも、この安倍総理の演説についての質疑を行うことになったかというふうに思うんですけれども。
例えば、演説原稿は英語でマッチヤンガーという言葉が入っているわけです、余りにも若過ぎたというわけで。若いから反対したということでなく、そもそ も、やはり農業の開放が問題だったということを認識して反対したのではなかったのかというふうに思うんです。そうでないと、一緒に反対された農家の方が、 がっかりしている方がいるというふうに思うんですよ。
こんな告白よりも、これぐらい国民が反対をしてきた重要品目なんだと言った方がまだましな演説だったんではないかというふうに思うわけです。
誰も答弁できないのかどうかわかりませんけれども、一体何でこの部分を演説で入れる必要があったのか。真意を答えられますか。
○澁谷政府参考人
済みません、私はTPPの対策本部の人間でございまして、総理の演説原稿全般については事前に全く協議とかそういうものにあずかってはおりません。
○畠山委員
官邸サイドなのかわかりませんけれども、結局、この問題を私は軽視するべきではないというふうに思っているんですね。
ウルグアイ・ラウンドの合意を受け入れたのは細川内閣で、当時の会議録も振り返って私は読みました。例えば、平成五年十二月十三日の本会議で、当時、自民党の玉沢徳一郎議員が、自民党を代表してと言って、質問をこんなふうにされています。
「本年は、天明の飢饉以来と言われるほどの未曽有の凶作に日本列島は襲われました。農家は生産意欲の減退が強まり、経営の存続にも深刻な悩みをもたらし ております。それに加え、米について、ミニマムアクセスの受け入れで輸入量が年々拡大されることになれば、全国の稲作農家及び畜産・畑作農家すべてが崩壊 に向かって進むことになりかねません。」と述べているんです。
当時の自民党自身が反対の議論をされていたわけで、安倍首相が血気盛んで反対したというものではないはずというふうに思うんです。
結局、村山内閣のもとで批准がされてミニマムアクセス米は始まりましたけれども、低下傾向だった食料自給率がこれを機にさらにどんどん下がっていくことになったわけです。
歯どめなき農産物輸入の拡大は見直すべきだというふうに私は委員会で訴えてきましたけれども、当時のウルグアイ・ラウンド反対の根拠を持ったものとして 反対をしてきたはずなのに、安倍首相は、マッチヤンガー、若過ぎたなどというふうに、今の輸入拡大路線を認めるような演説になっているんじゃないかという ふうに思うんです。そのように読めるんですよ。
それであるならば、日本がTPPでも前のめりになって約束をさらにちゃんとやっていきますよというふうに読めるんですが、林大臣、いかがですか。
○林国務大臣
総理が演説をされたこと、今度は衆議院の本会議ですか、御質疑があるということですから、それを前に、余り私から勝手に解釈 を申し上げるのはいかがかなと思いますが、英語の原文を読んでおりませんので、今委員がおっしゃったマッチヤンガーということになりますと、一般的な英語 の語感だと、とても若かったということで、若過ぎたというニュアンスだとツーヤングということになるのかなと思って今聞いておりました。
いずれにしても、この「ところが」のところがどういう逆説でつながっていくのかというのは、見方によっていろいろ変わってくるのではないかと思います。私は、先ほど申し上げたようなニュアンスで受け取っております。
したがって、大事なことは、この後段のところで、日本の農業を今から変えていかなければならない、いろいろな改革、これは攻めの農政ということで、足か け三年になりますが、やってまいりました。いろいろな改革がございますので、これをやっていかなければならないということが大事なメッセージじゃないかと いうふうに考えております。
○畠山委員
ただ、アメリカの農務省が、昨年十月でしたか、TPPが妥結した場合に、二〇二五年までに参加十二カ国の農産物貿易がどれだけ ふえるかというのを発表しているはずです。それで、八十五億ドル、農産物貿易がふえる、その中の輸入増の七〇%は日本だ、米国産米の輸出は二倍強ふえると いう発表をしているわけです。そんなさなかに、一国の首相が、輸入拡大に反対した私が悪かったかのような演説をしたとなるならば、これはやはり問題ではな いかというふうに思うわけです。
そういうことを前提として、昨年十月の米農務省の発表を認識に入れた上で、安倍首相の演説について林大臣はどのように認識されますか。
○林国務大臣
繰り返しになりますが、この演説については事前に承知をしておらなかったものですから、あくまでこの文章を見ての推測ということになってしまうわけでございます。
今例に出されたアメリカの推計でございますか、これもよくよく勉強してみなきゃいけないと思っておりますし、また、我々としても、この交渉参加に当たっ て、一定の前提を置いた推計というのは出しておりますが、これは御案内のように、全ての関税を即時撤廃した上で何の対策も講じない場合はこうなる、こうい うのをやっておりますので、多分、アメリカのその発表というのも、何らかの、こういうふうになるということを仮置きしてやっておられるんだろう、こういう ふうに思います。
まだ交渉は妥結をしておりませんので、何も決まっていないということでございますから、何かの仮定を置かないとそういう数字は出てこない、こういうふうに思っておるところでございます。
まさに、そういう意味では、この総理の演説は、大事なメッセージというのは、いずれにしても、年齢が上がってきている、耕作放棄地がふえるような今の状 況を座視しているということでなくて、しっかりと改革をやって、持続的で、かつ新しい若い世代の方も希望を持って入ってこられるようにしていく、この大事 さをメッセージとしてお出しになろうとされておられたのではないかと、あくまで推察をしておるところでございます。
○畠山委員
結局、その後、続けて農協改革の話も出てきているわけですね。私は、予算委員会のときにも、林大臣がいらっしゃったときですけ れども、この農協改革というのはアメリカからの要望でもないのかということを質問させていただきました。USTRから、二〇一〇年外国貿易障壁報告書の中 で、わざわざアルファベットでKyosaiと書いた項目を立てて、日本の農業共済は、規制の基準や監督を競争相手である民間企業と同じ条件にすべきという ふうに書いているではないかと。
また、昨年六月の在日米国商工会議所、ACCJの意見書でも、平等な競争環境が確立されなければ、JAグループの金融事業を制約するべきで、外資系金融 機関に不利な待遇を与える結果となっていると、米国の企業参加の道を求めて、最後に、ACCJは、こうした施策の実行のため、日本政府及び規制改革会議と 緊密に連携し、成功に向けてプロセス全体を通じて支援を行う準備を整えていると、日本政府と二人三脚で農協改革を進めるという表明がされているわけです。
こういう一連の流れとして演説をどうしても読んでしまうし、そういうふうにメッセージを送ったのではないかというふうに思わざるを得なくなるわけですよ ね。そういうことを改めて安倍首相にも問うていきたいというふうに思いますし、こういうようなことが事実であるならば、容認できないということは述べてお きたいと思います。
最後に、TPP妥結が何をもたらすかということについて、改めて具体的に議論をしたいと思います。重要品目のうちの甘味資源作物についてです。
いろいろ、その数字のよしあしの出方はともあれ、米だとか豚肉、牛肉などの交渉状況の報道はされていますけれども、甘味資源作物の状況というのはもちろ んよくわかりません。どのような交渉状況になっているのか、答えられないのかどうかと思いますけれども、一応確認したいと思います。
○澁谷政府参考人
お答え申し上げます。
TPPの交渉は、最終局面、最終局面に近づきつつあると言う方が正確なのかもしれませんが、依然難しい課題が残っております。
御指摘の甘味資源作物も含めた農産品に関する二国間の交渉は、全体をパッケージで交渉しているという現状でございまして、各国との間でまだ課題が引き続き残っている、こういう状況でございます。
○畠山委員
甘味資源作物の交渉もまた秘密の中にあるわけであります。生産者も関係者も、もちろん不安が消えません。
北海道では、てん菜は甘味資源作物であるとともに、連作障害を防ぐ、欠かせない作物であります。
そこで、北海道庁が、国の試算を踏まえた、TPP関税撤廃による影響試算を行っておりますが、これは全道十二品目として行っているその影響額のうち、てん菜の部分で、その影響額の総額と、雇用や農家戸数に与える影響というものについて、確認のために答弁をお願いします。
○中川大臣政務官
平成二十五年三月に北海道庁が、関税を即時撤廃するなどの一定の前提を置いた北海道農業などへの影響試算を公表したことは承知いたしております。
本試算におきましては、北海道農業などへの影響といたしまして、生産減少額が四千七百六十二億円、雇用への影響が十一万二千人と試算されています。
このうち、てん菜につきましては、生産減少額が一千三十一億円、雇用への影響が一万一千人と試算されています。
○畠山委員
農家戸数も出されているかと思うんですが、それについては。
○中川大臣政務官
農家戸数への影響ということで二万三千戸ということはありますけれども、てん菜では試算されておりません。
○畠山委員
試算されていないのですか。てん菜の部分、あると思いますよ。
それでは、時間ももったいないので、続けます。
全道十二品目の影響額の中で……(発言する者あり)きちんとそこは、通告をきのうしているんですから、お願いしますよ。
○江藤委員長
委員長からも。
通告があったことについては、しっかり準備をするようにしてください。
○畠山委員
全道十二品目での総影響額一兆五千八百四十六億円のうち、てん菜は影響額で一五・六%を占めます。同じく雇用では九・八%、農家戸数では、比率でいえば三三・三%を占めるほどです。
てん菜は、特に関連産業の影響額も大きい。全道十二品目での影響総額のうち、関連産業への影響が占める割合でいえば二二・三%になりますが、てん菜で限って見ると、関連産業の影響が占める割合は三六・七%にもはね上がります。
連休の前に、私は、北海道の美幌町というところで、てん菜工場があるんですが、ここで調査を行ってきました。
収穫の最盛期になれば、トラックが百三十台行き来するほど運搬にもちろんかかわりまして、てん菜は、霜害やあるいは風害のリスクもあって直播もなかなか 進められないという中で、どうしても移植して栽培するということでは人手も多くかかる作物でもあります。そういうときには、地域の業者の皆さんも一緒に なって手伝って、重労働を分担しているという現状にあります。こういうようなことも含めて、関連産業に対する比重が大きいというのがてん菜なわけです。
これで、TPP交渉で仮に打撃を受ければ、先ほどの数字のように地域経済と雇用は大打撃になるわけでありまして、しかし、だからといって、てん菜をつく るのがやめられない。それは、やめたら連作障害を防げないからだというのは御存じのとおりだと思うんです。だから、仮に赤字になろうとも、てん菜をつくり 続けているということがあるわけです。
それで、確認しますが、北海道での十アール当たりの粗収入と生産費について、この間の特徴や傾向について、いかがですか。
○佐々木政府参考人
お答えいたします。
私どもで実施をしておりますてん菜生産費調査で最近十年間の北海道のてん菜農家の収支状況を概観いたしますと、まず、全ての規模階層平均の物財費、労働 費、資本利子、地代を含めました十アール当たり全算入生産費は、平成二十年前後に肥料費等が高騰した後、十万円台で推移をしているという状況でございま す。
他方、十アール当たりの粗収益でございますが、こちらは、各年の気象条件や病害虫の発生状況等によりまして変動が大きいわけでございますけれども、ここ近年の、平成二十三年からの三年間で見ますと、十アール当たり十万円前後で推移をしております。
その結果、近年は、生産費が粗収益を若干上回っている状況になっているということでございます。
○畠山委員
年によってもちろん違いますし、緑ゲタが始まったときなどもありますので、いろいろその年によってもちろん違うんですけれど も、多くは生産費の方が多く、基本的には赤字続きで進めてきているわけです。でも、それだけでやはり農家を続けられるはずがありませんし、実際、作付面積 が減ってきているところでもあります。
それで、現地からの要望としては、家族経営が守られるような価格の設定をという要望も受けました。てん菜も含めて輪作体系が成り立てば農家の経営も安定するんだということは、強い要望であることを述べておきたいと思います。
話は戻りますが、問題は、こうやって踏ん張っている農家の要望に応えるべきなんだけれども、やはりTPPが問題になってくるわけです。美幌町だけでな く、北海道は八つの地域に八つの製糖工場があり、関連八自治体でも連絡協議会をつくってTPP交渉の行方を注視しています。サトウキビを抱える沖縄でも、 台風による被害ですとか生産費上昇で今苦境に追い込まれている実態があることから、ことしの一月に、我が党が、再生産を可能とする水準への要望も行いまし た。
ですから、やはり、こういう甘味資源作物をめぐる実態を見ても、このまますんなりTPP妥結ということは認められないと思いますが、林大臣、改めて、甘味資源作物についての認識とこのTPP交渉の問題について、どう思いますか。
○林国務大臣
交渉の具体的な中身については、先ほど内閣官房の方からありましたように、お答えを差し控えさせていただきますが、まだ、全体をパッケージとして交渉しておりまして、決まったというものはないわけでございます。
この決議でございますが、今御指摘のあった北海道の輪作体系を支える基幹的作物であるてん菜などの甘味資源作物、これは重要五品目の中に含まれておるわ けでございますので、この重要五品目などの確保を最優先するということが決議に入っているということでございますので、これも繰り返しになって恐縮です が、この決議が守られたと評価をいただけるように、政府一体となって全力を尽くす考えでやってまいりたいと思っております。
○畠山委員
評価がいただけるようなということは何度も繰り返し聞いてきたわけです。
最後なんですけれども、一つだけ、ちょっとそれで確認したいんですけれども、昨年四月十一日の衆議院の内閣委員会で、甘利大臣が、日豪EPAの内容が仮にTPPで採用された場合、決議との整合性はとれるのではないかとの答弁があります。
つまり、評価されるようにと言われる一線をどこにするのかということについて、この日豪のような、関税撤廃をしなければ国会決議に反しない、極端に言え ば、一%の関税でも残っていればあとはセーフガードで結構だという認識は林大臣はお持ちなのですか、そうでないのですか。
○林国務大臣
甘利大臣が御答弁されたというのを、詳細に今手元に資料がございませんが、この決議はまさにこの委員会でなされた決議でござ いますので、それがどういう意味をしているのか、解釈について政府側におります私の方から申し上げることは控えさせていただきたい、こういうふうに思って おります。
○畠山委員
否定がされるような答弁ではなかったというふうに今受けとめたんですけれども、甘味資源作物も含めて、今多くの農家、生産者を 初め、これだけ最終局面と言われる中で不安を抱えているわけです。その中で、情報も示されないで、仮に国会決議を守れないようであるならば、我が党は TPP交渉からの撤退ということを求め続けてきました。
改めてその立場を繰り返し表明いたしまして、質問を終わります。

第189回国会 内閣委員会農林水産委員会連合審査会 第1号  平成二十七年四月二十四日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうの最後ですので、よろしくお願いいたします。
甘利大臣がフロマン代表との協議後の記者会見で次のように語りました。TPPを十二カ国間で妥結するための重要な二つの要素が動き出しました、一つはTPA、貿易促進権限法案であり、一つは日米協議でありますと。
きょうは、この二つ、それぞれにかかわって質問をしたいと思います。
まず、TPA法案です。きょうも議論はされてきましたけれども、改めて、順を追って確認していきたいと思います。
まず、なぜこのTPA法案がTPPの妥結に重要なのか、確認したいと思います。
○甘利国務大臣
おっしゃられたとおり、TPP十二カ国が妥結へと話を進めていくためには、前提が二つあると申し上げました。一つはTPA 法案が成立をするということ、そしてもう一つは、日米の大筋合意が見えてくる、大筋合意がかっちりできましたというのも見えてくることということが大事だ と申し上げました。
後段の日米合意が見えてくることというのは、TPP十二カ国のうちの経済領域でいえば日米で八割を占めますから、八割の国がまとまっていないのに残りの 二割が何でまとめるんだという話になると思いますから、まとまる方向が見えてきた、それに最終的な着地点を合わせるようにちゃんとほかの国も協議を加速し ていくということが必要であるし、それを共有しているんだと思います。
それから、御質問のTPA法案がなぜ大事かということについては、各国とも、最終的なカードを切る際に、TPA法案が成立しているということが前提だと いうふうに思っているわけであります。というのは、交渉している最中でありますから、最後のカードをまとめるために切った、ところが、まだ法案が成立をし ていなくて、ということは、そのカードが、さらに追加カードを求められる危険性がある、TPA法案が成立をしていれば、最終合意がより安定的なものになる という判断をしているんだというふうに思います。
○畠山委員
大臣、今なかなか言いませんでしたけれども、安定的なものになると。つまり、大統領に貿易権限が必要であるから、このTPA法案の行方を注視していたということで、もう一度確認したいんですけれども、それでよろしいですね。
○甘利国務大臣
基本的には、全体のパッケージを議会が了解するかしないかで、その後、細かいところにいろいろな注文がつけづらいというこ とで、まとまったものを、その後、注文がいっぱいつくのであればまとまったことにならない。つまり、大統領に一括権限が付託されるということが非常に大事 だという点で、各国は注視をしているんだと思います。
○畠山委員
今ありましたように、大統領への貿易権限が必要であるということであります。
それで、この間、改めて確認すれば、昨年、TPA法案が一度廃案になり、ことし、新しい法案が出されたということは先ほどからありました。ただ、これが、中身が違うということも御存じのとおりです。
重要なことに、一つは、議員に対する情報公開があり、さらにもう一つに、手続否認決議において新たに加わったものがある。一言でこれを言えば、上院か下院で拒否の決議をすれば、TPAが適用されずに、議会がTPPについても修正できるというような内容に読めるわけです。
昨年の法案とこの点が違うということで、これは事務方で結構ですけれども、確認してよろしいですね。
○宇山政府参考人
お答え申し上げます。
二〇一五年、ことし提出のTPA法案には、廃案になりました二〇一四年提出のTPA法案同様、大統領が議会への通知または協議を怠った、または拒否し た、あるいは、協定が本法律の目的、政策、優先事項及び目標を達成することに進展を見なかった、こうした理由によって、両院の一方が、実施法案の審議に迅 速な審理手続を適用しない旨の決議、手続否認決議をし、その後、六十日以内に他の院がこれに同意した場合、迅速な審理手続が審議に適用されないことになる 旨の規定があるというふうに承知をしております。
これに加えまして、このたびの二〇一五年提出のTPA法案におきましては、上院の財政委員会、または下院の歳入委員会のいずれかが、さきに述べた場合に 該当するなどとして、迅速な審理手続を適用しない旨の決議、手続否認決議をし、同決議がなされた院の本会議において同決議が採択された場合、その院におけ る実施法案の審議に迅速な審理手続が適用されないこととなる旨の規定があるというふうに承知をしております。
○畠山委員
きょう、資料を配付しておりまして、外務省の資料ですけれども、これの最後の下の黒丸のところに、今説明されたものを簡単にま とめれば、こういうふうに書いてありまして、「二〇一五年法案で新設。」と。つまり、大統領は全権が委任されていない、議会の関与が生まれるということで あると理解できます。
これまで日本政府は、TPAが成立しなければ、政権が合意に至っても、議会は内容についてさまざまな修正ができる、これでは各国が安心して交渉を進める ことができず、これが交渉停滞の原因の一つになっている、先ほど甘利大臣も同じようなことを答弁されましたが、このような考え方を示してきたわけです。
ところが、今話がありました新しいTPA法案は、議会が内容についてかかわり、修正も可能になるかもしれない。ということは、今まで懸念していたものそのものではないのかというふうに思います。
甘利大臣はこのことをわかってフロマン氏との協議を進めてきたのでしょうか。
○甘利国務大臣
TPA法案の違いは、委員御説明のとおりであります。つまり、要すれば、両院がノーと言った場合に本来のTPA法案の本質が適用されないというのから、片方の院、片方の委員会がノーと言ったらその効果を発するということであります。
しかし、上下両院の委員会はTPA法案そのものを、その重要性に鑑みて、いち早く可決したわけであります。その必要性、TPA法案の必要性というのは、 一括してイエスかノーかを意思表示するということ、その法案の重要性は認識して提出をされたというふうに理解をしておりますし、通過をしたものというふう に思っております。
従来から、TPA法案の本質というのは、基本的には議会に共有されて委員会を通っているものと思っておりますし、何より、日本もそうですし、他の国も、交渉が妥結をしました、しかし再協議を求められました、その協議には日本も含めて各国は乗っていきません。
○畠山委員
私の質問にお答えになっていないんじゃないかと思いますが、改めて確認しますが、フロマンさんとの協議のときに、このTPA、新しい法案で議会が関与できるということを承知して協議に臨んだのか、もう一度答弁してください。
○甘利国務大臣
TPA法案の果たすべき意味、本質、それを前提に議論しております。そして、TPA法案の本質が今回の変更によって著しく損なわれるということではないというふうに理解しております。
○畠山委員
本質が損なわれていないと。今まで、議会の関与がないようなことが、あってはならない、日本政府でそういう考え方を示してきて、今回、明らかに議会がこのように関与できるということですが、本質的に大きな、違う中身でないかというふうに思いますよ。
資料を引き続き見ていただきたいんですが、その後のプロセスがどうなるかといったときに、交渉の妥結以降、協定の署名まで少なくとも九十日、そして期限 の定めなく進んだ後に下院での審議が、最大九十日、上のフレームにはないんですが、黒丸の四番目のところに、国際貿易委員会が報告書を出す期日の規定があ りまして、それが百五日以内。普通は大体この報告書を受けてから審議が始まるというふうに考えられますから、協定発効、最後まで進むに当たっては、九カ月 から最大で十カ月程度かかるであろうというふうには思われます。もちろん、それよりは短くなるかもしれません。
先ほども質問が出ましたけれども、議会のところで承認されずに要求などが出た場合、再協議が迫られることがあります。確認ですが、再協議が必要となった場合に、それに応じますか。
○甘利国務大臣
先ほど、議会が関与、従来も、両院がその必要性があると言ったら、その時点で関与になるんです。今回の修正は一院がという ことでありますから、議会が関与するという状況は、今までの法案も今回の法案も変わらないわけであります。しかし、基本的に一括して承認するかどうか、そ のための法案ですから、その根幹が全くなし崩しにされたら、大体その法案を出す意味がない、出さなければいいだけの話になってしまうわけであります。
そして、委員御指摘の後段のお話……(畠山委員「再協議」と呼ぶ)再協議の話ですね。再協議については、もともと我々は、あらゆるベースで、一度まと まったものを一国の都合で再協議するつもりはないというふうに申し上げていますし、この点は各国が一番強く主張している点だと思います。だから、ほかの国 は、TPA法案が成立しない限り最終的なカードは切らないといって、交渉がとまっていたわけです。
○畠山委員
応じないというふうになれば少し心配になるのが、逆に言えば、最初から議会が了承するような内容へと譲歩を重ねていくことにな りはしないか、つまり、合意できるような内容をつくっていかざるを得なくなるのではないかという心配があるわけです。そうならないと言えないのではない か。
九カ月から最大十カ月かかるとなれば、今後のアメリカの政治スケジュールで見れば、大統領選の具体的な日程も入って、先に進まないのではないかということも言われています。
日米だけでなく、マルチで、交渉参加国の中でも交渉がさまざまに難航しているものがあることも報じられています。どのようなもので今難航していると認識されますか。
○甘利国務大臣
どのようなことで難航、ちょっとその意味が、具体的にはかりかねるんですが、二国間交渉について言えば、それぞれの国がセ ンシティビティーを大なり小なり抱えています。物品の関税について抱えている国もあれば、ルールで抱えている国もあります。知財であるとかあるいは国有企 業の規律等で、物品では問題がないけれども、しかし、ルールでは問題があるという国も多々あるわけでありまして、それぞれが抱えている国のセンシティビ ティーを最終的に決着させるということで、終盤になればなるほど難航するというのは、そういう点であります。
○畠山委員
さまざまな点が報道されてきていますけれども、例えば、知的財産についても、新しい医薬品のデータを守りたいアメリカと、後発医薬品に頼るそれ以外の国々とで大きな開きがあるような報道なども見受けられます。もうお互いに譲らない状況にあるのではないかと。
ほかにも、これは日経新聞の一月二十三日付ですが、マレーシアのムスタパ貿易産業大臣が、国営企業の改革についても政治的に敏感な問題があると、応じない考えを示したというふうにあります。
今後の大統領選のスケジュールまでも含めて見たときに、本当にまとまっていくんだろうか、日本の方でいえば、拙速な判断をするのではないかというふうに心配されるわけです。そこに、多くの国民からの不満や批判、あるいは心配の声が上がっているというふうに思います。
そこで、日米協議の中身について、もう一つの側面で聞きたいと思います。
ことしの一月九日ですが、大臣が記者会見でこのようなことを述べています。日本側としては相当譲歩してきたという思いがあります、途中略しますが、妥協 点、我々はできることはほぼ全てやり尽くしたと私個人は思っておりますという会見の内容でした。その後から、今議論されているような米の別枠輸入の問題で すとか、牛肉、豚肉の関税引き下げの数字などが報道されてきているわけです。
これは報道ベースだと甘利大臣はいつも言いますけれども、ただ、こういうふうにすると、符合して見える。この中身こそが、甘利大臣の言う、譲歩や妥協点と記者会見で述べていた中身ですか。
○甘利国務大臣
お聞きになりたいことの趣旨が、いま一つ理解していないのかもしれませんけれども、私が常にバイの会談やあるいはマルチの 会談で申し上げているのは、交渉事というのは、一方が一方に一方的に寄っていくことを交渉とは言わない、双方が歩み寄ると言わないと差はもう絶対に埋まら ないというわけですので、各国とも自分は最大譲歩しているということの言い合いでありまして、それを客観的にどう評価されるかということになってくるんだ というふうに思っております。
私は、一月の九日でしたか、その会見で、それまでの、まだ、そのときに交渉が全部終わっているわけでは全くありませんから、今日までの過程において、日 本としてはやるべき譲歩はしっかりしてきたと思うという日本の立場を表明したわけでありまして、日本がかたくなでちっとも動かないからTPPがだめになっ たなどというそしりは受けないように、しっかり情報発信したつもりであります。
ただ、その譲歩も、具体的に、数字の細目にわたって全部かっちり決まりましたというのは、最終的な十二カ国の妥結の場面でありまして、それまでは、収れんをさせていくための方程式とか考え方とか、いろいろなケースを示しながら、いろいろやりとりがあるわけであります。
先ほど来申し上げていますように、あくまでもTPPというのはパッケージ合意でありますから、全体がしっかりフィックスして、全体に縛りがかかるという 種類のものであります。その間には、いろいろなシミュレーションなり頭の体操でいろいろなことが飛び交うということでありまして、そういう飛び交っていく 数字も含めて収れんをさせていくということであります。
○畠山委員
私は、歩み寄りのよしあしを聞いたつもりもありませんし、頭の体操やシミュレーションなどという言葉もありましたけれども、た だ、大臣は、できることはほぼ全てやり尽くしたと記者会見で述べていたわけです。その後に、先ほど言った数字のさまざまなものはありますけれども、具体的 な、米や豚肉や牛肉のところでの進展がもう報じられてきているわけですから、その中身こそがやはり重大だというふうに思うわけです。
改めて、TPAにちょっと戻りますけれども、一月九日のこの時点で新しいTPA法案のことも、まだ当時ですから見通せなかったはずでありますが、それでも大臣の言う譲歩や妥協点などでほぼやり尽くしたという判断だったのですか。
○甘利国務大臣
TPPの交渉過程で、いきなり全部の最終着地点にどおんと行くわけじゃないんですね。ステージワンとかツーとかスリーとかいうことがあって、ここを目指していこうみたいな形で言っていくわけであります。
だから、一月の時点で、日米間について、そこまでの協議の中で日本側が譲るべきは譲る、これは最大取り組んできたつもりですということは、当然、交渉担 当大臣として言うはずであります。まだ我々には譲る余地がたくさんありますがねとか、そんな会見をする大臣を見たことはありません。我々としてやることは やってきたということで言ったつもりです。
○畠山委員
確認したかったのは、もう一度今聞きますけれども、この時点で、先ほど言ったTPA法案が、まだ新しいものが出されていないときに、ほぼやり尽くしたということは、では、どういう意味なんですか。
○甘利国務大臣
TPA法案がなければ、そこまで、ある部分、具体的な数字でなくても、考え方で収れんをさせてきたものについても、法案がなければみんなパアになりますねという話です。
○畠山委員
ちょっと時間が限られてきていますので、先に進みますけれども、多くのところから、やはりきょうも出ていましたけれども、結 局、こういう問題でさまざまなことが何に由来しているかというと、やはり、情報も秘密、交渉過程ももちろん秘密、決断の理由もなかなか明らかにされないと ころも出てくる、これでどうして一国の将来が判断できるのかというふうになるわけです。
日経新聞の四月二十二日付に、安倍首相が、オバマ大統領との首脳会談で、TPPについては、新しい貿易圏をつくっていくといった前向きなメッセージを出 したいと語ったとされています。秘密、秘密、秘密で、首相一人が前向きだと言っても、国民からすれば、前を向いているのか、右を向いているのか、後ろを向 いているのか、何もわからないわけです。だから、全国から不安や批判が上がってきたわけで、TPP反対とか、あるいは慎重にとか、拙速に進めるななどが、 この間、地方議会で意見書がたくさん上がってきたわけです。
これは事務方で結構ですが、これまで、内閣府宛てにその意見書はどれだけ上がってきていますか。
○澁谷政府参考人
二〇一三年の四月に内閣官房TPP政府対策本部が設置されて以降でございますが、地方自治法第九十九条に基づき、自治体の議会から政府に提出されたTPPに係る意見書の数は、四百四十七件でございます。
○畠山委員
内閣府だけで四百四十七件。
それで、これは議長において受理されたものがそれぞれのところに割り振りされますので、私の事務所の方で、改めて議長宛てのものも数えました。百七十六 国会から始まって、今までに二千二十六に上ります。私は北海道の選挙区選出ですが、百七十九市町村のうち百七十六市町村、九八%にも及ぶわけです。もちろ ん、二度三度意見書を上げている自治体もありますけれども、二千を超える意見書ということは、背景に数千万を超える国民からの意見の反映があるということ を改めて述べたいと思うんです。
そういう国民の不安を反映したのが、きょう資料の二枚目につけましたが、国会の衆参のそれぞれの委員会の決議です。きのうも農林水産委員会で、やはりこの決議を常に持って交渉に臨む必要があるということが議論されました。
改めて、第一項目に、「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」。
この間、農林水産委員会では、米価の下落もあわせて、今でさえ再生産可能な水準にないということを議論してきました。その中に五万トンとか具体的な数字 が出てきて、さらに米価が下落するのではないかという心配が広がっていくのは当然だというふうに思います。再生産できなくなってしまうではないかと。
首相が、あさってからですか、訪米をして、オバマ大統領との会談だけでなく、議会演説もされるようです。きのうも委員会で私は述べましたが、それで思い 出すのが、四年前、韓国の李明博大統領がアメリカの議会演説をして、韓米FTAについても、これが同盟のあかしであるかのようなことを言ったわけです。し かし、この中には毒素条項が入っているとか、牛肉もどんどん輸入されるじゃないかと声が上がって、韓国に戻ってきてから、国会で同じ演説をするなと厳しく 批判がされました。
最後に、決議の第六項目、「農林水産分野の重要五品目などの聖域の確保を最優先し、それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとする」と いうことを改めて確認し、日本共産党は、これだけ各自治体からの決議、そして国会の決議、なお国民の不安がどんどん広がっていくことを置き去りにするよう なTPP交渉はやめるべきであることを求めて、質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第7号   平成二十七年四月二十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
本題に入る前に、ロシア水域におけるサケ・マス流し網漁の問題について一言伺います。
昨日のこの委員会でも、ロシアの流し網漁禁止法案について質疑がありました。大臣から、昨日の未明ですか、ロシア政府から支持する旨が表明されているとの答弁がありました。この問題は、どの党も問わず、注視してほしいと思いますし、もちろん我が党としても重視すべき問題だというふうに考えています。
北海道の根室市は、御存じのように、水産業を基幹産業とする町です。春のサケ・マス、夏から秋のサンマ漁、それから冬のタラ漁、このようなサイクルで、漁師の経営や生活、あるいは関連産業、地域経済、雇用も成り立ってきている町です。加工、運輸、製缶、燃油や船舶資材などに多くの市民がかかわっております。
しかし、これまで、領土問題の未解決ということで、こういう政治的な事情を前にして、まちづくりや経済の振興にも苦労してきました。ですから、今回の法案の行方も、ただ指をくわえて見ているわけにはいかないという話も聞いてきたのです。外務省と連携をして、農林水産省としても危機感を持って対応してほしい。
そもそも、ことしのロシア二百海里内のサケ・マス漁業交渉も進んでいない現状があるわけでして、この流し網漁の禁止法案への対応と、今述べたロシアの二百海里内の漁業交渉の進展を強く求めたいと思いますが、現状はいかがですか。
○林国務大臣
まず、日ロの政府間協議でございますが、既に開催することについては日ロ間で一致をしております。したがって、ことしの二月から、我が方からは四月に開催しようということを提案しておりますが、ロシア側からは、日程案を検討しているということの理由でまだ回答を得られておりませんで、開会日がまだ決まっていない状況でございます。
昨年も、四月の三日の東京、二十一日から二十五日モスクワ、五月の十二日、十三日モスクワ、こういう日程でございましたが、引き続きしっかりと要求をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
流し網漁業の禁止法案でございますが、こちらの方は、現地時間で二十一日夕刻でございましたけれども、ロシア政府において法案を支持するという見解が公表されておりまして、ロシア連邦議会の方で今後はこの法案の審議がされるもの、こういうふうに認識しております。
こういう厳しい状況でありますが、外務省と連携しながら、ロシア国内の動きについて情報収集に努めるとともに、既に総理からも先方の大統領にも言っていただいたところでございますけれども、あらゆる機会を捉えてロシア側に対する働きかけ、これを継続してやってまいりたいと思っております。
○畠山委員
領土問題ともかかわる、国の主権にかかわる問題というふうに思うんですね。
根室に行くとやはりよく言われるのが、ロシア側は、国境というかほかの国とかかわる地域だけに、開発を含めてさまざまな取り組みをやっているけれども、日本でいえば海岸線、水産の町こそ、そういう国境に面している、接しているところとして、やはり国の強い意思が見えないことに対して根室市民としてももどかしい思いがあるということは聞いてきたわけです。
ですから、農水省としても、その立場を引き続き貫いて、さらなる努力を改めて求めたいというふうに思います。
本題に入ります。
我が党は、競馬について、スポーツ性を重視した健全な発展を望む立場です。人と馬が育んだ歴史や交流文化を大事にして、農業振興の一部門として生産地への支援強化も求めてきました。
私は北海道の選出ですので、産地では、もちろん馬を愛し、農耕馬として北海道で開拓をともにしてきた、苦労をともにしたパートナーというような特別の思いもあるわけです。国内外で活躍する姿を夢見て、育成にも励んでいる。
その中で、日本の競馬ですけれども、刑法の賭博、富くじ販売禁止の例外として勝馬投票券の発売行為が扱われてきました。それは公益に貢献することを理由とするものからでした。しかし、現状がどうなっているか。地方競馬では、一九九九年に二十五の主催者がありましたが、二〇〇〇年度以降、十一の主催者が撤退し、現在は十四主催団体まで減ってきています。
この十四主催団体のうち、直近の数字で結構ですが、黒字により余剰が出て、主催者への配分金を出した競馬組合というのはどこですか。
○松島政府参考人
直近の状況ということで、平成二十五年度の状況を御説明させていただきますが、地方競馬主催者で収益金より構成団体、地方自治体へ配分金を繰り出ししておりますのは、全十四主催者のうち二主催者でございまして、具体的には、埼玉県浦和競馬組合、それと東京都の特別区競馬組合でございます。
なお、平成二十五年度におきましては、単年度収支を見ますと、全十四主催者のうち一主催者を除きまして黒字化しておりまして、みずからの財務状況を改善するために、そのうち配分金を繰り出しましたのは二主催者にとどまっているという状況にございます。
○畠山委員
昨年度は、今ありましたように、決算途中ということでもありますが、一つを除いて黒字となっていますが、累積赤字を抱えている主催者も多くあるわけでして、その前の年でいえば、直近で答弁されたように、配分金を出せたのが二団体のみという現状です。
地方競馬、あと中央競馬もそうですが、近年は売り上げが少し伸びているということでありますけれども、長期的には停滞あるいは低下傾向にあったわけです。その理由についてどのように認識されますか。
○林国務大臣
競馬の売り上げでございますが、中央競馬は平成九年の四兆七億円、地方競馬については平成三年の九千八百六十二億円、これがピークでございました。その後、景気の低迷、それから娯楽の多様化、こういうものが背景になりまして、競馬の売り上げについては、中央競馬はピーク時の約六割、地方競馬はピーク時の約三分の一の水準にとどまっております。
しかしながら、今先生おっしゃっていただいたように、平成二十四年以降、中央、地方ともに、三年連続で前年を上回る売り上げを記録して回復基調にはなっている、こういうことでございます。
今後は、人口の減少、娯楽の多様化、こういうものが進む中で売り上げを大幅に伸ばしていく、これはなかなか難しいということもあると思いますけれども、中央と地方の交流によって魅力あるレースを開催することを通じて、中央と地方の連携を強化するということと、それから、きょうも御議論していただきましたように、若者それから女性や家族連れ、さらには観光客の皆さんが参加しやすい環境整備を図る、こういうことを通じて、ファンの支持を得ながら、競馬がその役割を果たして、国際的な評価も高めながら安定的に発展していくように、しっかりと各主催者の取り組みを支援してまいりたいと思っております。
○畠山委員
このような指摘があるんですね。
これは二〇一四年三月四日の日本経済新聞ですが、次のように書いてあります。「昨年、中央競馬では三連単の売り上げに占めるシェアが三五・八%で最も多かった。ただ、的中が難しく、払戻金で他のレースを購入するという循環構造が崩れ、ファン離れを招いていたとされる。」
そのほかにも、今回いろいろ調べたわけですけれども、社団法人中央競馬振興会が二〇〇九年に出しています日本の競馬総合ハンドブックというのがありまして、この中でも次のようなくだりがあります。「三連単はハイリスクで、ファンの懐の疲弊も早い弱点があり、購入単位の見直しは今後の検討課題といえる。」
市民が泣きを見るようでは、生産者だって喜べないわけであると思うんです。ですから、リスクを高める、ギャンブル性を高める投票方式は見直すべきという、このような指摘をどのように受けとめますか。
○松島政府参考人
委員御指摘のように、勝馬投票券にはさまざまな種類がございまして、比較的的中率の高い複勝とか単勝とかいったものもあれば、他方、今お話がございました三連単という、一つのレースで一着、二着、三着をその順番に当てるという非常に的中率の低いものがございます。
そういった、リスクといいますか、当たる可能性といいますか、確率もファンの方々に認識していただいた上で勝馬投票券を購入していただくということが大事だろうと思っています。
また、その当たる確率に関しましては、実は、平成二十四年に競馬法改正をさせていただきまして、払い戻し率を、当たる確率が高いものについては払い戻し率を比較的高く設定する、たしか上限八〇%だったと思いますけれども、当たる確率が低いものについては払い戻し率を低く設定するという形で、平準化を図るという形での制度改正も行っているところでございます。
○畠山委員
答弁が難しくなるほど、そういう難しい仕組みになっているわけでありまして、いずれにしても、全レースに三連単が導入されたのは二〇〇七年だと思うんですが、それ以降で見ても売り上げも減ってきたということでも、やはりこのことについてこの機に検証もして見直すことが必要だということを指摘しておきたいと思います。
それで、深刻な問題なのは生産地の実態です。
昨年ですけれども、北海道日高管内の各町長、各農協組合長、日高生産農業協同組合連合会長で構成する軽種馬生産構造改革推進会議で、北海道日高振興局馬産地対策室より、七百五戸の経営動態調査が報告をされています。それによれば、比較的健全なA階層三百三十三戸が約半数を占めるものの、C階層が一割の七十二戸、D階層が二割の百三十三戸を占めていて、軽種馬経営の厳しい実態が浮き彫りとなっているというものです。
これまでも、日高地方に私も足を運んで話を聞いて、この間も実態を聞いてきたんですが、いつでも変わらず言われることがあるんです。そもそも、国は軽種馬を農業としてまともに位置づけていないんじゃないかと言われるんですよ。
ちょっとシンプルに聞きますけれども、大臣、軽種馬は日本の農業でまともに位置づけていないんでしょうか。
○林国務大臣
軽種馬の生産は、競馬事業の一翼を担う重要な産業でありまして、放牧地や採草地といった農地に立脚した土地利用型の畜産である、こういうふうに認識をしております。
特に、今御指摘のありました軽種馬生産の八割を担っている北海道日高地域では、軽種馬生産というのは基幹産業として地域経済を支える重要な位置づけにある、こういうふうに考えております。
○畠山委員
もちろん農水省の文書なども見ますし、そういう話も聞けば理解はできるんですが、それなら、どうして今言ったような声が生産者から出てくるのかということをやはり掘り下げて受けとめる必要があると思うんですよね。
先ほどの調査報告では、借入金のない経営体が百五十八戸と全体の約四分の一となっている一方で、一億円を超える借入金の経営体が九十一戸と一割強を占めている。また、一件当たりの借入金残高は約四千八百万円です。経営に対して借入金の負担が大きいわけです。
これは確認ですが、大きな負債を抱えているわけですが、こういう現状に対する支援はどのようなものがありますか。
○松島政府参考人
今委員から御紹介がございました調査報告については、私ども、ちょっと承知していなかったものですから、よく勉強させていただきたいと思います。
私どもの把握しております数字によりますと、北海道日高振興局の調べによりますと、日高地域の軽種馬生産専業経営のうち七五%が負債を抱えていらっしゃいまして、その負債を抱える農家のうち四五%は一経営体当たり五千円を超える負債があるということで、軽種馬生産経営は厳しい状況にあるというふうに認識しているところでございます。
このような状況を踏まえまして、現在、日本中央競馬会の資金などを活用した競走馬生産振興事業というものを行ってございまして、その中で、負債の長期低利資金への借りかえですとか、それから、経営を支援するための優良な種牡馬、繁殖牝馬の導入、先駆的な軽種馬生産施設の整備などに対する支援を行っているところでございます。
こういったことを通じまして、強い馬を生産できるような軽種馬生産構造の強化を推進してきたところでございます。
○畠山委員
局長さん、今、負債のところで五千円と言いましたけれども、五千万円でよろしいですね。
それで、今言ったように、借りかえですとかいろいろな事業はもちろんありますということですが、それでも、先ほど言ったように、農業として位置づけていないという声が出てくるのが現状です。ですから、今述べますけれども、生産者の現状や意見をよくよく聞いた、見合った支援が必要だというふうに思います。
生産地では、勝ち組、負け組という二極化が進んでいるというふうに聞きます。規模を大きくして、勝てる馬を育成する生産者がいる一方で、これは二〇一三年の調査ですが、十頭以下の小規模零細経営農家が五百六十一戸で約七割と多数を占めているわけです。小規模零細の農家が育てる馬もいるから、レースも成り立つし、地域社会ももちろん成り立つわけで、ただ、このような農家ほど経営が苦しい実態にあります。
酪農でしたら、搾乳して、それで返済計画を立てるということもできるけれども、軽種馬というのはなかなかそうはいかない。融資を受けても返済計画が立ちにくいわけでして、競走馬生産振興事業も平成二十九年度までですから、それより先への不安が出るのも当然だというふうに思います。
先ほど紹介した軽種馬生産構造改革推進会議から出されたレポートを見ると、支援に対する具体的な提言があるんですね。分業化の推進だとか、あるいは大規模牧場から中小牧場への繁殖牝馬の預託とか、経営安定策などが提起をされているわけです。
先ほど大臣から、軽種馬について、農業の重要なところであると答弁がありました。それならば、競馬の売得金を原資とする振興事業に依存するような枠組みにとどまらないで、農業本予算での支援を拡充する検討を進めてはどうかと思いますが、いかがですか。
○林国務大臣
軽種馬生産は畜産の分野でございまして、競馬事業の一翼を担っておると申し上げたとおりでございますが、軽種馬生産対策を国費で御支援するということは、競馬そのものは我が国の食料の安定供給、自給率の向上に資するものではないということでございまして、競馬事業による売り上げの一部でこの対策を実施していることに加えて、その上にさらに国費で支援するということは、納税者、国民の御理解を得ることがなかなか困難ではないかと考えております。そういったことで、これまでも軽種馬生産対策は競馬事業の売り上げの一部を原資として実施をしてきたところでございます。
具体的には局長から答弁をしたとおりの内容でございますが、今後とも、馬産地の関係者の要望等も踏まえて、競走馬生産振興事業などを通じて馬産地の振興を図ってまいりたいと考えております。
○畠山委員
そういうふうに、食料の安定供給にかかわらないからということが出てくるので、先ほど言ったように、生産地では、軽種馬は農業ではないのかという声がずっと出てくるわけなんですよ。きちんとやはり改めて指摘をしておきたいというふうに思うんです。
最後に、TPPが馬産地に与える影響についても問います。
今、輸入馬への関税が一頭三百四十万円、外国産馬が出られるレースも日本では開放されてきて、今、外国人の馬主がふえてきているというふうにも聞きます。牧場が外資によって買収されているという話も聞くわけです。仮に、TPPで関税がなくなるとすれば、さらに外国産馬を持つことが広がる懸念があります。
北海道の独自試算によれば、生産額で百一億円の減少、影響総額は二百七十億円に上って、三千人の雇用にも影響があるとされています。米、畜産、酪農、畑作、そしてこの軽種馬生産地でも、だからTPP反対だという声が上がって、もちろん、日高管内へ行けば、それぞれのところにもポスターが目立つところに張ってあるわけです。繁殖牝馬を安く購入できるという面の指摘もありますが、ただ、この試算結果を見れば、負の影響の方が大きいと言わざるを得ません。
このままTPPに参加ということになれば、畜産振興という目的さえも達成できないんじゃないかというふうに思うんです。農水省としてどう考えますか。
○林国務大臣
TPP交渉でございますが、全体をパッケージとして交渉しておりますので、軽種馬の関税、これは一頭当たり三百四十万円でございますが、この取り扱いについても何ら確定しているものはございませんで、軽種馬生産農家への影響については、予断を持って何らお答えできる状況ではないということで、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
今御指摘がありましたように、軽種馬生産は競馬事業の一翼を担う重要な産業でございまして、先ほど申し上げましたように、北海道日高地域においては基幹産業として地域経済を支える重要な位置づけにあることから、引き続き政府一体となって交渉に全力を尽くしたい、こういうふうに考えております。
○畠山委員
北海道は、各地で、米であっても、畜産、酪農であっても、今言ったように、軽種馬のところであっても、TPPに対する強いこのような意思が表明されてきているわけですから、改めてしっかり受けとめる必要があると思います。
安倍首相がアメリカに行って議会演説をするとかしないとか話がありますけれども、私が思い出すのは、四年前ですか、韓国の李明博当時大統領が議会で演説をされたんですね。これは、その後、アメリカと韓国のFTAが結ばれることになって、そのときにも、アメリカの議会で、このFTAを結ぶことによってすごくアメリカとの同盟関係が強くなったというような演説をしたわけですよ。でも、韓国に戻ってきて、結局、FTAが結ばれて、毒素条項が入っているとか、さまざまな批判にさらされてきて、帰ってきた後の演説ができないような抗議行動もされたというようなことが起きたわけです。
ですから、改めて、このようなTPP交渉、きょうもこの委員会で議論されてきていましたが、もしやアメリカに行って首相が安易に妥協するというようなことなど絶対に認められないということを最後に一言述べまして、私の質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第5号   平成二十七年四月十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
きょうの最後の質疑ですので、よろしくお願いいたします。
質問に入る前に、先月三十日、翁長沖縄知事が防衛省沖縄防衛局に対して出した名護市辺野古における新基地建設の作業停止指示について、林大臣が効力の一 時停止を決定したことについて、我が党は予算委員会などでも、大臣の決定が沖縄の民意を踏みにじり、沖縄防衛局の申し立てをオウム返しにしただけのもので あることを批判してきました。改めて、本委員会でも強く抗議の意思を初めに表明したいというふうに思います。
質問に入ります。
食料・農業・農村基本計画では、品目別の生産努力目標が示されているわけです。その中でも、飼料用米については十一万トンから百十万トンへ引き上げるというふうにしています。
なぜ飼料用米の引き上げを重視するのか、その意義と、十アール当たり八万円の交付単価に設定した理由について、事務方で結構ですので、改めて御確認をしたいと思います。
○松島政府参考人
まず、飼料用米の生産努力目標の水準を引き上げる、この意義ということでございます。
これにつきましては、本委員会で何度も御議論がございますけれども、主食用米の需要が年々八万トン程度減少する中で、需要に応じた主食用米の生産ということを図っていく必要がある、やはり主食用米の需給と価格の安定というのは非常に大事な政策目的でございます。
それに加えまして、水田のフル活用を進めていくという観点から、需要のある飼料用米への主食用米からの転換ということが大きな政策課題になっているということで、主食用米から飼料用米の生産への生産努力目標を引き上げたということでございます。その背景でございます。
さらに、もう一つ委員から御質問がございました、水田活用の直接支払交付金の交付単価の考え方でございます。
これにつきましては、飼料用米に限らず、この直接支払交付金の交付単価は一定の考え方で算定が行われてございまして、具体的に申し上げますと、交付対象 作物の生産コスト、それから交付対象作物の販売収入、これを一定の前提を置きまして試算した上で、主食用米の所得との格差が生じないようにということを基 本に設定しているところでございます。
具体的に飼料用米の場合について御説明申し上げますと、その生産コストにつきましては、通常、飼料用米は主食用米をつくっている方が転換するということ でございますので、通常の主食用米の生産コストから主食用と共通で利用できる農機具費などを差し引いたコストといったものを前提に、反当たり六万四千円程 度になるというふうに試算してございます。
他方、販売収入につきましては、通常、飼料用米は輸入トウモロコシと同等の価格で販売されているということがございますので、それをベースに流通経費などを差し引いて計算しますと、反当たり七千円になるというふうに見込んでいるところでございます。
その中で、交付金単価との関係でございますが、まずその単収が、標準的単収、反当たり五百二十キロ強でございますけれども、これをベースに、交付金単価 を八万円と仮置きいたしますと、例えば、先ほど御説明しました販売収入が七千円、交付金単価が八万円、これからコストである六万四千円を差し引きますと、 反当たり二万三千円という所得が得られるという試算ができるわけでございます。
もう一つ、多収性専用品種による作付を今推進しているところでございますけれども、これを用いて試算いたしますと、多収性でございますと、仮に標準的な 収量から百五十キロぐらい多収するということを前提に試算いたしますと、販売収入が反当たり九千円、それから、百五十キロ増収できますと交付金も上限の反 当たり十万五千円出ますので、それを加えまして、さらに多収性専用品種を使ったことに伴いまして、反当たり一万二千円の追加的な支払いがある。そうします と、九千円と十万五千円と一万二千円を加えまして、生産コストを差し引きますと、大体反当たり五万円という数字が出ます。
一定の試算におきますとそういうことになりまして、他方で、同様に、主食用米につきましても、反当たりで三万六千五百円という所得の試算がございまし て、おおむね、幅はございますけれども、飼料用米を生産した場合の所得と主食用米を生産した場合の所得が遜色ない数字になっているという考え方で設定して いるということでございます。
○畠山委員
大分御丁寧に説明をいただきまして、つまりは、主食用米から飼料用米にかえることを誘導するわけですから、その生産に見合う単価である、所得差が生じないようにするということなわけですよね。
主食用米ですけれども、ただ一方で、生産努力目標、今回立てられたものを見れば、現在の八百五十九万トンから七百五十二万トンまで下げる、しかも、生産 コストは、目標として今後十年間で四割減らすということはさまざま語られてきたわけでして、これで仮にTPPへの参加ということとなれば、間違いなく米価 も下がることは懸念されるわけです。
そうなれば、主食用米の価格に引きずられて飼料用米に対する交付単価も下がっていくということにはなるんでしょうか、ならないんでしょうか、なりませんか。
○林国務大臣
今お話がありましたように、主食用米の需要が毎年八万トンずつ減っていきますので、水田のフル活用を図るためにも飼料用米は大事だ、こういうふうに思っております。
飼料用米の生産拡大のためにも、今細かく試算をお示ししましたが、直接支払交付金を充実して、単価に差が出るのは、数量払いというのを入れまして、飼料用米のインセンティブを高める、こういうことでございます。
この直接支払交付金の単価ですが、これは毎年度の国会の予算審議を経て決まるものでありますので、これを予断することは適当ではないと考えております が、一方で、新たな食料・農業・農村基本計画においても、飼料用米など戦略作物の生産拡大を位置づけまして、その達成に向けて必要な支援を行うということ を明記させていただいたところでございます。
○畠山委員
もちろん、なかなか十年後まで同じ単価ということを考えるのは難しいかもしれませんけれども、どこでもそうでしょうけれども、 やはり安定的に見通しを持ってつくっていくということについては、交付金が維持されていくのかということについて、もちろん、多くの農家は心配されている わけです。
米穀の新用途への利用の促進に関する基本方針では、この後、出てくると思いますけれども、「競合品と競争し得る価格での供給」という項目があります。 「新用途米穀の需給規模を拡大するためには、輸入小麦・トウモロコシ等の競合原料と競争し得る価格で供給することが必要」と明記されています。
つまり、栄養価も高くて、多収量の品種で、その上、競争に耐えられるようにコスト削減を進めろということだというふうに思うんですよね。コスト削減は今 だってどの農家も努力はもちろんしているわけでして、問題は政府の支援の方だと思うんです。結局、コスト削減で乗り切れということかという不安の声が出て くるのは当然だというふうに思うんですね。
大臣、改めて、この飼料用米に係る生産費に見合うだけの交付金、助成ということを維持していくべきではありませんか。
○林国務大臣
これはまさに、先ほど、ほかのものと比べて遜色のない、こう言われましたが、これを基本にしっかりと考えていかなければならない、こういうふうに思っております。
単価そのものについては、先ほど申し上げましたように、国会の予算審議というのがございますので、予断をすることは適当でないと思いますが、この食料・ 農業・農村基本計画、これはおおむね十年を目指して、計画をきちっと定めて、生産努力目標も百十万トンということで掲げさせていただいておりますので、こ れを達成するために必要な水田活用の直接支払交付金の単価、予算についてはしっかりと確保してまいりたいと思っております。
○畠山委員
そもそも、飼料の自給率も下げてきたということについても、やはりこの機会に見直して、反省するべきは反省することが必要だというふうに思うんですよ。
飼料用トウモロコシの輸入は、一九六〇年に百四十七万トン、一九七〇年に四百二万トン、そして一九八〇年に一千十二万トンと急増してきたわけです。
これだけ急増してきた原因について、農水省としてはどう考えていますか。
○林国務大臣
昭和三十年代後半から、畜産物の摂取量の増加など国民の食生活が大きく変化をした、これに伴って、畜産そのものが大きく生産量を伸ばしておりまして、餌の需要が急速に増大したということでございます。
飼料穀物については、国土や気象条件の制約などがございまして、この需要に対応して生産を拡大することが難しかったということである一方、今御指摘の あった米国等の穀物の輸出国、これがトウモロコシなどの穀物生産を拡大しまして、極めて安価な安定的な供給が可能となったということで、米国のトウモロコ シなどの輸入量が増加してきたところであります。
○畠山委員
国民の食生活の変化だけに原因を求めたらだめだというふうに思うんですよね。
当時、もちろん御存じだと思いますが、一九五〇年代に飼料用の穀物の輸入が自由化された後に、一九六一年でしたか、制定された農業基本法で、選択的拡大 の名のもとで、外国産農産物と競合するものがほかの作物へ転換が進められて、その結果として飼料の輸入も進むということになったわけです。これが今の飼料 の自給率低下の出発点ではなかったのかと思うんですね。
もちろん、飼料の自給率を上げることは大事だというふうに思うんです。ですから、今このように進めている方向についても遅きに失しているというふうに思 いますし、その当時から、さらに飼料は自国で生産するというふうにさまざまな検討や政策を進めることが必要だったというふうに改めて思うわけです。
ですから、食料自給率を引き上げるんだったら、この六〇年代と同じ轍を踏むべきでない。飼料用米でも展望を持ってつくることができるよう、先ほど述べた交付単価の維持ですとか、歯どめなき輸入拡大路線の見直しを繰り返して求めておきたいというふうに思います。
次に、農地とその担い手について質問いたします。
農地の見通しと確保について、前回の基本計画では、優良農地の転用抑制や耕作放棄地の再生で、農地面積を基本的に維持する見通しのものとなっていまし た。ですが、今回の計画では、二〇一四年現在の農地面積四百五十二万ヘクタールから、十年後には四百四十万ヘクタールと減る見込みとしています。
食料自給率を上げるなら、さまざまな品種や技術の向上はもちろん必要でしょうが、優良農地の確保も大事なことは言うまでもないというふうに思います。で すが、今回の計画では、農地の転用というところに十一万ヘクタールと見込んでいます。ここには、せっかくの優良農地も含まれるかもしれないわけです。
この十一万ヘクタールが転用されると見込んだ背景や理由はどういうものですか。
○三浦政府参考人
お答えいたします。
今回の農地面積の見通しにつきましては、平成二十六年の農地面積四百五十二万ヘクタールを基準といたしまして、近年の農地転用面積、それから荒廃農地の 発生面積の趨勢を踏まえて、基本計画の期間における荒廃農地の発生の抑制、それから荒廃農地の再生等に係る施策の効果を織り込みまして、平成三十七年の農 地面積を四百四十万ヘクタールと見通しているところでございます。
このうち、お話のございました農地の転用につきましては、耕地及び作付面積統計におきます平成二十三年から二十六年の農地転用面積の平均が平成三十七年まで継続するものといたしまして、約十一万ヘクタールの減少を趨勢として見通したということでございます。
○畠山委員
転用ですから、その後、その農地を受ける、借りる、受けたいというところが、要望がないともちろん転用されていかないわけでし て、もちろん農水省がそれを何に使ったかと後追いするものではないんですけれども、それでは、どういうところが強く転用が望まれてきている、実際そのよう に使われてきているというふうに考えていますか。
○三浦政府参考人
お答えいたします。
今御説明申し上げましたバックデータのそのまた内訳を見てみますと、近年の農地転用で大きな転用先といたしましては、統計の分類でいいますと宅地等ということでございます。
宅地等には、住宅、学校用地、公園、その他の公共用社会福祉施設、あるいは会社等の厚生福祉施設用地、また商業用地等が含まれているというものでございまして、そのほか工場用地、道路、鉄道用地等がございますけれども、大きなものは宅地等ということでございます。
○畠山委員
今、この農地をめぐってさまざまな不安の声が上がっているわけですよ。
地方創生の一括法案なども別のところで審議されていますけれども、これは、小さな拠点をつくる。今回、基本計画にも盛り込まれていますけれども、これは 別の機会に議論したいと思っていますが、そこにかかわって、さまざまな規制や、あるいは許可権者についての変更がされているわけです。
ことしの一月十六日に、日本経団連が、「わが国農業の持続的発展と競争力強化・成長産業化に向けて」という提言を出しています。その中の、「農業の成長 産業化を支える担い手の確保」で、「企業を農業経営の重要な担い手として位置づけ、時期を含め、企業による農地所有の可能化を明確に示すべきである。」と 求めています。
これは、予算委員会等で日本共産党は繰り返し主張してきましたが、農地の転用あるいは流動化というのは、一貫して財界、経済界が主張してきたことだったというふうに思うんですね。
農外企業が農地を確保して、農業生産法人の要件も緩和される法案がこの後されますけれども、落下傘のようにやってきた場合に、今いる中小の農家はどうなるのかというのが重大な問題になるわけです。
基本計画では、この計画全体で示している農業構造の実現に向けた担い手について、認定農業者、認定新規就農者、集落営農を挙げて、重点的な支援を実施すると書かれております。
では、担い手から外された農家はどうなるのか。何の支援もなく、勝手に作付してくれということになるんでしょうか。
○林国務大臣
農村地域では、高齢化や人口減少が都市に先駆けて進行しておりまして、集落機能が低下するなど、厳しい問題にも直面しております。
したがって、こういう状況に対応して、国民に対する食料の安定供給、それから多面的機能の発揮を図るためには、農地や農業の担い手を確保するとともに、農業生産活動が継続して行われるよう集落の共同活動を維持していくことも重要でございます。
こうした中で、担い手以外の農業者の方々についても、地域の実情はそれぞれあると思いますが、実情に応じて、担い手への農地集積を行いながら、地域の共 同活動や六次産業化等の取り組みに参画していただく、また、担い手の規模拡大が当面困難な地域では、農業生産の継続、農地等の保全に一定の役割を果たして いただく、こういうことが期待をされておるところでございます。
こういう取り組みを通じて、担い手以外の農業者も含めて、地域住民が役割分担をしながら、共同活動、六次産業化等に取り組む環境を整備するということによって、農村コミュニティーの維持にも配慮した農業の振興に努めてまいりたいと思っております。
○畠山委員
今、役割分担という言葉がありまして、実際、この基本計画も、五十二ページですけれども、「農業・農村の構造変化が見込まれる中で、農地や農業用施設の維持や管理等における、多様な関係者による役割分担等の在り方について検討する。」というふうにあります。
大臣も、最初の就任をされたときですけれども、二〇一三年十一月二十六日の記者会見で、役割分担にかかわって記者に問われて、こう答えています。地域と して、この農地を農地として維持するための共同活動、これをきちっとやっていって、結果として担い手の育成を後押しをしていくと答えている。
つまり、今までの議論をまとめてみますと、担い手から外れた農家というのは、認定農業者だったりあるいは参入した農外企業であったりを、水路ですとか農道の管理で後押ししてほしいということなんですか。
○林国務大臣
まさに多面的機能支払いということは、水路、農道等の地域資源の維持管理を行っていただく共同活動でございます。
これは、集積が進んでいって担い手が広いところをやるようになると、それだけ水路の維持、農道等の管理というのは大変になってまいりますので、やはり共 同でそういう活動をやっていただくということは大変大事になってきますし、そういうことがあって初めて担い手への集積というものもできてくるのではない か、こういうふうに思っておりまして、そういう活動を御支援申し上げようということで多面的機能支払いという位置づけをしておるところでございます。
○畠山委員
そもそも農村の多面的機能というのは、生産と管理が一体として、それぞれの農家の方々が自発的にそれぞれの地域において行って きたものだというふうに思うんです。ですから、食料・農業・農村基本法の第三条にも、「農業生産活動が行われることにより生ずる」というふうに定めてい て、繰り返しですが、生産も管理もそういうふうに一体に進めて、これまでの日本は国土の保全であったり水源の涵養を進めてきたわけだから、この委員会も含 めて議論して、だから基本法に盛り込んできたというふうに思うんですよね。
ですから、これを今言ったように役割分担ということで分けていくというふうになっていけば、農村のあるいは農家のさまざまなこういうコミュニティーが結果として崩れていくことになるのではないかというふうに思うんです。
ですから、先ほど多面的機能支払いのお話もされましたけれども、このパンフレットで、日本型直接支払いも含めて、担い手に集中する水路、農道等の管理を 地域で支え、農地の集積を後押しすると、わざわざ米印をつけて主従関係のように描かれているわけです。そのようにこのパンフレットで書いている。
そういうわけですから、実際、今まで、どのような年齢であっても、どのような面積であっても、一生懸命地域を、生産とそれから美しい農村を、こうやって 結果としてつくっていくことになってきた農家の方々の思いを考えたときに、この道で本当にいいのかということを指摘せざるを得ないというふうに思います。
ですから、今回の基本計画というのは結局何なのか。TPPを初めとしてさらなる輸入の自由化が前提とされて、農外企業の参入と、勝ち残れるところだけ勝 ち残っていればいい、小さい農家は農村維持の役割を担ってくれればいいということなのかというふうに思うんです。それに対して障害となるような農業委員会 や農協の制度は見直そうじゃないかということなのではないかというふうに懸念を持つわけです。
前回の質問でも述べましたが、食料自給率を引き上げるのであれば、国内での価格保障を行うとともに、歯どめなき農産物輸入拡大路線を転換することであるというふうに思います。
このような道とは違う基本計画では、一層日本の農業を壊していくことにつながるのではないかということを指摘いたしまして、私の質問を終わります。

第189回国会 東日本大震災復興特別委員会 第4号  平成二十七年四月二日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
時間が限られていますので、早速質問に入ります。
本改正案では、避難指示が解除された区域へ帰還する方が公営住宅へ入居できるよう要件が緩和されます。その趣旨と内容について、事務方で結構ですので、端的に述べてもらえますか。
○熊谷政府参考人
お答え申し上げます。
改正法第二十八条の趣旨及びその内容についてでございますけれども、避難指示解除区域の建物につきましては、事実上利用不能となっている建物も多く、ま た、帰還住民の中には同一市町村内でも放射線量の比較的低い地域に帰還することも考えられることから、従前居住されておられた住宅以外の住宅を確保する必 要も生じることから、このような住民の帰還を促進するための規定を設けたものでございます。
具体的な要件緩和の内容でございますけれども、当分の間、現行の公営住宅の入居者資格要件のうち、現に住宅に困窮していることが明らかであるという要件を満たす場合には、収入に係る要件の適用を撤廃することといたしております。
○畠山委員
住まいをどうするかは、避難をしている方々の大きな不安のもちろん一つです。実態がさまざまなだけに、安心して暮らせるための選択肢をふやすことは大切で必要な措置だというふうに思います。
ですが、避難指示が解除されても帰還を迷っている方もまだまだ多いというのはきょうもずっと議論されてきたことです。避難指示が解除された川内村から郡 山市の仮設住宅に避難している女性の方は、帰りたい思いはあるけれども、放射能の影響を心配する二人の娘が行かないと言うので孫にも会えないことや、避難 中に脳梗塞を起こしたことから医療体制への不安も口にしている例もあります。
郡山市の仮設住宅自治会から川内村村長へ、昨年十二月十五日付で要望書が出されています。これは日本共産党にも届けられまして、抜粋してそのまま読み上 げると、内容は、自治会の総会席上、参加住民から、平成二十八年二月までの入居をさらに延長していただけるよう全会一致で行政に要望の声がありましたとの ことです。
避難指示が解除されても、帰還を迷って、仮設住宅に住み続けるしか選択肢がないという方もおります。もちろん、決して仮設住宅に住み続けたいというわけ ではないにせよ、今すぐは帰る決断ができない被災者がいる以上、機械的な入居期間の打ち切りはしないというのは当然だと思いますが、大臣、いかがでしょう か。
○竹下国務大臣
しません。そういうことはしません。
御存じのとおり、仮設住宅は二年というのが災害救助法の原則ですが、今まで一年、一年、一年という刻みで延長してきておりまして、これからも、復興の状 況等、あるいは長い間住んでいただけるような住宅がきちんとできているかといったような住宅の建設状況等々を勘案いたしまして、県と所管しております内閣 府の方でしっかり検討してもらう、我々は、途中で追い出すようなことはしません。
○畠山委員
もちろん強制的な帰還を求めることはできないわけでして、今大臣おっしゃってくださったように、これは、ただ、先ほどの要望書が出る背景というのが、やはりさまざまな不安を持っているということでありますので、ぜひともよろしくお願いしたいと改めて思うわけです。
四年もこういう仮設住宅での長期の避難生活が経過したわけでして、その間、仮設住宅にカビが生えて健康被害が問題になっているとか、杉の木でつくった柱 も傾くなど、仮設住宅の住環境の悪化があります。四年間で子供が大きくなって、仮設での生活が手狭になってくるというケースももちろんあります。
ただ、政府のこの間の対応では、仮設の住みかえということが困難でしたし、また、避難指示が解除されているために、避難先の被災者向け公営住宅にも入れない。その中で、仮設住宅に住まわざるを得ないということがあるのが実態だというふうに思います。
私は、北海道からの選出なんですが、宮城県石巻市の生まれで、その石巻市にももちろん仮設に住まわれている方はたくさんいらっしゃって、共通する問題ではありますけれども、なお一層、福島では、原発事故の災害が重なり深刻の度は増しているというふうに思うんです。
住民意向調査でも、川内村では、調査に回答された方のうち、村に住みたいと考えている方でも、帰還に一年から五年と考える方が約二七%、時期は決めてい ませんが住みたいという方も約二九%いらっしゃる。田村市都路地域でも、同じく、一年から五年以内と考えている方は六割を超えます。帰還を決断するまで、 今後一年から数年の時間を必要としている被災者の実情にかみ合った支援が必要だと思います。
例えば、子ども・被災者支援法では、避難先の公営住宅へ入れるよう優先的取り扱いを受けられる居住実績証明書が昨年十月から発行されていますが、自治体ごとの入居要件はもちろんありますけれども、こうやって国からもお願いをして何とか住居を確保できるようにしてきた。
そもそもこの法律は自主避難を想定されたものですけれども、例えば、川内村のように避難指示が解除されて自主避難者のようになっている方々にも、本人が希望すれば避難先の公営住宅に入居できるような選択肢を準備することはできないか、伺います。
○浜田副大臣
御質問いただきました公営住宅への入居円滑化制度でございますけれども、これは、御指摘のとおり、子ども・被災者支援法の基本方針に基づく制度でございます。
この制度におきましては、既に現在でも、避難指示区域以外の旧緊急時避難準備区域であった広野町や楢葉町の一部等についても対象としております。
そういう趣旨を踏まえまして、今後、避難指示の解除の状況を踏まえまして、今御指摘のところについても対象に入れていく方向で適宜見直していきたいと思っております。
○畠山委員
政府として、今確認できたように、実態に応える具体化を進めていただきたいというふうに改めて思います。
問題は、やってはいけないことは、帰還か移住かの二者択一を迫っていくということだというふうに思うんです。それでは避難者が苦しむことになってしまいます。
三月十一日付読売新聞では、取材を通じて知り合った記者のもとに、ことしは決断のときです、苦しい限りですと避難者からの年賀状が届いたといい、帰るか、帰らないかと十二万人の避難者に迫るのは残酷な面があると指摘しています。
昨年九月三十日に発表された日本学術会議の提言の中には、「帰還を当面選択しない住民も公平な取り扱いをすること」が挙げられて、「具体的には避難指示 が解除された後も、借り上げ住宅を一定期間、継続的に使用できるなど、住居の確保に配慮すべき」と提言しています。ここには避難者の実態が反映されている というふうに思います。
ですから、最後に大臣に伺いたいんですが、帰還か移住かというのは、もちろん大きな人生の選択になります。迷っているという状況は、帰還することも選択 肢に入っているから迷っている。時間がかかるのも当然ですし、避難指示が解除されても、迷っている間は国がしっかりと住居を確保します、帰還が決断できる まで安心して住み続けられるようにしますという立場をぜひはっきりとさせていただきたいと思いますが、いかがですか。
○竹下国務大臣
お気持ちとしては、先生おっしゃることはわかるんですが、未来永劫にそれをするわけにはいかない、どこかで決断はしなければならない時期がやってくるわけです。今は、ここ一年、二年、そういう形でしのぐことはできるかもしれません。
しかし、学術会議の中にも書いてありましたとおり、一定の期間、これをどう読むか、どう判断するかということになると思います。お気持ちはわかりますが、全て受け入れるというわけには、なかなか難しいと言わざるを得ません。
○畠山委員
この迷っている間というところの後押しということは、どうしても必要だというふうに思います。
さまざまな多様な選択肢を国としてきちんと準備するということの具体化を重ねて強く求めまして、私の質問を終わります。

第189回国会 農林水産委員会 第3号   平成二十七年三月十九日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
所信表明で大臣が述べた食料・農業・農村基本計画の見直しにかかわって、先日の審議会において、農水省は、食料自給率について、前計画の二〇二〇年まで に五〇%とした目標を、二〇二五年までに四五%へと引き下げました。その理由を、農水省は、計画期間内における実現可能性を考慮して設定したとしていま す。
果たして、所信表明の内容で自給率は本当に上がるのか、それでは、どのように自給率を引き上げるべきなのかについて質問いたします。
食料自給率は、カロリーベースで、一九六〇年度の七九%を最高に、冷害のあった一九九三年度で三七%、そして今や三九%と低下傾向を続けてきました。
まず、食料自給率を引き上げる意義、なぜ自給率を引き上げなければいけないかについて、大臣の所見を伺います。
○林国務大臣
世界の食料の需給また貿易、これが不安定な要素を有しております中で、やはり食料の安定供給を将来にわたって確保していくと いうことは国民に対する最も基本的な責務の一つでありまして、国内農業生産の増大を図って食料自給率を向上させることは大変重要であると考えております。
食料・農業・農村基本法におきましても、食料自給率について、その向上を図ることを旨とし、国内の農業生産及び食料消費に関する指針として、農業者その他の関係者が取り組むべき課題を明らかにして目標を定めること、こういう規定になっておるところでございます。
新たな食料・農業・農村基本計画における食料自給率目標につきましては、こうした規定に即しまして、カロリーベースで、今御指摘のあった、現状三九%か ら四五%に、生産額ベースでは現状六五%から七三%に引き上げる、こういう案を去る三月十七日に食料・農業・農村政策審議会に提示したところでございま す。
○畠山委員
食料の安定供給を将来にわたって確保するという点で、引き上げにはもちろん大臣も異論はないわけであります。問題は、では、なぜ自給率が下がってきたのかということです。
昨年十月に農水省が発表しています「よくわかる食料自給率」では、低下した要因として、「消費面では、米の消費量の減少など食生活の大幅な変化、生産面では、農地面積の減少など国内供給力の低下」を挙げています。
大臣に伺いますが、低下をしてきた原因というのはこれだけなのでしょうか。
○林国務大臣
それも我が省の資料でございますので、おおむねそういうことでございますが、先ほどちょっと委員からも昔の数字も触れていた だきましたけれども、昭和三十五年、私が生まれるころでございますが、七九%、生産額ベースは九三%、これが二十五年度に、カロリーベースで三九、生産額 ベースで六五まで低下してきたわけでございます。
やはり背景としては、食生活の洋風化等が進んで、自給率の高い米、米はほとんど自給できておりますが、この米の消費が減少しているということ、それか ら、畜産物、肉類等、これは餌の多くを輸入に依存しておりますが、この畜産物等の消費が増加をしたということが消費面では言えると思います。
それから、生産体制そのものについてお触れいただきましたが、さらに言いますと、こういう食料消費の変化に国内の生産体制が対応し切れなかった、こういう側面があるのではないかと考えておるところでございます。
○畠山委員
農水省が出す白書では、近年では書いていないんですけれども、二〇〇七年度の食料・農業・農村白書では、「食の外部化の進展とともに食料品等の輸入が増加」、また「海外現地法人からの輸入が増加」していることも並べて記載をしています。
大臣は触れませんでしたけれども、このようにふえ続ける農産物等の輸入が自給率を引き下げることにつながったのは明らかだと思います。
この上に、この間のTPP交渉をめぐる報道では、米の輸入枠を五万トンふやすとか、牛肉、豚肉の関税を下げるなどと報じられてもおります。これでは、さらに自給率が大幅に下がることは間違いないのではないか。
これは農水省の事務方に確認しますが、今回、自給率を検討する際の、実現可能性を踏まえた検討という中に、TPPに参加した場合の検討も含まれているのか、事実の確認だけですので、端的にお答えください。
○あべ副大臣
委員にお答えいたします。
食料自給率目標を含む新たな食料・農業・農村基本計画につきましては、現時点ではTPP交渉の妥結の時期が確定しているわけではないため、TPP交渉を前提とはしていません。
○畠山委員
そのとおりに、改定したこの目標の前提にTPPはもちろん入っていないわけです。
ですが、随分と議論もされてきたように、TPPの妥結となれば、肝心の生産現場が壊れていくのではないか。そうなると、やはり、これで本当に食料自給率が上がるのだろうかというような根本的な疑問が湧いて当然だと思うんですね。
これまでも、農産物等の輸入が進められて、低価格競争に日本の農家が太刀打ちできませんでした。それに対抗するためと、政府が規模拡大あるいは生産費のカットなどを進めてきました。
きょうは資料を用意しておりますので、まず一枚目をごらんください。米農家の農業所得に占める直接支払交付金の割合の表です。
これを見て、平均もそうですが、二十ヘクタール以上の米をつくる農家でも国の交付金等への依存度が高くなっております。先ほど斉藤議員も質問したよう に、ミニマムアクセス米の輸入なども反映しておりまして、規模を拡大しても低価格競争に苦しめられてきた、それをこのように交付金等で補う形でやってきた わけです。
しかし、この直接支払交付金を外していく、TPPになれば関税も外されていく、あるいは、米で新たな輸入枠を設けるなどとなれば、どうしてこれで自給率を上げられると言えるのか、納得がいく根拠を示してもらえませんでしょうか。
○林国務大臣
自給率の向上のためには、食料消費、農業生産の両面における諸課題について、その解決を図っていくということが必要だと考えております。需要に見合ったものをしっかりと生産していく、こういうことではないかというふうに思います。
やはり、消費者や食品産業事業者等がより国産農産物の消費拡大に取り組んでいただく、これが重要だ、こういうふうに思っておりますので、国内外での国産 農産物の需要拡大、それから食育の推進、食品に対する消費者の信頼の確保、こういうものに取り組んでいかなければならないと思っております。
農業生産については、農業者等が、国内生産による食料生産能力の向上を図りながら、マーケットインの発想によって多様かつ高度な消費者ニーズに対応した 国内農業の生産を拡大する、これが重要であると思っておりまして、優良農地の確保と担い手への農地集積、集約化をする、担い手そのものの育成、確保をす る、それから、農業の技術革新、食品産業事業者との連携等による生産、供給体制の構築等の実現、こういうものをしっかりと取り組んでいく、これが大変大事 なことではないかというふうに考えております。
○畠山委員
国内の需要拡大はもちろん大事なんですが、今、基本に立ち返った議論が必要だと思うんですよ。
食料・農業・農村基本法の第二条には、「国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び貿易が不安定な要素を有していることにかんが み、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。」と定めています。
輸入及び備蓄は適切にとしているんですが、二〇一三年の農林水産物輸入の確定値では、八兆九千五百三十一億円と過去最高を記録しています。
食料の安定的供給という基本に立ち返って、輸入のあり方や農業者支援を考えるべきだと思います。特に、圧倒的多数である家族型経営を支えるために、その議論をこの農林水産委員会でも行ってきたと思うんですよね。
私、この数年間の会議録をずっと読んできました。口蹄疫が発生したときには、農家を救えと真剣な議論がされていました。民主党政権のときの戸別所得補償についての意義をめぐって議論もされていましたし、土地改良の必要性も熱心に議論されていました。
その中で、民主党政権時の二〇一〇年三月十一日、ある自民党委員が質問でこう述べているんです。「ちゃんと国境措置をすることによって、お米は七七〇% もの関税をかけることによって、日本の農業を守っているんです。いわば農業は防衛なんですよ。」途中略しますが、「上限関税の問題やらさまざまな荒波にさ らされているわけですから、そういう意識をきっちり持ってもらわないと。」と大臣に迫っているわけです。
農水省に確認しますが、このときの質問者はどなたでしょうか。
○梶島政府参考人
お答え申し上げます。
稲田朋美議員でございます。
○畠山委員
今、安倍農政改革の先頭に立たれている稲田議員の質問とは思えないほどでありました。
林大臣、この稲田議員の言葉でそのままお聞きいたします。
ちゃんと国境措置をすることによって、日本の農業を守っているんですよ。自給率を上げるなら、今の国境措置、関税のあり方を見直して、歯どめなき農産物輸入拡大を今立ちどまって考えるべきではないのですか。
○林国務大臣
そのときに赤松大臣がどういうふうに答弁されたか、ちょっと手元に資料はございませんが、当然、食料自給率は国境措置との関係で低下する懸念があるのではないか、こういうお尋ねだと思います。
今交渉中の経済連携またWTOそのものについても、この結果が食料自給率にどういう影響を及ぼすかという仮定の話にお答えするということは、交渉内容に 予断を与えることになるために、差し控えさせていただきたいと思いますが、経済連携交渉、これはTPPも含まれますけれども、我が国の農林水産品が、これ らの交渉において慎重に扱うべき事項、いわゆるセンシティビティーを持っている、こういうことを十分配慮して、重要品目の再生産が引き続き可能となるよう 交渉を行っているところでございます。
○畠山委員
WTOのことはもちろん承知はしているんですけれども、そういう体制のもとでも自給率を引き上げてきている国々はあるわけでし て、そういった欧米諸国は、自分の国の主要農産物を守るための国境措置や再生産できるだけの実質的な価格支持政策を行っているのは、これは農水省自身が一 番知っていることだと思います。
EUでは、支持価格の引き下げはこの間ありましたけれども、加盟国の機関が買い支えを行っている。アメリカでは、ローンレートで、市場価格を下回った分の支えがあります。アメリカは、昨年農業法がつくられまして、さまざまなことが議論されてきております。
日本政府の白書でも、二〇〇七年度ですが、イギリスが四十年間で自給率を二七ポイント上げたことを取り上げています。その要因として四つ挙げて、消費 面、生産面のほかに、イギリスは平たん地が多いことや品種改良で単収を上げたことなどとともに、当時のEC加盟で農産物価格支持と国境措置による手厚い保 護を受けることになったと書いています。
ですから、本気で自給率を引き上げるということを考えるのであるならば、歯どめなき農産物輸入にストップをかけることと、生産コストも補償して再生産が続けられるようにして、今いる大多数の家族経営を応援することだというふうに思います。
資料の二枚目をごらんください。
実際、特に被災地においては、あすの経営をどうするかということにも苦しみの声が上げられているわけです。これは、昨年の総選挙中に、十二月八日ですが、河北新報において紹介されている記事です。「「担い手消える」 被災地の農家に嘆き」とあります。
「石巻市の生産者は、津波被災から復旧した水田を、営農を諦めた近隣の七十戸分も請け負っており、本年産米の価格暴落に苦しむ。」として、文中ですが、 同市の農家、大内さん五十二歳は、「今年、計四十五ヘクタールの水田でコメを作った。」「震災前、受託による規模拡大でコメの栽培面積が二十ヘクタール だった大内さん。自宅と農機具は流失を免れたことから、復旧した被災水田での生産を進んで請け負った。結果、昨年の栽培面積は四十ヘクタール以上に倍増し た。」
少し飛びますが、小見出しに「使命感で支える」というところがあります。「小作料、手伝いの手当、燃料代などを除くと、純利益が十アール当たり一万円残 るかどうか」だ。もともと覚悟していて、ここまでやってきたわけです。その下の五行目になりますが、「町内では来春、さらに三十ヘクタールで稲作が可能に なる。うち十ヘクタールを大内さんが」またさらに「引き受け、受託先は八十戸以上に増える。」
最後に、では、この大内さんは実際にどう考えているかというのが、このように述べています。「TPP参加に向けて小さな農家を一掃するのが、政府の狙い ではないかと勘ぐりたくなる」「復興への配慮も支援も消え、被災地が経済原理に投げ込まれれば、地域で踏ん張る担い手、支え手はいなくなる。」と厳しい目 を農家の方自身が被災地から向けています。
繰り返しになりますが、自給率を上げるというふうに言うんだけれども、交付金は減らす、TPPにも参加する、これでは農家は続けられないという声が上 がっているわけです。農外企業や六次産業化に期待しても、参入した農外企業がもうけが上がらないと撤退した例も、これまでも幾つかありました。特に、被災 地のような、リスクを抱えるようなところへ農外企業が参入するのか、食料自給率の向上にどのような貢献をするのかというふうに思うわけです。
大臣、このように河北新報で紹介されている農家のリアルな実態や声に、どのように応えますか。
○林国務大臣
これは被災地で、単なる復旧にとどまらずに、大内さんですか、その前の規模よりも結果として大きな規模になって、しっかりと覚悟を決めてやっていただいているという例ではないかというふうに思っております。
一方、自給率との関係でいくと、米は、先ほど申し上げたように、ほぼ自給ということでございますので、さらにこの自給率という意味では、自給ができている米の消費面というのが大事になってくるのではないかと思います。
そういう意味では、消費拡大の国民運動や、国産農産物を求める食品産業事業者、米を原料として使ってもらうというところも含めてやっていくということ と、それから、この大内さんの場合は多分それはできているんだと思いますが、やはり集積をしていくことによってコスト縮減を図っていく、そういう中で、い わゆる売り上げから生産費を引いた所得というものをなるべく上げていく、こういうことをしっかりとお支えしていく、この両面でもってやっていかなければな らないと思っております。
さらに、米以外のところで申し上げますと、先ほど言いました、食生活が変わっていく中で、畜産物、あるいは麦、大豆といったような今自給率が低いところ にもしっかりといろいろな施策を用いて、ここの向上を図っていくということもあわせて考えてまいらなければならない、こういうふうに思っております。
○畠山委員
自給率引き上げは国民的な願いでもあります。しかし、今回の所信表明から出てくる結論はそうならないのではないか、一部の農家しか生き残れない農業改革ではないのかという問題点を、これからの審議で徹底的に議論していきたいと思っています。
なお、最後に、この後、議題になる山村振興法の改正案について一言だけ申し上げます。
山村をめぐる状況に鑑みて、一層の振興に向けて国が役割を果たすべきことは当然です。
新たに設けられる基本理念に基づいて、森林、農用地の保全事業の推進や産業振興に対する支援策の具体化等、一層の国の取り組みを日本共産党は求めるものです。
質問を終わります。

第189回国会 予算委員会第七分科会 第1号   平成二十七年三月十日

○畠山分科員
日本共産党の畠山和也です。
先月の十二日に、北海道苫小牧市が昨年秋から整備している公園の工事現場の土中から、砒素と鉛が検出されたと発表いたしました。これは市が二〇一三年に土地交換を行いました王子製紙の苫小牧工場社宅跡地です。
北海道では、同様の事例が、二〇一三年に室蘭市において、市有地から土壌汚染対策法の基準を超える有害物質が検出されて、ここも旧新日鉄室蘭が鉱滓や土砂など百七十万トンを当時自社所有地だったこの土地へ埋設したとされています。
この問題については、昨年の十月十六日に、参議院環境委員会の方で市田忠義委員が質問をしております。
私は、これらの事案を通して浮かび上がる企業の社会的責任、CSRについて、これを中心に質問したいと思います。
まず伺いますが、二〇一三年五月に経産省企業会計室が、このような「CSR政策の方向性」という文書で発表しているものがあります。この基本的考え方について挙げている四点をまず確認してください。
○平井政府参考人
お答え申し上げます。
CSRについての基本的な考え方でございますけれども、企業が事業活動に取り組むに当たりまして、みずからが環境、社会に与える影響を認識し、幅広いステークホルダーの期待に配慮しつつ、企業がその社会的責任を果たしていくことは重要なことと認識しております。
経済産業省としましても、CSRを取り巻く国際的な議論の動向、先進的な取り組み事例の紹介等を行ってきておりまして、こうした情報も参考にしながら、企業が自主性を持ちましてその社会的責任を果たしていくことを期待しておるものでございます。
この一環といたしまして、昨年五月にその報告書を出させていただいたというところでございます。
○畠山分科員
今、四点のことについては直接述べませんでしたが、冒頭に、CSRは企業にとって環境、社会の持続的発展にも通じる広い意味での投資と書かれているわけです。
これを確認いたしまして、同じ文書に、欧州ではCSRの定義を変更したことも紹介されています。どのように変更していますか。
○平井政府参考人
EUにおきましては、リスボン戦略以来、CSR戦略に積極的に取り組んでおりますが、二〇一一年から一四年までの行動計画として、欧州委員会は八つの分野を示しております。
CSRの見える化の強化、グッドプラクティスの普及。ビジネスにおける信頼性レベルの改善。自主規制、共同規制のプロセス改善。CSRに対する市場から の報酬拡大。社会、環境に対する企業情報開示の改善。CSRの教育、訓練拡充。国家及び地域のCSR政策。CSRに対する欧州、国際的アプローチの調整と いうことを示しております。
さらに加えまして、欧州委員会におきましては、中小企業向けに人権に関する入門ガイドラインを策定、また、指導原則の使用を促進するための三つの業界に向けたガイダンスを策定しておるところでございます。
さらに、二〇一一年以降、欧州委員会では、CSRを企業が社会において及ぼす影響に対する責任と定義いたしまして、前回のCSRは自発的取り組みという定義を変更したというところでございます。
○畠山分科員
今、最後にありましたけれども、こちらに、社会への影響に対する企業の責任に変更というふうに経産省の文書でもきちんと書かれているわけです。国内的にも、国際的にも、企業が環境や社会への責任を果たすことは一般的には確認されているわけです。
そこで、冒頭に述べた事案ですが、これは環境省に確認します。
室蘭の事案は、昨年の市田議員の質問に対して、昭和四十六年に施行された廃棄物処理法以前に埋め立てが行われた場合は法の適用を受けないと答弁がありま した。しかし、この市有地、八丁平という地域ですが、ここでは基準の一千四百十倍の砒素、そして二十三倍の鉛が検出されている。
そこで、市田議員から、適法かどうかは重要だが、現に住んでいる住民や公園その他が汚染されているとすれば極めて重大なのだから、政治的な判断が必要で はないかとの質問に、望月環境大臣は、遡及することはないけれども、社会的責任を感じてしっかり対応すると、そういう意味ではそこを見守るといいますか指 導するといいますか、そういう形はあるという答弁をいたしております。
この答弁に基づいて、その後の環境省の検討や実行できたことはあったのか、なかったのか、ない場合はなぜできなかったのか、お答えください。
○鎌形政府参考人
お答え申し上げます。
御指摘の室蘭市八丁平の事案についてでございますけれども、本事案につきましては、北海道庁及び室蘭市において対応が進められております。私どももそう した状況を逐次お聞きしているところでございます。これまで道庁及び室蘭市によって、事実関係の把握に努め、対応を検討してきたと承知してございます。
これまでのところでございますが、北海道庁、室蘭市においては、廃棄物処理法に基づく対応は困難であるものの、土壌汚染対策法に基づきまして、区域の指 定でありますとか、あるいは道庁による措置の指示といったことがなされまして、汚染拡大の防止の措置を講ずることとされて、今必要な対応が行われていると いうことを私どもとしても承知してございます。
環境省といたしましては、引き続き、北海道庁や室蘭市の対応状況を注視しながら、相談があれば、助言するなど適切に対応してまいりたいというふうに考えてございます。
○畠山分科員
法に基づいて対応するというのはもちろんなんですけれども、結局、望月環境大臣が述べたようなことはされていないんじゃないか。施行前だから、当時は適正な埋め立てだったというふうに、室蘭市でさえもそう言っているということもありまして、それがなかなかできていない。
あわせて、この汚染原因について言えば、室蘭市の方は市民説明会で産業廃棄物と特定している説明を行っているわけです。本来でいえば、廃棄した事業者の責任と一般的にはなるはずですけれども、このように、責任が問われないケースが現実に生まれているわけです。
大臣に伺いたいんですが、排出事業者が明確なのに法の施行前では適正だったからと、汚染対策は国や自治体任せになったとすれば、これは企業のモラルハザードということが起きないのでしょうか。
○宮沢国務大臣
今のやりとりを聞いて、またお話を聞きながら考えておりましたけれども、法律というものがあって、法律にのっとって行動するということは当然のことであります。
一方で、モラル云々ということについていいますと、私が聞いている限りは、新日鉄は、私有地については、平成二十六年十二月に必要な措置を完了したとい うことでございますので、恐らく四十六年以前のものについても対応したということでありまして、それなりの社会的責任を果たされているのかなという気がし ております。
○畠山分科員
それなりの責任が果たされているという今の御答弁だったんですけれども、一番こういう汚染にかかわって被害を受ける市民の声 を聞くと、やはり不安感は払拭されていないわけです。例えば、市民からは、知らされていれば子供たちを公園で遊ばせなかったとか、土地を購入したばかり だった、買い取ってほしい、健康影響調査は希望者全員に受けさせてほしい等、たくさんの不安が出されています。
それで、新日鉄さんの方は、全て市に話しているという立場で、直接市民へ説明する機会を持たないできたということもあるわけです。室蘭市の方も、事業内 容の公開は企業利益の侵害に当たるおそれがあるといいまして、会議回数ですとか文書の記録などの開示もされていないといいます。これでは、やはり市民の不 安が払拭されないのも当然だと思います。
重ねて伺いますが、このような直接の説明が果たされていない状況で、企業の社会的責任が果たされていると大臣はもう一度お考えになられますでしょうか。
○宮沢国務大臣
話を承っておりますと、国として何かを言うという話よりは、室蘭市がどう対応するのか、また室蘭市と新日鉄住金がどういう話をして、市民に対して対応するのかということが大変大事な話だと思います。
○畠山分科員
もちろん、市の方に対しても、日本共産党も、議員もそうですし、議会の方で求めてはいるわけですが、そもそも一般的な汚染で なく、先ほど述べたように、一千四百十倍もの基準を超える砒素が出たとなれば、市民が不安でいっぱいになるのは当然ですし、それを払拭するだけの説明とい うのは、それなりに必要なことはあると思うわけです。ですから、事業者としても市民説明会をするとか、あるいは情報を公開して不安の払拭を図ることは当然 だというふうに思うわけです。
冒頭に述べましたけれども、同じく先月発生した苫小牧の事案についても、同じように、これは事業者の土地だったわけです。先日、私も王子製紙の役員の 方々とお会いしまして、直接話も伺いました。こちらの方は、良質な土砂に入れかえをして、そして再調査も行って、事業者として誠実な対応をするというお話 をされていたんです。もちろん、今後の推移は見守らなければいけないとは思うんですけれども、市民の不安を払拭するための検討というのも行っているんだと いう話もあわせて伺いました。
一方で、室蘭の事案の方は、土砂を入れかえるのではなく、盛り土で対応することになっています。土壌汚染対策法上でもそうなっているんだというふうに なっているからです。その措置を、市の方は、来年の春に公園が開放できるようにと、間に合わせるため、費用も五億数千万円をかけて市が丸々負担して行うこ とになっています。市有地だからということが理由です。この五億数千万というのは、一般会計の一%を超える額になるわけで、室蘭市にとって、そう軽い負担 ではないと思います。
大臣に重ねて伺いますけれども、先ほど説明責任をきちんと市民に向けて、社会的責任を自覚して行うべきだというふうに私は伺いました。これも改めて伺い たいし、このように、現に自治体にとっても、生まれている巨額な費用負担に対しても応分の責任を求めたいというふうに私は思うんですね。
説明責任、あるいは費用負担の応分な責任についても、社会的な責任の角度から果たされるべきだというふうに思いますが、大臣、いかがに思いますか。
○宮沢国務大臣
まさに、市と事業者が話し合われた結果がそういうことなんだと思いますので、私の立場で何か申し上げる話ではないような気がいたします。
○畠山分科員
いろいろと、市と事業者の関係というのは、さまざまな事情ですとか、そういうものがあるというのは大臣も承知していることはあると思うし、私も承知はしているわけです。
ただ、今述べたように、今回の事案でいえば、かなり基準値を超えるような砒素や鉛が出る中での大きな市民の不安があるわけでして、そういう意味では、先 ほど、最初に望月環境大臣の、環境大臣としての立場で御答弁いただいていますが、きちんと国として果たせることを果たしながら、市民、国民の不安を払拭す るということは大事だというふうに思います。
市民団体が範囲を広げて検査をしたら、基準値を超える鉛がほかのところでも検出されているといいます。どこまで汚染が広がっているのかと不安を持つ市民 の気持ちを考えたら、企業の社会的責任、CSRを推進する経産省として、一定の指導を進めることが必要ではないかと思います。重ねて、情報公開や市民説明 会などの説明責任を果たされることや、費用負担についての社会的責任も果たさせるよう、指摘しておきたいというふうに思います。
それで、今回の事案のように、法律でさかのぼれないで、責任がうやむやになってしまうことがあっては、これは放ってはおけないわけです。真剣に検討すべき課題であると考えます。
このような事態を打開する上で、米国で一九八〇年に制定したスーパーファンド法、スーパーファンドプログラムは参考になると思います。
御存じだとも思いますが、これは、一九七八年に学校内と近隣地の土壌から有毒化学廃棄物が発見されて、六百家庭の住民が強制転居することになったラブカナル事件を受けて立法に至ったものです。
きょうは、資料を準備しておりますが、この資料もあわせてごらんください。
背景は、先ほど述べたように、有害物質汚染災害への国民的関心の高まりもあった。対象としても、国内で最も汚染が深刻なサイトは一千二百カ所あった。責 任原則というのを定めまして、汚染物質の排出者だけでなく、運搬、貯蔵、処理者等関係があった者が全て潜在的責任当事者となる極めて厳しいものになってお ります。重ねて、厳格責任、全ての関与者に責任、連帯責任、あるいは遡及的責任、さかのぼった責任までも負うとしています。
対策プロセス等については、書かれているように、EPA、連邦環境保護庁が中心的役割を果たしまして、財源の手当ては特定産業等からの目的税と一般歳出 とで予算化して、遊休地や放棄された土地を処理してきたわけです。産業界や関係業界の連帯責任ですとか、遡及的責任を明記しているというのが大きな特徴だ と思います。
ただ、当時米国でも、さまざまな産業界からの意見ですとか、では、連帯の範囲をどこまでにするのかという数々の議論があったことは私も承知しております し、この間のこの法律、プログラムの経過がどういうふうに至っているかということももちろん私は承知をしているわけです。
しかし、先ほど紹介したように、今、現に住民の健康不安が存在し、自治体でも、負担が重くて解決が困難であっても、土壌汚染を放置していいことにはもちろんならないわけでして、こういうことはさまざまな関係する省庁で対策を本格的に行う必要があるというふうに思います。
このままでいいとは、もちろん大臣も思わないと思うわけでありまして、こういう新たな枠組みづくりなども経産省もかかわって必要ではないか、少なくもそういう認識はないかということを大臣に伺います。
○岩井大臣政務官
畠山委員にお答えをいたします。
遡及のお話もありましたが、経済産業省といたしまして、まず、企業の社会的責任ということをどう捉えているかというようなお話を少しさせていただければと思います。
土壌汚染に関する企業の法的責任につきましては、委員も御承知のとおり、環境基本法の原因者負担の考え方に従いまして、土壌汚染対策法において規定をされております。
一方、企業の社会的責任、いわゆるCSRでありますけれども、これは企業が自主的にやはり取り組むべきものだと経産省としては考えております。
政府といたしましても、地方公共団体が実施をいたします環境の保全に関する施策への協力の慫慂や、各企業が発表している、これは環境報告書ということで いろいろな事例をホームページにアップしたりしているんですけれども、そのような提供等を通じて、各企業のさらなる取り組みを促しているところでありま す。
今後とも、このような形で、環境にかかわる企業の社会的責任に関する取り組みについて、積極的に経産省としては支援をしていきたいと考えております。
○畠山分科員
大臣も手を挙げられましたので、ぜひ、あわせて御答弁を。
こういう現状で、実際に起きているケースがあるわけですから、このままではもちろんいいと思わない。大臣の認識もお伺いします。
○宮沢国務大臣
この米国のスーパーファンドプログラムというのは初めて見させていただきました。勉強になりました。
ただ、見ていますと、これは、やはり英米法の国だからこういう法律ができたんだろうなと。実定法の国の日本の法律の枠組みだと、これは余りにもほかの法律との整合性がとれなくなるなというのが正直な印象でありました。
我が国の場合、今政務官からお話ししましたように、土壌汚染対策法によって対応しているわけでありますけれども、何か、まださらにやらなければいけない というようなことがあるとすれば、この法律をどう改正していくかという議論の中でやっていく話だろうというふうに思っております。
○畠山分科員
なぜ経産省に、この分科会でこの問題を取り上げてイニシアチブを求めているかといえば、企業の行動指針についての認識の広がりが、国際的な流れとして広がっているから私は取り上げているわけです。
OECDが、二〇一一年に多国籍企業行動指針を改定しております。新たに盛り込まれた規定があります。リスク管理の一環として、企業は自企業が引き起こ す、または一因となる実際の及び潜在的な悪影響を特定し、防止し、緩和するため、リスクに基づいたデューデリジェンスを実施すべきという規定が盛り込まれ ました。もちろん、予防原則にかかわることでもありますが、しかし、一般方針の部分にかかわっても、悪影響が生じた場合の対処の必要性も触れてあるわけで す。もちろん、これは一般的には皆合意できる中身だとは思うんですが、今申し上げたように、このような国際的な企業指針としての広がりがある。
今紹介したのは多国籍企業の他国に出ていく上での企業行動指針でありますけれども、こういうような形で、世界で責任ある企業行動をとろうと取り決めをしているのに、国内で責任ある企業行動がとられないとなれば、これは残念なことになると思うわけです。
OECDが改定した二〇一一年に、冒頭に答弁してもらった欧州委員会、欧州でのCSRの定義を確認しましたが、ここでも、企業の社会への影響に対する責 任と定義が変えられたわけです。その具体的な柱の一つに、企業の潜在的悪影響の特定、防止、軽減が同様に据えられています。さまざまなこういう問題が起き て、場当たり的な対応をするのじゃなくて、社会や環境に積極的にコミットする、関与するということが国際的な企業としての指針にきちんと盛り込まれている わけです。
ですから、こういう国際的な流れに照らしても、経産省としてイニシアチブを発揮してほしいということを私は言っているわけです。企業が自主的に社会的責 任として取り組むということはもちろん承知しているんですが、先ほど事案を通して紹介をしましたように、現実にこのような汚染などの問題が発生して、しか し、なかなかさかのぼれない、だけれども、法律をあしたすぐつくりましょうという提案を今私がしているわけではありませんで、少なくとも、こういう世界の 流れや、現状起きている問題に照らし合わせたときに、経産省もイニシアチブを発揮して、新たな枠組みづくりの検討は必要ではないかというふうに思うんです が、大臣、いかがですか。
○平井政府参考人
お答え申し上げます。
先ほど欧州の定義変更のところを御紹介申し上げましたが、同じように、欧州の転向されたものにつきましては、ステークホルダーとともに事業運営や戦略への取り組みを行うべきという概念も示しているところでございます。
すなわち、企業を取り巻くさまざまなステークホルダーとともに、そうした企業活動に取り組むべきということでおっしゃっているところでございまして、そ の意味におきましては、ありとあらゆる企業を取り巻くステークホルダーの懸念を、取り組むというところの自主性につながっていこうかと思います。
○畠山分科員
いや、ステークホルダーの話は、書いてあるのはもちろん承知しているんですけれども、先ほど言った国際的な流れと、今、日本 国内で現に起こっている中で、世界に冠たる多国籍企業が一貫した立場を貫くということは大事だと思うんですよ。そういう社会的責任を果たすのは企業の自主 的な取り組みだというんだけれども、国が大きな方向性を示すことはもちろん大事だと思うんですね。
それで、先ほど言った事態が生まれる中で、やはり新たな検討が必要だということを改めて問いたいんですが、大臣、最後に御答弁ください。
○宮沢国務大臣
企業に社会的責任があるということは当然のことであります。株主に対する責任とか従業員に対する責任とかいろいろあります けれども、やはり社会的な責任を果たすということは企業にとっては大事なことでありまして、特にアメリカの企業等と比べますと、日本の企業は、そういった 意味では、社会的責任についてかなり気を配ってきている企業が多いんだろうと思います。
また、例えばそれこそ我々が、ある意味ではおせっかいで、政労使の会合などをやって、従業員の給料まで上げてくださいと言って口を出しているような、そ ういう国でありまして、一般的には、日本の企業は社会的責任というものをかなり意識しているというふうに私は思っております。
一方で、OECDの話もございました、またヨーロッパの話もございました。企業が社会的責任をどういう形で果たしていくかということについて、必要だと いう観点から、昨年、我が省でも調査報告をまとめたわけでありますけれども、さらに足りないところがあるというのであれば、やはり世界的なものをもう少し 勉強したり、省内で少し検討はしてみたいと思っております。
○畠山分科員
ぜひ検討を進めていただきたいというふうに思います。
二〇〇四年に経産省が公表したCSRに関する中間報告書というのがありまして、ここには、我が国のCSRの歴史という項目がありまして、古来より我が国 商工業の底流に流れているものとして、近江の商人が、売り手よし、買い手よし、世間よしという三方よしの理念で商売していたことですとか、二宮尊徳の道徳 なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言であるという言葉まで引用して、企業の社会的責任は日本のよき伝統であるかのように書いているわけですよ。
大臣は、今、日本の企業は頑張っているというような答弁をしましたけれども、先ほど述べたように、現実的にさまざまな事案があったり、法律で遡及する前 には責任が実際問われなくて、市民に対する説明責任も現状では果たされていないようなことがある中で、やるべきことはまだ多く、たくさんあろうかというふ うに思うんです。
ぜひ、そういう立場で大臣がイニシアチブを発揮してほしいと思いますし、きょうの問題提起を受けて、さらに経済産業省として検討を関係省庁と進めていただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わります。

第189回国会 予算委員会 第9号     平成二十七年二月二十五日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
西川前大臣の辞任に対して安倍首相は、みずからの任命責任を認めながら、政策を推進することで責任を果たしたいと述べました。
しかし、農業改革については、多くの農家が、この改革で自分たちの経営はよくなるのかと疑問や不安の声を上げています。
昨年の米価下落と直接支払交付金の削減に、円安と消費税増税による資材や飼料の値上がり、そしてTPP交渉では、米国から五万トンもの米を新たに輸入かとの報道もありました。このような自民党政権、農政のもとで農家が苦しんでいるのではないでしょうか。
そこで、まず農協改革について伺います。
そもそも協同組合というのは、組合員が自主的、民主的に助け合い、管理する組織です。改善すべきことがあれば、組合員の声に基づき行うことが原則です。 しかし、今回の農協改革は、政府の手によって全中の監査権廃止などが取りまとめられました。なぜ、当初から出されていた全中の自主改革案を尊重しなかった のか、総理に伺います。
○林国務大臣
今委員からお話がありましたように、農協は協同組合でございますので、農業者が自主的に設立された民間組織であるということでございます。したがって、改革は自己改革が基本である。委員のおっしゃるとおりでございます。
したがって、今回も、JAグループから自己改革の案も出されて、これをこの最終的な案にも十分入れさせていただいている、こういうふうに思っております。
その上で、でき上がった案をごらんになっていただきますと、自己改革を促進するという観点で、地域農協について、責任ある経営体制を確立するための理事 構成、経営の目的などを規定して自己改革の枠組みを明確にするということ、そして、中央会については、地域農協の自己改革を適切にサポートできるような組 織体制に移行するということを規定しております。
最終的にいろいろ調整をいたしましたけれども、全中初め団体の皆様方とも、そのとき私は与党の立場でございましたが、調整をさせていただいて、一緒にやっていこうということになったということをまず申し上げておきたいと思います。
また、今、中央会の監査のお話がありましたが、中央会は、昭和二十九年当時、経営が危機的状況に陥った農協組織、これを再建するために、国にかわって農協の指導を行う特別認可法人という形で発足をしております。
そういうことで、行政にかわって組合の指導、監査、こういうものをする権限を有するというようなことでございまして、協同組合のスタートの、自主的につ くった組織と言えない部分もあるということでございますので、ここが、全国の単協、一万を超える農協数が七百まで減ってきたということにも鑑みて、この中 央会の仕組みというものを変えていこうという改革をしたところでございます。
○畠山委員
監査権の廃止の問題は、私も多くの農家や農協さんともお話ししてきましたけれども、それによって地域農協が縛られているという 話は聞いていません。営農指導を強めてほしいとか、資材調達を安くしてほしいとか、農協に対する意見は聞きますけれども、それらは協同組合の原則に立って 自己改革を尊重すればいいのであって、先ほどからあったように、地域農協が縛られているかのような話は聞いていないわけです。
それでは、監査権を廃止して、公認会計士の監査を進めたらどうなるか。
北海道には、組勘制度、一般的には短期貸し越し制度と呼ばれる仕組みがあります。冬になって、次年度の営農計画をどうするか、営農指導員と組合員とが相 談をし合いまして、個々の経営実態を見て、資金の貸し付けが行われます。それで種子だったりあるいは肥料だったりを買って、必要によっては設備投資も行 う。決済は、秋の販売代金から支払われるという仕組みです。
営農指導や販売、信用、共済などを一体に支援するから、資金に苦しむ農家も生産に取り組み、これまでの食料生産を担ってくることができました。この場合、担保は農地や農産物となるわけで、実質は対人信用の無担保となります。協同組合としてできてきたことだと思います。
総理は、施政方針演説で、会計士による監査を義務づけるとしましたが、公認会計士の監査として、このような農家を支える仕組みを壊すことにはならないか。資金繰りできないで、営農を断念せざるを得ないということになりはしませんか。
―――――――――――――
○大島委員長
議事の途中ではございますが、ただいま、後方の傍聴席にパキスタン・日本友好議員連盟のレイラ・カーン国民議会議員御一行がお見えになっております。この際、御紹介を申し上げます。
〔起立、拍手〕
○大島委員長
どうぞお座りください。
―――――――――――――
○大島委員長
続行いたします。林農水大臣。
○林国務大臣
今、いわゆる単位農協のファイナンス機能、これが大丈夫か、こういう御趣旨の御質問だった、こういうふうに思います。
今回の改革は、全中の内部の監査を義務づけておりましたのを外出しにしていただきまして、それと一般の公認会計士によるところの監査を選択制にしようということで、これは地域の農協に選んでいただける、こういう仕組みにしようというのが改革の大きな姿でございます。
したがって、そこで地域農協の独自性というのも発揮できる余地はできますが、そのことによって大事な機能であるファイナンスそのものが損なわれるという ことがあっては元も子もありませんので、そういうことにならないように、しっかりと制度の設計において意を用いていきたいと考えておるところでございま す。
○畠山委員
選択制にするほどだったら、初めからする必要もないのではないかというふうに思うんですね。
先ほどから述べているように、そもそも現場では、監査権で縛られているとか、そういうようなことに対する話は出ていないわけです。ですから、そうなると、何で殊さら監査権が問題となるのかというふうに考えざるを得ません。
与党取りまとめを踏まえた法制度等の骨格では、会計監査は、農協が信用事業を、イコールフッティングでないといった批判を受けることなく、公認会計士による会計監査を義務づけるとあります。
農水大臣、誰が、イコールフッティング、平等でないという批判をされているのですか。
○林国務大臣
このイコールフッティング論はいろいろなところからなされておる、こういうふうに思います。
それは、御説明しておかなければなりませんのは、監査と一概に言うときに、いわゆる金融事業、信用事業を行うために必要な会計監査、これは金融事業を 行っておる信金、信組も行われているところでございますが、これと、それから、いわゆる業務監査と呼んでおりますが、農協の組織の中でやっておられる業務 監査と、二つの種類があるということでございます。
一般の会社では、御案内のように、業務監査というのは余りなくて、コンサルというのを任意で受けてやられる方もいらっしゃる、こういうことでございます が、農協の組織の中では会計監査とともに業務監査も義務づけられておった、こういうことでございましたので、ここを、業務監査については任意にしていくと いうことで、地域農協がいろいろな販売等、工夫をもってできるようにさらに促進をしていく。
一方で、イコールフッティング論というのは、多分おっしゃっておられるのは会計監査の方についてだ、こういうふうに思いますが、信用組合、信用金庫とい うのは、独立した公認会計士法に基づく会計監査というのを受けている。一方で、農協の場合は、全中の中にある監査機構がやっているということで、イコール フッティングになっていないのではないか、こういう指摘がある、こういうことでございます。
○畠山委員
今大臣が話された中身というのはもちろん承知していまして、私が聞いたのは、誰から批判をされているかというふうにお聞きしたわけです。もう一度大臣に伺います。
○林国務大臣
これは、当然、金融の関係の皆様、信用組合、信用金庫を初め、そういう関係の方々からの御意見というのもあると思いますし、 それから、ちょっと今手元に資料はありませんが、規制改革会議の中でもそういう御意見があったのではないかというふうに承知をしておりますが、詳細は確認 させて、御報告させていただきたいと思います。
○畠山委員
規制改革会議などでもそういうふうに出されているはずです。問題は、規制改革会議だけではないはずですよ。
きょう、これを持ってきました。昨年六月の在日米国商工会議所の意見書です。JAグループは、日本の農業を強化し、かつ日本の経済成長に資する形で組織 改革を行うべきという表題です。この中の提言には、平等な競争環境が確立されなければJAグループの金融事業を制約するべきで、外資系金融機関に不利な待 遇を与える結果となっていると、米国企業参加の道を求めています。
さらに、これですが、米通商代表部、USTRは、二〇一〇年外国貿易障壁報告書の中で、わざわざアルファベットでKyosaiと書いた項目を立てて、日本の農業共済は、規制の基準や監督を、競争相手である民間企業と同じ条件にすべきと書いています。
イコールフッティングでないというのは、米国からもつけられた注文ではないのですか。
総理、規制改革会議の方向とこの米国の要請と軌を一にして、この間、監査権廃止が進められてきた議論ということではないのでしょうか。
○安倍内閣総理大臣
米国から、商工会議所、さまざまな要望が出ております。そういう要望は私も承知をしておりますが、しかし、農協改革は、この米国の要望に沿うという意思で行っているものでは全くございません。
まさに、農業人口において平均年齢が六十六歳以上になっている、農業人口も減っていく中において、農業改革、農政改革、そして農協改革は待ったなしであ り、いわば担い手農家、そして地域の農協が主役となって、農協中央会はそれをしっかりと支えていく、ある意味ではいい脇役として応援をしてもらいたい。
そういう意味において、これから農業の成長産業化を進めていく上において、この農協改革をそのために資するものとしていきたい、こういう考え方でこの農協改革を進めているところでございます。
○畠山委員
先ほどの在日米国商工会議所の意見書は、最後にこう書いているんです。在日米国商工会議所、ACCJは、こうした施策の実行の ため、日本政府及び規制改革会議と緊密に連携し、成功に向けてプロセス全体を通じて支援を行う準備を整えている。つまり、日本政府と二人三脚で農協改革を 進めるという表明があるんです。
小泉政権時の総合規制改革会議から、農協については、信用、共済事業を含めた分社化と解体が叫ばれてきました。現場の農家から不安や批判の声が出てくるのは、だから当然なんです。
農業金融を日米営利企業の新たなビジネスチャンスとするような農協改革は認められないということを強く述べておきます。
農家の不安や疑問の声は、農協改革だけにはとどまりません。施政方針演説では、農業委員会制度を変えて農地集積を進め、農業生産法人の要件緩和を進めて多様な担い手参入を促し、構造改革を進めると述べたことに対しても疑問の声が上がっています。
まず農水大臣に伺いますが、この多様な担い手というのは、誰を想定してのことですか。
○林国務大臣
農地を所有できる法人であります農業生産法人の要件につきましてでございますが、昨年六月の政府・与党の取りまとめ、また、 今月取りまとめた法制度の骨格におきまして、法人が六次産業化等を図って経営を発展させようとする場合の障害を取り除く、こういった観点から、役員の農作 業従事要件、それから構成員要件、こういう見直しを行うというふうにしております。
具体的には、役員の四分の一程度が農作業に従事する必要がある、こういうことでございますが、六次産業が進められていきますと、その中で全体での農作業 のウエートというのは当然下がってまいりますので、これは四分の一というものを役員等の一人以上が農作業に従事すればいいということにいたす。
それから、総議決権の四分の一以下に、農業者以外の者の議決権が制限されておりますが、これも、六次産業化を進めるためには外部からの資本調達も必要となる場合もあるということで、二分の一未満まで保有可能とするというふうに見直しを行うということにいたしました。
まさに、多様な法人が農地を所有して、農業を営むことが可能となるということと、既存の農業生産法人が六次産業化を進めていく、これが容易になるようにということでございます。
○畠山委員
生産者を中心にして地元の加工業者などとの連携を進めることは、大事だと思います。その場合も、生産者、家族農業が主役であることが大事です。
一方で、安倍首相は、昨年一月、ダボス会議で、四十年以上続いてきた米の減反を廃止します、民間企業が障壁なく農業に参入し、つくりたい作物を需給のコントロール抜きにつくれる時代がやってきますと述べました。
私は、産業競争力会議や規制改革会議の会議録も読みましたけれども、大多数を占める家族経営の発展についての話は出てこないわけです。安倍政権の進める 農業改革、農政改革というのは、家族経営中心の農政から、企業法人経営中心でもうけることを目指すというのが、総理のダボス会議で述べた趣旨でしょうか。
○安倍内閣総理大臣
家族経営は、これはいわば一つの重要な担い手である、このように思っております。まさに自由民主党こそ家族経営を大切にしてきた、こういう自負が我々にはあるわけでございます。
しかし、同時に、平均年齢はもう六十六歳を超えてしまっている中において、家族経営といっても、私の地元もそうなんですが、おじいちゃん、おばあちゃん はやっているけれども、もう息子や孫は後を継がないという農家はたくさんあるわけでございまして、耕作放棄地もふえている中にあって、そこで、新たな担い 手を農業という分野に引き入れてくる必要もあります。そういう新たな担い手にとって魅力ある分野にしていく。
その形態は、これは個人であろうと、あるいはまた株式会社という形態、新たな時代にふさわしいものであろうと、そういう新しい活力が農業に入ってくるこ とは決してマイナスにはならないわけでありますし、家族でやっている方々自体が、この皆さんが、では、形態を株式会社にしましょうということだって、それ はあり得るわけでございますし、さまざまな形態で、集団でやっていこうということもあるでしょう。
そういう中において、効率化を図りながら、同時に、やはり市場のニーズに敏感に対応していくことによって、より高く売れるものを売っていく。そのことに よって農家の収入を上げていきたいし、付加価値を上げていくためにはどうすればいいかということについてもさまざまな視点から検討していく上においては、 例えば、株式会社の中において、そういう視点を持った人たちがその会社の中に入ってきて、そういう視点から農業を変えていくことによって農業、農村の収入 は上がっていくものと思うわけでございまして、私は、決して、家族農業対株式会社、そういう対立構造を考えているわけではないわけでございます。
○畠山委員
先ほど産業競争力会議や規制改革会議のことも出しましたけれども、家族経営を大事にされるということは話はされましたけれども、この間の議論は、家族経営が大事だという議論がされていないわけですよ。
国家戦略特区のワーキンググループ座長を務めた八田達夫氏は、昨年六月に都内で開かれた経済成長フォーラムで、政府が米の生産調整をやめることを評価 し、やめたい人はお金をもらってやめたらいい、手切れ金を出したらいいとまで表現して、それができるとかなりスムーズに非効率の農家は出ていき、効率的な ところはその土地を利用して広がっていく、だから企業が参入するんだという、あけすけな語り方をしているわけです。
このフォーラムには、規制改革会議の農業ワーキング・グループ座長を初め、今の農業改革を進めた、中心となった方々が参加して、農業への企業参入に何が必要かを議論しているわけです。
先ほど、対立ではないというふうに総理はおっしゃいましたけれども、ただ、実際、このような議論の経過を見れば、非効率な農家が追い出されて企業が参入するようなことになるのかどうかという心配があるわけです。どうお答えになりますか。
○安倍内閣総理大臣
決して我々は、そういう企業による囲い込み運動のようなものをやろうということは、全く、つゆほども考えていないわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、まさに家族経営というのは日本の農業を担ってまいりました。
同時に、農業には、産業という側面だけで切り取れない面もあるわけでありまして、地域を守り、水を涵養し、環境を守る、さらには、文化や伝統を継承してきたのも日本の農村、漁村地帯であろう、私はこう思っているわけであります。
しかし、その中においても、もう既に平均年齢が六十六歳になっているという状況に鑑みれば、産業という見方、側面でしっかりと、競争力を発揮できるところには競争力を発揮してもらおう、こういう考え方であります。
しかし、中山間地帯もたくさんありまして、ただそういう側面では切り取れないという側面もあることはあるわけでありますから、そういう面においてもしっかりと農政は目配りをしていくということではないかと思います。
○畠山委員
資料をごらんください。家族経営が政府の方針に従って規模を拡大してきたところでも、多くの支えがないと今やっていけなかった。価格保障、所得補償を中心としてでないとできなかったわけです。
そして、もう一つの資料の方は、河北新報という、石巻市でその方針にのっとってきた農家が本当に苦しい中で農地を支えているということをまとめています。
日本共産党は、家族経営を大事にした農政に今の安倍政権の農政から転換することを求めまして、質問を終わります。

第188回国会 農林水産委員会 第2号   平成二十七年一月十三日

○畠山委員
日本共産党の畠山和也です。
本題に入る前に、昨年十二月十七日、発達した低気圧により暴風、高潮被害が発生した件について伺います。
水産と酪農の町、根室市を襲った高潮は、国交省調査で高さ二・五メートルまで達した地点もあり、冠水した家屋や商店街で商品や電気機器、顧客名簿などが海水浸しになった実態を私も現地調査してきました。
目いっぱい金融機関から借りているし、これ以上は借りられないという商店主や、閉店まで考えていたおそば屋さんもありました。市民有志で開いたばかりの 根室市唯一のライブハウスも、ホールや音響機器が被害を受けました。十二月二十七日の緊急根室市議会で、長谷川俊輔根室市長は、被害金額は集計中としなが らも、二十億円を超えると思われると答弁しています。
我が党は、十二月二十五日、山谷えり子防災担当大臣に直接支援の要請を行いました。今後の経営不安に応えるため、融資だけでなく個々の被災事業者の再建に対する直接支援はできないのか、経済産業省に伺います。
○佐藤政府参考人
お答え申し上げます。
中小企業庁といたしましては、地元の商工会議所、商工会等を通じて、今般の中小企業に対する高潮の被害状況を調査し、事業所施設の一部損壊や製品の破損等の被害を確認しているところでございます。
被災された中小企業、小規模事業者からの相談には、日本政策金融公庫等の政府系金融機関の最寄りの支店や商工会議所、商工会等の窓口において丁寧に対応しているところであります。
具体的には、先生もおっしゃいましたが、被害を受けた商品の仕入れ資金や施設の補償、建てかえ資金の借り入れや保証といった御相談が寄せられているというふうに承知をしているところであります。
引き続き、被災中小企業、小規模事業者の状況を把握していくとともに、被災事業者への支援にしっかり取り組んでまいりたいと思っております。
○畠山委員
被災した一軒一軒にとっては死活問題なわけです。東日本大震災のグループ補助金ですとか能登半島地震の際の被災中小企業復興支援ファンドなどの実績があるではありませんか。被災事業者への直接支援に踏み出すべきであることを、この機会に強く求めたいと思います。
本題に入ります。
畜産、酪農の経営環境が厳しさを増しています。例えば北海道の生乳出荷戸数は、一九九八年の九千二百五十五戸から二〇一三年には六千百七十三戸まで減 り、この三、四年間は年間二百戸が出荷をやめています。ここに経営環境の厳しさがあらわれていると思いますが、この厳しさは何に由来するものか、大臣の認 識を伺います。
○西川国務大臣
やはり農業を継続するかどうかという判断のときは、農業所得、これが次の世代につながるか、こういう希望が一番だろうと思います。
そういう中で、確かに農業は今厳しい状況がずっと続いてきております。それから、畜産が離農をされている、こういうこともありまして、私どもは、政策的 な支援をどう充実させるか、こういうことに、二十六年度の補正予算も、それから二十七年度の当初予算も、畜産に対してこれは前向きで取り組んだつもりでお ります。
農林省の予算、何度も申し上げますが、二兆三千九十億円ぐらいになる予定です。その中で、畜産の予算は、残念ながら千八百五十三億しかないんです。それ で、私は、補正も当初も含めて、畜産の今の状況を打破して成長産業につなげるために、何としても五百億円以上は増加をしてくれ、こういうことをお願いして きまして、これが認められて五百十五億、千八百五十三億に対する五百十五億が増額されるというのは少し異例のような増額だと思いますけれども、私は、畜産 に力を入れていきたい、こういうことでお願いしたところであります。
やはりやめていく人の主たる原因は、所得が上がらない、これが一番だろうと思いますので、今やっている方々が安心して畜産に取り組んで所得が上がるよう にやっていきたいと思います。ほかに、高齢になった人とか、後継者がいないとか、先行きが不安だからやめるとか、いろいろ原因は私どもの調査のところに出 てきておりますけれども、一番大事なことは所得がしっかり確保できる、こういうことに尽きると思いますので、私ども取り組んでまいりますので、よろしくお 願い申し上げます。
○畠山委員
重要なことは、特にこの数年間で経営苦に拍車がかかっているということです。
農水省の昨年九月時点の農業物価指数を見ても、二〇一〇年対比で配合飼料の平均は一二五・三、また、肥料は一〇八・五、灯油は一四一・一、軽油は一二 九・〇です。これら物財費の上昇は円安によるものであることは疑う余地はありません。電力は一一六・七で、これは、北海道では十一月に北海道電力による値 上げ分が負担としてふえています。
消費税の八%増税も生活基盤を脅かしています。
安倍政権が進めてきたアベノミクスによる円安と消費税増税が畜産、酪農の経営悪化を加速させているという認識はありませんか。
○松島政府参考人
委員御指摘のように、酪農家の生産コストを見ますと、特に飼料価格が、これは最近でこそ落ちついてまいりますけれども、 数年前にアメリカでのトウモロコシの価格高騰ということもございました。また、直近では、円安に伴う国内の配合飼料価格の上昇といったものがございまし た。そういったものの中で、生産コストが上がっているという実態にあるというふうに認識してございます。
私ども、酪農経営に対しましては、加工原料乳補給金制度で経営支援対策を行っているわけでございますけれども、その加工原料乳補給金対策の補給金単価の 決定に当たりましては、そういった酪農家の生産コスト、また、それぞれの物財費の中での、餌ですとか光熱費とか、そういったものについての直近の物価水準 も反映させて算定してきたということでございます。
○畠山委員
この間の円安によって酪農家は苦しんでいるわけです。正面から畜産、酪農の現状を見てほしい。
大規模農家は、頭数をふやし、大きな設備も導入して、大きな負債を抱えております。また、家族経営でも、離農した方の牛を可能な限り引き受けています。 朝五時に牛舎に入って、夜九時に終えて出てくるという毎日の中で、ましてTPP交渉の進展に悩みながらも、今いる生産者は誇りを持って働いているわけで す。それなのに、円安などによる物財費などの上昇で経営が追い込まれている。これは政府が追い詰めているのではないかと思うんです。
再生産に見合った加工原料乳生産者補給金の大幅引き上げがなければ、生産現場では担い手がいなくなって、地方が崩壊してしまうという危機感があふれ返っています。補給金の大幅な引き上げが必要だと思いますが、いかがですか。
○松島政府参考人
加工原料乳補給金の単価につきましては、先ほどお話ししましたように、算定ルールに従って算定いたしまして、最終的には、食料・農業・農村政策審議会の御意見も伺った上で決定するということでございます。
二十七年度の補給金単価につきましては、先ほど来委員会でも御議論がございますが、飼料価格の状況、また酪農家の副産物収入でございます子牛の価格の上 昇といった、さまざまなものを総合的に勘案いたしまして、適切な水準に設定してまいりたいと考えているところでございます。
○畠山委員
この間の経営悪化というのは、その算定ルール、算定式を超えるほどの速度なわけです。補給金の決め方が実態に追いつかないから出荷戸数が減っているというふうに思います。
補給金の歴史を振り返れば、二〇〇〇年以前は、生産コストの手取りを確保するための不足払い制度というのが前身で、生産を守るために国が責任を負ってい たはずです。それが、小泉政権のときから、生産者団体と乳業メーカーとの価格交渉になって、補給金は前年度からの変化率で算定されるというふうになりまし た。
北海道の実搾乳量キロ当たりの所得は、十年前まで約三十円ほどだったのが、二〇〇七年にはキロ十四円まで落ち込み、今も二十円に届いていません。この分 を価格交渉だけに求めても、転嫁できないのは当然です。制度を変えたときに、現在のような生産コストの上昇は想定されていませんでした。国が生産への責任 を投げ捨てて、こういう市場任せの制度で生産者を支えられなくなっているのが現実ではないのでしょうか。
補給金制度について見直す考えはありませんか。
○松島政府参考人
委員御指摘のとおり、加工原料乳補給金制度は、これまで、生産者の価格を国が行政価格として決定するという仕組みから、補給金単価につきまして、毎年度の生産費の変動を勘案して算定するという方式に改めたところでございます。
その際、さまざまな生産コストの変動がその以降も生じるということも念頭に置きまして、毎年の単価水準の決定に当たりましては、直近の過去三カ年の生産 コストの変動、それから、まさに直近の物価水準といったものを反映するということによりまして、その時々の生産コストを反映した補給金単価になるよう適切 に策定してまいったというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
それは知っているわけです。
大臣、いかがですか。
○西川国務大臣
生産者にとってみれば、単価が大きい方がいいというのは当然のことでありますが、私ども、全体の予算の中でどうするか、こういうことを検討しております。
また、審議会等の意見も聞いて決定をする、こういう方式になっておりますので、私ども、その意見を聞きますけれども、私どもの原案としては、できる限り農家のためになるように、あと、残された時間は少ないのでありますが、努力を重ねてまいりたい、こう考えています。
○畠山委員
酪農とともに、肥育農家でも深刻な経営の実態にある中で、政府が畜産、酪農を守るために責任を果たす立場に立つことを重ねて強く求めます。
次に、これ以上の離農、離脱を食いとめるための施策について伺います。
離農がとまらないどころか、加速傾向にあります。
JA北海道中央会は、昨年、二〇一二年度に生乳出荷を停止した二百五戸の酪農家の実態調査を行いました。二百五戸のうち、後継者候補がいながら離脱した のが六十戸あります。生産コストが上がる中で、施設の更新時期を迎えたときに不安感から親が継がせなかった例があるといいます。さらに、二十代から四十代 の現役世代の離脱が四十戸ありました。親から引き継いだ牛舎などの更新をしようにも踏み切れず、幸いなことに負債もないし、やめるなら今かと離脱している 事例があると聞きます。
大臣は、このような離農、離脱の流れがとめられない理由について、どう考えていますか。
○あべ副大臣
委員にお答えいたします。
おっしゃるとおり、過去四年間で、酪農経営は全国で約一五%、二十二年で二万二千戸から二十六年の一万九千戸、また、北海道では約一〇%でございまして、二十二年の八千戸から二十六年七千戸という形で減少しているところでございます。
酪農から離脱した農家に関して、その要因を農林水産省で調査したところ、委員がおっしゃったように、高齢化、後継者不足が最も多くて、続いて、経営者の事故など、将来への不安などとなっております。
こういうことから、酪農の経営の減少を防ぐために、後継者、新規就農者への円滑な経営の継承、さらには、意欲の高い農業者による酪農経営の継続が図られることが重要だと考えているところでございます。
また、農林水産省といたしまして、酪農経営の収益性の向上によって、経営の円滑な継承さらには継続にも資するよう、畜産クラスター事業等を活用いたしまして、地域の中核的な酪農経営に対する施設、機械の整備を支援することとしているところでございます。
このような対策に必要な経費といたしまして、二十七年度当初予算額につきましては、最終的な計数調整の段階ではございますが、先般閣議決定いたしました二十六年の補正予算と合わせまして、対二十六年度当初予算比で五百億円を超える増額を確保したところでございます。
以上です。
○畠山委員
政府の対策というのは、規模拡大を進める一部の担い手へ偏り過ぎているというふうに思うんです。
北農中央会が二〇一三から二〇一五年の三年間のうちに頭数をふやす計画があるかと調査したところ、あると答えたのが二八・二%、ないと答えたのが七一・ 八%です。中には離農された方がいるかもしれませんけれども、約七割は、拡大はしないけれども続けている、生産意欲を持った担い手であるというふうに思い ます。厳しい経営環境に、労働時間もふえるし体もきついから、規模拡大をちゅうちょする方がいるのも当然だというふうに思います。
規模はふやせないんだけれども、生産環境はよくしたい、生産量を上げたいという方がいます。全面的には無理でも、部分的な改築などで、その道を描ける方 や次の段階に進む意欲が湧く方もいるのではないかと思います。現状維持でも、意欲ある生産者の支援と負担軽減へ、例えば設備をリフォームしたいという要望 への支援などを検討すべきではないでしょうか。
○あべ副大臣
委員のおっしゃるように、畜産経営におきまして、家族経営から企業経営に至るまで多様な経営がございまして、それぞれの特徴を生かしつつ収益の向上に取り組むことが重要であるというふうに私どもも考えているところでございます。
特に、畜産クラスターに関しましては、畜産農家を初めとする地域の関係者の連携、結集によりまして、地域全体で収益性を向上させるという取り組みでござ います。畜産クラスター事業におきましては、規模の大小にかかわらず、地域の中心的な経営体に位置づけられれば、多様な経営体を支援することとしていると ころでございます。
○畠山委員
今は規模拡大できないんだけれども、行く行くは収益を上げたいとか、行く行くは後継者が戻ってくるとかいう生産者もいます。こういう人たちに柔軟な対応ができると確認してよろしいですね。
○松島政府参考人
先ほど副大臣から御答弁申し上げましたように、クラスター事業というのは、それぞれの地域で畜産関係者が連携していただきまして、計画をつくっていただきまして、そこで位置づけられた中心的な畜産経営体を支援していくという仕組みでございます。
したがいまして、その地域地域の事情に応じて、どのような経営体を位置づけるかということにつきましては、基本的には、地域の判断を尊重してまいりたいというふうに考えているところでございます。
○畠山委員
確認できたと思います。
大規模農家も家族経営も、規模を問わずに、意欲ある全ての農家を支える立場に立ってこそ、離農、離脱の歯どめをかけられます。重ねて充実を求めます。
最後に、日豪EPAとTPPについて伺います。
日豪EPAの発効を十五日に控えて、関税引き下げに不安が高まっています。畜産、酪農に対する影響について政府は調査する意思があるか、また、甚大な影響があるという場合にはどのように対応していくつもりですか。大臣に伺います。
○中川大臣政務官
畠山委員の質問にお答えいたします。
日豪EPAの協定内容につきましては、交渉妥結時の林大臣の談話にも明記されておりますとおり、我が国の畜産、酪農の存立及び健全な発展が図っていけるような内容であるというふうに考えております。
牛肉については、豪州産は、むしろ主として米国産牛肉と強く競合しておりまして、影響は限定的というふうに考えております。しかし、畜産経営への影響については注視をしてまいりたいというふうに存じます。
一方、乳製品に関しましては、バター、脱脂粉乳に関しては将来の見直し、ナチュラルチーズについては一定量の国内産品の使用を条件とした関税割り当ての設定となっており、国内の生乳生産に影響を及ぼさない範囲の合意内容であるというふうに考えております。
○畠山委員
日豪EPAに続けてTPPなのですから、生産者の不安は大きいわけですし、政府が本当に農業を守る気があるのか、日本の食料を守る気があるのかと多くの農家は思っています。
今度は大臣にお伺いしますが、このTPP交渉に対する不安にどう応えますか。
○西川国務大臣
日豪EPAについて、今、中川政務官がお答えをいたしました。
それで、きょうは十三日、あさって一月十五日に日豪EPAは発効いたします。そこで確かに牛肉等の関税が下がり出す、こういうことが一番心配かと思います。
現在三八・五%の牛肉、これは冷蔵も冷凍も分けておりません。しかし、今度は、日豪の間では、冷凍物と冷蔵物を分ける約束ができました。冷蔵物について は、日本人の食生活の中で大変摂取が、所得が高い人たちもとられる、こういうこともありまして、ここは非常に慎重に交渉をしまして、十五年後に二三・五% でとどめる、こういうことにしました。冷凍物については、割と加工食品に使われるということで、十八年かけて一九・五%まで下げる、こういうことにしたん ですね。牛肉の例を申し上げております。
そのときに、それでは量がたくさん入ってきたらどうするんだ、こういうことになりますので、私どもはセーフガードをとりました。ある程度の量を超えたらまた三八・五%に戻ります、こういう約束で日豪のEPAはできております。
また、畠山委員が心配しておる生乳の問題等はありますけれども、加工食品をつくるときは日豪で抱き合わせで使う、日本の牛乳も使ってくれなければ向こう の乳製品は日本に入らない、こういうことも取り決めをしておりますので、私どもとしては当面日豪のEPAの影響は出ないことを願っておりますが、出るか出 ないかは、この一月十五日以降で調査し、対応してまいりたいと私どもは考えております。
それから、TPPについては、一昨年の二月の二十三日でありましたが、オバマ大統領と安倍総理の中で、日米お互いに、両国とも慎重に扱ってもらうべき分 野がありますね、アメリカは自動車であり、工業製品ですということを私どもに伝えてあります、日本としては農林水産物、ここは慎重に扱ってください、こう いうことで、日米の共同宣言は、お互いにそこに配慮をする、こういうことを確認されましたので、私どもはTPP参加を決めた、こういうことでございます。
交渉は、何度も大詰め大詰めという話になっておりますが、残された部分は非常に少ないと聞いておりまして、これらは、私どもとしてはアメリカの情報を待っておりまして、形としては衆参の農林水産委員会で評価をいただけるものにしていきたいと思います。
日豪EPAについては、私どもからすれば残念ですが、共産党の皆さんだけが反対をされたということを申し上げておきます。
○畠山委員
本当に日本の農業を守るのかという疑いの目が向けられているわけですよ。
安倍首相が、イギリス雑誌「エコノミスト」に、私は交渉を柔軟に進めるよう指示を出しています、この強い決意が速やかな結論に結びつくと思いますと答えています。
一方で、昨年の総選挙で安倍首相が北海道入りしたときは、TPPについてはだんまりでした。
外国に向けては推進を表明し、オール北海道でTPP反対の声が上がっている北海道では語ろうともしない、どうしてこれで政府を信用できますか。
十勝の町村会長を務められている高橋正夫本別町長は、十勝に来てTPPを一言も言わないなんて無責任きわまりない、ひど過ぎるとコメントするなど、疑問や批判的意見が出されています。
改めて、このような不安や批判に、大臣はどう答えますか。(発言する者あり)
○江藤委員長
傍聴席は静かにしてください。
○西川国務大臣
総理がなぜ発言しなかったのか、私は承知しておりませんが、総理も常々、日本の農林水産業を守り抜く、この考え方には変わ りはございません。そういう意味で、競争力をこれから高めていかなきゃなりませんが、このTPPでも、日本の農林水産業が傷まない、こういう状況で進めて いく、これが基本的な考え方と承知しております。
○畠山委員
日本共産党は、農業と地域を壊すTPP交渉からの撤退を掲げて、北海道でも十一年ぶりに議席を与えられました。ここにしっかりと民意があらわれているというふうに思います。
生産者は不安を抱えています。開拓農家として北海道に入り、日本のためにと食料もつくってきたのに、後を継いでくれと子供に言えない農家の苦悩があります。苦境にあえぐ生産者をさらに追い詰めるTPPは、認めるわけにはいきません。
日本共産党は、農業を日本の基幹産業に据える方針を持つ党として、農業と地域を壊すTPP交渉からの撤退を強く求めまして、私の質問を終わります。